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頭脳交換会inいわき(いわき信用組合主催 NICe共催)レポート



2019年2月16日(土)福島県いわき市小名浜のいわき・ら・ら・ミュウにて、「頭脳交換会 in いわき」が開催された。頭脳交換会とは、プレゼンターが自身の事業プランや課題を発表し、それをもとに参加者全員が「自分だったら」という当事者意識で建設的なアイデアを出し合い、問題解決へと前進するNICe流の勉強会のこと。今回は、主催のいわき信用組合が復興庁の連携支援制度を活用し、第一勧業信用組合、相双五城信用組合、日本政策金融公庫いわき支店、福島県中小企業団体中央会 後援、そしてNICe共催により実施。福島県内をはじめ、北海道、茨城県、東京都、神奈川県、富山県、愛知県から約70名が集い、6組の経営課題・事業計画について改善策やアイデアを出し合った。

 

総合司会は、いわき信用組合 理事 地域開発部長 本多洋八氏。
主催 いわき信用組合 常務理事 猪狩正弘氏による開会宣言で開幕し、後援の相双五城信用組合 理事長 梅澤国夫氏からも「初参加で楽しみです」との期待の言葉をいただいてスタート!



■オープニング

つながりワークショップ
ファシリテーター 小林京子NICe理事




まずは、頭脳交換会の前にアイスブレイクとして、NICeオリジナルの交流ワーク「つながりワークショップ」。名刺交換や肩書きだけではわからない、その人の“人となり”、人としての経験や資源や想いを短時間でわかり合うという自己紹介プログラムだ。このワークを行うことで、この後の頭脳交換会でのディスカッションも発想もグッと膨らみ盛り上がる。
つながりワーク考案者の小林京子理事から、「今日はスーツ姿の方が多いですが、仕事、立場、年齢などなど、いっとき横へ置いておいて、さっそくやってみましょう」と、各自へ配布している『つながりQ』シートに記入するよう促した。

記入タイム終了後、グループごとの自己紹介の前に、小林理事から全員へいくつかのお題が投げかけられ、場内を沸かした。続いてグループごとに、シートを見せ合いながら自己紹介タイム。
ほとんどの参加者が初対面、2/3以上がつながりワーク初体験にも関わらず、笑い声や拍手が沸き起こる。和やかな雰囲気になったところで、いよいよ頭脳交換会へ。




■頭脳交換会

ファシリテーター 増田紀彦NICe代表理事




「今日は60名以上の参加者が集いました。ひとりで60分考えるのと、60人で1分考えるのとでは、どちらが多くの考えが浮かぶか、これからみなさんに体験していただきます。思いもつかなかったアイデアがどんどん出てきます。
6名の相談者が登場して、経営課題や改善アイデアを求めます。相談者にとっては、アイデアをたくさんいただける、とても有難いことですが、相談者だけに良いのではないのです。アイデアを考えるみなさんもまた、異業種の役に立てるアイデアが浮かんだと、ご自分の可能性が広がっていくことを実感できると思います。傍目八目で、異なる業種、異なる経験、異なる立場だからこそ、見えてくる視点や発想、そんな可能性をおおいに感じていただけると思います」

〇相談 1
木田直之さん 
いわき市役所 創生推進課
https://iwaki-hula.jp/



「いわき市の観光振興策 フラシティいわき を広め、
 さらに活用して、市民や企業が“稼げる”アイデアを!」

 
いわき市はシティセールスの柱として、地域に根付いているフラ文化をメインコンテンツに、『フラシティいわき』を展開している。木田さんは、フラ選定に至るまでの2年間のプロセスや、時代背景、選定の決め手、そして無償提供(要申請)しているロゴに込めたこだわり、想いなどを語った。市民には、いわき市への愛着をより深く持っていただき、「住み続けたい」と思っていただけるような "自信と誇りに満ちたまち" を目指し、また市外の人からも、「行きたい」「住みたい」「応援したい」「企業進出したい」と思ってもらえるよう取り組んでいるところだという。
今日は、このフラシティいわきを広め、市民や企業にもロゴやデザインパターンを活用してもらい、みなさんも収入を得られるシティセールスを推進したい。そのためのアイデアを募った。

5分間、各グループでディスカッションした後、発表へ。
盛りだくさんのアイデアを小林理事が書きまとめ、相談者へのお土産に。




〇相談 2
佐藤 満さん
NPO法人 いわき鳴き砂を守る会
https://nakisuna-iwaki.amebaownd.com/



「危機に瀕するいわき鳴き砂の保存活動に、
 コラボ協力・協賛してくれる企業や団体を求めたい!」


歩くと砂がキュッキュッ、と音をたてる砂浜。佐藤さんは、いわきの鳴き砂を持参し、まず参加者にキュッキュッと音を聴かせてから、活動内容を紹介した。1996年から仲間らと共に「環境と鳴き砂」をテーマに取り組み、2017年にはNPO法人を立ち上げ、いわきの鳴き砂を守る活動を続けている。鳴き砂とは山の花崗岩が風化し、川から海へと運ばれた、石英を65%以上含んだ砂で、海岸が汚れてしまうと鳴かなくなるという。そのため、鳴き砂は環境のバロメーターと言われているそうだ。
佐藤さんは、全国マップを示し、50年前には60カ所あった鳴き砂の浜が、現在は20カ所まで減少していると語った。減少の原因は、海岸の汚染、生活排水、レジ袋やペットボトル、マイクロビーズ(微小なプラスチック粒子)を含んだ洗顔料や歯磨き粉などがあるという。佐藤さんらは、1カ所に半年も要する定点観測と調査報告を数十カ所も続けながら、市民や企業と協力した清掃イベント、フェスティバル出展、サミット開催などを通じ、いわき鳴き砂を守る活動に取り組んでいる。そのイベントのひとつ、毎年9月の3日間、いわき駅が砂浜になるイベントに出展しているが、準備を含め5日間、10tもの砂を運び、テントで保護するなどの総費用に約50万円かかるとのこと。今日は、鳴き砂を守るこれらの活動に、何らかの支援、コラボ協力・協賛してくれる企業や団体を求めるアイデア、またコンピュータ専門職のスタッフを募る策を求めた。


〇相談 3
芳賀敦子さん
磐城高等芸術商科総合学園
クラーク記念国際高等学校
http://iwakigeisho.web.fc2.com/



「障害を持つ学生たちが制作した芸術品を
 活かせる方法、発表機会のアイデアは?」

いわき市内の2つのキャンパスで校長を務めている芳賀さんは、学習障害や情緒障害などを持つ学生が、「実社会で働く・自立できる」ための育成に努めている。子どもたちひとりひとりの個を活かし、能力と可能性を伸ばす教育方針のもと、1校は、高校卒業生を対象にした専門過程で、音楽芸術ビジネス保育科、経営経済ビジネス情報科があり、在学中に様々な資格取得も目指している。もう1校は、中学卒業生を対象にした高等課程で、音楽芸術クリエイト科と、総合ビジネス科(商業コース・被服コース)を設けており、単位互換で運転免許取得やピアノレッスン、保育士資格取得など、生徒の個を活かすユニークなカリキュラムも特徴だ。また、2010年からはクラーク記念国際高等学校との連携により、高校卒業資格も取得できるようになったという。
今回は、発達障害の学生が制作したという、見事な切り絵作品を持参し、生徒の自信につながるような活用法、発表機会のアイデアを求めた。


休憩タイムのあと、後援の日本政策金融公庫いわき支店 支店長 奥田智則氏から頭脳交換会後半戦へ向けて意気込みを語っていただき、士気が盛り上がったところで再開!




〇相談 4
松原由之さん
学べるコムネット
http://manaberucom.net/



「放課後学習塾 タダゼミ・無料塾をスタート!
定着させるには? コラボできる企業や団体は?」


子どもたちの学習支援をライフワークに活動している松原さん。これまでも双葉町、楢葉町、大熊町、川内村などで補習や放課後学習会をはじめ、不登校、引きこもり児童の支援、学び直し教室、フリースクールなどを運営している。東日本大震災後、子どもたちの学習環境は大きく変化したという。親の経済的な理由や、新天地での生活環境の変化、学びたくても学べる状況にない、希望の進路に進めない、自宅学習できる子とできない子との格差は開く一方だという。そこで松原さんは、今年5月、いわき駅前の商業施設LATOV(ラトブ)に放課後学習室を開設し、中高生は無料で利用でき、社会人は一部有料で学べる『タダゼミ・無料塾』をスタートさせる計画。動画を使った視聴覚学習や直接指導、添削指導のほか、受験対策のカウンセリングも受けられるしくみ。指導を担うのは、教職免許保有者やセカンドライフで社会貢献したい大人たち。中高生、社会人、シニアが学び合い、学びを通じてコミュニティを創り出し、地域の賑わいも創出していきたいと意欲を語った。
今日は、タダゼミを広め定着させるアイデア、学生は無料なので他から収入を得るアイデア、中高生の動向をビジネスに活かしたい企業や団体について意見を求めた。


〇相談 5
高萩登志子さん
カエルかえるカフェ小川町店(仮)開業準備中



「集客アップにつなげる
 ハミ出したカフェメニューのアイデアを!」

 
いわき市の北に位置する小川町は、自然豊かで、カエルの詩人で知られる草野心平さんの故郷でもある。その小川町で、カフェオープンに向けて準備中の高萩さん。人口6700人の小川町には冬季営業のカフェがなく、カフェ好きな高萩さんは、ならば自分で!と決意。地域の特徴を活かしたいと、カエルをコンセプトに居心地の良い店を目指して準備中だ。ターゲットは、町内在住や車で30分圏内の40代~60代の女性、二ツ箭山(ふたつやさん)への登山客、春の桜・秋の紅葉を目当てに訪れるドライブ観光客、バイカーやツーリスト、そして草野心平さんのファン、全国のカエル好きだ。
高萩さんは、カエルの絵皿や小物、インテリアのほか、緑色(カエル色)のスイーツなどを考案中。さらに何か話題を呼ぶような、集客につながるようなハミ出した(突き出た)カフェメニューを出したいと、アイデアを求めた。


〇相談 6
渡辺円美さん
筋膜リリースサロン『Sleeper』開業準備中



「睡眠障害を改善するサロンを今夏、水戸で開業!
 2号店をいわき市で。どこがいい?」


いわき市出身の渡辺さんは、作業療法士としてキャリア15年、福祉住環境コーディネーターの資格も持ち、手話通訳などもできる医療福祉の専門家だ。さらに、癒しの技術を広め癒される人を増やしたい、聴覚障害を持つ人の職域拡大に貢献したいと、新規事業を計画中とのこと。それは、睡眠の質を向上させる「筋膜リリース」という手法で、睡眠障害にまつわる不調を改善するリラクゼーションサロン。睡眠障害は、本人がつらいだけでなく、日本では5人にひとりの割合で睡眠障害があり、その経済損失は年間約3兆5000億円とも言われる国民病だ。最近、マスコミでも話題の「筋膜リリース」だが、施術できる専門家は渡辺さんを含め、アジア圏では20名程しかいないという。この技術を、聴覚障害を持つ人へ伝授するスクール開設と、習得した聴覚障害者が活躍できるサロン開設を目指している。
今年7月には茨城県水戸市でサロンを開業する予定で、2号店はいわき市内に出店したいとのこと。そこで今日は、いくら位なら施術を受けてみたいと思うか。また、いわき市内で出店するなら、おすすめの場所やサービス形態など、忌憚のない意見とアイデアを求めた。


閉会のあいさつは、第一勧業信用組合 専務理事 加藤信一氏。
「素晴らしい会でした。ぜひ職場で、地域で、地元へ戻ってからもこの頭脳交換会の手法を持ち帰ってやってください」と参加された皆さんへ賞賛とエールが贈られた。







撮影/いわき信用組合 佐藤和明氏、金賀悠加氏
取材・文、撮影/岡部 恵

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