Vol.10 安倍孝一さん

京都府発 家族に笑顔を提供する ゲームソフトの企画・開発会社

株式会社アセンブレント 安倍孝一 さん
京都府城陽市

家族をターゲットにしたソフト開発で、ゲームのネガティブイメージを払拭

事業内容は?

コンピュータゲームの企画・開発です。「ニンテンドーDS」や「プレイステーション2」など、家庭用ゲーム機器のソフト開発のほか、携帯電話向け、Webサイト向けのFLASHを用いたゲームなど、幅広いメディアに対応したゲーム開発を行っています。また、ゲームソフトを活用して「面白く手軽に学習させる」新しい学習システムの提案もしています。

その事業はどのような顧客・市場を狙っている?

ターゲットは、ズバリ「家族」です。当社のキャッチフレーズは「家族の笑顔が私の笑顔に」。ゲームに興味のないお父さんだって、仕事につかれて帰ってきてビールを飲みながら、リビングで楽しくゲームをする家族の姿を見れば、自然と笑顔になるじゃないですか。そんなシーンを実現したいのです。でも、テレビゲームというと、いまだに「ひとりで部屋に閉じこもってするもの」「家族間のコミュニケーションが希薄になる」というマイナスのイメージがありますよね。だからこそ私たちは、テレビゲームのマイナスイメージを払拭したい。家族みんながリビングでわいわい楽しみながら遊べる、本来ゲームが持つ娯楽要素を純粋に打ち出すことで、家族にコミュニケーションの時間を提供しているんです。

同業者や競合との差別化ポイントは?

効率の良いゲーム開発を目指して、開発スタッフの「徹夜・残業・休日出勤」を禁止していることが当社の特徴のひとつといえます。残業や休日出勤をせずともスケジュールを守ってクオリティの高い作品をつくることはできるんです。その実現のため、現場のムダを廃してスタッフひとりひとりのプロ意識を高めながら、職場でのコミュニケーションやチームワーク力を高めました。この取り組みによって、作業ミスによるロスも激減。また、この“3つの禁止”が外部の人間にとって「アセンブレントで働きたい」という動機にもなり、人材募集において競合他社との差別化になっているようです。

資金ショートのピンチにキャッシュフロー分析を徹底。先手を打つ行動力が身につく

起業のきっかけや動機は?

ゲームクリエイターは、思う存分働ける環境を求めていますし、私が勤めてきたゲーム会社でも、能力のある人が仕事環境に不満を持って退職するケースが多かったんです。それは私も同じこと。様々なゲーム会社の職場を経験しましたが、納得できる仕事環境の会社に巡り合えなくて……。理想の環境がないなら、自分で理想の環境をつくるしかないと。クリエイターが何の不満もなく仕事できる最高の環境をつくり出すことが私の責務と感じ、「楽しくゲームをつくる」をモットーにした現在の会社を立ち上げたんです。

起業前の予想と起業直後の現実は?

順調に事業拡大できるだろうと起業前は思っていましたが、やはり現実はそう甘くありません。自分自身がクライアント先に出向する仕事ばかりで、スタッフをそろえることもできず……。このままでは拡大路線など夢のまた夢。そこで少し無理して金融機関から融資を受け、スタッフを少しずつ採用していきました。私は週に3日の出向仕事をこなしつつ、スタッフの教育を行い将来に備えるという作業を地道に行っていきました。今では、私に代わってスタッフがしっかり稼いでくれていますが、軌道に乗せるまでの道のりは本当に大変でした。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

スタッフが稼げるようになるまでの人件費が重い負担となり、何度も資金繰りの危機に直面したことです。見込んでいた仕事が取れなかったり、得意先から入金がなかったりといったことも重なって……。そこで、会社口座の収支の流れをもとに、エクセルで何カ月も先の収支をシュミレーションする作業をスタート。いつまでにいくらの資金が必要か、毎月いくら売り上げがないと不渡りとなるかを綿密にチェックしていきました。これによって良い意味での焦りが生まれ、営業活動を強化したり、金融機関からの融資を早めに検討したりといった先手を打つ動きができるように。この収支チェックは、業績が安定してきた現在でも変わらず行っています。

NICeコミュニティを活用した新事業も開始。優秀な人材が集まる企業へ

現在の経営状況を評価すると?

順調にスタッフが育ち業績も安定してきましたが、私の経営者としてのスキルを自己評価するとまだまだひよっこ。先行きも決して楽観視できず、さらなる安定した経営基盤をつくり上げる必要性を感じています。現在、社長の私が資金調達、経営計画策定、営業活動、経理業務のマネジメント全般を行い、さらに現場仕事にも手を出さざるを得えない状況です。この状態から脱するために、幹部社員育成と権限委譲を早急に進めなければと考えています。

今後、実現したい経営上の目標は?

まず、京都市内にオフィスを移転したいです。会社の実力を高めることも大切ですが、会社の見た目やイメージも大事ですからね。あと、ここ「NICe」のメンバーとコラボレーションで始めているキャラクタービジネスなど、新しい事業にも積極的にチャレンジしていきたいと考えています。それと「人材=人財」を育てる企業であり続けたいという思いもあります。やはり会社は「人」が一番の財産でしょう。人はモチベーションが高ければ、どんな困難にも立ち向かえますが、逆にどんなに才能や能力が高くてもモチベーションが下がれば、力は発揮できないもの。優秀な人材が「働きたい!」と思えるモチベーションを社内に醸成することで、最強の会社に育てていきたいです。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

「エンターテインメント・ビルディング」を建設することですね。1階は常設のミュージカル劇場、2階は俳優やダンサーの養成学校、3階より上はエステサロンやコスメ、ジュエリーのショッピングフロアといった、娯楽と夢と趣味と美を追求する総合施設をつくりたいんです。今のところ、あくまでも夢ですが(笑)。

安倍さんのプライベート&ストレス解消法

演劇鑑賞、睡眠、ドライブが、明日の英気を養う

学生時代に趣味で演劇活動をしていたのですが、一度スポットライトを浴びる快感を知ったら、役者は辞められません! 10年ほど前にも、趣味で社会人劇団に参加していたのですが、実は、嫁さんとはその劇団で知り合いました(笑)。現在、プライベートで演劇活動はしていませんが、劇団四季や宝塚歌劇団などの演劇を鑑賞するのは楽しみのひとつです。また、ストレスを解消したい時は、思い切り寝ること! 私はイヤなことがあっても、一晩寝ると翌日にはすっかり忘れていますからね。あとはドライブです。毎週末には決まって家族でドライブ。福井県や和歌山県まで、遠出することもありますよ。


【文】NICe編集委員 石田恵海