Vol.16 桃井辰彦さん

宮城県発 夫婦で全国を駆け巡る 軽貨物運送業

株式会社ACCURATE(アキュレット) 井居義晴 さん
滋賀県大津市

「夫婦赤帽」のメリットを打ち出し、女性顧客の信頼を獲得!

事業内容は?

貨物軽自動車運送事業者「赤帽」の組合員として、貨物運送事業を夫婦で行っています。拠点は仙台市ですが、輸送範囲は全国。軽トラックのみを使って運営し、企業向けのチャーター便(貸し切り緊急輸送)や単身者の引っ越し、女性のお引っ越し、ペットの輸送などが主な業務です。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか?

24時間いつでもご指定の時間に集荷して、最短時間で全国に直行輸送できること。企業の物流上のトラブル発生時に、通常路線便では対応できない隙間を埋めることができること。それが、大手運送会社との大きな差別化になっています。引っ越し便では、大手の単身パックとは異なり、完全におひとり分の貸し切り輸送になるので、様々な自由度があります。また、仙台から東京など300km?400km程度の引っ越しなら、当日中に完了できるため、忙しいビジネスマンの急な引っ越しにも対応可能です。また、後ほど詳しく語りますが、OLや女子学生、家庭内トラブルのあった女性顧客のニーズに応えるサービスができるのも当社の強みです。

同業者や競合との差別化ポイントは?

同じ赤帽や軽運送業者との差別化としては、夫婦で事業を行っているため、女性のお客さまの安心感が絶大! 女子学生さんの引っ越しに関しては、親御さんが仙台ではお手伝いできても東京には着いて行けない場合など「桃井さんご夫婦に最後まで面倒見ていただけるので、安心してお任せできます」などお喜びの声をいただいていますね。ナビ操作や走行中の道路状況変化の対応など、すべて助手席で妻がリアルタイムに安全に対応しているので、ドライバーの私は運転に集中できます。ですので、長距離の緊急輸送に関しても、他の軽運送業者にはマネのできない「夫婦赤帽」ならではの確実性と信頼性があると自負しています。車両設備に関しても、タイヤやライト、幌、すべてに十分な投資をすることで、荷物の安全を守り、高速輸送できるよう最大限の努力をしています。

外に出ないと天候もわからない仕事環境を捨て、思いきり季節感を満喫する毎日

起業のきっかけや動機は?

会社員時代、システムエンジニアをしていたのですが、ストレスからくる慢性腎炎と診断されたことで(現在は治癒)、人生の進路変更を考え始めました。そんなある日、ドライブしていた時に偶然すれ違った赤帽のような車を見た瞬間、急に運送業をやりたくなったんです。今考えても不思議です。バイクや車が好きだったこともありますが、技術で生きていく仕事人生しか考えてなかったので、運送業での独立は、我ながら意外な選択だったといまだに思ってます。独立前の職場は窓も開かない高層ビルで、ものすごい雷雨でも天候がわからず、外出してから傘を取りに戻るほど。当時はそれが立派な環境だと思ってましたが、今振り返ると不自然な世界だったと思いますね。外で汗を流して仕事をして季節を感じられる今のほうが、生きている実感がありますし、幸せだなと思います。

起業前の予想と起業直後の現実は?

近くの企業に訪問営業したりポスティングしたりすれば、仕事が獲得できると思っていました。しかし、実際に営業活動をしてみると、荷物が出る企業は間違いなく既存業者が入っていて、新規開業した自分が入る余地がありませんでした。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

そんなありきたりの営業活動では全然ダメだったので、「夫婦赤帽」の特色を生かした独自サービスを打ち出しました。OLや女子学生など日中忙しい女性への夜間訪問見積もりのほか、女子寮や、DV被害などの家庭内トラブルで引っ越しをされる女性への配慮などです。女性である妻と一緒にやっているからこその安心感を女性顧客にアピールしたわけです。また、運送業者としては欠点ともいえる堅苦しい性格を生かす方向に切り替えました。たとえば「中くらいのサイズのダンボール10箱を青森まで運んで」という依頼があった場合、私は「中くらいのサイズ」という表現を具体的な数字(縦横高さの概算cm)で確認するようにしています。中くらいのサイズといっても主観は人それぞれ。とんでもないサイズを中くらいと感じる人もいますからね(笑)。多少うるさいと言われても、何とかして必ずダンボールのサイズを聞くようにしています。それが裏目に出る場面もありますけどね(笑)。ありのままの自分を受け入れてくれる顧客との出会いをいつも探しているんです。

同業者をネットワークし、質の高いシステムとブランドを構築中

現在の経営状況を評価すると?

仕事量としては、私の考える目標の第一段階に達しただけ。まだまだです。最近、「赤帽ももちゃん便グループ」として、ほかの赤帽の組合員をネットワークすることで、これまでお断りしていた仕事でも受けられるような体制を構築している最中です。それによってお客さまから「赤帽ももちゃん便がグループ化した。電話すれば何とかしてくれる」と安心してお任せいただけけるようにしたいです。

いま、一番課題だと感じる事柄は?

「赤帽ももちゃん便グループ」の体制を整えるためには、信頼できるメンバーを増やす必要がありますし、グループ内の仕事に対する意識統一も重要です。しかし、個人事業である赤帽組合員は、住む場所も生活時間もバラバラで、全員そろってのミーティングが困難。周知事項を敏速に全員にどのように伝えていくかが課題です。もちろん、質の良いドライバーの確保も。あとは自分自身、個人事業者の集まりを統率するリーダーシップの強化が必要だと感じています。

今後、実現したい経営上の目標は?

現在は、企業顧客から見て、単なる「赤帽」ではなく「ももちゃん便という運送会社」と思っていただけるレベルを目指しています。売り上げを上げることだけでなく、実際にシステムとしてお客さまから信頼いただける内容にできることが目標ですね。企業側が要望する配送担当者への周知方法の確立、ミスのフィードバック、報告・連絡・相談の徹底など、大手企業では昔から当然として行っていることを、個人事業主の集まりである赤帽業界で行うことは正直難しくもあります。でも、それができれば競合との明確な差別化になるはず。なんとか実現したいと考えています。

桃井さんのプライベート&ストレス解消法

Macとカメラと猫が癒しのアイテム

ストレス解消は、Macを触ること。カメラをいじること。猫をなでること。この3つですね。あとは、長距離を移動する仕事の合間に、妻と旅行気分を味わうことでしょうか。また、社会貢献活動もしていきたいので、まずは募金活動に参加する予定です。まだまだ私自身が逆に募金をいただきたい程度の事業規模ですけどね(笑)。自分ができる範囲で頑張りたいと。具体的には、ユニセフの毎月の募金を始めるつもりなんですよ。


【文】NICe編集委員 石田恵海