Vol.17 小澤重史さん

千葉県発 介護用品の販売・レンタル、 リサイクルを行なう福祉ショップ

有限会社モナークケア 小澤重史 さん
千葉県千葉市

年中無休のショップ運営、リサイクル介護用ベッドを格安価格で提供

事業内容は?

千葉県習志野市にあるイトーヨーカドー東習志野店に「シルバー・セーフティー」という名前の店舗を持ち、車いすやベッドなど、介護用品の販売とレンタル事業を展開しています。そのほか、補聴器やおむつなど、介護に必要な、様々な商品の販売も行っています。さらに2年前(2006年)から、不要になった介護用品を引き取り、それを再生して必要な方たちに提供するリサイクル事業に着手しました。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

対象となるのは、高齢者および介護認定を受けて介護保険サービスを利用している方たち。また、保険は適用外だけど格安な価格、利用料を探している方とそのご家族です。介護が必要になった方にとって、ニーズの高いものは介護用のベッド。ところが、新品で購入するとなると40万円ほどするものなので、購入に当たって躊躇され、無理な環境で介護をされている方もいらっしゃいます。そこで当社では、介護保険が適用されている方なら、1カ月1500円程度でレンタルできるサービスを行っており、多くの方にご利用いただいています。さらに、介護保険の適用がない方を中心にリサイクルの介護用ベッドを5万円台から提供しています。そのベッドですが、不要になってゴミとしてしまうと、処分代が2、3万円の費用がかかってしまうんです。 それを当社では、専門知識と技術を駆使して無料で引き取って再生利用するサービスを展開。 また、当店では、介護保険手続きなど各種介護の総合相談も受け付けており、年中無休で夜8時までやっていることで、大変喜んでいただいています。

2店舗目の運営は失敗。そこで着手したのが介護用品のリサイクル事業

起業のきっかけや動機は?

起業前は旅行会社に勤めていました。ある大手企業の傘下にある子会社で、親会社の言いなりという経営状況だったので、私自身の社内での目標設定に悩んでおりましたし、将来が不安でもありました。福祉の世界には学生時代から興味を持っており、独立して何か社会のお役に立てる仕事で自分の力を試せないかと考え、まずは前職勤務中にホームヘルパー2級の資格を取得。学科は通信教育で、実習は週末の休みを利用してこなしました。退職して介護用品の販売とレンタル事業を開始しましたが、それまでの旅行会社での仕事とはまるで畑違いで、大変なことも多々ありました。しかし、それを覚悟したうえでの開業でしたから、どんな困難も乗り越えようと、自分ならではのサービスを徹底的に追求しました。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

一人ひとりのお客さんと徹底的にお付き合いするということですね。まず、利用してくださったお客さんには、3、4日後に、「車いすの使い勝手はいかがですか? いつでも何でも聞いてくださいね」などと、必ず電話でフォローするようにしました。そして、「それはいいですけど、おばあちゃんの靴下が欲しくて」と言われたら、その靴下1足でも届けるというサービスも。お客さんの誕生日には花を直接お届けして、そこで世間話をします。より親しみを感じていただくことで、お客さんを逃さないように努めました。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

実は開業3年目(2005年)に、ある大型ショッピングセンター内で、大きなチャレンジとして2店舗目をオープンしたのです。でも、軌道に乗せることができないまま閉店となり、大きな損失を出してしまいました。その時実感したのは、撤退する勇気がいかに大切かということ。開店の時以上に決断力が必要だということをひしひしと感じました。その後に着手したのが介護用品のリサイクル事業です。介護に本当に必要なサービスとは何か? 皆さんが何に困っているのか?と必死に考え、それが利益率の向上につながるようなビジネスを創出しようと企画、実行していきました。

公的保険に頼らず、より安く利用できるサービスの提供を実現したい

いま、一番課題だと感じる事柄は?

今年、いいスタッフを確保するために、完全に先行投資で人材確保をしました。ですから、経費的にキツイ状態が続いています。しかし、介護ビジネスの世界では、スタッフの経験や知識、顧客からの信頼はとても大切なもの。このタイミングでの人材確保は大きなチャレンジだったと思いますが、私自身が会社やショップの外で動き回るためにも、業務を任せられるスタッフの採用が急務だったのです。実際、私自身がめまぐるしく動き回っているという状況なので、これではスタッフも落ち着かないなあと(笑)。ある時はスピーディに、しかし、ある時はゆっくり構えて、そのバランスの良さが必要ではないかと感じる今日この頃です。

今後、実現したい経営上の目標は?

これからますます高齢者は増えていきますが、現状でも介護に関するサービスは不足しています。まずは、千葉県という私たちを育ててくれた地域において、必要なサービスを、誰でも安心して受けられるような体制を構築することが第一の目標です。そのために、同業者の交流会に参加したり、セミナーや講演会の依頼があれば積極的に引き受けて、私が経験したこと、感じていることをすべてお話しするようにしています。なぜなら、共感者を引き寄せることが、必要とされるサービス実現の近道であると考えているからです。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

当社のスタッフが「こんなに楽しく働いて、これだけの収入が確保できて、人生が充実しています!」と胸を張って言えるような企業になることです。そのお手本となるような企業になることで、福祉事業に従事している人たちの地位が向上するのではないかと思っています。また、介護用品の販売・レンタルの店舗運営ノウハウをシステム化して広く公開することも実現したいことのひとつ。さらに、医療従事者や他業種とも連携し、公的保険に頼らず、より安く利用できるようなサービスの構築も実現させたいです。それによって、多くの日本人が将来に夢を持ち、目を輝かせて生きていける社会づくりができるのではと。そんな大きなことまで考えています。

小澤さんのプライベート&ストレス解消法

子どもの成長が励みに。週に2日のジム通いも欠かせない!

11歳と8歳の子どもがいますが、子どもたちとの交流や会話はとても刺激になりますね。それまでにはなかった自己主張や、ちょっとした言葉から成長を実感することも。仕事という大人だけの世界では得られない喜びが、私自身の励みになっています。また、週に2日は必ず、スポーツジムで汗を流しています。夜10時から12時と遅い時間ですが、サッパリした気分で就寝できますし、翌日もさわやかに仕事に向かうことができるんです。


【文】NICe編集委員 田村康子