Vol.18 奥村真知さん

茨城県発 言語発音判定・矯正プログラムなどの 開発&ソリューション企業

株式会社プロンテスト 奥村真知 さん
茨城県つくば市

音響分析技術と独自のソフトにより、今までにない発音判定・矯正・個別指導を実現

事業内容は?

現在のメイン事業は、英語の発音を具体的に直すソフトの開発です。つくば市にある、産業技術総合研究所との共同研究をへて、言語発音判定・矯正プログラムの開発を行い、独自技術による音響分析ツール「発音判定矯正エンジン プロンテスト」を完成させました。この技術開発・販売、発音判定矯正エンジン搭載のPC用の教育ソフト「発音力」の製作・販売、英会話スクールの3本柱で事業を推進しています。また、英語だけではなく、ほかの言語発音、音響の分析も手がける計画です。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか?あるいは顧客の課題を解決するのか?

対象となるのは、高齢者および介護認定を受けて介護保険サービスを利用している方たち。また、保険は適用外だけど格安な価格、利用料を探している方とそのご家族です。介護が必要になった方にとって、ニーズの高いものは介護用のベッド。ところが、新品で購入するとなると40万円ほどするものなので、購入に当たって躊躇され、無理な環境で介護をされている方もいらっしゃいます。そこで当社では、介護保険が適用されている方なら、1カ月1500円程度でレンタルできるサービスを行っており、多くの方にご利用いただいています。さらに、介護保険の適用がない方を中心にリサイクルの介護用ベッドを5万円台から提供しています。そのベッドですが、不要になってゴミとしてしまうと、処分代が2、3万円の費用がかかってしまうんです。 それを当社では、専門知識と技術を駆使して無料で引き取って再生利用するサービスを展開。 また、当店では、介護保険手続きなど各種介護の総合相談も受け付けており、年中無休で夜8時までやっていることで、大変喜んでいただいています。

同業者や競合との差別化ポイントは?

いわゆる一般の音声認識とは、考え方も、精度も異なります。具体的に、口の中の様子まで指摘するソフトは、ほかにありませんので。ここが大きな特徴です。従来のソフトは、全員に対して同じ指導で、間違いを指摘するだけですが、当社のソフトは、個人の発音時の口のかたち、舌の位置まで分析し、具体的な直し方を指導できるもの。ただ、ユーザーから見ると、あまりすぐには違いがわかりません。でも使ってみるとその効果に納得されます。特に、プロの方から認めていただくケースが多いですね。

英会話スクール運営の経験から、アイデアを発見。独立行政法人との共同開発へ

起業のきっかけや動機は?

もともとの事業は「英会話スクール」です。アメリカから帰国してすぐに某大手英会話スクールに勤めたのですが、私がつくばに引っ越すことに。そのスクールがつくばに進出してなかったので、自分で始めてみようと。英語を教えながら、生徒さんが上達しない理由を考えていたことと、耳の不自由な生徒さんに発音を教えた時に、目で見える何かのかたち、また、誰にでも専門的な指導ができるソフトの必要性を感じました。さらに一般向け、企業向け研修などのスクール事業も継続しながら、発音を具体的に直すソフト開発をスタート。時同じくして、社名も変更しました。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

独自の認識エンジンの研究開発に時間がかかったので、まだ軌道に乗ったとは言えません。プロトタイプ完成まで2年、商品化まで1年かかり、2008年3月にWindows Vista版の発売を開始したばかりです。現時点では、この技術とサービスを浸透させるには、もう少し時間がかかるかなと感じています。自分たちで一般消費者へ販売する営業力がないので、できるだけ大手の会社と組んでサービスを提供していこうと考えているところです。また、今後は、商品というよりは、企画自体を提案していこうと思っています。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

現在もまだピンチの連続ですよ。ただ、あきらめなければ道は開くと思いますし、人との結びつきがいろいろな新しい展開を生み出すと考えています。金融機関、投資会社、企業、いずれともいいコミュニケーションをとれるよう努めているところです。

技術力にさらなる企画力を加え、将来は音響分析のエキスパートを目指す

いま、一番課題だと感じる事柄は?

現在の経営状況は、いわゆるベンチャーが最後に苦しんでいる部分、Jカーブの死の谷の出口付近でしょうか。ようやく先が見えてきたところです。課題としては、事業企画力を強化すること。音響分析ツール「発音判定矯正エンジン プロンテスト」の技術そのものを売るのではなく、付加価値を付けて協業していきたいと考えています。その付加価値を見いだすためには企画力が重要ですから。また、音声を扱う多岐にわたる企業がターゲットになりますが、当分は、当初の目的であった教育分野にしぼっていきます。

今後、実現したい経営上の目標は?

もちろん、右肩上がりの収益です(笑)。商品化して約8カ月になりますが、ようやく教育機関などに認められつつあるので先が楽しみです。このほかに、大手英会話スクールやメーカーさん、大手海外出版社などとも交渉を始めています。大企業との商談が成立するまで時間がかかりますが、教育産業に絞って確実な分野から固めていく計画です。将来的には、教育だけでなく、音声を扱うあらゆる産業と協業していきたい。そのためにも、さらに強い技術力と企画力を身に付けないといけないですね。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

国内の英語教育を主軸として始めた事業ですが、今後はグローバルな展開、またはグローバルな企業との協業が可能だと感じています。それを実現するのが夢でもあります。また、言語発音だけではなく、「音響分析のエキスパート」としての企画提案のできるポジションを確立できればと思っています。

奥村さんのプライベート&ストレス解消法

仕事に役立つ映画鑑賞&ドライブでリフレッシュ

仕事にも関係しますが、海外の映画を見るのがとても好きです。映画やテレビを見ていると、つい発音に耳を傾けてしまいます。発音を聞いて、その人の口の中の様子がわかりますし、何度も見て自分の耳をチューニングしたり、俳優の出身地やストーリーの設定による地域性の違いを聞き取るのも楽しいです。もちろんストーリーありきですけど(笑)。ちなみにオカルトは怖いし、アクション系はあまり言葉が良くないので苦手です。日々のリフレッシュ法ですが、つくばは道路が広いのでドライブするのが大好き。時間さえあれば車に乗っています。運転中は自由にいろいろなことを考えることができますし、思わぬアイデアが出ることもありますよね。


【文】NICe編集委員 岡部恵