Vol.19 宮脇貴代之さん

大分県発 土木建設会社に特化した 原価管理システムの開発・販売会社

ミヤシステム株式会社 宮脇貴代之 さん
大分県大分市

日本初、原価管理ソフトで特許取得! 業務効率化とコスト削減に貢献

事業内容は?

土木建設関連の中小企業向けに開発した、原価管理システムの構築・販売・保守を行っています。そのほか、当社のシステムを導入した企業向けに経営コンサルティングや研修、ホームページ作成サービスも提供しています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか?あるいは顧客の課題を解決するのか?

かつて公共工事で潤っていた土木建設業界は、工事を請け負ってさえすれば、どんぶり勘定の経営でも何とか継続できるゆるい体質の業界でした。しかし、公共工事が激減したバブル崩壊後は、価格競争が激化しています。「工事が終わって計算をしてみたら、赤字だった……」ということも少なくありません。そんな状況で生き残っていくには、原価管理をしっかりと行い、少しでも多く利益を出していく努力が必要。当社は、そういった危機感を持って、前向きに事業に取り組んでいる土木建設会社がターゲットです。当社のソフトは、日報形式で現場監督から報告された数値を入力するだけで、管理者が損益と作業の進歩状況をリアルタイムで把握することができるもの。予算管理もスムーズで、業務の効率化とコスト削減の両方に貢献しています。

同業者や競合との差別化ポイントは?

世の中に原価管理ソフトはたくさんありますが、コンピュータに精通した人向けにつくられているものが多く、土木建設業界の現場に寄り添ってつくられたものはほとんどありません。当社は土木建設会社から独立した会社です。当然、工事の現場で何が起きているのか把握していますから、土木建設会社と同じ目線に立ち、パソコン操作が得意ではない人でも覚えやすいソフトを開発しています。それが一番の強み。販売後のサポートにも注力しており、建設現場を知っている当社の人間が顧客が受注した仕事をベースに、コンサルティングに近いかたちで運用を指導していくのも他社にはない特徴です。また、日本で初めて特許を取得したことも強みのひとつとなっています。

思考を「売るため」から「役に立つため」に変え、売り上げ増加

起業のきっかけや動機は?

現在販売している原価管理ソフトの原点は、もともと家業の「宮脇建設」の原価管理のために先代の義父が開発したもの。そのソフトがメディアに紹介されたことで問い合わせが増加。そして、土木建設業で同じ志を持っている人のために販売しようと立ち上げたのが、「ミヤシステム」です。僕は宮脇建設の二代目として、ずっと現場で働いていこうと思っていました、しかし、義父に強く勧められたことで、開発者である義父の思いを多くの人に伝えたいと起業を決意。半ば強制的に起業されられたようなものですが(笑)。多くの素晴らしいお客さまと出会い、支えていただきながら、お客さまと共に土木建設業界を盛り上げていきたいと思っています。

起業前の予想と起業直後の現実は?

ホームページからの問い合わせはいくつかありましたが、当初はなかなか売れず、代理店に販売を委託したりと、試行錯誤を繰り返しました。でも、変な話、売ろうとしてはダメですね。売らなくては、売らなくては……と必死になるほど売り上げが伸びなかった。そこで「そもそも、何でこのソフトを販売しようと思ったんだっけ?」と原点に立ち返り、お客さまの利益向上に貢献するために、お客さまに喜んでもらうために、と考えるように。そうしたら、お客さまに何を伝えればいいのか、どんなサポートをすればいいのかが見えてきて、それを素直に実践していくと、自然と売り上げが伸び始めました。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

やはり開発者である義父が亡くなったことですね。義父は会社を守るためにと命を削って連日連夜ゼロからコンピュータを独学で学んで、このソフトを開発したので、商品に関して並々ならない思いを持っていました。当社のお客さまもまた、義父やこのソフトを愛している熱烈なファンが多いんです。両者の思いに自分ひとりで応えられるのか、と悩み、落ち込みました。しかし、義父同様に志の高いお客さまと接するうちに、お客さまのために自分が死ぬまでこの会社を守っていこうと。そう決断できました。

8期目を迎え、人材教育に注力。今後も同業者の役に立つビジネスの継続を

いま、一番課題だと感じる事柄は?

昨年、感情的な判断してしまう自分をブレさせないために、社是や社訓をつくりました。また今年は8期目に入りましたが、転換期だなと感じていますね。義父亡き後に入社した社員も増加したことで、商品に対する思いを社員全員にどう伝え、思いをひとつにするか。人材教育に注力する必要性を感じていますし、会社の仕組みを変えていく時期になったと実感しています。

今後、実現したい経営上の目標は?

「土木建設業界の原理管理システムといえば、ミヤシステム」。これを不動のものにしたいです。それとやはり、できるだけ多くのお客さまの経営改善に役に立っていきたいですね。2007年、全国のお客さま80社が集う「ミヤシスサミット」を開催し、ソフトの新バージョン解説のほか、建設業界について学ぶ研修や交流会を行ないました。参加されたお客さまは経営に対する志が高いうえ、地域が違うので競合にならないため、非常に有意義な交流の場となったようです。そこから、土木建設業界の後継者ネットワークが立ち上がりました。今後も、自社の経営改善だけでなく、お客さまや仲間の経営を考え、その役に立っていきたいと考えています。

宮脇さんのプライベート&ストレス解消法

地元ソフトボールチームに参加し、汗をかく楽しみ

2カ月に1度くらいの参加頻度ですが、学生時代から続けている地元のソフトボールチームで汗を流すことです。実業団から声がかかったこともある、という昔の杵柄で、ポジションはピッチャー。が、実は体がついていけてないことをごまかし、ごまかしやっています(笑)。あとは、同じ志を持ったお客さまと笑い合って話すこと。ストレスがぶっ飛びますね。


【文】NICe編集委員 石田恵海