Vol.21 白川正志さん

新潟県発 子どもからシニアまで愉しめる 運動あそび塾の運営

株式会社笑足ねっと(わらかしねっと) 白川正志 さん
新潟県柏崎市

継続できる「健康づくり」と「まちづくり」を組み合わせ、空間・時間・仲間を提供

事業内容は?

コーディネーショントレーニングを中心に開発した、運動サポート&レクリエーション事業です。具体的には、元映画館だった建物を再生して、ジュニアとシニアの「運動あそび塾・しらさん家(ち)」の運営、高年齢者向けの介護予防・支援活動などの公共受託事業、学校や地域行事での出前講座「親子で運動あそび」、デスクワークが主体の企業向けに「“脳”率アップ出張サポート」の提供など、4本柱で事業を展開しています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか?あるいは顧客の課題を解決するのか?

ターゲットは、運動が大切だとわかっていても、「なかなか始められない」「始めても続けられない」という課題を抱えている人すべてです。「ヒトはひとりでは続けられない」という仮説を立て、みんなで楽しむコトづくりが必要だと結論付けました。そのための空間・時間・仲間を共有できるサービスを提供しています。同時に、農商工連携の地元民間企業や地域住民とも協力して、健康づくりとまちづくりを組み合わせた、ソーシャル&コミュニティビジネスモデルの構築に挑戦しているところです。

同業者や競合との差別化ポイントは?

コーディネーショントレーニングは、既存のスポーツクラブなどにありがちな、カラダだけを鍛えるものとはまったく異なります。「1日何分以上」とか「何セットやる」というような目標設定もなく、「愉しむ」ことに主眼を置いていることが特徴です。私は、同じ「たのしむ」という字も、受け身的なものは「楽しむ」、主体的なものは「愉しむ」というふうに、別のものだと捉えています。「自分らしく愉しむココロ」をテーマに、生きがい・健康・体力づくりを支援する、というわけです。楽しい空間があり、時間があり、仲間がいることで、「運動あそび」の継続をより可能にしている点が差別化になっています。

精密機械加工メーカー三代目に就任し、モノづくりとコトづくりの融合に挑む

起業のきっかけや動機は?

実は私は、祖父が創業した精密機械加工メーカー、白川製作所の三代目代表取締役社長でもあります。モノづくりだけのビジネスではなく、そのモノを活用する場面も組み合わせ、さらに継続的に関われる仕組みへと発展させて、地域の生きがい・健康体力づくりへの支援活動に挑戦してみたいと考えるようになったんです。白川製作所が得意とする開発力・製造技術力=モノ(道具)づくりと、笑足ねっとの企画・運営=コト(仕組み)づくりを融合させてイノベーションにつなげたい。この信念を実践しようと、笑足ねっとを立ち上げました。

起業前の予想と起業直後の現実は?

新聞折り込みチラシでの宣伝を始め、幼稚園・保育園の連絡帳にそのチラシを添付してもらったり、小学校・PTA学年会などに参加して告知したりと、様々なPR活動をしました。しかし、地域の方々への認知アップがなかなかうまくいかず、採算ベースまでの会員確保に向けて、さらなる取組み・試行錯誤が必要な状況です。白川製作所の会長である父や、妻と娘には、この事業を始めることへの理解を得ることはできましたが、社員さんたちが納得しているかどうか。モノづくりと重なる部分が社員には見えにくく、また新しいビジネスモデルのため、社長の道楽としか捉えられないようで……。下請け体質の染み付いた会社が新しい分野に挑戦する際に、必ず乗り越えなければならない大きな壁なのかもしれません。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

「運動あそび塾・しらさん家(ち)」を拠点にして、新たに、「歩人駅(ほっとターミナル)」事業を計画しています。これは、歩いた分だけ地元商店街のお買い物ポイントが貯まっていくというシステム。歩くという行為は日常的なものですから、当社のサービスをより身近に感じてもらえる、認知度が上げられる、健康・運動への意識も変わるのではないかと考えました。冬は荒れ模様の天候が続きますので、スタートは来春を目標にしています。現在、各商店のオーナーに連携の価値を理解いただけるよう努めているところです。

柏崎発の新ビジネスモデルとして、他地域との横のつながりを目指す

現在の経営状況を評価すると?

まだ点数をつけられる段階にも達していない状況です。ですが、お客さまから直接「ありがとう」「楽しかった」とお声がけいただけるのは喜びです。皆さんの笑顔、笑い声から、自分たちの取り組んでいる方向性や意義を認めてもらえていると実感できますから。地域における課題解決をとおして、「社会や文化を創る仕事」に挑戦していると捉えており、すごく大きなやりがいも感じています。モノづくりの現場では、お客さまへのお役立ちを直接肌で感じられる場面がほとんどないので……。

今後、実現したい経営上の目標は?

会員数では子ども100人、大人100人、サポート企業10社、歩人駅参加300人を目標にしています。そのためにも、多くの方々に一度でもコーディネーショントレーニングを体験してもらうための機会づくりが課題だと思っています。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

お互いが支え合う、笑い合うという実感を得やすいのが、運動あそび塾の特徴です。みんなで一緒に笑いながらカラダを動かすので、参加することが楽しみになり、その継続が健康体力づくり、仲間づくりにつながっていると実感しています。この「健康づくり」と「まちづくり」を組み合わせた、柏崎発の新ソーシャル&コミュニティビジネスとして、将来は他の地域にも展開させて、横のつながりを広げていくことが将来の夢です。

白川さんのプライベート&ストレス解消法

母校でバスケのコーチ&娘と遊んでリフレッシュ

バスケットボールが趣味であり特技です。中学1年の部活から始めたのですが、今は、母校である地元小学校のミニバスケットボールチームのコーチをしています。子どもたちには主に、自分で考え、自分で行動するという主体性を指導し、あえてトップダウンのコーチにならないように心がけています。あくまでも、やる気・能力を引き出すのが役目ですから。日々のリフレッシュ法は、ひとり娘と遊ぶこと。まだ3歳なので、少しへんてこりんな対話になるのですがこれが楽しい(笑)。もちろん教室でも行っている、「親子で運動あそび」のメニューでスキンシップする時も癒されます。


【文】NICe編集委員 岡部恵