Vol.26 大下ユリ子さん

愛知県発 育児中のお母さんの悩み相談も行う ベビーマッサージサロン&出張サービス

どんぐりと山猫サロン れすきゅう・ママ 大下ユリ子 さん
愛知県名古屋市

23年の保育士経験を生かして、子育てに悩んでいるお母さんを助けたい!

事業内容は?

自宅のサロンと出張サービスでベビーマッサージを行っています。また、赤ちゃん体操、わらべうた遊び、離乳食の食べ方など、赤ちゃんの生活全般の指導も。それと同時に、子育てに関するあらゆる悩みの相談にも乗っています。開業前、名古屋大学の構内にある社会福祉法人・緑の丘福祉会どんぐり保育園に23年間勤務していました。その内、0歳児担当年数が一番長く、次が1歳児、2歳児で、3歳未満児にかかわった経験が合計20年。トータルで300人ぐらいの赤ちゃんとお母さんたちを見てきました。これまでの経験と2人の娘の子育て経験を生かして、少しでも子育てに悩みをかかえる新米のお母さんたちの役に立てればと考え、開業を決意したのです。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

最近、「赤ちゃんとどう接すれればいいのかわからない」というお母さんが驚くほど増えています。そこには、核家族化が進んだだけでなく、近所付き合いや、お母さん同士の付き合いが希薄になっているという背景があります。また、自分の母親や夫の母親との交流も少なくなっているようで、子育ての悩みを一人で抱え込んでしまうお母さんが激増しているんです。子育てに関して積極的に情報を得ようというお母さんも、自身の母親、夫の母親、それに、産科の医師、小児科の医師、保健士、看護士、授乳指導者など、いろんな立場からのアドバイスが少し違うだけで、戸惑ってしまう。赤ちゃんもお母さんも10人10色で、それぞれに個性があります。そのことをまずお母さんに伝え、不安なく子育てに臨み、子育てを楽しんでもらうための具体的な方法やアドバイスを行うのが私の役目だと考えています。いわば、"お母さんを安心させてあげられるお母さん"になることが私の使命ですね。「あんなに悩んでいたのがうそみたい。もうひとり産みたいと思える自分が信じられないぐらい嬉しい」と言ってくれたお母さんもいます。独身世代の若い人たちにも、子どもを持つ喜びや幸福感を伝えていきたいです。

今がピンチのお母さんをレスキューするため、出張サービスを開始

起業のきっかけや動機は?

私自身の子育て中の経験が大きく影響しています。保育士経験がある私でも、産休中にひとりで子どもを見ている時は不安がありました。当時を思い出すたびに、「赤ちゃんにふれたことのないお母さん、たったひとりで家の中で赤ちゃんと向き合っているお母さんは、どんなに大変だろうか」と、いつも心に引っかかっていたんです。産休後は、自分の勤めていた保育園に子どもを預けて保育士として復帰しました。その時実感したのは、「保育園の子どもたちは子育ての専門家集団にお世話してもらって幸せだな」ということ。そして今、そんな新米のお母さんたちの育児状況は、ますます危機的ともいえます。子育ての悩みを抱え込んで心を病んでしまったり、虐待に走りそうになってしまったり、想像以上にそんなお母さんが多いのです……。ピンチに陥ったお母さんたちを助けてあげたい。この思いが生まれ、ふくらんでいったことが起業動機であり、きっかけです。

どのように準備を進めた? 何を勉強した?

まず、自宅でベビーマッサージ教室を開いている先輩経営者の仕事場を見学に行きました。また、保育士、看護士、保健士対象を対象にしたベビーマッサージのセミナーなどを受講したり、書籍やビデオも買い込んで、独学。そんな準備をしながら、退職金の内100万円ほどを使って自宅にサロンスペースを設置したんです。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

はっきり言って、いつでもピンチです(笑)。ホームページでPRしていて、「ベビーマッサージ 名古屋」と検索すると最上位に表示されますが、アクセス数は最近1日1桁台に落ち込んでいます。「赤ちゃんと一緒に生活するだけで精一杯」「泣いてばかりいて、マッサージはできそうにない」という声も聞こえてきます。忙しすぎて、出かけることができないんですね。さらに、「赤ちゃんが泣いて家事ができないので、出来合いのを買ってきて食べています」というママも。だったら自宅サロンに来てもらうより、まずはレスキューだと、出張サービスを開始することにしたんです。また、お母さんだけでなく、お父さんも一緒に参加できるように、土日を使ったサロンも開催。現在、「れすきゅう・ママご家庭にうかがいます!(仮)」というホームページも製作中です。

事業を成長させるための協力者やビジネスパートナーの確保が急務

いま、一番課題だと感じる事柄は?

今後もより多くのお母さんたちを助けるために、このサービスを事業として育てていくビジネスセンスが必要だと実感しています。長年の経験を生かした保育は得意でも、経営となると戸惑うことばかり。ですから、今一番必要としているのは協力者やビジネスパートナー。あとは自宅だけではなく、サロンとして使えるスペースをもっと増やしていきたい。空きスペースを提供いただける方、大募集しています(笑)。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

泣きぐずりや不機嫌などの裏側には、赤ちゃんの本当の願いや気持ちが隠れています。私はそれを読み取ることには自信があるんです。何しろ、300人の赤ちゃんと接してきましたから。また、お母さんの本心や願望を感じ取り、共感を持って受け止め、共に考えて解決していく中で、お互いが成長し・学び合う姿勢を培ってきました。これからは私のように、保育の経験を生かしてお母さんたちを助けていける人を育てていきたいです。そんな人材をたくさん育てて、困っているお母さんのところにいつでも緊急派遣できるようになりたいですね。子どもをきちんとした大人に育てることのできる大人のための「大人の学校」もつくりたいです。

大下さんのプライベート&ストレス解消法

赤ちゃんとのふれあい自体が最大の喜び。公私の区別は必要なし

趣味は仕事です(笑)。本当に、赤ちゃんとふれあうことが何よりの喜びなんです。遊ぶように仕事をし、仕事をするように遊ぶのが理想。だから、公私の区別がまったくないんですよ。また、現在、ボイストレーニングに通っていまして、いつか保育園や高齢者施設、病院などを訪問し、みんなを元気づける歌を歌いたいと計画しています。何だかんだ言っても、仕事を楽しむことを考え続けることが私のストレス解消法ですね。


【文】NICe編集委員 田村康子