Vol.34 宮田禎三さん

三重県発 シャツの襟元に特化した 襟保型器具・アパレル雑貨の製作・販売

株式会社アクトクリエイティブ 宮田禎三 さん
三重県四日市市

クール&ウォームビズと関連付け、低迷する紳士服業界に活気を戻す!

事業内容は?

シャツの襟を立たせてVゾーンをキレイに見せることができる襟保型器具「カラーロール」を主軸とした、アパレル雑貨の企画・製作・販売を行っています。この「カラーロール」は襟支持棒・襟支持板・ストッパーの3つのユニットでシャツの襟形を形成する器具で、シャツの襟型の形成において特許を取得(特許第3787152号)。まず襟支持板を襟と台襟の間に挿入して、襟支持板と襟支持棒でS字状のロールをつくります。その後、ストッパーで襟全体を挟み込むことでシャツの襟を立たせてVゾーンをキレイに見せることができるというものです。襟支持板の挿入位置を変えることで、襟の高いシャツから低いシャツまで幅広く対応可能で、百貨店やセレクトショップ、オーダーシャツ店のほか、当社Webサイトでも販売しています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

ずばり、シャツの襟元にこだわる男性です。特にオーダーメイドのシャツを普段から愛用している方など、ファッションに対して関心度の高い方がメインターゲットとなります。団塊ジュニア世代に限らず、団塊世代などでも最近はオシャレな方が増えているので、「我こそは紳士!」という方がターゲットといえばいいでしょうか。今後は、使い方が簡単で、オシャレなデザインの婦人用カラーロールも販売していくつもりです。

同業者や競合との差別化ポイントは?

クールビズやウォームビズと関連付けながら、低迷する紳士服業界に活気を取り戻すことに力を入れています。クールビズ用に第2ボタンの位置を下げて、Vゾーンをキレイに見せるシャツがすでに販売されていますが、当社が開発したの「カラーロール」は胸元の折り返し位置を変えることで、第2ボタンと第3ボタンの間で折り返すことも可能。市販されているシャツすべてのVゾーンをキレイに見せることができるのが、差別化のポイントだといえます。昨夏のクールビズは、ボタンダウンシャツ一辺倒でしたが、今年はより襟型にこだわった着こなしが注目されているため、当社ではレギュラーカラーシャツでもカラーロールを使うことによってロール感が出て、キレイに襟が立つ着こなしを提唱していくつもりです。また、ウォームビズではシャツの中にアスコットタイを付けたりタートルネックを着て、シャツの第2ボタンまで外す着こなしを提案。通常、第2ボタンまで外すと前立てが寄って、ラフなイメージになりがちなのですが、「カラーロール」を使うと前立てから台襟まで一直線のラインができ、ドレッシーな着こなしが可能になるんですよ。

イタリア人のファッションセンスを研究。キレイな襟元をつくる器具で特許取得

起業のきっかけや動機は?

起業の3年ほど前に、イタリアへ旅行。イタリア人のファッションのレベルの高さに愕然としてしまいました。私も少しは見習おうと、高級ブティックでシャツを購入。さっそく着てみたのですが、ボタンを開けて着た時にキレイに襟が立たず、かっこ悪い……。「この違いは何だろう?」と思ったのが起業のそもそものきっかけです。イタリアでの人物観察を終えて出した結論は、襟にロールがあることでキレイに胸元が開くのだということ。それを実践しようと、最初は手で型をつけていたのですが面倒になり、何かいい商品はないかとインターネットで検索。しかし、襟に型をつける商品がなかったため、だったらと自分でつくったのが始まりです。そしてある時、「これって特許、取れるんじゃないか?」と思い、さっそく発明協会へ。特許調査でも似た製品はなかったため、特許取得までまっしぐらです。もともとグラフィックやプロダクトのデザインを手がけており、いつかアパレルとプロダクトをからめた商品がつくりたいという気持ちがこうして実りました。

起業前の予想と起業直後の現実は?

晴れて特許を取得した時点で、頭の中はお金のことでいっぱい(笑)。特許で家が一軒建つという話を聞きますが、そんなことばかり夢見ていました。が、商品を売り込まないといけないという現実に直面。しっかり足元を見つめないと前へ進めないとわかり……。資金もなかったため、まずは三重県の「みえビジネスプランコンペ」に応募。まさかの最優秀賞をいただき、有名商社とマッチングしてもらえる機会を得たのです。また、インキュベーション施設に入居し、インキュベーションマネージャーのサポートを受けたり、セミナー・イベントにも参加。コンサルタントを積極的に紹介してもらいました。それでわかったのは、まさに「インキュベーション」という言葉どおり、私自身、孵化したばかりでまだ右も左もわからないヒヨコ同然だったということ。もし、インキュベーション施設に入らず、自分ひとりで事業を始めていたなら、3年以内に倒産していたのと思います。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

最初は百貨店やオーダーシャツ店などに片っ端から営業活動をして、どんな商品かわかってもらうところから始めました。しかし、今までになかった微妙な立ち位置の商品なので、営業先で「どの売り場に置いたらいいのか、わからない」などと言われ苦労しました。が、その後、逆にその微妙な立ち位置をうまく活用して、アイデア商品としてお客さまの注意を促すお店の販促商品としてどうか。そんな提案をしています。

量産体制の早期確立が最優先課題。シャツ文化が進んだ海外進出も構想

現在の経営状況を評価すると?

10段階で言うと3。まだ起業して間もないというのもあるのですが、やっとスタートラインに立てた感じです。課題は量産体制の早期確立。現在は商品を手づくりしているため、量産できず、どうしても価格が高くなってしまいます。量産体制を整えることにより、品質を保ったまま、安く提供できるようにしたいと考えています。

今後、実現したい経営上の目標は?

シャツ文化は欧米のほうが進んでいますので、将来的には海外でも販売していきたいですね。毎年4月に、ミラノで「サローネ国際家具見本市」というイベントが開催されるのですが、来年出展したいと考えています。やはり、イタリアは家具やファッションなどのデザインが優れた国ですので、それらに引けをとらない技術力やデザイン力の向上が課題です。ただ、日本には春慶漆や桜皮細工など世界に誇れる伝統工芸があるので、そういった伝統工芸と組み合わせた製品づくりをしていけば、勝算はあると信じています。

さらに伸ばしたいと思う強みは?

何といっても、クリエイティビティ。いわゆる「アイデア力」だと考えています。現在、新しいかたちのハンガーを制作中ですが、「カラーロール」だけでなく、新製品もどんどん販売して生活をより豊かにしていける製品づくりを続けていきたいです。また最近は、異業種間での交流が進んでいますので、様々な分野とのコラボレーションで、新しい企画や商品を生み出していければと思っています。

宮田さんのプライベート&ストレス解消法

ハードロックで毎朝勢いをつけ、休日は街角ファッションチェック! 

私生活でも、どうしてもファッションに目がいってしまいますね。休日は外に出かけ、いろんな人のファッションから情報収集することが多いです。特に、フォーマルウェアや紳士服に興味があるので、年配の方のさりげないオシャレはヒントになりますね。ストレス解消は何といっても音楽鑑賞。ロックからクラシックまで幅広く聴きますが、試作品を製作する時も、音楽を聴きながらだとはかどります。最近、ハマッているのはEMINEMやH2Oなどのハードロック系。毎朝、これで勢いをつけてから仕事に取りかかっていますよ。


【文】NICe編集委員 石田恵海