Vol.37 後藤広明さん

東京都発 地域医療格差を是正する 医療従事者向け動画配信事業

リブト株式会社 後藤広明 さん
東京都八王子市

Webを使った効率的な学習システムで、地域医療格差という社会問題を解決!

事業内容は?

医療従事者を対象とした、医学専門の動画配信事業です。講師となるエキスパートの医師と一緒に、検査・手術のコツやノウハウなどを伝える動画配信セミナーを共同制作。それを一般の医師にWebを使って届ける仕組みです。「月額5250円で、すべてのコンテンツをお好きな時間に何度でもご覧いただけます!」というのが売りになっています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

最近、ニュースなどで医師不足や医師の過酷な労働状況が報道されていますが、本当に医師は日々忙しいです。その一方で、近年の医療の進歩は目覚ましく、常に新しい医療技術の習得が求められています。ところが、医療業界は「見て、盗んで、学べ」という世界で、先輩が後輩に技術を教える習慣もあまりありません。勉強したくても時間が取れない状況であるうえに、ちょっとした医学書でも1万円と高額なので、医師たちはかなりの資金を投じて独自に一所懸命勉強をしているのが現状です。そういったギャップが、近年の医療事故や地域医療格差につながっていると考えています。今までのような独自の学習では、医療の進歩にはなかなかついていけないわけです。Webを活用した動画セミナーであれば、パソコン慣れした若い医師でも使いやすく、ちょっとした空き時間を利用できる。動画のため、見て覚える検査や手術などのコツやノウハウの習得には打って付けです。そういった効率的な医師教育環境の提供は、医師のニーズだけでなく、医療事故や地域医療格差などの社会問題解決にもつながると考えています。

同業者や競合との差別化ポイントは?

医療機器メーカーに勤務していた前職時代に培った現役医師とのネットワークのおかげで、「医師視点」でのサービスが提供できることです。医師がどのようなことに困っており、どのような方法であれば歓迎するのか。常に協力者でもある医師たちと連携、相談しながら取り組んでいます。また、前職時代に何百人という全国の医師の手術に立ち会ってきた経験から、医師自身は気づいていないテクニックやノウハウなど、医師それぞれの強みを発見してきたため、講師として協力してもらう医師の人選にも自信があります。

資金ショートのピンチも、協力者たちの応援で乗り超える

起業前の予想と起業直後の現実は?

興味があったのが「医療」と「WEB」と「CSR」で、メディカル事業と、NPOなどの社会貢献活動のアピールを行うコーズマーケティング事業のふたつを漠然としたビジョンにしてまずは会社を設立。1年間かけてリサーチしつつ、自分ができることを探りながら進んできました。飲食店チェーンなどですでに行われている携帯電話を使った顧客満足度調査を医療業界に応用した患者満足度調査サービスで、収入を得ながら事業のリサーチをしようと営業活動をしていったのですが、病院側は現状に対する問題意識が薄く、現状ではニーズが顕在化していないことがわかりました。当初の予定どおりにはいかず、すぐに資金ショートの危機に・・・。医学専門の動画配信事業のめどがついてきたことで、協力者である医師などから出資を得てピンチを乗り越えましたが、綱渡り状態でしたよ(笑)。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

まだまだ軌道に乗っている状況とはいえませんが、そんな中でもここまで進んで来れたのは、多くの素敵な方々に巡り合えたおかげだと思いますね。自分で考えることは大切ですが、いろんな人の意見を聞くことも重要。自分でできることなんて、本当にたかが知れています。資金がショートしそうになった時も、知人に仕事を紹介してもらったり、出資を得たりと人に助けていただけていますから。ピンチのたびに「本当に、世の中って温かいなぁ」と実感しますね。

起業しての醍醐味は?

とにかく素敵な人、仕事がバリバリできるスゴい人にたくさん出会えることです。会社員時代も早くに独立したいと思いながらも、仕事が面白くて結果的に12年間、会社員を経験しましたが、起業後のほうが断然面白い。刺激には事欠きませんね。それから、自分でネタを見つけて、それを事業化するプロセスは、本当にエキサイティング! 

意思疎通の取れた人材確保で事業を加速させ、アジアでの展開を目指す

いま、一番課題だと感じる事柄は?

今はまだ、医学専門の動画配信事業に絞り込もうとやっと目指すべき方向がクリアに見えてきた段階です。一日も早く事業としても胸が張れるようになりたいですね。一番の課題は何といっても人材の確保。これから事業スピードをアップさせていくためにも、早く意思疎通の取れた「チーム」としての体制を整える必要があると思っています。医療とITに関心のある方、一緒にどうですか?

さらに伸ばしたいと思う強みは?

「医師視点でのニーズ」は、まだまだたくさんあると思っていますし、医師が協力者にいるのはやっぱり強み。これからもニーズをどんどん引き出していきたいですね。そこから引き出したニーズをより多く事業化させていくためにも、スピード感を強めていかなくては、ですね。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

日本国内でも地域医療格差は存在していますが、アジアに目を向けると、その比にならないくらい深刻な問題が山積みです。ですので、まず国内で事業としての基盤を固め、その後にアジアで展開することが近い将来の夢ですね。また、そういった夢の実現によって、多くの人から応援してもらえる事業を目指していきたいと思っています。

後藤さんのプライベート&ストレス解消法

ストレスはトークで発散! 北海道キャンプは毎夏の定番行事

もうすぐ3人目の子どもが生まれますが、「家族と過ごす時間」には力を入れてますよ! 毎夏、2週間くらい休みを取って、北海道へキャンプに行くのですが、これだけはいくら仕事が忙しくなっても続けて行きたいと思っています。また、ストレスはできるだけ溜めないうちに発散するように心がけています。仕事関係以外の人に話を聞いてもらうだけで、気持ちが楽になるので、この手は良く使っています。


【文】NICe編集委員 石田恵海