Vol.38 中村良治さん

栃木県発 中古の医療機器を 発展途上国に送り届ける会社

株式会社 JmR International 中村良治 さん
栃木県大田原市

MRIやCTスキャナー、レントゲンなど、大型画像診断装置を発展途上国に!

事業内容は?

日本で使用した大型画像診断装置、たとえば、MRIやCTスキャナー、レントゲンなど、使用済み医療機器を、病院や専門の仲介業者から調達。海外で必要としている顧客(医療機関、販売代理店など)に届ける流通貿易サービス事業を行っています。

その事業はどのような顧客・市場を狙っている?

市場はすべて海外です。特に医療機器の普及が遅れている国や地域、つまり発展途上国がターゲットとなります。そして顧客は、それを仲介する国内外の販売会社やブローカー。多くの発展途上国では、予算や技術が不足しているという理由から、医療機器の新製品が行きわたっていません。そのため、それを補完するという意味で、廉価な中古医療機器の需要が高いのです。特に大型画像診断装置の需要は年々高まりつつあります。

同業者や競合との差別化ポイントは?

当社の強みは、国内での中古医療機器の調達から海外顧客への迅速かつ正確な商品供給、販売後の顧客サポート(必要な部品などの調達や技術的な問題解決など)。そして、海外に対する営業力や新規顧客開拓力、幅広い海外ネットワークを活用した信頼性の高いサービスの提供などですね。すなわち、「調達から供給、販売後のサービスも含めた、バランスのとれた一貫したサービスシステムの提供」。これが競合他社との差別化となっています。

1年目はまったくダメ。しかし、精神状態を良好にし、2年目から単年黒字化

起業のきっかけや動機は?

2002年に、友人と一緒に、化粧品などを扱うFCビジネスで最初の独立をしました。日本や中国で2年間にわたりビジネスを展開するも、資金が底をついて撤退しました。ちょうどその頃、私と家族の生活の心配をしてくれた友人(社長)の会社に拾われて、再びサラリーマン生活へ。その会社は、中古建設機械の海外への輸出・販売業で、日本でも有数の会社として成長中でした。当時、レンタル・リース事業に乗り出す矢先だったこともあり、私が海外顧客との売買交渉の取りまとめや、レンタル、リースに関する営業、及びサポートを担当。その時に海外の顧客から、中古医療機器を購入したいという打診があり、新規ビジネスとして取り組むことになったのです。その時に、現地とのやりとりや行き来を繰り返しながら、中古医療機器の輸出に関するノウハウを吸収できたことが良かったですね。いずれは再び自分でビジネスを立ち上げたいとも考えていましたし。結局この会社は、医療機器ビジネスにそれほど注力せず、ならば自分が!と。再度独立を決意して、自ら着手することにしたのです。

起業前の予想と起業直後の現実は?

競合が少ないこと、閉鎖的なマーケットであること、海外の需要、市場性の大きさなどから、早い段階から計画した売り上げ・利益ともに達成できるものと考えていました。しかしながら、やはり「絵にかいたモチ」(=事業計画書)のようにはいかず・・・。ある程度の引き合い、調達ができる段階まではいくものの、最初の1年は一向に売買契約まで至らず、売り上げもないままの月日を重ねていました。

これまであったピンチは?それをどうリカバリーした?

まずは、スタート1年目。まったくといっていいほど、売り上げがなかったことです。つまり、経費を回収することもできず、日々、銀行通帳の残高が減っていくのを眺める日々。徐々に焦りが募っていきました。1年半後には、とうとう資金が底をつき、ノンバンクや親から借り入れをするなどしてしのぎ、いつ倒産してもおかしくない状況になっていました。まずはとにかく「経費を削れるだけ削ろう」と、事務所を引き払い、実家に戻って、そこを拠点にビジネスの再構築をすることに。とはいっても、急にやることが増えたわけでもないので、毎朝5時に起き、家の手伝い(掃除や片付け)、それに、プールに行って泳ぐことだけでしたね。今にして思えば、この行動がどう経営と直接関係があるのかわかりませんが、とにかくやることもなかったし、あえて言えば、それは、「経営者として、体と精神を整えることを目的としていた」、と言えるのかもしれませんね(笑)。しかし、なぜかその後、不思議と売買契約が決まり始め、結果的には2期目は、売り上げが1年目のなんと15倍にもなり、単年黒字化を実現しました。

発展途上国の医療発展に貢献する、真の意味での社会起業家になりたい

今後、実現したい経営上の目標は?

発展段階を大きく分けて3段階に設定。今はその第1段階を通過し、第2段階に進むタイミングに入ってきています。現在3期目の後半に入り、次の目標達成のために準備して行動をする時期。今のビジネス(スタイル)を、収益を上げながら継続させ、次のビジネスモデルの構築に入らなければならないと考えています。しかしながら、まだ何かが欠けている状態。ダイナミックに行動・実践することができないため、別の角度から新たなチャレンジを模索し始めたところです。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

当社の事業理念ですね。発展途上国における医療状況の遅れを知り、「その打開のためにも、自分が起業して貢献したい」という思いが起業の発端です。ビジネスである以上、「儲ける」ことは必要ですが、それ以上に、「発展途上国の医療環境を改善していくためのサポート役に徹したい」と。自分は医療従事者でも医療機器の専門家でもなく、あくまでも黒子でしかありません。しかし、真の意味での“社会的起業家になる”ことが自分のビジネスの精神的支柱であると考えています。その気持ちをずっと維持していくことが、結果的にビジネスの継続発展につながり、医療環境の改善に貢献できると思います。常に世界のどこかにいる患者さんの生命維持に、そして、QOLの改善にかかわっているという状態が私の夢です。でも、夢実現への挑戦はまだ始まったばかり。まだ遠い先ですね。

中村さんのプライベート&ストレス解消法

健康維持のための体力づくり、読書、テニスのコーチも週1回

読書とスポーツですね。実は、以前、うつ病で仕事も家族も失った経験があるのです。健康そのものは、人生において一番大切なものではありませんが、これを失うと、すべてを失うことを実感しました。独立してからは、最低でも年に1回はフルマラソンに参加し、完走しています。今までに、東京マラソンに2回、ホノルルマラソンに1回参加しました。そのための体力づくり、体力維持として、ジムやプールにも通っています。今は、常にベストな体調管理をしているので絶好調です! また、本や雑誌もよく読みます。ビジネス書はもちろん、それ以外の分野の本も読むように心がけています。定期購読している雑誌は、尊敬する友人に勧められた『到知』と『ナショナルジオグラフィック』です。あとはブログを書いたり、週に1回、コーチとしてテニスを教えたりしています。仕事面では現在、孤軍奮闘中のため、ビジネス、プライベート共に語り合える仲間を募集中です。また、今年も12月にホノルルマラソンに参加します。一緒に行きたいという方、いらっしゃいませんか?


【文】NICe編集委員 田村康子