Vol.4 上地護仁さん

埼玉県発 環境配慮型商品の開発も手がけるプラスチック製品の製造販売会社

株式会社日本興産 上地護仁 さん
埼玉県羽生市

最大の強みは、製品企画から成形、組立まで一貫して請け負える体制

事業内容は?

プラスチック製品の企画から金型製作、成形、加工、組立までを一貫した体制で行っています。中でも「プラスチックブロー成形品(円筒チューブ状の溶解プラスチックを押し出して金型に挟み、圧縮空気を送り込んで膨らませる要領で成形された中空体)」の製造が中心です。また、各種キャップ、工業部品などの製造やガンスプレー、ポンプなどの関連品の製造・販売なども。最近では「環境負荷低減」を旗印に、生分解性およびバイオマスプラスチック使用製品や環境配慮型商品の開発も手がけています。

その事業はどのような顧客・市場を狙っている?

当社売り上げの6割を占めるのがプラスチックブロー容器関係の受注生産・販売ですが、その商品分野はケミカル用品、トイレタリー用品、キャラクター玩具、工業用製品、医療関連製品と多岐にわたります。ですので、顧客も新商品を検討する各種企業から、ボトルメーカー、商社、販社……とこれまた多岐! 流通される商品には、必ずと言っていいほど包装資材が必要ですし、各商品やテーマによって包装形態も異なるので、新商品を世に送り出そうとされる企業は、すべて顧客ターゲットといえますね。

同業者や競合との差別化ポイントは?

国内外にある協力工場のネットワークに所属しており、その総合力を生かして、素材選択や成形方法など、ものづくりの初期段階から最終工程まで、すべてをワンストップで引き受けることができます。たとえば、単純にボトルなど一部の部品だけを製造するだけでなく、ボトルの印刷やラベル貼り、内容物の充填、梱包を行い、納品するまでをお任せいただけるというわけです。さらに、環境負荷低減商品の開発にもいち早く着手。古古米をベースにしたバイオプラスチックを使用することにより、分別回収が不要で再生コストも低減する環境配慮型のハイブリット容器も提案しています。

知識ゼロで、20代で起業。当初は嫌いな人に頭を下げて回ったことも

起業のきっかけや動機は?

22歳でプラスチック製品の製造販売会社に営業職として就職しました。当時、勤務先に労働組合を発足する動きがあり、必死の営業で受注したにも関わらず工場側は休みを優先し、約束の納期を守ろうとしませんでした。そんな上司たちの行動が許せず、1年を待たずに辞表を出したところ、社長から「社内の好きな部門を任せるから、やってみないか」と。かなり悩んだのですが、話し合いを進めた結果、その会社の「充填部門」を新会社として立ち上げることに。そんな形でスタートしたのが、1986年、23歳のことでした。

起業前の予想と起業直後の現実は?

やる気だけで何の知識もなかったですから、予想も何も(笑)。一生懸命だけでは乗り越えられない壁ばかりで、前勤務先の嫌いだった人に頭を下げて教えを請うたり……。それでイジメにも遭いました。現実はかなり厳しいものでしたよ。親父の会社の倒産がきっかけで、沖縄の宮古島から逃げるようにして上京してきた若造の私には、都会というだけでプレッシャー。なのに、いきなり社長。本当に「若さ」ゆえ……、ですが「バカさ」もあったかと(笑)。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

「推進する意志」を大切にしました。できるだけスタッフの話を聞いたうえで、自分の考えをしっかり伝え、同意を得てから推進するということです。これは今でも変わりません。また、外部の情報もたくさん取り入れて、社内に生かす努力もしています。

起業しての醍醐味は?

やりたいことができていること。これでしょう! もちろん、家族や社員など、守るものも増えるので、それに比例して制約や責任も増えました。でも「守るために頑張る」と思えるのも、また事実です。結果として自分の決めた方向に進めていますから満足しています。

独自規格品の展開と環境配慮型商品で、強力な企業体質を目指す

現在の経営状況を評価すると?

正直、いいとは言えません。プラスチック製品に必要な石油の価格が高騰しており、利益圧迫に苦しんでいます。10年ほど前から石油製品に疑問を感じ、生分解性プラスチックの商品化に取り組んではいますが、まだまだ。生分解性プラスチック製品の開発スピードをもっと速めるべきだった、と反省するところもあります。

いま、一番課題だと感じる事柄は?

石油のみならず、あらゆるモノの「価格」が高騰していますが、モノの「価値」は一部を除いて下がっています。当社のプラスチック製品もそうですが、「安く、安く」と言われっぱなしの世界からどう脱却するかが課題。ただ今後、モノを大切にする風潮が強まっていくと思うので、それに対応できる柔軟な組織づくりとサービス開発を続けていきたいと考えています。

今後、実現したい経営上の目標は?

環境対策のひとつである省資源化により、レトルト食品や洗剤の詰め替え品などに使われている「パウチ製品」が年々拡大しています。そこで当社は、ゼリー状飲料や詰め替え用洗剤でも使われている栓の付いた「スパウトパウチ製品」をオリジナル規格品として販売展開したい。これにより、軟包材(プラスチックフィルムなどで加工された包材)とブロー成形、射出成形(プラスチック素材を金型に加圧注入して成形する方法)といった一連の製造販売が可能になるのです。そうすると、当社の事業を担うブローボトル事業への波及相乗効果も増大します。また同時に、環境配慮型のバイオマスプラスチック使用品もラインナップすることで、環境と調和した強力な企業体質を構築したいと考えています。

上地さんのプライベート&ストレス解消法

唯一、仕事を忘れられるのが「お酒&カラオケ」の時間

学生時代は柔道をやっていて体力には自信があったのですが、3年前に椎間板ヘルニアの手術をした時、「治ったら身体を大切にしないといかんなぁ」と決意しました。そこで、社会復帰して腰も落ち着いた昨年から、スポーツジムやプールで運動をスタート。特に週末は、スポーツの汗の爽快感を楽しんでいます。あとストレスの解消は、何と言ってもお酒とカラオケでしょうね。少なくとも、その時間は仕事を忘れられますし、頭を空っぽにしてくれる。私は、それも仕事だと思ってますね。なんてたって、経営者の頭の中は24時間年中無休体制ですから。


【文】NICe編集委員 石田恵海