Vol.45 下田徳彦さん

岐阜県発 舗装現場で働くすべての人を 快適な道具と情報で支える専門企業

(株)アイデア・サポート 下田徳彦 さん
岐阜県高山市

沖縄県内の中小企業を対象にした、コンサルティングとWeb制作

事業内容は?

舗装現場で働く人の「困った」を改善することを使命に、改良道具や改善情報をネット&リアルで提供し、現場の側面支援をしています。具体的には、舗装道具の開発・製造・販売、舗装に関する情報サービス・リサーチ、移動販売車による出張サービス、顧客が考えたアイデア商品を販売する場の提供などです。主な顧客は、舗装工事施工業者、土木・電気・水道などの舗装工事関連業者など。舗装工事に関わる業種すべてがターゲットであり、舗装道具は整地作業道具としても活用できるため、道路だけでなく、学校、グランド、球場も範疇です。当面は全国各地の舗装を必要とする現場を、また将来的には海外も視野に入れています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか?あるいは顧客の課題を解決するのか?

創業40年を超える舗装工事施工会社から分社化しました。これまでの知識と経験から、顧客のニーズは把握済みです。「こんな道具があれば」「こんな時はどうしたら良いんだろう」を的確に理解し、より良いものをより安く、より早く顧客に提供します。ITと通信技術を活用したネット販売(デジタル)と、移動販売車による出張販売(アナログ)の両面でニーズに応えます。移動販売では商品提供と同時に、ユーザーとの直接対話の中で、現場の声や「困った」情報を収集し、さらにニーズを掘り下げ、その情報を共有できるよう、Webサイトに掲載していく予定です。また、携帯サイトからも利用できるようにし、現場作業で問題に直面した時にも、リアルタイムで最新の改善方法を習得できるようにしたいと考えます。また、ネットや電話だけでなく、移動販売車を使って現場へ出張サービスも始めたので、個々の状況や問題点をじかに見て、共に解決する。そんなきめ細やかなサービスが可能になると思います。

同業者や競合との差別化ポイントは?

舗装業の同業者をライバル視するのではなく、同士と捉えています。また、このようなビジネスモデルは舗装業界では初の取り組みだと思うので、実質的な競合相手は現在のところありません。道具をつくるだけのメーカー、売るだけの販売店、使うだけのユーザーではなく、ユーザー自身が開発者であったり、製造者であったり、販売者であったりというお互いの強みを分かち合い、弱みを補い合える革新的なビジネスモデルだと自負しています。

舗装工事施工会社の二代目として継承。ピンチの中から生まれた事業で新会社を設立

起業のきっかけや動機は?

父親が創業した舗装工事会社(シモダ道路)を継承し、15年前から力を入れてきたオリジナル舗装道具の物販会社として、2009年5月に分社化しました。あえて分社化に踏み切ったのは、本業である舗装工事と物販事業の方向性にズレが生じたためです。社内における財務管理および利益計画をより明確にする必要を感じたこと、ターゲットとなる市場が異なっていたことがその理由です。シモダ道路は地元密着企業であり、顧客は地元で公共工事の発注元である岐阜県や高山市、そして民間工事の発注先である工務店や建設業者、不動産業者、個人にいたるまで様々。基本的に地元・飛騨高山を中心に半径100km程度。反して、物販の取引先となるエンドユーザーは、シモダ道路の同業者がほとんどで、全国に広がっています。この物販サービスをさらに本格的に、より強化したい。自分がやらねば誰がやると強く思ったのです。設立準備に1年強を費やし、常に適度なプレッシャーを与えるように意識して、設立を公言したり、設立前にベンチャーフェアに出展したり。そして、シモダ道路の社長業務の一部を幹部に引継ぎ、新会社を設立しました。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

新会社を設立してまだ日が浅いので、今のところピンチらしいピンチは経験していません。が、シモダ道路を継承して3年目に、多額の負債を抱え会社を潰しそうになった時はピンチでした。社員一人ひとりの気持ちを確認し、全員の結束のもと、一から会社の建て直しを図りました。落ちるところまで落ちたら後は這い上がるだけという発想で、とにかく必死で、何でもやれることはやってみました。売上計画の中では、顧客1社あたりの依存度を下げ、顧客数を増やし、商品販売部門(新会社となった部門)の営業販売戦略を練り直し、自らも全国行脚へ。社員や周りの協力もあって、また運も味方して、3年で負債処理完了。最大のピンチで学んだ教訓を生かし、ピンチの中にチャンスがあると、常に逆転の発想で捉えるようにしています。これは当社の存在理由ともいえる「困りごと」の「改善」の関係に似ています。困りごとの中に改善策、アイデアが隠れているのですから。

起業しての醍醐味は? 

夢の具現化を目指し、自分の能力の引き出しを広げ、社会における存在価値が確認できることだと思います。継承者として代表取締役になった時には、こんなにも社長と専務とでは責任の重さが違うものかととまどったことも……。常に決断を迫られ、その決断が周囲に影響を及ぼす重大さを痛感しました。物ごとの判断基準をどう定めたら良いかと、常に自問自答する日々。社長としての自覚を持つように心がけ、企業倫理についても自分なりに勉強し、損得勘定ではなく善悪勘定を基準に判断するようになりました。また、多くの社長との出会いとそこからの学びを大切にしてきたことも、新会社設立の原動力になったと思います。

日本の舗装技術を向上させ、飛騨高山ブランドを構築し、社会・地域貢献を果たす

今後、実現したい経営上の目標は?

目標は、売上高の増大、全国への支店展開、顧客ネットワークの確立、海外進出です。そして、最終的に日本の舗装技術の向上に寄与したいと考えています。そのためには、顧客の増大と客単価の引き上げ、顧客との関係強化(売買関係から発展関係へ)、組織力の強化、人的資質の向上、優秀な人材の確保が必要と考え、短・中・長期の計画を立てました。短期計画は、移動販売車の増車による売上高の増大、全国各地の拠点展開。中期計画は、実績に基づきながらのファン(優良会員)づくりと連携強化。長期計画は、さらに連携を強化し、産官学連携活動(非営利団体設立)につなげたい。現時点では、優秀な人材が確保できたこと、向かうべき方向性が定まっていてブレがないこと、取引先を確保でき、回収リスクも低いので、経営状況全体を評価すると100点満点で70点ぐらい。シモダ道路のほうは、幹部に任せてはいるものの、継続的育成、経営革新事業への取組みを強化したいと考えています。

さらに伸ばしたいと思う強みは?

会社の強みとしては、顧客先が全国に存在し、競合がいないこと。シモダ道路は一番身近にいるモニターであり、情報収集源であるので、現場の声を聞きながら開発・販売できます。また、シモダ道路の従業員も、当社の存在を誇りに感じ、各人の成長にもつなげられるので、この連携関係が最大の強みといえます。私自身は、ピンチを乗り越えた経験、知人が多い、前向きである、打たれ強くタフであることが強みだと思うので、これらの点をさらに強化したいと思います。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

舗装工事に携わる人々の苦労を少しでも楽にさせ、それが日本の舗装技術の向上に役立つような、存在価値の高い企業になることです。また、地元・飛騨高山ブランドとして認知されることで、雇用問題や街の活性化などの社会貢献につなげたい。自分を育ててくれた地元に何かしらの恩返しがしたいし、地元に寄付ができる企業になることが夢です。ここ飛騨高山がいつまでも“らしく”あり続け、豊かな自然と匠の技、伝統、文化を守り、観光客がまた来たくなる街であり続けるよう、何かしら貢献できればと。個人的には、マイホームを持つことと、仕事をとおして自分自身を高め、徳を積める人間になることです。

下田さんのプライベート&ストレス解消法

出張&仲間や家族との触れ合いでリフレッシュ

アウトドアが全般的に好きで、山に登ったり、海にもぐったり、キャンプしたり、スキー、釣りもやります。が、正直今は慌しく、趣味を楽しむ時間がありません。初めての場所に行ったり、いろんな人に出会うことが好きなので、出張や会合出席なども趣味といえば趣味(笑)。リフレッシュは、気の合う仲間と酒を飲んだり、子どもと遊んだり。また、熱い思いを誰かに語り、うまく伝えられた時に喜びを感じます。イヤなことを忘れられますし、気分転換もできる。体の中からエネルギーがみなぎってくる気がします。


【文】NICe編集委員 岡部恵