Vol.46 菅沼之雄さん

愛知県発 資料作成、経理業務、企業研修まで、 幅広く手がけるアウトソーシング会社

株式会社エープランナー 菅沼之雄 さん
愛知県名古屋市

手間と時間がかかるけど、直接売り上げに反映しない業務を代行

事業内容は?

記帳、給与計算、銀行振込、データ入力を中心とした「経理代行」、プレゼン資料や企画書をパワーポイントなどのソフトを使ってまとめる「資料作成代行」などを行うアウトソーシング事業です。2009年6月には「ナゴヤスタイルプロモーション(通称:NSP)」を立ち上げて、「売る」というテーマに特化したマーケティングセミナーや、交流会なども定期的に開催。その延長で、企業研修も請け負うようになりました。NSPは、名古屋で働く人々と、この街で誕生した商品・サービスに、より一層の魅力と輝きのセンスを注入し、世界中の人々から高い評価と信頼を獲得する活動を行っています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

創業間もないベンチャー企業や、組織化が進んで、次のステージへ上がろうとしている中小企業。
また、税理士や社会保険労務士など士業の方が、現在の主なターゲットです。伝票入力やデータ入力、領収書など書類のファイリング、顧客名簿作成、企画書作成、プレゼン資料作成、チラシ作成、ブログ入力などの間接業務は、時間と手間がかかる割に売り上げに直接反映しません。そういった業務を当社が代行することにより、営業活動やマネジメント戦略などに時間を使っていただきたいと。そんな提案をしています。

同業者や競合との差別化ポイントは?

経理代行に関しては、他社があまり手を出さない資金繰り管理まで請け負っています。銀行振込代行などもそれに当たりますね。また、名古屋市内でも経理代行を行う会社は増えましたが、当社はそれだけでなく、企画書やプレゼン資料の作成といった営業的なサポート業務も行っていますので、幅広いお手伝いができることが強みだと思っています。

起業後に起業の勉強をスタート。安易な採用で固定費増のピンチも経験!

起業のきっかけや動機は?

最初に就職して5年くらい経った頃から、独立のことを考えていました。旅行会社の経理・総務を担当し、イベント会社などグループ会社4社の経理をひとりで任されていました。社長の近くで仕事をしていたので、財務や資金繰りについても勉強できましたね。その後、先輩がイベント会社を立ち上げるというので、そこへ転職したり、愛知万博の時は個人事業主としてイベント業を行ったり、ブライダルサービス会社に転職したりと、イベント関連畑を転々としていました。そして、万博バブルも終わった2006年、名古屋のイベント業界の冷え込みに、初めて自分を見つめ直す時間ができました。今の自分にできることは何なのか。結果、自分の一番強みは、約10年間経験してきた経理の仕事ではないかと。調べると、東京や大阪では経理のアウトソーシング会社がすでにたくさんあるのに、当時の名古屋では税理士以外の人がやっているケースがほとんどなかった。これはチャンスではないかと考え、経理代行業をスタートしたのです。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

最初は勢いさえあれば何とかなると思っていました。が、やっぱり事業計画は必要ですね。私の場合、起業してから起業の勉強を始めましたので(笑)。セミナーや勉強会にはずいぶん通いましたね。特に仕事が増えてきたり、新規事業を始めたり、人を雇ったりすると、「設備投資+人件費×X=固定費の増加」につながりますから、資金調達や使い道などしっかり計画し、目標設定することが必要だと思います。また、アイデアの創出は常に怠りません。たとえば、DMやチラシ作成などは、いまだに自分でやっていますよ。自分で制作することによって時間は取られますが、新聞の広告やチラシ、電車の中吊り広告、異業種のチラシなどを見ることで、どんな意図で制作されているのかと相手の立場に立って物事を考える訓練にもなります。さらに、良いキャッチフレーズや制作のアイデアが湧いてくることもよくありますから。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

2期目の後半から3期目始めにかけて、初めて数人の“人財”を採用しました。最初は営業タイプの女性。彼女の入社により、営業代行を行う部門を立ち上げました。しかし、新しい事業だっただけに、教育やルールづくりがうまく進まないまま時間だけが過ぎていき、最終的には営業代行部門は縮小傾向に……。予想以上の固定費の増加に、資金繰りが苦しくなりました。また、ほぼ同時期にデータ入力専門のパートを採用。こちらはうまく機能させることができたものの、採用した女性が妊娠して早々に退職……。理想と現実のギャップに、組織化の難しさを感じましたね。タイミングが良いのか運が良いのか、営業部門の社員の寿退社が決まり、固定費は縮小。内心ホッとしました。しかし、採用ひとつをとっても、人の人生を預かるがゆえ、安易な判断はできないことを学びました。

自社ブランドを再構築し、地元の活性化と世界中の人とのつなぎ役を目指す

現在の経営状況を評価すると?

最低です(笑)。先に話したような営業代行や資料作成代行など様々な部門を立ち上げたため、事業資金を圧迫。機能している部門と機能していない部門の整理が必要だと感じています。また、自社ブランド構築やマーケティングをおろそかにしてきたところもありますので、今後、しっかりとターゲットを定め、チラシや名刺などデザインを一新し、今までいっさいやってこなかったDM展開も行う予定です。すべては経験したから見えてきたこと。仕事の借りは仕事で返します!

今後、実現したい経営上の目標は?

生まれも育ちも名古屋市守山区。守山区は、名古屋市の中ではちょっと郊外にある緑豊かな街。将来、そんな守山区に入力センターを移管して、地元に埋もれている“人財”に協力してもらい、地域活性化に貢献したいと考えています。中国にもデータ入力を専門に行う会社があり、コスト的に考えるとそちらを利用したほうが割安ですが、あくまでも地元にこだわり、地域活性化を推進したいと思っています。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

人と人とをつなげる橋のような存在になりたいです。でも、安定基盤がなければ中途半端にしかできないと、最近感じています。だからしっかり業績を挙げないと! せっかくなら日本全国、いや、世界中の人とのつなぎ役になりたいですね。

菅沼さんのプライベート&ストレス解消法

出張&仲間や家族との触れ合いでリフレッシュ

イベント開催やAED普及活動など、ストレスフリーで楽しむ 当社の事業とは別に、「N-1グランプリ」という中部エリアの中小企業ビジネス見本市を主催しています。完全にボランティアでやっており、運営するスタッフも起業家や会社員などイベント開催に関する素人集団ですが、イベントの企画・運営はやっぱり楽しいですね。地元、名古屋で開催するイベントですが、このイベントを通じて、全国展開する企業が出てくるといいなと思っています。また、AEDの普及や啓蒙活動を行う、NPO法人あいちクローバーの理事もやっています。AEDの設置件数は全国的に確実に増えてきていますが、いざという時に正しく使える人は、まだまだ少ない……。ですので、AEDの普及や使い方を学ぶ研修、イベント会場の手配などのお手伝いをしています。これらはすべて自分のやりたいことなので、精神的なストレスはありませんね。ただ、仕事のオンとオフはハッキリさせるようにして、毎週日曜日は子どもと遊ぶことを楽しんでいます。


【文】NICe編集委員 石田恵海