Vol.49 石井英次さん

埼玉県発 板金塗装からボディコーティング、 車検も請け負う自動車整備ファクトリー

レインズ 石井英次 さん
埼玉県桶川市

リサイクルパーツの活用で、低価格かつ確かな技術をユーザーに提供

事業内容は?

自動車の板金塗装を軸に、新車・中古車の販売、車検、カーボディーコーティングなどのサービスを提供しています。修理は事故車両だけではなく、オールペイント(色替)やエアロパーツの取り付けも。そのほか、福祉車両専門店と提携して、独立前から興味があった福祉車両や福祉タクシーなどの板金修理、レンタカーの紹介なども行っています。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

ターゲットは、ホームページを見たエンドユーザーや保険代理店、複数の社用車を保持している法人など。大まかにいうと、自動車を所持しているすべての方です。近年は、カーコンビニや車検代行業者が増加し、修理や車検費用の低価格化が進んできているため、価格競争が激化しています。しかし、低価格でサービスを提供するには、人件費などのコストを下げる必要がある。単純に10工程が必要な修理を7工程で済ませれば、3割安く提供できるかもしれませんが、その分、お客さまに3工程省いたリスクも背負わせてしまうことになります。そのリスクをお客さまに説明していない修理業者も多く、それによるトラブルもあると聞いています。そこで当社では、工程を省かず、低価格で提供する方法として「リサイクルパーツ」の使用をお客さまに勧めています。修理工程は手を抜かず、仕入れ原価を下げることで低価格を実現。「修理技術は完璧に、かつ低価格に抑えたい」というお客さまのニーズに応えています。

同業者や競合との差別化ポイントは?

事故は突然起こるものですから、フットワーク良さが重要です。当社は、お客さまから直接事故の連絡がきたり、保険代理店から依頼を受けた場合、事故現場へレッカー車に加えて代車も運んで、事故車両を引き上げると同時に、代車をその場でお客さまにお渡しします。他社の場合、事故現場までレッカー車だけしか出動させていないようなので、これも差別化のひとつだといえます。お客さまの不安を少しでも解消したいと考え、始めたサービスです。

起業後2カ月後のまさかの資金ショートに、最終兵器「妻」が登場!!

起業のきっかけや動機は?

自動車ディーラーに勤務し、メカニック(自動車整備)の仕事をやっていた頃に、板金塗装に興味を持ちました。その後に転職した会社から、完全歩合制で直接仕事を請け負うかたちで個人事業者に。しかし、体力が低下する40代後半以降は収入激減が考えられ、またケガや病気をしてしまった場合、高リスクだと思い起業を決意しました。準備期間中、埼玉県創業・ベンチャー支援センターへ通って、事業計画書作成に関するセミナーを受けたり、アドバイザーに資金繰りや融資などの資金計画の相談に乗ってもらいました。アドバイザーへの相談は無料だったので大変助かりましたし、勉強になりました。

起業前の予想と起業直後の現実は?

埼玉県創業・ベンチャー支援センターで相談に乗ってもらって作成した「資金繰り表」の目標額を確実に達成していければ、1年後にはかなりの余裕ができていたはずなんですけど……。起業後2カ月の間、「入庫ゼロ」で焦りました。起業時はひとりで始めたので、車両の引き取り納車、修理、事務、雑用のすべてを自分ひとりでやっていました。だからといって、「ひとりでやっているから、修理に時間がかかります」などとは言えるはずもありません。毎日明け方までの作業になりましたが、お客さまから「修理が早いですね」と言ってもらえるくらいに納期を短縮して実績を重ねることで、徐々に仕事が増えていきました。ただ、今でも「ちゃんと軌道に乗せられたか」と聞かれたら、ビミョーですけど(笑)。

これまであったピンチは? それをどうリカバリーした?

業後2カ月で入庫ゼロ状態の翌月、数十万円の支払い予定があるのに、口座に1万円程度しか残っていない……。この時はさすがに焦りました。妻との約束で「家のお金には手を付けません」と言っていたんですけどね。事情を話して、家の少ない貯蓄から支払いのために、数十万円を借りて支払いしましたよ(苦笑)。その後は徐々に入庫が安定し始め、半年以内に妻に完済。二度とそんな情けない状態になりたくないと思い、どんなに忙しくても仕事の依頼を断らないで、夜中になろうと、明け方になろうと、必死に仕事をしました。何も言わないのに、友人や先輩が手伝いに来てくれるんですよね。本当に回りにいる人たちには感謝しっぱなしです。

カスタムフリークをターゲットにした事業展開で、利益率アップを図りたい!

現在の経営状況を評価すると?

今期は売り上げ目標に届いていない月が半分ほどあるので、いい状況とは言えませんね。また、今後の事業拡大のためにも予備資金を準備する必要があります。当社は事故車両の修理が多いので、修理内容については選べないですが、1台当たりの利益を上げる工夫は必要です。なので、カスタムペイントやエアロパーツの取り付けといったドレスアップなど、趣味の分野にもう少し力を入れていこうと考えています。こういったカスタムフリークのお客さまは、事故車両の修理をされるお客さまと違い、金額よりもクオリティ重視。ですから、フリークの心をつかむアピールをしていきたいと思っています。

今後、実現したい経営上の目標は?

現在のスタッフ数は3人。本当にいいスタッフが集まってくれたと思っています。一人ひとりの長所を伸ばしてあげながら、強い会社になっていきたい。まずは2009年10月に開催される「NICe埼玉交流会」に当社のエースを同行させ、ビジネス展示会に出展する予定です。地元、埼玉県の起業家や起業予定者、支援者の皆さんにレインズを知っていただくことはもとより、従業員のモチベーションアップの機会としても活用したいと考えています。また、企業としての体力をもっとつけて、入庫台数がさらに増やせる場所に引っ越しすることも目標です。そして、お客さまが気軽に相談でき、スタッフが気持ちよく働ける職場をつくりたいと思っています。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

東京や福岡で開催される「オートサロン」に出展したいですね。オートサロンは全国からカスタムカーが集まる改造車版モーターショーのことで、最近開催されたサロンの入場者数は3日間で約23万人でした。カスタムフリークの方がたくさん集まりますから、これに出展できれば、狙っているターゲットへのアピール力も絶大! 構想だけに終わらせず、数年以内に絶対出展するつもりで頑張っています。

石井さんのプライベート&ストレス解消法

障害を知って伝える活動で笑顔をつなげ、バイクでリフレッシュ!

以前開催された「NICe埼玉交流会」で、障害児たちの自活を目指したNPO活動を行う、「からふる」の吉澤泉さんと出会いました。彼女との交流を通じて、障害を正しく知る大切さを学びました。親友の子どもが知的障害の診断を受けたこともあり、世の中の障害者に対する偏見を少しでもなくしたいと考えるように。そんな思いの大切さを伝える活動の手始めとして、当社のユニフォームにからふるのTシャツを採用。それをまた人に伝えることで、どんどん思いの輪がつながっていくことが嬉しいんです。ストレス解消は、何といってもバイクでサーキットを走ること! まだまだ遅いほうなので、タイムを見て、逆にストレスが溜まることもありますけど(笑)。非日常の中に自分を置くことでかなりリフレッシュできますね。


【文】NICe編集委員 石田恵海