Vol.52 林 維毅さん

福岡県発 業務基幹システムから簡易アプリまで、 幅広く対応するソフト開発会社

株式会社マルテック 林維毅(リム・ウィイ) さん
福岡県飯塚市

最新技術への対応力と提案力で、日本国内のみならずアジアで事業展開

事業内容は?

国内外に向けて様々なシステム開発の提案を行っています。国内は一般企業の原価計算システムなどビジネスアプリケーションから、行政の業務基幹システムまで総合的なソフトウエア開発を。海外向けはコンシューマー向けの大規模システムを。たとえばモバイルを介した映像や音楽配信システムの開発を行っています。具体的には、インドネシアのケータイ大手および同国内トップ12社の音楽大手企業にシステムを導入。開発後の保守、メンテナンスも手がけます。

同業者や競合との差別化ポイントは?

何と言っても、対応言語の豊富さ。それと最新技術への対応スピードです。得意分野・言語しか対応できない開発会社が多い中、当社は幅広く対応しています。クライアントの希望をくんだ提案力、インターネットをフル活用した情報収集力も大きな強み。また私はマレーシア出身で、日本語、中国語、英語、マレー語が得意。日本だけでなくインドネシアを主としたアジア全域で営業可能しています。

外国人4人が日本で起業。数々のハードルを超えて10年!

起業のきっかけや動機は?

マレーシアにあるソニーのオーディオ工場でインターンシップをしていた時、本社の社長が工場の視察に訪れました。その時、彼がふと立ち止まり、床に落ちていた小さな紙クズを拾ったんです。ここに日本企業成功のマインドが隠されているのではないかと。それが日本に興味を持った最初のきっかけでした。その後、九州工業大学に留学。情報通信を学ぶ中で、せっかく日本に来たのだから、日本で情報通信技術を生かした事業がしたいと思うように。そして、志を同じくする留学生仲間4人で現在の会社を立ち上げたのが1999年のこと。もちろん様々なハードルが立ちふさがりましたが、全員で必死に立ち向かいながら早10年。多くの方々に支えられながら、ここまで継続することができました。

これまであった最大のピンチは? また、それをどうリカバリーした?

文化も習慣も違いますからね。いろいろありました。一番はやはり資金の問題です。システム開発は時間がかかりますから、開発中の運転資金が必要。そこでベンチャー企業の技術開発事業を応援する補助金制度を活用することになったのですが、開発が完了してからでないと支給されないことが途中でわかって真っ青! 急いでつなぎ融資を金融機関に依頼したのですが、今度は保証人という大きな壁が立ちふさがったんです。外国人である私たちが金融機関の条件をクリアした保証人を見つけるのは難しいですからね。しかし、あきらめるわけにはいきません。日本での起業を志す、外国人の後進たちに申し訳ないですから。そこで留学先の大学の教授に相談して自治体から金融機関に働きかけてもらい、なんとか無事融資を受けることができました。でも、当時は本当にヒヤヒヤものでしたよ。

前年の4倍の年商を実現! 家族を大切にしながら世界に通用する企業を目指して・・・

現在の経営状況を評価すると?

大変良いです。国内事業は、第一四半期だけで、昨年度の4倍の売り上げを実現することができました。得手・不得手にこだわらず、また、コストの条件が厳しい場合はオープンソースを活用しながら、幅広い分野の開発に取り組んできたおかげだと。10年間、継続して残してきた実績のすべてが当社の武器となっています。

いま、一番課題だと感じる事柄は?

いい人材の確保です。これまでは従業員を増やさず、他社とのコラボレーションで乗り越えてきました。しかし、コラボは人材を抱えなくていいというリスクが低い半面、技術やノウハウの流出が悩ましくもあって・・・。急な事業拡大があり、2009年11月にマレーシアに子会社をすることになったので、人材採用に注力しようと考えています。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

家族第一の会社にしたいと思っています。家族が幸せであるなら、従業員の仕事への集中力が増し、お客さまに対しても、より良い商品・サービスを生み出せる。そうすると、お客さまからも良い評価や報酬をいただくことができ、さらに家族が幸せになる。こんな循環をつくることで、世のため、人のために貢献できる企業になりたい。そしていずれ、アジアだけでなく、世界に通用する企業へと成長させたいと思っています。

林さんのプライベート&ストレス解消法

日本の国際化に向けた教育・交流活動がライフワーク!

外国人をどう日本は受け入れていけばいいのかといったアドバイスなど、日本が本来の意味で国際化していくための教育や交流活動に力を入れています。たくさんの苦労を経験した私だからわかることがいっぱいありますから、この活動はもうライフワークみたいなものです。ストレス解消は「ガーデニング」「サイクリング」「温泉巡り」の3つ。九州はいい温泉がいっぱいありますからね。現地の人と一緒にお湯に浸かって汗を流す。これもひとつの国際交流!


【文】NICe編集委員 石田恵海