Vol.56 岸 義広さん

大阪府発 会社設立・移転にともなう オフィス家具の設置・施工会社

株式会社Negotiator(ネゴシエーター) 岸義広 さん
大阪府大阪市

中古オフィス家具の買い取り販売や、業者間卸販売も

事業内容は?

オフィスの設立や引っ越し、レイアウト変更にともなうオフィス家具やパーティションの設置・施工作業を専門に行っています。また、中古オフィス家具や中古パーティションの買い取り販売、さらに、中古オフィス家具の業者間での卸販売も。当社はB to Bでの取引をメインとしており、顧客はオフィスデザイン会社や引っ越し業者、リサイクルショップなど。オフィス家具市場全体は年間4000億円規模といわれており、そのうちオフィス家具施工が約400億円、中古オフィス家具販売が約300億円。当社は、オフィス家具施工市場の1%である4億円、中古オフィス家具販売の5%である15億円を確実に取りにいくことを直近の目標にしています。近い将来、中古オフィス家具販売とオフィス家具の施工職人を紹介するポータルサイトの企画・運営にも着手する予定です。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

たとえば、オフィスの移転で予想外に手間取るのがパーティションの組み立てと設置です。特定のメーカーの製品だけを扱っている施工会社がほとんどで、移転やレイアウト変更のたびに新しいパーティションを調達しなければならないケースも。そのため、まだまだ使える新品同様の製品が廃棄され続けています。当社では、メーカーを問わず、各種パーティションの買い取りと販売、施工を請け負っていますので、「廃棄物も出ないし、移転先でも短時間でセッティングが終わり、すぐ業務に着手できる」と、お客様に大変喜ばれています。パーティションを含め、オフィス家具の施工において、どんなメーカーのどんな商品でも対応できるのは、経験豊富なスタッフを多数集めているからです。また、昨今の不況により、新品のオフィス家具の売れ行きが減少し、施工職人への仕事も激減しています。そこで、当社が近々立ち上げようとしているポータルサイトにて、全国の職人を募集して組織化。大手の通販会社やホームセンター、引っ越し業者、リサイクルショップなどに営業を行い、全国どこでも、オフィス移転やレイアウト変更などを行う会社からの仕事をワンストップで請け負うことができる仕組みをつくり上げていきたいと考えています。実はこれは職人仲間から出たアイデア。当社がそれをかたちにしようと、今、ポータルサイトの構築を急いでいる真っ最中です。

「独立しろ!」という職人さんの一言で起業を決意

継承のきっかけや動機は?

起業前は佐川急便グループの佐川引越センター株式会社に勤務していました。その6年間、オフィス移転を専門に担当し、大型複合ビルを含む延べ300社以上の移転を手がけました。たとえば、大阪・難波の「なんばパークス」、北浜の大阪証券取引所ビルなど、巨大プロジェクトのコンサルティングと実務をすべてひとりで行いました。結果、最優秀社員賞を受賞しています。その後、ヘッドハンティングで、ある外資系企業に転職しましたが、佐川時代にお世話になっていた職人さんから「岸さんが辞めて仕事がなくなった」「そんなところ似合わんから独立してまた仕事しよう!」と声をかけていただいたことがきっかけとなり、独立・起業を決意しました。

これまであったピンチは?

運転資金もほとんどナシで独立し、今考えると無謀だったのですが、事業計画書さえ作成していませんでした。個人事業でのスタートだったので、月に100万円くらいの売り上げがあれば十分だなと漠然と考えていただけ(笑)。いわば、“毎日がなりゆき”。とはいえ、ある種の勢いも大切なので、必死で頑張った結果、受注は次々と増えていきました。そこで踏み切ってしまったのがスタッフの雇用。受注が増え、スタッフを雇うということは、当たり前ですが仕入れが増え、人件費が増えるということ。それをあまり深く考えていなかったんですよね。つまり、キャッシュフローを無視した勇み足だったんです。それで資金繰りがいきなり悪化。支払に使うお金がない、ヤバい、という事態が起きてしましました。

それをどうリカバリーした?

知り合いが紹介してくれた財務コンサルタントに慌てて相談しましたが、そうこうしている間にも不足している資金を早急に調達しなければなりません。しかし、まだ自信の持てる実績がないので、金融機関からの融資などあり得ません。こうなったら身内しかいないと、思い切って両親に相談。実家も自営業でしたので、資金繰りでの困窮はなんとか理解してもらえるのではないかと頭を下げにいきました。実は一時期、その稼業を継ぐつもりで両親と一緒に仕事をしていたこともあるんです。が、若かったこともあり、意見の対立や反抗心が先に立ってしまって……。そんなこともあったのに、両親はすんなりとお金を貸してくれました。泣きそうなくらい感激しましたね。そのお金でなんとか最悪の事態を乗り越えました。今でも両親にはとても感謝しています。この失敗から、事業計画や人事計画、キャッシュフロー経営の大切さを学ぶことができました。

ポータルサイトを活用した全国のオフィス家具施工職人の組織化計画が進行中

さらに伸ばしたいと思う強みは?

オフィス家具施工職人を組織化するポータルサイトで、全国のオフィス家具施工業務を請け負える体制に早くもっていきたいですね。また、職人たちは業務上で負った怪我に対応する保険に関しても損害保険になんとなく加入しているだけ。実際に事故が起きた時にどうなるか、あいまいなままなんですね。そこで当社が保険会社と交渉し、団体保険サービスをつくってもらうことに。また、職人たちを対象にした勉強会や講習会、技術を競う大会なども行い、技術力の高い職人を輩出していきたいと思っています。2009年3月には、「ドリームゲート」のビジネスプランコンテストで 270社の中からファイリストに。さらに、12月の「横浜ビジネスグランプリ」でも、478社の中からファイナリストに選出されました。起業家を対象に行われている2大ビジネスコンテストともいえるので、ダブル受賞できたことは大きな自信につながりましたね。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

職人が持っている技術力を次世代の若者たちに受け継ぐことが、私の使命だと思っています。また、リユースできるものはリユースして、環境保護に少しでも役に立つことができればと。さらには、子どもたちが安心して遊べる全天候型の屋内公園をつくり、それを世界中で展開することも現実的な夢として思い描いています。大げさかもしれませんが、子どもたちの笑顔が増えれば増えるほど、世界が平和になるのではないかと。それと、2013年に株式上場! これは絶対に実現させたいです。

岸さんのプライベート&ストレス解消法

起業家仲間でビジネスをアツく語り合う。それもエネルギー源です!

今は仕事が忙しくて、なかなか遊びの時間がとれません。そうは言っても、仕事する時は仕事、遊ぶ時はたとえ短い時間でも思いっきり遊ぼうと決めています。ストレスを感じた時はマッサージに行ったり、野球やゴルフなど、スポーツで汗を流してつかれを吹き飛ばしています。あと、いろいろな人のビジネスプランを聞くこと。これも新しい趣味ですね。NICe大阪定例会にもできる限り出席していますが、懇親会で皆さんが語るビジネスの話は本当に熱くて面白く、自分へのエネルギー注入にもなっています。


【文】NICe編集委員 田村康子