Vol.59 服部正雄さん

愛知県発 中小建設業に特化した 原価・財務・販売管理の支援会社

株式会社アイユート 服部正雄 さん
愛知県名古屋市

“脱・どんぶり勘定”で、中小建設会社を維持・継続・発展させたい!

事業内容は?

当社は、利益を出すために会社を変えたい経営者を補佐する会社です。中小建設業界では、“どんぶり勘定”が原因で倒産してしまう会社が多いのです。そこで、自社開発した工事原価管理ソフト「原価プロ」の活用を提案し、原価管理、販売管理、経理管理など、多岐にわたるコンサルティング事業を行っています。また、ソフトの導入支援だけでなく、その運用アドバイスも。それにより、計数管理や目標管理ができる会社となって、維持・存続、発展させるべく、建設業経営の健全化のお手伝いをしているわけです。社名の「アイユート」は、イタリア語で、“補佐官”という意味。中小建設業にとって、そのような役割が担えるようにと命名しました。

その事業はどのように市場ニーズを満たすのか? あるいは顧客の課題を解決するのか?

対象としているのは、年商2億~15億円、従業員5~40名ほどの中小建設業者。現在、全業種の倒産の30%は建設業だといわれています。つまり、倒産する比率が高い業種ということ。原因は、資金管理や収益管理ができていないからだと私は思います。具体的な原因を追及していくと、①工事期間が長い ②多額の運転資金が必要 ③キャッシュと収益計上のずれが大きい ④正しい原価把握がされていない ⑤工事一つ一つの未成・完成の管理ができていない ⑥資金繰りのために職人を遊ばせないようにするゆえ、赤字工事も受ける(原価+経費=売値ではなく、売値-経費=原価という発注元の考え方が根強く残っている)などです。そのような弱点を改善すべく、細部に渡って支援するコンサルタントは、まだ多くはないと思います。不況期でもきちんと利益が出せる優良な中小建設会社は、計数管理を重視した経理管理に長けた強い会社。当社のお客様のほとんどが、そんな会社に変身しています。

同業者や競合との差別化ポイントは?

工事原価管理ソフトはたくさんありますが、操作の指導はできても、ソフトのデータを経営に活用するための運用指導がほとんどなされていません。また、せっかく導入しても使いきれていない会社が多いですし、高額の資金を投入して導入したソフトがまったく稼働していない例も。だから、顧客ごと、担当者ごと、部門ごとの粗利益や、当初の見込み利益と最終利益の推移などが読み取れない。つまり、他社の製品には、原価管理で得たデータを販売管理に結びつけるという考え方がないのです。当社では、ソフトとコンサルティングがセット。「原価プロ」は、独自のノウハウで、月次のデータから仕訳伝票を作成経理ソフトに入力する事で、売り上げ・粗利益の見える化が計れます。今のところ直接競合するような会社は見当たりません。

勤務先の倒産、関連会社の引き継ぎと経営、その会社の業態変更により起業

起業のきっかけや動機は?

2003年、経理担当役員として勤務していた会社が主力受注先の上場会社の倒産により、連鎖倒産。幸い私は、その勤務先の関連会社を引き継ぐ事ができました。ただし、お客様は大手企業の1社だけ。その会社が保有する変電所の管理が事業内容でしたが、設備投資が進めば、私の会社は必要が無くなる運命。そして、3年経過した時に契約解除となり、会社は続けられなくなりました。そこで、その会社を幽霊会社にすることもないと、資本を買い取り、社名変更、定款変更、業態変更を行い、2006年3月、新会社としてスタート。建設業界で長年培ってきた会計・経営面のノウハウを生かしてサポートし、より良い業界にするためのお手伝いを微力ながら続けることが使命と思ったゆえの決断です。

起業前の予想と起業直後の現実は?

紹介で仕事が獲得できると考えていましたが、起業から3カ月間は売り上げゼロ。人頼りの自分の甘さを猛省しました。その後は、セミナーや交流会に参加し、創業塾の仲間などと積極的にコミュニケーション。講師の方たちにも直接話を聞いてもらいながら自分を鼓舞し、事業に対する情熱を盛り上げていきました。今も気持ちが折れそうになることがありますが、「始めたからにはやり遂げるぞ!」と、小さな成長を重ねながら継続・発展していくことが大事だと念じて頑張っています。

軌道に乗せるための創意工夫や改善は?

今でも軌道に乗っているとはいえませんが、販路拡大のために、ある営業支援会社に依頼し、顧客開拓を進めています。また、業界団体の「建設経営者倶楽部」に加入したことで、勉強熱心な経営者と知り合いになり、営業連携を結びました。名古屋商工会議所の会員になり、広報誌に無料広告も掲載しています。NICeにも、その過程で縁あって参加するようになりました。

管理ソフト「原価プロ」100ユーザー達成と、後継者の招き入れが当面の目標

さらに伸ばしたいと思う強みは?

当社は、“脱・どんぶり勘定”を提案する、計数管理や粗利益に特化したオンリーワンのコンサルティング会社。その必要性を、より深く理解していただくことで、隠されたニーズを引き出し、困っている中小建設会社のお役に立ちたいです。「アイユートに頼めば、必ず業務改善できる!」と、お客様が宣伝してくれるような会社になること。そこに、とことんこだわりたいですね。しかしながら、私自身、営業力・計画性など、ついつい甘えが出てしまうことも。番頭型というのでしょうか、実務中心でやってきた期間が長かったため、営業や販路拡大においては弱いということも認めています。逆に、契約いただいたお客様に対しては、番頭のごとく、ピッタリと張り付いて活躍できていると思っています。だから、ご契約いただければ(そこが一番難しいのですが)、その後は「任せてください!」と自信を持って言えますね。

事業を継続発展させることよって実現したい夢は?

まずは「原価プロ」の100ユーザー達成です。私自身、バリバリと動ける現役期間は年齢的に考えてあと10年。なので、「この事業を担っていきたい」という、後継者を招き入れ、私が引退した後も会社を存続させることが現在の夢でしょうか。お客様に密着して堅実に実績を積み上げ、年商は3000万円。早く私の理念を引き継いでくれる実質的なパートナーと巡り会い、共に会社を発展させていきたいです。

服部さんのプライベート&ストレス解消法

若い起業家の相談に乗りながら、元気をもらっています!

プライベートでのストレス解消法は、サウナ、あかすり、マッサージなどなど。休日は、映画鑑賞、野球などスポーツ鑑賞といったところです。経営者が集まる交流会などに積極的に参加していますが、そこで知り合った若い起業家から、夢を実現するための計数管理、損益分岐点、資金計画などの相談をよく持ちかけられます。自らの経験をもとにアドバイスしていますが、若くて情熱的な起業家とお話することで、逆に私が元気をもらっています。営業が苦手なので、その克服にと思って交流会に参加するようになりましたが、今ではやみつき。交流会フリークになっています(笑)。


【文】NICe編集委員 石田恵海