経済産業省委託事業としての役割を終え、一般社団法人として生まれ変わることとなったNICe。 チーフプロデューサー増田紀彦が、 2010年1月、東京、東海(名古屋)、大阪で開催された「NICe特別交流会」での基調講演にて、その決意を熱く語りました。 2010 年1月30日(土)、大阪市北区の天満インキュベーションラボ(通称:TiL) での講演の模様をレポートします。 |
■3年間で当初の役割を終えた「NICe」 |
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2007年春にNICeがスタートした当初、今ではおなじみの「つながり力」というキーワードは存在していなかった。起業支援ネットワーク環境整備事業として、流行の「SNS」を活用せよとの課題を与えられ、チーフプロデューサーの増田氏らスタッフが動き出したのは、半年後の同年秋のこと。 「呼ばれて行って、こりゃ、大変なところに首を突っ込んでしまったと思いました。予算は十分とは言い難く、一緒に働く人も確保できない。方針も決まっていない。また、それらをどうこうする権限も私にはない。今だから言いますが、何度も辞めてしまいたい気持ちにおそわれました。でも、『起業支援の火を消さない』が私のミッションだと思っていたので、踏みとどまり、続けているうちに、少しずつ出来ることがわかってきました。SNSというバーチャルなつながりだけに頼っていると限界がある。だからリアルで交流できる場もつくれば、相乗効果が生まれ、やがてはパートナーシップを生みだせるのではないか、そう考えるようになりました。経済産業省の仕様に『リアルな場を持て』という項目はありません。でも、それをやることがバーチャルを活性化させ、経済効果をもたらす道だと、私が勝手に判断しました。国が求めていることに応えるための方法は、自分で考え、実行するのが仕事を引き受けた人間の取るべき道だと思ったからです」 そして、「つながり力の強化による起業の実現、新事業や新市場の創出」という明確な目標が生まれ、増田氏の全国行脚が始まった。 日記にコメントを付け合ったり、コミュニティで語り合ったりしていたメンバーが、初めて交流会で顔を合わせるときの気持ちは、「ペンフレンド」に初めて会うときのワクワク感に通じるものがあると増田氏はいう。 「気持ちを確認して盛り上がる。そして、会えない間は、またネットでコミュニケーションをとり、次に会う機会を待つ――この繰り返しが、強い人間関係を構築するんです。そして異地域、異文化、異業種、異世代etc. 立場や視点は異なるけれど、志は同じという人が出会うことで、知らないままに過ごしてきた他人の知恵に触れることができます。それが、今のような苦しい時代には何よりの価値になるんです!」 高度成長期やバブル景気のような時代なら、考えなしにがむしゃらに働いていれば、生活は守られた。しかし、今のように市場が疲弊した状態で、同業者が集まったところで愚痴合戦や傷の舐めあいになるのが関の山。その点、“異”と交われば傍目八目で、自分たちの中に眠っていた資源に気づいたり、相手が当たり前のようにもっている知恵や技術を活用したりと、目からウロコの発見が増えるはずだ。 実際、NICeのコミュニティや定例会をきっかけに、いくつかの新規事業やジョイントビジネスが芽を出し、花を咲かそうとしている。また、先輩起業家たちに励まされ、起業を実現した人も数多い。 「NICeは3年間の役割を終えて幕を下ろすことになりました。しかし、もし今後も税金を投入するなら、すべきだと思えるほどの価値ある取り組みに育っていると思っています。でも現実には日本の財政は、戦後末期の昭和20年頃と同じレベルにまで悪化しています。これ以上、国に頼るわけにはいかないのです。だから、参加者の皆さんからも『終了は仕方ないね』という反応が返ってくるのかと思っていたら、想像以上に熱いメッセージを数多くいただき驚きました。それであらためて、その偏執的とも言える愛にお応えせねばと私は一大決心をしたのです(笑)」 そう笑顔で語る増田氏は、SNSという“システム”ではなく、SNSによって培った“志のネットワーク”を守り、さらに発展させるために、新しい社団法人 を設立した。 日本にある知恵や技術、やる気やアイデアといった資源を集め、リミックスし、必要とする人や小さな企業へと再配分することで、自分の 未来を自分で拓こうとする人たちをバックアップする活動を目指している。 |
■NICeの今後は? |
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増田氏とともに「一般社団法人起業支援ネットワークNICe」の理事に名を連ねるのが、現NICeシステムプロデューサーの久田智之氏と、現NICe事務局の中林あや子氏だ。 理事3名への質疑応答の様子を通じて、新しいNICeの概要を紹介しておこう。 |
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システムプロデューサーの久田智之氏 |
参加者:現NICeが終わったら、ホームページはなくなるのですか? 久 田:完全になくなります。ページがみつからない状態になるのでご注意ください。 参加者:日記やコメントは保存できるのですか? 久 田:ダウンロードで保存していただく方向で進めています。 増 田:日記は書いた方本人のもの、コメントはコメントを書いたかたから譲り受けたものという解釈になろうかと思います。 参加者:リンクやコミュニティは引き継がれますか? 中 林:登録そのものから新規で始めていただくことになります。 |
「NICe特別交流会」は、東京・東海(名古屋)でも開催されました。 |
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1/25(月)東京 | |
1/29(金)東海(名古屋) | |
ご来場いただきましたみなさま、ありがとうございました。 |
撮影・取材・文/NICe編集委員 服部貴美子(大阪) 撮影/NICe編集委員 岡部 恵(東京)、石田恵海(東海) |