みっくペットサークル有限会社 山二三郎 さん 石川県金沢市 |
![]() |
金沢市内を拠点に、犬と猫を中心に扱うペットタクシーとペットシッターをひとりで行っています。タクシーは飼い主の自宅と動物病院との送り迎えが多く、シッターは飼い主が旅行に行かれる時など長く家を空ける時に預かるほか、朝夕のお散歩代行も。また現在、ブリーダー業を始める準備を進めています。
共働きの夫婦、ご老人、大きな犬を飼っている人、多頭飼いしている人などがターゲットです。動物病院までの送り迎えが現在メインのサービスですが、ペットの治療費は基本的には自由診察ですし、とても高額なのです。最近は民間のペット保険を使う人が徐々に増えているようですが。いずれにせよ、ペットのケアにしっかりお金をかけている富裕層が対象になります。
この事業を始める前に調べてみると、石川県内でペットタクシーを行っている事業者がいませんでした。今のところ、まだ私が唯一の存在です。競合がいないのは強いです。また前職では、医療器具のルートセールスを行っていたので、その時期に培ったフットワークの軽さを生かして動物病院などとの連携を強化。顧客にお勧めの動物病院を紹介したり、様々なアドバイスができることも強みです。
10年間にわたって、医療器具のルートセールスに従事する中で感じたのが、患者が求めている病院情報が不足しているということでした。今後、保険のきかない自由診療が増えれば、患者側は今以上に正しい知識を持つ必要があるので、病院と患者との間をつなぎ、正しい情報を伝えることはできないだろうかと考えました。そこで、まずはすべてが自由診療であるペットの世界からスタートすることを決めたのです。
良い意味で予想外だったのは、個人のペットサービスは意外と信用していただけるということ。ラーメン店の母体が株式会社であろうが、個人事業であろうが、味が良ければお客さまには関係ないのと同じです。営業の手始めとして、様々な動物病院を回ったのですが、営業パンフレットを置いてくださったり、宣伝方法をアドバイスしてくださったり、人を紹介してくださったり。皆さん非常に協力的でした。お客さまも同じ感じでしたよ。ご自宅のカギを預かって、不在時に家に入ることもあるので、お互い顔が見える安心感があるのでしょうね。まさに信用の上に成り立っている商売であることがよくわかりました。その逆に、悪い意味で予想外だったのは、思った以上に売り上げが伸びないこと(笑)。
いろんな立場の人の意見をよく聞いたということでしょうか。ペット関連の専門学校にも通いましたし、動物病院や保健所、行政の窓口、お客さまなどなど、たくさんの人の言葉を貴重なアドバイスと受け止めて、サービスをどんどん改善していきました。
多くの人に出会えること、夢を堂々と語れることですね。勤めていた時も多くの人に出会うことはできましたが、なかなか「自分はこうしたい」と自信を持って仕事を人に語ることはできなかったですから。
今、ペットサービス産業の原点ともいえるブリーダー業に集中しようと準備を進めているところです。正直、ペットタクシー事業が思ったほど伸びていないことも、その背景にあります。これからもペット関連事業を続けていくには、自分自身がブリーダーを経験することが必要だろうと。古くからのブリーダーはいまや二代目の世代に入り、ブリーダー業を営む両親の大変な様子を間近で見てきた子どもが跡を継がないケースが増えています。それを私が引き継ぐかたちでできないだろうかと考えています。
車1台でできるペットタクシー事業はローリスクではあるんですが、お客さまから「お店はどこ?」と聞かれることが多々ありました。ですので、ブリーダーとして勉強をし終えたタイミングで、店舗を構えたいと考えています。また、これまで様々な異業種交流会などに参加してきました。素晴らしい経営者の方々と出会い、お互いにアドバイスをし合うなど、信頼関係も生まれています。そこで得たアイデアやノウハウを、今後の経営にどんどん生かしていきたいと思っています。そしていずれは、人の医療に関わるビジネスを始めたいと考えています。
異業種交流会などで多くの先輩起業家に出会い、勇気や経営のヒントをもらってきているので、今後は自分が多くの後輩たちの参考になれるような成功事例になりたいです。多くの人が挑戦できる世の中づくりに貢献し、恩返しができればと思っています。
商売のことを考えるのが好きなんです(笑)。それが趣味と言っても過言ではありません。起業して5年間、1日も休んだ日はないですし、休みたいとも思わないんですよね。ストレスが解消されたと思う瞬間も、異業種交流会などで人と会って話している時と、やっぱり仕事をしている時。仕事を終えた後のプライベートタイムは何をしているかというと、これまた商売の参考のために他業界のトレンドなどをネットで調べていたり(笑)。仕事もプライベートも一緒になっちゃってますね。
【文】NICe編集委員 石田恵海