株式会社北山建設 北山大志郎 さん 福井県美浜町 |
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公共事業に主に携わる建設業者です。土木事業を中心に、建築、造園工事など幅広い建設業務に取り組み、創業50年を迎えます。2005年からは、コンピュータのアプリケーションソフト開発・販売(主に同業者向けの工事原価管理ソフト「MIYAシステム」)、Webサイト制作、建設業に特化したIT活用コンサルタント業務も立ち上げました。
公共事業の受注が中心ですが、昨今の予算の減少により、公共事業から民間へシフトしようとしているところです。これまでの技術や経験、実績を生かし、地元の人たちにとってより身近な会社でありたいと、田んぼから農地・宅地造成、リフォーム・新築工事、駐車場や舗装のアート工事などを積極的に行っています。また、IT関連事業では、中小の同業者にアプローチしています。
ITを使った事業展開とその活動が強みになっていると思います。三代目を継ぐ決心をして実家に戻った95年からITを導入し、業務の効率化とWeb広報にも努めています。全国レベルでいえば、差別化というよりも逆に、もっと同業者同士でノウハウや情報を共有する必要性を感じ、「土建屋魂 有限責任事業組合」を立ち上げました。これは、全国各地で真面目に頑張っている小さな建設会社の二代目、三代目を結ぶ全国的なネットワークで、組合員数は現在約70名です。この仲間と情報共有することが、経営強化のポイントにもなっていると思います。
家業を継ぐ気はまったくなく、ボート競技を続けるため体育大学に進学。しかし卒業を間近に、家業という観点ではなく、一生続けられる楽しい仕事かどうかを試さずに継がないと決めるのはおかしいと考え始めるように。そして、親のコネやツテを頼らず、神奈川の建設会社に就職。モノをつくり上げる大変さと充実感を覚え、「よし これで一生飯を食うぞ」と家業に入る決心をしました。現在も父は健在なので、私は専務取締役です。
前職の会社とは規模も営業範囲も違いますが、コスト管理の稚拙さを痛感しました。もちろん原価の集計はしていましたが、完全な収支が把握できるのは現場が終わって2カ月後なんていうのはざら。他の業界では当たり前でしょうが、建設業界では現場管理もコスト管理も徹底されていないのが実情です。今は良くても、このままでは建設業は生き残れない。やり方を変えなくては!と危機感を持ちました。
社員の反発もありましたが、業務効率化のためにITを導入。その後、「工事原価管理ソフト MIYAシステム」と出合い、現場での管理と作業工程、予算と原価管理が明確化され、現場と同時に収支も確認できるように。この開発者である宮脇建設の創業者・宮脇健司さんとは業界の将来を熱く語り合う、まさに同士のお付き合いになったんです。ところが、宮脇さんが血液のがんに……。自分に何ができるかと、コンピュータ関連の知識を猛勉強したことが今も役立っています。
業界の課題は、公共依存体質からの脱却です。今後ますます公共事業を中心とした受注体制の建設業者にとって、受注難、安値受注になることは間違いありませんから。また、当社の課題でいえば、社員教育の重要性を感じていますし、従業員にどれだけ気持ち良く仕事をさせてあげられるかが私の仕事だと思っています。
今後、原価管理・先行管理は建設業者が必ず行わなければならない業務のひとつになるので、「MIYAシステム」をさらに広めること。また、建設業に限らず、売り手買い手の情報に頼らずに同業者が“お互いさま”の精神で情報共有を行う必要があると感じています。本気で生き残っていく、本気で会社を良くしたいと、社員に働く意味や意義を伝えることが最大の近道であり、そんな思いを共有できる経営者の交流の場「土建屋魂」をとおして、一歩一歩進んで行きたいと思っています。
土建屋さんって、イメージがあまり良くないですよね(笑)。その悪いイメージを払拭し、当社も「土建屋魂」の仲間も、新しい建設業者として地域に愛される会社になることが将来の夢です。そのひとつの手段として「土建屋魂」で始めたのが、住宅のアプローチや駐車場のアスファルト舗装を削り取り、アートにする事業。見た目も美しく、路面温度も下がります。皆さんの会社の駐車場も、味気ないアスファルトやコンクリではなく、アートにして好感度を上げたいと思われたらぜひご相談ください。
ストレス解消はお風呂での読書ですね。主にビジネス書を1冊読みきるのが目標で、時々フォトリーディングしています。じっくりお風呂につかるので、汗も相当出て気持ちいいです。本業以外で注力していることは、やはり「土建屋魂」での活動。今まで出会えなかったような他府県の仲間と実際に会う、そして、飲み、食べ、思いを共有する。いつも新鮮な思いをさせていただいています。「土建屋魂」での活動や「MIYAシステム」の活用セミナーなどで、これまで45都道府県に赴きました。全国制覇まであと2県です(笑)。
【文】NICe編集委員 岡部恵