第21回 リサイクル材と微細藻で水域環境を改善

鉄鋼スラグに珪藻を付着させた水域改良材で、貧栄養化 した水質と、有機物過多な底質を同時に改善する技術。

【イラスト】 銀杏早苗

早わかり!ディスプロの見た脳勝考連携

「貧酸素水塊」
このキーワードは水質に関する業務をしている方以外は知られていない言葉でしょう。酸素が無いと宇宙にいるのと同じかも。これが水底生態系を崩壊させる原因になっているのです。そこで酸素を供給する藻類を鉄鋼スラグに住ませて光合成をしちゃおう! というのがこのシーズ。 農商工的ビジネスとしては、1番にはこの藻の製造販売となります。ただこれだけ売るのも大変なんで、いろいろとビジネスアイデアを考えています。

このようなシーズは直接使おうとしてもなかなか展開は難しい。
クライアントのビジネスのなかで生かしていこう。NICeな考え方はそこにあると思います。
技術移転はモノを買うのとは違い、多分に人とのつながりが重要な要素になります。
えっ?と思うかもしれませんが、無形だからこそ信じてもらえる関係がないと進みにくいのです。
みなさんのお客様の酸素になれば幸いです。

ディスプロ 桑原 良弘

技術概要・ポイント

内湾・内海・湖沼等の閉鎖系水域は、リン削減指導により水質は改善されたかに見えるが、その水底には多くの有機物が堆積しており、これらの分解は貧酸素水塊の形成や硫化水素の発生など、水底生態系を崩壊させる原因になっている。またリンのみの削減は、窒素とリンの両方を必要とする藻類にとっても増殖を妨げる大きな問題になっている。
本シーズは、水中にリンやケイ素等の無機栄養塩を溶出させる鉄鋼スラグに、これらの無機栄養塩を栄養源として増殖し、光合成をおこなって酸素を放出する珪藻を付着させることにより、貧栄養化した水域と多量の有機物を蓄積する底質の両方を同時に改善できる水域環境改善材に関するものである。利用する鉄鋼スラグは路盤材やセメント材料として使われ、多くがリサイクルされているが、環境改善分野での利用はまだ少ない。この鉄鋼スラグに珪藻を付着させることで、水流などで流失することを防止すると同時に産業副産物の有効活用を可能としている。まさに循環型社会の精神にかなうものである。

技術の横展開、マーケットの状況、規模

本シーズが対象とする内湾・内海・湖沼等の閉鎖水域は、ダム湖・ため池・貯水池・公園池等を含めると、国内に多数存在する。その多くの水質浄化は今でも地方自治体の悩みのタネになっている。その意味で、市場規模は非常に多く存在するが、同時に閉鎖水域の水質浄化方法は、実に多くの方式(凝集沈殿法・接触酸化法・曝気循環法・植生浄化法他)があり、数多くの実証実験が実施されている。
非常に激化している競争市場の中で本シーズの優位性は、やはり産業副産物である鉄鋼スラグを利用していることである。その分、コストも下げることができる(=この競争市場では、コストメリットは大きな利点となる)。

ユーザー業界・活用アイデア

ユーザー業界 業界キーワード 活用アイデア タイトル / 活用アイデア ガイヨウ
土木建築工事業
金融・保険業
各種サービス業
水質浄化、鉄鋼スラグ、珪藻、リサイクル材 CO2排出権付き水質浄化サービス
排出権を買いたい企業にお金を払って貰って、その費用で公的な湖沼・ため池・内海等の水質を浄化する。公的費用の負担を軽減すると同時に、企業としては社会貢献、環境改善など社会的イメージの向上に繋がる。
情報処理・提供サービス業
土木建築工事業
水産養殖業
水質浄化、栄養化、底質改善 水質浄化シミュレーションサービス
水質浄化には様々な方法があるので、過去の水質浄化試験結果等をデータベース化し、対象水域での水質浄化をシミュレーションし、最適な水質浄化方法をコンサルティングするサービス。
窯業・土石製品製造業
鉄鋼・非鉄金属製造業
水質浄化材、底質改善材 鉄鋼スラグに珪藻を付着させた水質浄化材販売(特に海外輸出)
国内の産業副産物である鉄鋼スラグに珪藻を付着させて、水質浄化材として製品化する。製品化されたものは海外への輸出が可能となり、中国・フィリピン・インドネシア等での販売を目指す。

用語解説

鉄鋼スラグ
鉄鋼製造工程において副産物として発生するもので、高炉スラグと製鋼スラグに大別される。

珪藻
単細胞性の藻類で光合成をおこなう。

 

発明の名称 水域環境改善材およびそれを用いる水域環境改善方法
特許権者/出願人 国立大学法人広島大学
出願番号(出願日) 特願2005-228682 (2005.8.5)
公開番号(公開日) 特開2006-68732 (2006.3.16)
FI A23L 1/227
問い合わせ先名称 広島大学 産学連携センター 国際・産学連携部門
郵便番号 739-0046
住所 広島県東広島市鏡山三3丁目10番31号
電話 082-421-3631
FAX 082-421-3639
URL http://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html