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NICe創業・新規事業セミナー

NICe創業セミナー第1回 レポート




2011年10月28日(金)、東京渋谷で第1回NICe創業セミナーが開催された。これは、つながり力の強化と新しいビジネスの創出を目的にスタートしたNICe主催の勉強会だ。半年クールの6回シリーズで、毎回、起業支援の各専門家やベテラン経営者による講演と、双方向の意見交換を交えながら、起業や経営に役立つ情報、ノウハウ、事業アイデアを学んでいく。その記念すべき第1回には、遠く北海道からの参加者もあり、NICe内外の18名が共に学んだ。


■オープニング


司会進行を務める寺田勝紀氏から

「私はこれまで6年間、無料で起業支援をしてきました。今の日本は元気がありませんが、起業家がもっと世に出てくれば、もっともっと日本は元気になるのではと思っています。今月からスタートしたNICe創業セミナーでは、毎回講師を招き、起業にまつわること、お金の話、広告、販促など、各分野の専門家による講演と、参加者のPRタイムや意見交換など、複数のプログラムを予定しています。また、セミナー受講後も、NICeのSNSの中で引き続き意見交換もできますので、継続的につながりつつ、皆さんの力で日本経済を盛り上げていっていただきたいと思います」


■講演


一般社団法人起業支援ネットワークNICe 増田紀彦代表理事

起業成功の原動力は、「知恵」と「つながり力」!


〜〜資金不足は問題ではない。むしろ
 
    それはあなたのビジネスプランを強くする!〜〜



▲一般社団法人起業支援ネットワークNICe 
 増田紀彦代表理事

「寺田さんの熱いあいさつで室温が上昇してしまったので(笑)」と上着を脱いだ増田氏は、ただ話を聞くのではなく“双方向スタイル”で一緒に勉強しましょうと声をかけ、和やかな雰囲気で講演をスタートさせた。
「私は皆さんと一緒に学んでいきたいので、『これはどうですか?』と質問しながら話を進めます。どうしても聞く一方だと集中力が衰えますし、聞くというのは自然と受け身になってしまいます。起業家たる者、受け身ではなく、『俺はこうだ!』というふうに前に出る力が欲しいですから。ですので皆さんも、質問されたら答えなくちゃ!という認識でいてくださいね。特に目を伏せる人に質問をふりますが、今日は意欲的な人ばかりなので、誰も目を伏せないかなあ(笑)」


知恵を出そう! 借りをつくろう! 志を高く保とう!

資金不足は、人として起業家として成長する好機

 
「プランはあるけれど資金が足りなくてと、創業につまずく人が居ます。確かに貨幣は便利ですよね? モノだけでなく時間が買えますから。提示された金額を出せば、すぐ契約が成立します。あまりにも貨幣を使った経済に慣れすぎていて、すべてお金で調達し、お金を使って短い時間で課題を解決したり、欲求を満たそうとしてしまいます。便利な面もありますが、その裏で、実は起業家にとってはマイナスな部分もあるのです」

資金があることが起業家にとってマイナス? 増田氏は最前列の参加者に、卓上に置かれたポーチをいくらで購入したかと聞いた。800円だと言う。

「もし、私がこれをどうしても欲しいとする。800円持っていれば買ってしまうでしょう。でももし750円しかないのにどうしても必要ならば、頭を下げてなんとか750円でとお願いします。それでもダメなら、いかに750円の価値しかないかを必死にプレゼンするでしょう(笑)。

資金不足は問題ではないのです。むしろお金があると、頭を使わなくなります、頭を下げなくなります。起業家にとって、雇われない人にとって、大事なことは、やはり謙虚に周りの人に頭を下げることと、うんと頭を使うことなのです。お金が会社を動かすのでも、お金がビジネスを動かすのでもありません。その人の一生懸命さ、知恵、お人柄で、ビジネスは成り立っていくのです」

頭を使わずに考えもせず、態度がでかい、しかもお金で何でも解決しようとする。そんな人間は起業家に限らず嫌われる。お金がないということは、本来、人間が大事にすべきことを思い出すチャンスであり、万が一、資金が十分あったとしても、ないと思って考えることが大切だと増田氏は続けた。なぜなら、創業者は必ずと言っていいほど、決着を急がねばならない場面に遭遇する。お金は時間も買えるのだから、その“いざ”という時のための秘密兵器として取っておくのだという。また、「本当に必要なのか?」を常に考え、その価値を精査すること、価値のあるものかどうかを見抜いていく目、考える知恵を、創業時に養うことが大事だと語った。

さらに、解決時間を短縮したければ、代わりになる力を貸してくれる仲間に頼ればいいという。

「ひとりで100分考えるよりも100人から知恵もらえれば、逆に時間を短縮できるんです。自分ひとりでは思いつかないような答えが他者の頭脳から出てきます。昨今は他人と関わることが煩わしいと感じる風潮があります。でも、ビジネスは人対人ですから。ここを避けてはいけません。借りをつくりたくないと思うかもしれませんが、どんどん借りをつくれ!です。人は貸しをつくると、優位になると勘違いして自分の言うことを聞いてくれると思うでしょうが、それは圧力になってしまいます。人間関係もギスギスします。でも逆に、借りをつくると人と接触しやすくなります。大いに人に関わって、頭を下げる機会をつくっていく。でも、ここまで頭を使ったり、頭を下げるというのは、是が非でも自分はこうしたいんだ!という強い気持ちがないとできません」

是が非でも自分はこうしたいと思った時、人はどうするのか? 増田氏はペットボトルのお茶を示して、参加者へ質問した。

「人間は水分がないと生きていけませんよね? 想像してみてください。気温が36度ぐらいで、熱中症になりそうな暑い日に、3時間くらい外を歩いてもう死にそうだという状況を。やっと自販機があった。やった!助かった!と思ったのにお財布がない。こういう経験した人は居ますか? 

お金があれば飲み物が買える、命が助かる。そのたった130円が今ない。
さぁ、どうしますか?」



室内を歩きながら、ペットボトルをマイク代わりに参加者を次々にさしていく。
そして、回答するやいなや、増田氏はテンポ良く次々に消去していく。

「交番で借ります」「交番が見当たらない。さぁどうします?」
「ビルの中か公園の水飲み場を探す」「それもない」
「欲しそうな顔をして周りの人に訴える」「人は居ない」
「携帯で買う」「携帯も持ってない」
「通りすがりの人に」「誰もいない」
「小石をしゃぶる」「落ちていない」
「叫んでみる」「誰にも聞こえない。もう声も出ない」
「万引きする」「(笑)自販機じゃできない」
「じゃ壊す」
「壊れない」

マイクと化したペットボトルをまた次の人に向ける。そのスピードがさらに加速していった。



「手を伸ばして取る」「届かない」
「じゃ、足」「入らないでしょ(笑)」
「雨乞いをする」「雨もふってこない」
「雑草を吸う」「草も生えていない」
「釣り銭をさがす」「見つからない」
「あきらめてどこかトイレとか」「それもない」
「梅干しとかレモンを想像して唾液を」「もうろうとしていて想像もできない」
「水たまりをさがす」「それもない」
「おしっこ飲む」「出ない」
「飲みたくなかったと思い込む」「笑」
「自分の血を飲む」「血さえ出ない」
「川を探す」「川も干上がっている」
「寝る」「消耗を防げば時間は稼げるね」

3周目にさしかかったところで、ようやく終了。今度ペットボトルマイクが差し向けられたら答えようがあるのか?と思っていただけに、ちょっとした安堵感が室内に広がった。増田氏はそんな空気に満足したような笑顔で、今の問答のポイントをこう説明した。

「今、どれだけの案が出たでしょうか。記録しておけば良かったね! 皆さん、ちゃんと人に助けてもらうか、人が居なければ代わりになるものを考えましたよね? 『借りをつくる』『知恵を出す』をちゃんとやってたじゃないですか。課題の本質は自販機で買うことではなく、水分補給。その代替方法をしっかり考えたことが大切なのです。この代替するという発想が欠けると、『お金がないとアウト、このお客さんに切られたらアウト、今やっていることがダメだとアウト』と思い込んでしまうんです。これがダメならこっちはどうだ?!と、考えることが大切なのです。

あれもない,これもない、と消去していく無茶な私に、誰ひとり『そんなこと言うならもうダメじゃん』と、キレませんでしたよね? 起業すると嫌になることあります。大小さまざまな課題にたえず当たります。お金がないならどうするか、使わない方法をどうするか。これがダメならどうするか。次々考えていくのです。それが自分を救うことになります。それに、時としてびっくりすることもあります。もともと考えていた方法よりも代替案の方がハイレベルなんてことがあったり、お客さんに喜ばれるというようなこともあるのです。これがベストだと思い込まずに、絶えず柔軟に、ほかには?ほかには?と考えていくことが大事なのです」

なまじ資金があると、自分が思ったプランが正解だと思い込んだり、ワンパターンになったりしがち。また、勤務経験を生かして創業する場合、実務経験があることを過信し、経営初心者だという認識が不足して落とし穴に落ちることもあると警告した。ただし、未経験であることを必要以上に恐れるのではなく、だからこそ、小さく始めながら知恵を出し、人脈を広げ、一歩ずつ前進するのだという。

ここで香港のレストランを例に、いかに将来をイメージし、創業後も学びながら、信頼を得て実績を積んでいくことが大切かを語った。経験をとおして、創業者ならではの経営のハウツウ、経営哲学を築いていくことが自分の力となり、それをバネにして常に次へ挑み続けること。だからこそ、最初は資金があったとしてもあえてないものと思い、人に頭を下げ、知恵をひねり出していくことが重要なのだと念を押した。


鋭いセグメンテーションと柔軟性で、
 
小さくても強い事業に


続いて、小資本で創業し、知恵と人脈で強い事業を成功させている実例を紹介した。

1.徹底節約/社会人1年目の資金のなさを知恵と行動力と人柄でカバーし、低単価市場を狙い撃ちにした、150円お好み焼き屋「屋台屋」
2,部分削除/シャンプーもカラーもなしの「やらないこと」により、設備削減だけでなく、強みを発揮したヘアサロン「オンリーカットゾーン」
3,新モデル/わずか1万円で創業しブレイクさせ、今や他の追随を許さないポジションまで確立した、英会話レッスン&国内留学紹介「LEC」

増田氏もよく知るその先輩起業家たちの発想と知恵は、どれも感心するものばかりだ。どう少なく見積もっても開業資金は200万円は下らないと思われる「屋台屋」が、どのようにして90万円で開業し、人気店になったか。また、都心の一等地にヘアサロンを開業する場合に、一般的にはどのくらいの開業資金がかかるものか。それはなぜか。ヘアカットに通常は何分かかるか。そして、わずか1万円でなぜ英会話レッスンを創業できたのか。その教室はどこか。教師は誰か、生徒は誰か。などなど、参加者に次々に質問しながら、既成概念を打ち破る実際の知恵の数々を紹介していった。




山を登れば下りもある。

常に次の山を目指して挑むのが起業


さらには起業後のピンチをどう乗り切るかも同じ事例で紹介した。小資本だからこそ、小さくても強い事業を展開しなくては、すぐに競合や後進に市場を取られてしまう。どうすれば小資本で強い事業にできるのか。いずれも紹介した先輩起業家たちに共通しているのは、柔軟な発想と、鋭いセグメンテーションだ。

「安く始めて当たると、必ず競合が出てきて、同じサービスで価格競争になっていきます。創業のアドバンテージがなくなり、せっかく市場をつかんだ頃に落ちていきます。だから、レベルが上がった時に、次の山を狙うことが重要です。そしてまた真似されても、次の山に挑戦する。そのサイクルで発展していく。つまり、山のたびに起業するぐらいの意識が大切なのです。事例の創業者は苦労しながらいつも競争相手に追われながらも、築いたのは人脈でした。その人脈を生かし、柔軟な発想で次の山を目指した。だから今では後発が真似したくてもできないポジションを築くことができたのです。

例えば英会話教室に来る生徒さんに、なぜ利用するかとアンケートをとれば、きっと、『英語を学びたいから』という回答がほとんどでしょう。でも、もっと詳しく質問したら、真剣にTOEICで何点以上を目指す人もいれば、楽しみながら学びたい人、学ぶスタイルそのものを楽しみたい人、いろいろいますよね? そのセグメントを見定め、狙ったセグメントの行動パターンを徹底的に研究するのです」

また、どうしても複数のサービスを提供しようと思いがちだが、顧客がそのすべてを望んでいるとは限らず、逆の発想でサービスを削除することでセグメンテーションがより進み、その結果、ほかとの差別化も鮮明化されるのだという。その成功実例として挙げたのが、東京文京区にある鳳明館だ(Webサイトはこちら)。



「その業界に居ると、提供して当たり前と思いがちなものも、実は違うことがあります。提供側はどうしてもプラス発想になるものです。旅館の場合は、宿泊、食事、お風呂を提供して当たり前ですよね? 差別化するために、卓球台を置いたり、コンパニオンを呼んだり、いろんなサービスをプラスします。でも、この日本旅館は考えました。その昔は、修学旅行生や受験生でにぎわっていた旅館ですが、時代の移り変わりと共に宿泊客をホテルに取られて、利用者が減りました。この旅館は、あるひとつのサービスを止めたのです。何でしょう?」

宿泊だ。宿泊利用者が減ったのだから、そのサービスを止めた。そうすると、残るのは、食事とお風呂の提供となる。その瞬間に、この旅館は“入浴ができる料亭”に変わったのだという。行ってみたい!

「東京に住んでいたり、東京で仕事をしていたりする人を対象として、その中にいる『面白い宴会をしたい人』をセグメントに変更したわけです。しかもここの建物重要文化財なのです。風呂に入った後に、お揃いの浴衣を着て宴会できる。楽しいですよ〜。さらにオプションで、泊まることもできる(笑)。行ってみたくなりますよね?

サービス業というのは、無意識のうちに、いくつかのサービスを組み合わせているものです。しかし狙っている相手をもっともっと分解していくと、『これさえあれば十分。むしろ、それだけのほうがいい』というセグメントに到達できます。それを見つけられれば、競争相手か不在で、しかもお金をかけずにリーチできるビジネスが発想できるのです。」


独立・起業の準備は、その順番を遵守し、

段階ごとに内容を何度も精査すべし!


講演の最後の結論として、誰に売るのかをしっかりつかみ、そして、起業の準備の順番を間違えないことが重要だと述べた。順番はこうだ。

1.まず自己分析(独立動機と起業動機を分けて考え、資源と課題を把握する)
2.次にアイデアと基本プラン(誰に、何を、どう売るかを考える)
3.実地プラン(必要資金や時期、人員を割り出す)
4.開業準備(各種契約や資源の調達)

この段階の途中で何度も前に戻りつつ、確実に段階を重ねて行くことを増田氏は強調した。
「最初に必要資金を考えがちですが、そうではなく、自分が何がしたいか、何ができるか、また何ができないか。つまり自分を知ることが最初です。何度も戻りながら練り直していくのです。『とりあえず来年までに何かやる!』と強引に起業し、例外的に成功してしまう人もいますが、ほとんどの人はちゃんとこの順番でやって、リスク回避をしながら、ステップアップしていきます。決して飛び越さず、信頼と実績を積み重ねていってください。資金不足は問題ではないのです。むしろ、知恵が付き、思いを応援してくれる仲間が増えることで乗り越えられ、時間も短縮できます。知恵とつながり力で強くなれるのです」



すでに講演の予定時間は超えていたが、これだけはどうしても!といわんばかりに言葉を続けた。
「起業は1回ではありません。何度も山を繰り返します。起業家と言いますが、なぜ、“家”なのでしょう。起業人って言いませんよね? ほかに“家”が付く職業ってありますよね。どんなのがありますか?」

書道家、作家、建築家、格闘家、作詞家、陶芸家。

「いろいろありますよね。例えば、作曲家と呼ばれる方は、1曲つくっただけでは作曲家とは言いません。その道を、生涯かけてやり続ける人、一定のレベルで何度もやる続ける人、それが“家”の付く人々なのです。1回ではなく、何回でも、己の変化にも市場の変化にも、競争相手の成長にも屈せず、社会や市場のニーズに応えていくように、何回でも事業を興していくのが起業家です。お金があるなら1回や2回は創業できるでしょう。でも、どうか“山”を思い出してください。何度も何度も山へ挑むからには、豊かな知恵と人間関係、つながり力がなければ、起業家人生は送れません。それを今日の結論にして終わります」


■質問タイム
質問/やりたいストーリーを人に話して、「いいね」という反応ならばやめたほうがいい。「無理だよ」という反応ならチャレンジすべきだとよく聞きます。そういう時に、どういう風にエネルギーに代えていくか。またプロセスの中で確信に持っていく間の助言がアドバイスだと思うし、そのためには、ビジョンが必要かなと思うのですが、そのビジョンを持ち続けるキモを知りたい。



増田氏/「いいね」という言葉は、その市場なり商品なりのイメージが容易につくから言えるわけで、ということは新規性に乏しいストーリーである危険が含まれていますね。ですから「無理だよ」は、反対に、それは新しいし、がからそれは競合が少ないと考えることができます。ただし、聞く耳持たずで、思い込みだけで走ると壁にぶつかります。その経験をバネにすれば、それはそれでいいんですけど。
それからビジョンという言葉が出ましたが、それが本当に大切なんですよ。数値目標じゃないですよ。文字通り目に見えるものです。ビジョンの鮮明具合が大切ですね。何年か後のシーンとして、どこで、何をしていて、自身やお客さんが、どんなふうに喜んでいるのか。その映像が頭に浮かんでいると、そこへ辿り着きやすいし、また、見えているから辿り着けていないと悔しくなりますからね。

質問/借りをつくれ、というお話でしたが、何かを与えられる人が借りられる人だと思うのですが。

増田氏/それが志だと思います。先日もNICeの勉強会が京都であって、24歳の若い起業家がスポーツ科学を研究していて、バランスボールとストレッチポールを兼ねた器具を商品化したいと。その場で「うちで試作品をつくるよ」と先輩経営者が手を挙げて数日後には打ち合わせをしているんですよね。この青年はきっとみんなに借りをつくるのだろうけれど、それだけのものを発しているんですよ。夢も志もある、そういう人に人は貸したくなるでしょうね。

質問/ターゲットを絞って始めたものの、予想外の層に当たることがあります。その場合、想定していた層に注力するのか、自然の成り行きに任せるのか?

寺田氏/大阪で芸能人・文化人・財界人をターゲットに開店した美容院があって、それはそれはおしゃれな内装にしました。インテリアも凝っていて。ところが開店3カ月後には、いかにも大阪のおばちゃんって感じの人たちの人気店になっていました。パンチングメタルのイスに、今は座布団が置いてある(笑)。貫くのもヨシですが、成り行きで変えていくのもヨシだと思います。

増田氏/想定していたセグメントと違うと思っても、その想定が間違っていたということもあります。紹介したカット専門のサロンも、忙しいOLを想定していましたが、オープンしてみると、男性客も多くて驚いたと。忙しいOLを狙ったつもりが、セグメントは、短時間でカットしたい人たちだったわけです。


「聞いてください、わたしのビジネス」1分間PR


休憩を挟んで始まったのは、参加者による「聞いてください、わたしのビジネス」。自薦他薦による1分間PRに8名が登場した。自己紹介あり、情報求むあり、意気込みや宣言もありで、スピーチの後には司会進行の寺田氏が質問をし、和気あいあいなPRタイムとなった。








■司会進行・寺田勝紀氏から一言
「起業は廃れたのではと言われた時期もありましたが、今こそ求められていると今日の初回で再認識できました。聞くだけ、教えてもらうだけではなく、双方向に学べるリアルな場づくりを目指していたので、まずは実現できたことに手応えを感じています。また、東京の人は奥ゆかしいというイメージがありましたが、今日参加してくださった皆さんはとても熱心でしたし、自分のやりたいことも主張して、熱さをとても感じました。このNICe創業セミナーを機に、いい化学反応を起こせたらと願っています。参加くださった皆さんからの声を生かしながら、今後もプログラムを強化し、フラットな関係の場となるよう努めていきます」



■増田紀彦代表理事から
「起業すると、ついつい日々の実務に追われ、勉強がおろそかになってしまうことがあります。が、起業後もしっかりと勉強し続けることが大切です。時代の変化も非常に早いし、むしろ、創業した人ほど、しっかり勉強すべきです。世の中がどう変わろうと、自分という人間は変わらないじゃないですか。自分の強みを認識しながら、自分の一番の売りをしっかりと磨きながら、変化に対応するために勉強する。そんな小規模の起業家をもっともっと増やしていきたい。その思いでスタートしたのが、このNICe創業セミナーです。

現在のNICeは純粋な民間非営利活動ですが、もともとは平成19年から経済産業省の事業として始まり、終了するまでの3年間、私はチーフプロデューサーを務めていました。政策としてのNICeが終了する直前、リーマンブラザーズの崩壊により、砂上の楼閣を世界中に築いてきた資産経済市場も、また日本の上場ブームも終焉へと向かっていきました。そして経済産業省委託事業のNICeが終了した時、それまで使っていたSNSも閉鎖され、民間NICeはまったくのゼロから再スタートとなったのです。

経産省が旧NICeに期待していたのは、経営規模の大きな環境関連やエネルギー関連、ハイテク関連、またアジアへ進出可能な規模のベンチャー起業家の誕生でした。もともとは大企業のための省ですし、その外庁である中小企業庁も、それなりの規模の企業を見ていました。しかし、実際にNICeに集まるのは、零細企業や個人事業主、フリーランサー、起業予定者です。国はこういうNICeの仲間たちをなかなか起業家とは見なしてくれません。

また一方、厚生労働省は就業支援の一環としての起業支援を後退させていく傾向になっています。雇用対策がのっぴきならない状況ということなのでしょう。

しかし、省庁が期待するように、大きな会社が続々と誕生したり、誰もが安定的に雇用されるような展開が果たして現実的でしょうか。どちらも難しいことは明白だと思います。

だから私はすごいベンチャーでもなく、かといって雇用に頼るわけでもない、小規模の起業こそが、新たな経済活性と就業促進のキーワードなのだと思うのです。つまり自己の適性と能力を見極め、自分でしっかり時代を予測し、勇気を持ってチャレンジしてくような人間をもっと多く世に出すべきだと。この層を応援することが日本の将来にとって、とても大切なことです。

しかし、雇われずに働く、自分で頑張ろうという“ひとり起業”に、国の手当は薄い。それならば、国に頼らずに自分たちで頑張らないといけない。そのために、NICeは私たち民間人の手で運営しているわけですし、この創業セミナーも自力でスタートさせたのです。自立して生きる人、雇われずに生きる人、またそれらを目指す人をもっともっと世に出していきたい。「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!」を合言葉に、邁進し続けます」

取材・文、撮影/岡部 恵
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