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第6回「営業白熱カフェ!」レポート


第6回「営業白熱カフェ!」レポート





相手の性格をつかめば、

コミュニケーションは改善できる!

互いに気持ちが良いストロークとは?




2011年4月13日(水)、第6回「営業白熱カフェ!」」が東京神田で開催された。今回は、前回(参照・第5回「営業白熱カフェ!」レポート)との連続シリーズの後半で、「他人の性格をつかみ、コミュニケーションを改善する技術」がテーマ。NICe内外から5名が参加し、交流分析を用いたスキルを学んだ。

「営業白熱カフェ!」NICeコミュニティ


■勉強会の内容 
講義テーマ「他人の性格をつかみ、コミュニケーションを改善する技術」


前回の第5回で学んだ「自分の性格をきっちりつかむ」(参照・第5回「営業白熱カフェ!」レポート)に続き、今回は、相手の性格も知った上で、その性格をふまえて関係を改善していくことが目的であると鬼頭氏は述べた。そしてホワイトボードに、とある性格のグラフを描き、「これ、実在の有名社長の性格を推測した結果なんです。誰だかわかりますか? 皆さんもよくご存知の方です」と、グラフからわかる性格分析の復習も兼ねて講義をスタートさせた。


▲実在する有名社長の性格を推測し、どのように商談を
成功させたか事例を説明する鬼頭氏

名前を聞けば誰もが知っている、テレビにも頻繁に登場する社長なのだが、テレビで見るイメージと、グラフが示した性格はまったく逆。それほどテレビでは温厚で楽しげ。鬼頭氏は、ある営業担当がその社長への商談に一度は失敗し、社長の性格を分析してそれに適応した営業のやり方を組み立てることにより、二度目の商談に成功したという実例を紹介した。その営業担当者もまた、テレビのイメージで一度目の商談に臨んだから失敗したのだ。また、プロ野球の江夏対落合のエピソードなども交え、相手の性格をつかんで対応することの有効性をわかりやすく示した。いずれも、相手の性格をみて、対処方法を変えることでうまくいった事例だという。


●相手の性格をつかむには?

とはいえ、対処方法を変える前に、まずどのように他人の性格を推測すればよいのだろうか? テレビのイメージで一度目の商談に失敗したように、相手の性格を把握するのは難しいのではないか? もちろん相手にTEG2(性格分析の質問表)をやってもらえれば手っ取り早いが、それこそ難しい(笑)。

鬼頭氏によれば、初対面の相手でも意図的にいくつか質問を投げかけてみることで、おおよその性格をつかむことができるという。

たとえば、時事ニュース、スポーツなどの話題を投げてみる。その例として、落合監督が完全試合達成寸前のピッチャーを交代させた日本シリーズ、「あの交代をどう思います?」と聞くだけでもいいという。回答はもちろん様々だ。「勝負のためには仕方がない」「最後まで投げさせたかった」「ファンのためにも続投だろう」と、それらの回答から、性格をつかんでいくのだという。

さらに正確を期すためには「代理回答」という方法もあるという。これは、相手になり代わったつもりになり、「その相手だったらどう答えるだろうか」と考えながらTEG2の質問に回答していくやり方だ。確かに、これなら相手を客観視できそうで、かなり実用的な手法に思う。

ただし、相手の性格をどの程度まで把握できているかが問題になる。代理回答で回答できるほど、相手のことをわかっているのか? 逆に言えば、その理解度を見定めるためにも、「相手の性格を考えて自分主観で回答する」と「代理になったつもりで回答する」を行ない、どの程度グラフに差が出るかを見てみるのも面白いという。


●対人スキルの基本は「相手を変えるのではなく、投げかけ方を変えてみる」

そして、次に相手とのやり取りを改善していくための基本的な講義を受けた。

・相手を変えようとせず自分から交流のやり方を変える
(過去と同じくらい、他人を変えるのは難しい)
・ストロークの重要性
(プラスとマイナスがある)
・交流パターン分析のやり方
(ストロークが、心のどの部分から発せられたのか、どの部分で受け止めたのか)

例えば、「今、何時?」に対して、「5時です」と答えたとする。
それを記号で示せば、A→Aとなる。


▲「今、何時?」に対して、「5時です」と答えた関係の記号化。特に感情を伴わずにA(大人)の部分で合理的なストロークを発している。また相手も、Aで反応し、何時かを答えて会話が成り立っている状態


ただし、
「今何時?」に対して、「5時です」と答えたとしても、本音では(自分で時計を見ろよ)という場合もある(笑)。これを「隠れているストローク(裏面的な交流)」といい、日常ではむしろ普通で、注意を払うことがポイントにもなるという。


このように実際のやりとりを記号化してみることで、自分と相手の関係改善に役立てることができるわけだ。それにより、カチンとくるスイッチが入るパターンが見えてくる。その「まずいパターン」を具体的にきちんと認識することが、関係改善の出発点としてとても大事なことなのだ。しばしこの矢印の方向でどのように関係性が異なるか、参加者間で話が弾んだ。

 
▲自分の性格分析と比較しながら、様々なケースの相手に、どうアプローチすれば有効かを話し合った


●発する側も、受け取り側も、気持ちが良いストロークとは

「まずいパターン」がわかれば、自分から発するストロークを変えればいいのだと鬼頭氏はいう。ごくごく日常の例として、鬼頭氏は新幹線の中でのできごとを語った。

新幹線の中でPCに向かっていた時に、隣の席の紳士から「タイピングが早いですね」と言われたそうだ。言葉の表面だけとれば、褒め言葉だが、いい大人がそんなわけがない。手を止めた鬼頭氏は、車内が静かなことに気が付き、「うるさかったですね、すみません」と詫びた。詫びられたほうの紳士も笑顔で「いえいえ」と答えてくれたという。

最初から「うるさい」と注意されたら、誰だってカチンとくる。うるさいと感じている側も、わざわざ車内でトラブルを起こしたくない。でも、うるさい。その場合、相手(鬼頭氏)を見て、相手に合わせたプラスのストロークを発したことにより、鬼頭氏も高い心の部分でストロークをプラスに受け止めることができるのだ。それにより、互いにいい関係におさまった。このようなことが日常の中でも営業のシーンでも多いのだという。確かに。思い当たる節は多々ある。


▲相手の性格を知ることで、どの部分からストロークを発し、
どの部分で受け取ってもらうかを改善した例


●5つの心で分析し、相手の特徴をつかみ、対処法を考える

次に、相手のエゴグラムを分析し、その中で5つの心の部分(CP、NP、A、FC、AC)のどこが強いかという特徴別に、どう対処すべきかについて学んだ。


・CPが強い人/多くの人が苦手とするタイプ。思ったことをずけずけと批判的に、あるいは攻撃的に言う。だが、「こういう性格だから、こういう言い方になってしまうんだ」くらいに思っておけばよい。
まともにCPからの攻撃を正面から受けとめ、深刻になる必要はない。批判に対してはそれを歓迎して、ありがとうと言ってみる。そして、常に何かあればすぐに指摘してほしいと批判役をお願いするという対処法もあり。

・NPが強い人/間口が広くフレンドリーなので、CP優位型と比べれば基本的にあまり問題とはならない相手。ただし、反面、調子がいいとも言えるので注意。情に訴えるというやり方が有効なタイプ。

・Aが強い人/感情ではなく冷静に分析的に考えることが出来る相手なので対処しやすい。へたに隠し立てせずに、メリット、デメリットを明確に知らせることで信頼される。情に訴えてお願いをする、縁起をかつぐなどはかえって疎ましく思われるだけ。

・FCが強い人/いかに楽しんでもらうか、面白いと思ってもらうかがポイント。アイデアは尽きないので、そのエネルギーに振り回されすぎないように注意。

・ACが強い人/通常時にはあまり問題とはならない相手だが、マイナスのストロークで人間関係を維持しようとする人もいるので注意。具体的な解決に結びつかず堂々巡りのパターンに陥ってしまうケースに思い当たるなら、交流パターンを変える必要がある。


●まずいパターンから学ぶこと多しの「やり取り改善シート」

最後に、やり取りを改善する方法について学んだ。相手の特徴をつかんだうえで、これまでの関係性でどれが「まずいパターン」なのかを思い浮かべてみることが大事という。その時に、5つの心のどの部分からストロークを発し、また相手がどの部分でストロークを受け取ったかを分析する。まずさを確認し、どう改善したらうまくいったかという事例をいくつか紹介した。

そして、具体的に私たちが改善する時に役立つ「やり取り改善シート」が配布された。
これは、現状の交流パターンを分析し、その上でどのようにパターンを変え、具体的にどういう会話を交わしてやり取りを変えていくかを設計するためのシートだ。鬼頭氏によれば、「慣れてくればいちいちこのシートを使う必要はないが、やり方を覚えるためのガイドとして使って欲しい」とのこと。

 
▲やり取り改善シート

参加者から「以前勤めていた会社で、初回に複数名で営業先へ出向き、自分は、お客さまの性格などを客観的に捉える担当をしていた」との話しが出た。今回学んだ交流分析を使い、それをグラフ化しておけば、企業内の共通認識もしやすくなる。たとえば担当者が替わっても、顧客情報として引き継ぎに有効では?との意見も。

 

また、多くの人が苦手なCPばかりではなく、5つの心の部分をバランスよく見ることが大事と、鬼頭氏からアドバイスも。それを受けて、「あの人はうるさい人だから要注意」などど、情報として聞くことはあるが、その場合に使われるのはほぼ形容詞ひとつかふたつ。5つの心の部分で語られることはない!との言葉に、ほぼ全員の参加者がハッとなる。誰かを語る時に使われる形容詞の危うさ、あるいは、他者の先入観が邪魔をして、理解スピードを遅くすることは多々ある。同様に、自分自身も、そのような形容詞で語られているのでは?と、話しが盛り上がった。最後に、「手強い相手でCPが高いのであれば、なおさら5つの心の部分で分析し、苦手意識を克服するためにどう改善するかに注力することが大事」と、意欲的に話し合って勉強会を終了した。


 
▲今回のスイーツは、「Quatre(キャトル)」のガトーノアとタルトをセレクト(町田市成瀬台)。この店は、ケーキも焼き菓子もすべてクオリティの高いスイーツを提供しており、いまや7店舗を数えるまでの人気ショップに成長。この成瀬台店は、1994年に住宅街の中にオープンした店舗。また今回のBGMは、チックコリアとゲーリーバートンによる『NativeSense』。ピアノとビブラフォンの名プレーヤー二人だけによる、まさに“至極のやり取り”を堪能できるCD


▲写真 手前右から時計回りに、中野啓子氏、八木京子氏、北出佳和氏、鬼頭秀彰氏、菱田邦宏氏

●主宰・講師の鬼頭秀彰氏より一言
「参加者のひとりは、『これまで自分の得意なやり方でしか、営業をやってこなかったことを痛感した』と言っていました。自分の得意なパターンだけではなく、相手に合わせ、そして人間関係を能動的に変えていくスキルを学ぶことは、営業だけでなく全ての人間関係においてプラスになります。今回参加いただいた方にはぜひこれから実践してそのスキルを磨き上げていっていただきたいと思います。
次回5月11日(水)は、「自社商品・サービスの強み出し」を予定しています。
今のこの厳しいご時世は、攻めのチャンスでもあります。攻めるためには、強みを顧客側の視点で明確にし、それを適切に伝達していかねばなりません。そのために実践的なディスカッションを行います。ぜひご参加下さい」



取材・文/鬼頭秀彰氏
取材・文、撮影/岡部 恵


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