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つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!第22回NICe全国交流セミナーin和歌山レポート前編









2014年3月15日(土)、和歌山市のルミエール華月殿にて、NICe主催、和歌山県・和歌山市・和歌山放送・テレビ和歌山後援「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!第22回NICe全国交流セミナーin和歌山」が開催された。プログラムは、“つながり力”の第一歩「つながりワークショップ」、参加者全員の知恵と頭脳をかけあわせる「頭脳交換会」、増田紀彦代表理事による基調講演、方言の魅力と可能性を探る「「方言ビジネスの時代が来た!」、和歌山を舞台にした日本・トルコ合作映画『軍艦エルトゥールル号(仮題)』とNICe和歌山からのお知らせなど、約3時間半に充実の6部構成。参加者は、地元和歌山県内を中心に、宮城県、埼玉県、東京都、神奈川県、滋賀県、大阪府、兵庫県、ニュージーランドなどから101名が結集した。

プログラムのうち、前半の第1部・第2部をこちらにレポート。後半の第3部〜6部は、こちらレポート後編http://www.nice.or.jp/archives/22301をご覧ください。



■オープニング



第22回NICe全国交流セミナーin和歌山 実行委員会の佐藤寛司氏があいさつし、最初に衆議院議員・岸本周平氏より祝辞をいただいた。



和歌山市生まれの岸本氏は、大蔵省・経済産業省、民間企業を経て、政界へ入ったと自己紹介。民間企業での勤務経験はとても学びが多く、今日も一緒に学んで帰りたいと歓迎の言葉を述べた。そして岸本氏の長年の友人でもある実業家・澤田秀雄氏がハウステンボスをどのように再生させたのか、2分間でその秘訣を紹介したいと次のように語った。

「ハウステンボスは18年間赤字続きでした。その会社に残った社員へ、澤田社長は最初に3つだけお願いしたそうです。この3つを頑張れば必ず黒字になりますと。ひとつ目は、きれいな会社は必ず儲かります。ですから15分だけ早く出社して、バックヤードやオフィスをきれいにしましょうと。ふたつ目は、無理矢理でも、明るく元気でいましょう。お客さんに楽しんで帰っていただきましょうと。そしてみっつ目は、コストカットの知恵を出してください。広い園内を歩いて40分かかるところを少しだけ早く、35分で歩くようにしてください、とお願いしたそうです」。
赤字続きの会社に残った社員は、当然のことながらモチベーションが下がっていた、しかも新たなボスの登場に疑心暗鬼。そこでまず澤田氏は、社員のモチベーションをあげ、さらに自らも現場へ入り、さまざまな改善策とともにオンリーワン、ナンバーワン戦略のサービスで、見事に3年でハウステンボスを再生させた。そんな澤田氏のような、人間力とリーダーシップを兼ね備えた人物が、ここ和歌山から多く輩出されることを願っていると訴え、あいさつをしめくくった。

続いて、仁坂吉伸和歌山県知事からのメッセージを、和歌山県商工観光労働部企業政策局企業振興課の大松憲司課長が代読。「和歌山にはまだまだ活用できる資源がたくさんあります。和歌山だからこそできる事業がこの場から芽生えるような、実り多き会となりますように」と激励の言葉をいただいた。





そして、実行委員長・太田美香氏から開会宣言。「お忙しい中、たくさんの方にお集まりいただき感謝しています。和歌山では一昨年に同会を開催し、それ以降も定期的に頭脳交歓会を開催してきました。今回は新たにグレードアップしたプログラムもあります、ご期待ください!。最後まで楽しんでください」



■第1部 つながりワークショップ



ファシリテーター NICe理事 小林京子氏



「こんにちは!」と元気よくあいさつした小林京子氏は、プログラムの説明とともに、NICeの活動主旨と全国交流セミナーの開催目的を説明した。
「これから30分のワークをします。今日はいろいろな方が参加していますね。国会議員、県議会議員、市会議員、製造業、飲食業、経営者、個人事業主、会社員、年代も10代から上はおいくつかでしょう。地域も各地から。NICeは、このような“異なった”方々が、情報、知恵、人間力を交換し合ったり、いただき合ったりして、経済の活性化へ、新規事業へ、新市場をつくりだそうという活動をしています。一般的な異業種交流会では名刺交換をして知り合いますが、NICeは、人として面白そうとか、もう少しこの人と話をしてみたい、趣味が合いそう、そんな始まりから事業を一緒に!という流れになることを推進しています。そのスタートとなるのが、これから行う、つながりワークショップです」

参加者へはひとり一枚、A3のサイズの用紙が配布されている。小林氏が考案した「つながりワークシート」だ。中央に氏名欄があり、周囲には「仕事はこれです」「ここに住んでいます」「持っていません、足りません」「持っています」「得意です」「嬉しかった!」「プチ自慢」「欲しいです」「これからしてみたい」「大切にしています」の10個の空枠がある。小林氏が、5分間でこのシートを記入するよう指示すると、全員が一斉に書き始めた。



5分後、会場内をひとまわりした小林氏は、参加者全員に問いかけた。
「ここに住んでいます。和歌山市内は?」8割が挙手。
「ここに住んでいます。県外は? 何県ですか?」
「プチ自慢、世界一周したという方がいます、ほかにいますか?」
「プチ自慢、笑顔と書いたのが岡本さん。ほんとそうですね!!自分も笑顔!という方は?」
「これからやってみたいこと。中国からの留学生は金融・IT・人工知能と書いていますね。関係のあるお仕事の方は?」




など、参加者全体の共通点を見つけ合った。
その後、各卓にひとり1分で『つながりワークシート』を見せながら自己紹介するように促した。スタートと同時に、さっそくあちらこちらで、拍手や笑い声があがり、初対面や初参加者同士でもあっという間に会話が弾んで、会場内は和やかな雰囲気に。




10分後、小林氏のかけ声で自己紹介タイムが終了。最後に小林氏は、「長年つきあっていても、顔見知りでも、知らなかったことが多々あったかと思います。名刺交換ではわからないこと、意外な資源を知ることができますね。そんなところから今日の機会を大事にして、楽しい会にしていただきたいと思います」としめくくり、全員を讃えて拍手を送った。



■第2部 互いの頭脳を交換しよう!



テーマ「和歌山の美味しい魚を全国に届けるには?」

プレゼンター 松林裕次氏 有限会社旬海 代表取締役

旨いもん処「旬海」http://www.syunkai.info/
民宿 松林渡船 http://www.matubayasi.jp/

ファシリテーター NICe増田紀彦代表理事&小林京子理事

「互いの頭脳を交換しよう!」と題したこのプログラムは、ひとりの登壇者が事業プランや課題をプレゼンし、その解決へ向けて参加者全員が「自分だったら」という当事者意識で建設的なアイデアを出し合っていく、NICeでは「頭脳交換会」と呼んでいるおなじみの全員参加型ワーク。ファシリテーターを務めるNICe増田紀彦代表理事は、次のように説明した。



「今日は、和歌山市内で『旨いもん処 旬海』と『旬魚菜』の2店舗を経営されている松林裕次さんの事業発展をテーマに、100人アイデアを出し合います。グループごとに話し合って、最後に発表もしていただきます」

スクリーンには、実行委員メンバーでもある柏木健二氏が制作した、松林裕次氏のプロフィールと事業内容が映し出された。順を追って増田氏が説明しながら、松林氏にインタビューしていく。まず1枚目は、高校時代。松林氏は高校野球の名門校、あの箕島高校の野球部に所属し、和歌山を盛り上げた箕島ナインのひとりだという。



増田氏「思い出に残る試合は?」
松林氏「夏の連覇がかかった試合で、春優勝校の高知商業と対戦した試合です。観客が入場しきれずに甲子園球場の外には5000人がいたと聞きました。試合は5対0で勝ちました!」
増田氏「打ちましたか?」
松林氏「はい!」

増田氏「その後、野球を続けようとは思わなかったのですか? 高校での野球生活を終えて燃え尽きるようなことは?」
松林氏「いいえ。野球でこれ以上は伸びないと自分でわかっていたので、高校で終わりだと決断していました。高校卒業後は2年間、会社務めをしてから、家業へ入りました。とはいえ、小学校2年生の時から、朝2時か3時には起きて、ずっと家業を手伝ってきました」



増田氏「お父さまは民宿と釣り船を経営されているのですね?」
松林氏「はい、89歳で今も現役です」
増田氏「親子経営者で、息子の松林さんはこちらも人気店のお料理屋さん『旬海』と、仕出し店の『旬魚菜』の2店舗を経営してやっていらっしゃる。さらに松林さんは、せり参加人資格を持っているのですよね? 初島には伊勢エビの水槽も?」
松林氏「はい」

新鮮な魚介、刺身、魚料理はもちろん、和歌山の山海の幸をふんだんに使ったお惣菜などをお店や民宿で提供している松林氏は、店舗だけでなく顧客からの注文を受け、クエ、はも、太刀魚などや調理済みの寿司なども全国発送もしているという。

▼上映された紹介画像






増田氏「そこで、今日のテーマです。新鮮で安く美味しい和歌山の魚をもっと広く全国へ届けるには? です。松林さんは、漁港のせり参加人資格を持ち、腕のたつ料理人も多く抱えていて、配送もできます。まだまだもっともっと全国へ届けられるとのこと。ですので、それをテーマに各卓でアイデアを話し合ってみてください。その前に、ひとつ大切なことを。
ビジネスは3つの要素で考えます。誰に、何を、どう売るか、です。誰には、一般の消費者なのか、業者なのか、もあります。何をは、魚まるごと、生のまま、調理加工したもの、も考えられます。どう売るかは、届ける方法やお支払い方法、宣伝などいろいろあります。そんな観点で考えてみてください。主に誰を狙うのか。そこを定めると、何を、どうやって、が決めやすくなります。各チームで進行役が決まっていますので、ターゲットをまずしぼってみてください。10分間でディスカッション!」





●ビジネスプランの基本を考える取り組み テーマ1
「誰に?」


10分後、「誰に?」定めたのか、各チームの進行役から発表。
また各チーム名には、和歌山名産の魚介類の名前が方言で付けられている。

かざみチーム:30、40代の女性
さえらチーム:和歌山県外
さごしチーム:関東圏の家庭
たっちょチーム:山形県に暮らす佐藤千香さん(仮名)50代で、娘ふたり。太刀魚を売る
ぐれチーム;地元の年齢高めの主婦
ちぬチーム:東京在住の富裕層
しびチーム:地元の小中学生の調理実習、魚離れした子どもたちへ
がしらチーム:関西近郊の富裕層
ひらごチーム:50代主婦、冠婚葬祭
うぼぜチーム:骨付き魚を上手に食べられないヤングファミリー

BtoCの発表が多かったが、増田氏はBtoBにも展開できると思うと述べ、BtoBのメリット、営業ルートの事例、販売方法の事例を紹介した。そのうえで第2テーマとして、各チームが想定したターゲットに、ではどんな商品が喜ばれるか、それをどう認知させていくかを5分間でディスカッションするよう伝えた。




●発表タイム!
ビジネスプランの基本を考える取り組み テーマ2
「誰に?」「何を?」「どうやって?」


がざみチーム



「誰に」女性、主婦、30〜40代。
「何を」ダイエットメニューとして提案。いろんな種類を食べたいのでバイキングのような感覚で。すぐ食べられる加工品がいい。


たっちょチーム



「誰に」山形県在住の50歳、佐藤千香さん(仮名)。
「何を」たっちょ(太刀魚)をはじめとする、他県では珍しい鮮魚。
「どうやって」松林さんには有田民宿ツアーを組んでもらい、山形県の奥さま300人を呼び、「俺たちのたっちょクラブ」を結成。山形県では普通には売っていない、食べられないたっちょを購入していただき、気に入ってもらい、次は和歌山に来て直に食べてもらう作戦。東北の人たちが珍しいと思う鮮魚を食べに来てもらい、ファンを増やす=その後、宅配で購入。


さごしチーム



「誰に」ごく一般の家庭の方へ。
「何を」日本の食文化を知ってほしい。
「どうやって」お店に来る人を何よりも大切に。


ちぬチーム



「誰に」東京在住の富裕層に。
「何を」鮮魚、総菜、誰でも使える鍋セット。
「どうやって」Web販売だけでなく東京に実店舗を進出。店内で料理教室やテイクアウトできる総菜コーナーも。また和歌山〜東京の輸送には「旬海」ロゴマークを入れたトラックを走らせることで物流時にPRもできる。


ぐれチーム



「誰に」地元の人。旬海のファン→お世話になっている人への贈り物。
「何を」ギフトセットにして。
「どうやって」いいギフトをもらった人は、他の人へも贈りたくなる。その心理を活かして広める。


うぼぜチーム



「誰に」魚料理がうまくできない若い主婦。
「何を」魚一匹を丸ごとではなく、調理しやすく加工したもの。また、仕事している主婦にはすぐに食べられるチルド商品もいいのでは。
「どうやって」ネットで会員を募る、ネットで販売。どう調理したらいいかレシピ動画もセットにして販売する。




がしらチーム



「誰に」大阪近郊で和歌山へ足を伸ばせる人へ。
「何を」有田みかんのように、太刀魚をブランド化する。
「どうやって」ブランド化した太刀魚を調理方法も含めてアピールする。


しびチーム



「誰に」全国の小中学校へ。
「何を」食育の一環として。
「どうやって」オリジナルのお魚検定というような制度を設け、子どもたちに挑戦してもらう。イメージキャラクターで認知度を高める。板前さんが魚をさばく実技実習授業などを全国行脚して広める。


ひらごチーム



「誰に」50代の主婦。
「何を」鮮度の良い魚介類、冠婚葬祭向け、主婦は少しずつでも欲しいので切り身も。
「どうやって」ネット販売で客層をつかみ、多額購入のお客さんには釣りイベント招待特典など付加価値を高める。ファンを増やすと、ファンは口コミで広めてくれる。


さえらチーム



「誰に」将来の和歌山観光客見込み層である関東圏へ。
「何を」和歌山セット、鍋セット、フルーツなどもセットにしたアンテナショップ的な商品。
「どうやって」和歌山へ足を運んでもらいたいので、何でも販売はせず、やや出し惜しみ作戦。


増田氏「短い時間でしたが、これだけアイデアがよく出ました! みなさんに拍手です!」



プログラム後半の第3部〜6部、レポート後編はこちら
http://www.nice.or.jp/archives/22301 につづく


撮影/柏木健児
取材・文、撮影/岡部 恵

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