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NICe関西 第6回 勉強会@新大阪 レポート




2011年6月25日(土)、NICe関西(みんなで関西を元気にするコミュニティ、略して「みんかん」)主催の第6回勉強会(頭脳交換会)が、新大阪で開催された。参加者は地元大阪府を中心に、埼玉県、神奈川県、滋賀県、京都府、兵庫県、和歌山県から総勢34名が結集した。



NICe関西コミュティ


最初に永山仁氏から、今日の勉強会のテーマとタイムスケジュールについての説明が行われた。
「これまで、みん関(現NICe関西)では、ひとりのプレゼンターの事業プランをもとに、その事業展開や課題解決をどうしたらより良いものになるかという頭脳交換会を実施してきました。今日は趣向を変えて、ひとり一人の持っている強み、特技を引き出してみようという勉強会です。まず、マーケティングの基礎について野崎さんにレクチャーしていただき、その後、私が実験サンプルとなりデモンストレーションをお見せしますので、イメージを膨らませていただければと思います。18時から、テーブルごとに、互いの強みや商売道具を引き出し合うワークをしていただきます。こちらでグループ分けを考えて座っていただいていますが、それは、似たようなカテゴリーのほうが、引き出しやすいかという意図によるものです。では、さっそく野崎さん、よろしくお願いします」

 
▲総合司会を務めた永山仁氏




一緒にできるビジネスプランを考えたいなら、

まずは自他の強みを洗い出し、

共通項・類似点を見つけることが第一歩





■マーケティングの基礎レクチャー

野崎ジョン全也氏から、マーケティングの基礎についてレクチャーが行われた。
冒頭に、今回の勉強会の趣旨について改めてこう述べた。

「リアルでもSNSでも、みなさん、お互いを知りつつあります。そろそろ新しいビジネスを一緒にできたらいいよねというふうになっています。でも、人と成りは、なんとなくわかりつつありますが、実際にどんなビジネスをしているのか、触れる機会はまだ少ないのではないでしょうか。そこで今回は、みなさんのお仕事の強みや得意を洗い出す勉強会にしたいと思います」

 
▲配布資料を作成し、レクチャー&ファシリテーターを務めてくれた野崎ジョン全也氏


今回の頭脳交換会のテーマは、「参加者全員の強みを持ち寄って、一緒にできるビジネスプランを考えてみよう!」だ。野崎氏はます、一緒にできるビジネスプラン=新事業をつくる、ということはどういうことかを解説した。

野崎氏が例に挙げたのは、S&P500。アメリカでは有名な株価指数であり、その構成銘柄企業は全米を代表する500社だ。そのうち60%の企業が、“改革”を企業コンセプトにしているのだという。新しい切り口や新しい事業を常に求めるのは、成長を目指す企業としては当然のこと。だが、野崎氏によれば、全米を代表するそんな大企業でさえも、実際に改革を順調に遂行できるのは4割しかなく、残り6割の企業は改革がうまくいっていないと語った。それほど、改革すること、新しい事業を軌道に乗せることは、並大抵のことではないのだ。

次に野崎氏は、「NICeの仲間と何か新しい事業を始める時に、決して間違えて欲しくないこと」として、イノベーションとリノベーションの違いを説明した。

イノベーションとは、「革新」「刷新」という意味で、「今あるものを使って別のできるものを探すこと」。その例として、コカ・コーラ社を挙げた。同社は世界中に販売網を展開している。その販売網を生かして、エビ養殖事業を始めたそうだが、あえなく失敗に終わったという。
一方、リノベーションも、和訳すれば「刷新」「改善」と、似たような意味だが、「できることを探すのではなく、売れるものをまず探し、提供方法は二の次という考え方」だという。当然、売れるものを探すというのも、なかなか難しい。つまり、新規事業を始める場合、イノベーションもリノベーションも、それぞれにリスクが伴うものなのだ。だが、リノベーションの考え方であれば、売れるものさえ見つかれば、その分はリスクを下げることができるとも言える。野崎氏は、イノベーションを否定するものではないが、みなさんにはぜひリノベーションに着目して考えて欲しいと語った。

「NICeの中で一緒に事業を始める際に、一緒に売れそうなものを探そうというリノベーションの観点でスタートしてほしいのです。そのためには、まずお互いの共通点を見いだしていくことが第一歩です。互いの強みをつなげ、売れそうだと合致すれば、それだけリスクを下げることもできますから。NICeというせっかくの出会いの中で、各人がどんな環境で、どんな仕事をしているのか。その点をまず知り、その中で掘り下げて、互いの強みを洗い出すことを、今日の勉強会の第一目標にしています」


<実践的に強みを洗い出す手法として、分析シートを活用>

相手の事業を知り、自分の事業を知ってもらう。そのうえで、互いの強みを洗い出す。本人は気付いていない経営資源を他者の目で見つけてもらい、自分もまた、他者の資源を見つけ、その共通項の確認をした後に、「一緒にできるビジネスプランを考えてみよう!」という試みだ。では、どのようにして見つけ合うのか? ここで場内に配布されたのが、分析シートだ。A4の用紙にびっしりと、細かな項目が記されていた。この分析シートを使用して、“強みの洗い出し”ができると野崎氏は続けた。

「互いの強みをどう引き出すのか。私たちはまだまだ発展途上であり、その中で弱みを克服して強くしていくのは大変なことです。分析方法には、SWOT分析などいろいろありますが、今日ここでは弱みはあまり考えず、強みだけを洗い出し、その強みを伸ばす視点で考えていただきたいと思います。そんな洗い出しのための具体的項目が、このシートです」


▲詳細な項目でチェックしていける分析シート


分析シートには、以下の項目が記載されていた。 

・環境分析 
 外部環境/政治、経済、社会、技術
 外部環境/顧客(明確化・ニーズ把握)、市場、利害関係集団、競合
 内部環境/人的資源、財的資源、物的資源、情報、ノウハウ、技術力、社風、ブランド、知財権

・市場   
 市場細分化条件/測定可能性、到達可能生、継続可能性、実行可能性
 市場細分化基準/ジオグラフィック基準、デモグラフィック基準、サイコグラフィック基準、行動変数基準
 標的市場決定方法/無差別型、差別型、集中型
 市場ポジショニング(競争市場での現位置と理想の位置の確認)

・ミックス
 製品/物的性質、特徴、品質、ブランド、保証、パッケージ、アフタサービス、製造販売の種類
 価格/価格政策、設定法、変更の理由と特徴、値入、値下げ、割引、経済的特徴
 チャネル・物流/経路、業者、業者の評価、倉庫の数と立地、倉庫の設備、適正な在庫数など
 プロモーション/広報予算、広告媒体、広告表現、効果測定、販売員人数、販売員の教育訓練、販売員の業務評価、販売促進、パブリシティ


野崎氏は各項目が具体的にどのようなものか、それぞれについて解説し、このシートを追っていくことで、何をつかんで欲しいのかを語った。

「たとえば、BtoCを市場としている方は多いと思いますが、1家族で毎月自由に消費できるのは5万円と言われています。この5万円をBtoCで仕事している人たちは取り合っているということですね。でも、同じ市場を相手にしているのだとわかれば、取り合いではなく、一緒に恊働していけますよね。市場が同じならば、事業は異なっていても、一緒にプロモーションすることもできるでしょう。顧客が同じ、市場ポジションが似ていると、共通項がかわれば、一緒にビジネスをしやすくなります。つまりシートで分析していき、強みや環境を洗い出すことで、ほかのメンバーとここが同じだ、ここは似ていると、共通点を見つけることができるのです。今日はこのシートを使って、強みの洗い出しを各テーブルで、みなさんにやっていただきます。では実際に、どのように聞き出して分析していけばいいか、永山さんをモデルにデモンストレーションをお見せします」


<デモンストレーション 1>

永山氏をモデルに、野崎氏が質問をしていく分析デモンストレーションが行われた。
最初に、どのような事業なのかを永山氏本人から説明してもらう。永山氏は、フォークリフト教習事業を経営していることをざっくり説明した。そして、上記62項目にそって野崎氏が質問をしていく。その途中で野崎氏は、質問と回答のどこがポイントか、解説しながら分析していった。

 
▲永山仁氏の事業をモデルに分析デモンストレーション

たとえば、外部環境の顧客について。
野崎氏「お客さんは誰ですか?」
永山氏「フォークリフトの免許が欲しい人。所属企業からの指示で取得したい人です」
野崎氏「前者だとマス広告の必要がありますが、後者ではフォークリフトを使用する産業や企業に絞り込みができます。そこへ集中してアプローチできることは、つまり強みと言えますね」

市場細分化条件の測定可能性について。
野崎氏「測定可能性というのは、市場規模を測定できているかどうかです。永山さん、できていますか?」
永山氏「大阪府で1万5000人弱です」
野崎氏「測定できていることはとても強みです。かけるべきコストもわかりますからね」

市場細分化基準について。
野崎氏「デモグラフィック基準について。これは、年齢や性別、職業などです。わかりますか?」
永山氏「府内在住で、運送や建設業に就いている、あるいは求職中の方。年齢的には30代が多く、男性が多いです」
野崎氏「把握している、つまりそれも強みです。このデモグラフィック基準を少し説明すると、年代などを知るのも大事ですが、目的を知ることもとても大事なことです。たとえば、大きな書店をイメージしてください。ここで顧客を世代年齢で分けることに意味はあまりありません。本を購入しに来るのか、調べものをしに来るのか、時間つぶしに来るのか、着目すべきは目的です。喫茶店もそうですよね。ランチなのか、お茶飲みなのか、暇つぶしか、で異なりますよね。顧客の目的を知ることも強みになるのです」

ミックスの特徴について。
野崎氏「特筆すべき点はどういうところですか?」
永山氏「合格率ほぼ100%です」
野崎氏「口コミが多いですか?」
永山氏「多いです。ほかのフォークリフト教習所はあまり対応が良くないところが多いのです。それって嫌だよねという話から、じゃ当社で始めようかと事業化したのがきっかけでした。我が社は、親切丁寧をモットーにしているので、その点が好評です」
野崎氏「親切丁寧はブランドにもなりますね。人情、親切、懇切丁寧、お客さん目線などが強みとなります」

このように、項目ごとに質問し、回答の中から強みを洗い出し、それを分析シートに記入し、市場ポジショニングの縦横軸を一緒に考えていった。


<デモンストレーション 2>

もうひとり、次に北出佳和氏をモデルに、同様の分析デモンストレーションが行われた。
北出氏も最初に、自身のビジネスについて簡潔に紹介をするよう促され、2、3分で自己紹介。続いて、野崎氏から、環境、市場、ミックスの順で質問されていく。
  
▲北出佳和氏も突然のご指名でデモに協力

たとえば、外部環境の政治について。
野崎氏「民主党政権になって、事業に影響はありましたか?」
北出氏「ありません」
野崎氏「社会的な影響はありますか? たとえば雇用問題とか少子化とか」
北出氏「基金訓練があります。それと、マンガチラシを作成しているので、わかりやすいという意味では少子化も関係があると思います。マンガ世代の増加の影響はあると言えます」
野崎氏「それは強みですね。外部環境の技術はどうですか? 印刷業界の変化とか」
北出氏「デジタル化はありますね。クラウドもそうです。Webでの掲載も可能ですし、電子書籍化で3コママンガも読みやすくなると思います」
野崎氏「それも強みですね」

外部環境の顧客ニーズ把握について。
野崎氏「お客さんからどのように言われますか?」
北出氏「制作の段階で話しているうちに、お客さん自身も自社の商品やサービスを理解でき、形になるとよく伝えられていると言っていただけます」
野崎氏「コンサルタントのようなことをしているわけですね」
北出氏「かな?」
野崎氏「お客さんの魅力や理念を引き出す、それも強みですね」

こうして各項目を野崎氏が質問し、北出氏が回答していき、ほぼ全項目を終えた。


<グループワーク>

休憩をはさんで、いよいよ70分のグループワークが始まった。

ルールはこうだ。
・1人の持ち時間は約10分
・まず本人がどのような事業をしているのかを簡単に説明する
・続いて、各項目順に、みんなで質問をしていき、強みを洗い出していく
・回答から「これは強みだね」というポイントを、左隣の人が書記になり、シートへ記入する
・こうして順番で全員の分析を行う

グループは事前に振り分けられており、コンサル&士業系、ものづくり系、癒し&コミュニケーション系、IT系、印刷&Web系、これから起業系という6チーム。

  

  

 

いざ始めると、質問回答するのは多少手間取り、時には話が膨らみすぎて質問しきれずに10分経ってしまったり、話が脱線することも。だが、互いの事業やそれぞれの業界の環境、課題を知る機会になったのはもちろん、他者から指摘され、初めてそれが自身の強みだと知ったメンバーも多かった様子。自分では当たり前過ぎて気付かない、自分の視点では資源と思っていないことを、他者から見つけてもらう、教えてもらう。そんな“傍目八目”を、このシートを使うことで具体的に体現していく。また、他者の強みを引き出し、強みの共通項、類似項を明確にしていこうと努める姿勢、過程そのものも、まさにNICeの“お互い様の精神”があるからできること。今回のテーマである「参加者全員の強みを持ち寄って、一緒にできるビジネスプランを考えてみよう!」は、具体的実践とメンタルの両面で、その大きな初めの第一歩になった。

 



▲恒例となった中島昭二氏作の横断幕を前に〆の記念撮影。
次回、8月のNICe関西は6日に@滋賀、番外編は26日に@大阪



■NICe関西リアルに初参加した北出佳和氏の感想
「初めて、みんかん(現NICe関西)に参加しました。以前からUSTでは視聴していて、楽しそうだと思っていましたし、ホワイトボードミーティングの頭脳交換会はとても勉強になりました。今回は、これまでとは違うスタイルでしたが、また一段高いハードルでの話し合いができて、やはり勉強になりました。グループセッションでファシリテーション役を仰せつかりましたが、これも初めて。進行の仕方がよくかわらず、申し訳なかったです。EASTのファシリテーション講座を受けて、また臨みたいと思います」

■NICe関西では常連参加の内田雅康氏の感想
「これまでとは違う取り組みの勉強会で、とても有意義だったと感じました。マーケティングの基本を意識することの重要性を改めて認識しました。仕事柄、細分化した分析項目を用いて、ビジョンづくり、ミッション、現状分析などを行っていますが、その背景や市場まで詳細に分析することは大切ですね。実践的な視点、手法を学ぶとてもいい機会になりました」

■リアル初参加した中野京子氏の感想
「とても楽しかったです。分析しながら互いの仕事を知るいい機会になりましたし、自分との接点や類似点がわかることは、今後のつながりにも有効だと思いました。また参加したいと思います」

■NICe関西初参加の高旭氏の感想
「人情味がある会だと思います。途中で何度か日本語の意味がかわらずに、調べたり、聞いたりしましたが、そのひとつひとつも勉強になりました。永山さんはお兄さんみたいだし、野崎さんは時々厳しい先生みたい(笑)。でも、私を外国人という意識なく接してくれる。嬉しいです、楽しいです。ありがとうございます」

■総合司会を務めた永山仁氏から一言
「今回のみん関(現NICe関西)はいつもと違い、各参加者が持つ経営資源を掛け合わせ、新規事業を考案してみようという初の試みでした。時間が足りず、参加者自身の経営資源を洗い出す作業の半ばで終わってしまいましたが、つながり力で新しい事業を生み出すためには、まず自分の強みを認識することと、仲間の強みを知ることが大切なので、続きをぜひやりたいです。何度も参加してくれて仲良くなった人の仕事内容をじっくり聴くことができましたし、自分の事になると口数が減るが、仲間の事になると、その人の強みをどんどん発言してくれる人がいたりして、NICeが目指す“異なる人とのつながり”は、自分を知る良い機会でもあるのだということを再認識いたしました」


取材・文、撮影/永山仁氏
取材・文、撮影/岡部 恵

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