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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
「合成の誤謬」から「合成の飛躍」へ!



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第23回 
     「合成の誤謬」から「合成の飛躍」へ!

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【正しい個々の行動が重なると、全体はどうなるのか?】

ある人は自動車が好きだ。ならば、その人は、
自動車の「部分」であるハンドルやタイヤも好きだ……、
ということには決してならない。
全体が好きだから、部分まで好きだと考えるのは過ちである。
これを「分割の誤謬」という。

一方、ある人はハンドルが好きでタイヤが好きだから、
その人は自動車が好きだ……。
そう考えてしまうのは、「合成の誤謬」である。

経済学では、「合成の誤謬」はよく知られた言葉だ。
「多くの個人が貯蓄をするという正しい行為が、
マクロ的には需要の縮小、雇用の縮小につながる」、
というケインズの主張の中で使われているためである。

この言葉をよく耳にするようになったのは、バブル崩壊の頃だったか。
個々の企業や個々の金融機関が膨らみに膨らんだ債務を減らし、
資産規模を縮小するというミクロ的には正しい取り組みが、
マクロ経済の回復を遅らせる要因になっていると指摘する際に用いられた。


【「合成の誤謬」がデフレを加速させている】

最近ではデフレーションの要因を説明する際にも、「合成の誤謬」が使われる。
経済学者・浜矩子氏の著書の中での説明がわかりやすい。

『スーパーで買い物をする消費者は一円でも安く商品を買おうとし、スーパー
側はコスト削減を追求し、一円でも安い値をつけて価格競争に勝とうとする。
双方ともに自らのために行動しているにも拘らず、そうした行いは労働者の一
段と低い賃金につながり、企業には利幅の縮小をもたらす。結局のところ、
みんなが自分で自分の首を絞める結果となるのだ』。

浜氏の「合成の誤謬」の説明のための例え話は、
何年も、いや十何年も、この日本で続いている現実である。
個々が正しいと信じて取った行動が重なる(合成する)と、事態を悪化させる。
つまりデフレを泥沼化させる。何とも困った現象だ。

この「合成の誤謬」が生み出す21世紀型デフレーションから、
日本経済は本当に脱却できるのだろうか?


【カネ余りは、デフレ克服に貢献せず】

「異次元」とまでいう日銀の量的緩和によって大量に出回ったお金も、
事業投資には向かわず、金融マネーとして市場をかけめぐるばかり。
結果、賃金上昇も期待通りに進まず、それゆえ、個人の消費は低調なままだ。
そこに消費税率アップが重なったから、どうにもこうにもならない。

将来への不安を抱く消費者(国民)は、
消費を我慢し、さらに「少しでも……」と、お金を貯蓄に回してしまう。
まさにケインズが指摘したような展開が訪れている。

さて、私たち企業経営者の評価は、
決算を黒字にしたか赤字にしたかで問われることが多い。
それゆえ、消費(支出)を抑えることで黒字を達成しようと考えがちだ。
みんながそう考え、そのように行動すれば、「合成の誤謬」が生じ、
デフレーションはさらに進行してしまう。まさに自社の首を絞めることになる。


【高くても、買い手が欲しくなる魅力的な商品を!】

では、どうしたらいいのか?
結局は、安くなくても(高くても)、狙った相手が購買したくなるような
強烈な魅力を持った商品を生み出し、それを提供していくほかはない。

相手が個人なら、それを買うことで生活の質がうんと豊かになる商品、
相手が企業なら、それを買うことで仕事の質がうんと豊かになる商品。
そういうものを世に送り出すことが、「合成の誤謬」から抜け出る道だ。
と、力説するほどの話でもない。事業とは、本来そういうものである。

しかし、中小・零細企業は、
そういうすごいものを自社単独で生産できるだけの資源には恵まれていない。
だからこそ、資源を持ち寄ることで、魅力的な商品を創出すべきなのである。
何度も主張してきたことだが、事業連携であり、つながり力である。

「これだけは負けない」と自負する資源同士をつなげ、
市場をアッと言わせる商品を生み出していこう。
2015年、「合成の誤謬」ならぬ、「合成の飛躍」を目指して頑張ろう!

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.26
(2015.0121配信)より抜粋して転載しました。
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