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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
「脱デフレ」は、本当に幻想だったのか?



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第44回 
     「脱デフレ」は、本当に幻想だったのか?
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【イオンの勢いが止まらない!】

流通大手のイオンは、2018年2月期の営業利益が1847億円に達し、
連結純利益は前期比33%増の150億円になるだろうと発表した。すごい勢いだ。

数年前、和歌山市に出張した際、イオンモール和歌山のオープンと重なり、
大渋滞に巻き込まれて、ひどい目にあったことを思い出した。

その当時、和歌山の人たちは、「イオンモールができるということは、
ここ(和歌山市)が田舎だと証明されたようなもの」と、苦笑していたが、
昨今は、首都圏や都心部でもイオンの大型店が目につくようになり、
もはや「イオンのない風景」をこの国で探すほうが困難になってきた。


【「脱デフレ」を斬って捨てた岡田社長】

さて、上記の会見で、イオングループの岡田元也社長は、
「脱デフレは大いなるイリュージョンだった」と、政府を一刀両断にし、
今後は、イオンもディスカウント事業に力をいれると発表して話題になった。

岡田社長は、民進党の岡田克也氏の実兄だから、
こういう形で自民党政権を批判していると憶測する人もいるが、
ことは、そんな小さな問題ではない。
実際にイオンは、会見後、多くの商品の値下げを実施している。

低価格戦略の推進は、間違いなくイオンの儲けを拡大させるだろう。
が、イオンとの価格競争に負けた中小流通の業績は悪化するだろうし、
イオンに製品を納める事業者の利益も、どんどん食われていくことになる。
「イオンのない風景」が、この国から消えていくということは、
日本中に低価格商品が出回るということであり、
結果、デフレショーンがさらに進行してしまうことを意味している。

しかし、岡田社長の判断を責められないのも事実だ。
利益追求のために、どのような戦略を選択するかは、経営者の自由である。

だからこそ、しっかりしなくてはいけないのが政府だ。


【PB改善よりも先に、景気浮揚を!】

政府に対して、安売り企業を規制してほしいというのではない。
国民や企業が、低価格商品ばかりを買わずに済むようにしてほしいのだ。
何度も主張してきたことだが、財政出動を本格的に実施すべきではないか。

ところが政府は、何年間も「プライマリー・バランスの黒字化」を掲げて、
財政出動に対する消極的な姿勢を維持したままだ。

プライマリー・バランス(PB)とは、税収や税外収入と
歳出(国債の元本返済や利払い費用は除く)に関する収支のことであり、
企業の損益計算と似たようなものと思って頂いていい。
だから、それの黒字化を目指すということは、
税収を増やし、歳出を減らすという意味になる。つまり増税と緊縮財政である。


【財政出動が、結果、PB改善にも貢献する】

しかしその結果、景気がますます沈み込むことは火を見るよりも明らかだ。
そして景気が上向かなければ、国民も企業も節約志向を変えることはできない。
そうである以上、イオンの経営判断は、正しいことになる。
結局は、政府が流通大手を介して、デフレを助長しているのだ。

むしろ政府は増税策と緊縮財政を見直し、実体経済市場に資金を回して、
民間企業の勢いを盛り立て、結果、国民の財布がもう少し膨らむようにすべきだ。
そのほうが、所得税や法人税の税収も増し、PBの改善効果も期待できる。

プライマリー・バランスは、企業の損益計算と似ているとは書いたが、
政府は企業ではない。政府は、私たちのように儲けなくてもいいのだ。
政府は政府のためにあるのではなく、国民のためにある。
その国民の生活を支える多くの中小企業を勢いづかせることを真剣に考えてほしい。

反対に私たち小規模事業者は、真剣に儲けることを考えなくてはならない。
「物価が安いから、儲からなくてもいい」は禁句だ。
政策と私たちの奮闘が結びついてこその、脱デフレであり、日本経済の未来である。

<一般社団法人 起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.54
(2017.5.22配信)より抜粋して転載しました。
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