自分の言葉で未来を語れ!

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「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第148回 自分の言葉で未来を語れ!
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【経営陣限定の企業研修に全力投入】
業界トップメーカーの役員研修で講師を務めた。
日頃のセミナーや頭脳交換会などでは、
「厳しすぎる指摘」をしないよう心掛けているが、
この時ばかりは、そういうわけにもいかない。
数千人の従業員を抱える企業の次代を担う人たちが受講者だ。
限られた時間のなかで、どれだけ意識変化を生じさせられるか。
40年間にわたって会社を経営してきた矜持にかけて、
持てる知見と起業家魂の一切合財を注ぎ込んだ。
なので、疲労困憊の極みである(笑)。
【徹底的に問答を繰り返した2日間】
研修は2日間で、両日とも9時~17時の開催。
1日目は、この時代と、さらに先の時代にあって、
経営者は何を決め、何を背負う存在かを理解してもらうターム。
いわば「基礎編」だ。
2日目は、その企業の特徴と事情に応じて、
各自がどのような変革を実行するかを具体的に問うステージにした。
こちらは「応用編」である。
2日間とも、講義、ワーク、全体討論、個別問答、事例紹介を繰り返し行い、
受講者の脳内とハートを多角的に刺激することに努めた。
【プログラムの企画中、エジソンの格言を思い出す】
研修の構成に当たっては、抽象的なテーマに時間を掛けすぎたり、
反対に、現実の課題に寄りすぎて受講者を身構えさせたりしないよう、
いかにバランスを取るかに腐心した。
「経営、経営者、大事なこと、求められること、果たすべきこと……」、
そんな単語を頭の中で回しているとき、
何かのきっかけで、10年ほど前に書いたコラムを思い出した。
『エジソンの罠』という短文だ。
そのコラムの文中で、私は以下のようなことを書いている。
「天才は1%のひらめきと99%の努力」とエジソン。
努力がひらめきの99倍に設定されているから、
「大事なのは努力だ」と言っているように感じるが、考えると、
「99努力しても、1のひらめきがなければダメ」ともとれる。
エジソンには、当然、真意があるはずだが、
言葉というものは、耳にした人の立場や性分や、
時代の移り変わりで解釈が異なるのが常である。
【偉人たちの発言を、現代に合わせて言い換えてみよう!】
そこからアイデアが降りてきた。
今回の研修は、変化する時代を見据えた経営者のあり方を問うもの。
だったら、世に数々残る名言を、
これからの時代に照らし合わせて言い換えてみる、というワークはどうだ?
この方法なら、研修中の固い空気を変えられる可能性があるし、
受講者の意識や見識をつぶさに把握することもできる。
私はすぐさま、「名言探しの旅」に出掛けた。
【余談。名言とは「名」のある人物の「言」のこと(?)】
あるわ、あるわ。
ネットで経営やビジネスに関する名言を検索すると、
「これでもか」というほど出てくる。世間は名言が好きだ。
余談だが、ネットを眺め回しているうち、
それほど含蓄があるとは思えない言葉も混じることに気付いた。
なぜだろう?
「名言」とは、「名」のある人物が口にした「言」だから(笑)。
つまり内容以上に、それを言ったのが誰かが大事なのだ。
名言の価値は、
偉人や大物が成し遂げた実績によって担保されている。
【何より刺さる、面と向かって言われる一言】
山ほど現れた「言霊」だが、
発信者は、やはり人気の高い経営者に集中している。
海外ならエジソンやディズニー、カーネギーといった歴史上の人物から、
ビル・ゲイツ、ラリー・ペイジ、スティーブ・ジョブズらIT系の各氏。
国内だと、松下幸之助、本田宗一郎、稲盛和夫、孫正義の各氏が目立った。
話を進める前に、ネットには出てこない金言を一つ紹介したい。
サラダコスモの中田智洋社長が私に投げ掛けた示唆だ。
「会社には利益が必要だと大声で言う経営者がいるけど、変だよね。
そんなの、人間には空気が必要だって言っているのと同じでしょ。
経営者が口にすべきことは、利益をどう使うか、どう生かすかだよね」と。
その時、私は「そうですね」と応じながら、内心冷や汗ビッショリだった。
連日連夜、「利益を出せ!」と社員に詰め寄っていたのは、
この私自身だったからだ。心底恥ずかしかった。
言葉の力は、すごい。
すごい言葉をさり気なく発する人物は、なおすごい。
【まずはこの名言を言い換えよ。『必要になる前に変化せよ』】
さて、数々ある名言の中から、私は出題用に3つ選び出した。
一つ目は『必要になる前に変化せよ』。
GEのトップを長く務めたジャック・ウェルチの至言だ。
いわばエジソンのDNAを受け継ぐ人物であり、
今回の研修目的にピッタリのフレーズである。
私の経験からしても、この教えは真実を言い当てている。
「このままではまずい。どうにかしなければ」という段階では、
往々にして、資金や人材、対外的な信頼や社内の意欲が枯渇していて、
もう、「どうすることもできない」のが実情だ。
また、先を見るのが経営者の責務だという視点も含まれているし、
成功体験にひたっていることの危うさも伝えられる。
なので、このままでも十分に価値はあるが、
あえて、言い換えに取り組んでもらうことにした。
【次に、この名言を言い換えよ。『論語と算盤(そろばん)』】
二つ目は『論語と算盤(そろばん)』。
「日本の資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一の著書名だ。
道徳心と商魂の両立を説くタイトルだが、
少し考えると、この2つは相関していることに気付く。
「ちゃんとした企業姿勢」は長期的な信頼を企業にもたらし、
それが巡って利益に貢献する。そういう意味を含んでいるだろう。
受講者も聞き覚えのあるフレーズだろうし、
「論語と算盤と○○」という言い換えに誘導することで、
「次代の経営を担う自覚」を促すヒントになると考えてこれを選んだ。
【最後にこの名言を言い換えよ。『企業は人なり』】
三つ目は『企業は人なり』。
松下電器(現パナソニック)の創業者、松下幸之助の、
「事業は人なり」という持論のアレンジ。
企業価値を生み出すのは、工場や設備や道具以上に人間である。
工業社会の成長期には、人よりモノが重用される傾向があったから、
原点を再確認する意味もあっての主張かもしれないが、
単にそれだけの理解では、不十分な気がする。
踏み込んで考えれば、人こそ価値創出の源泉なのだから、
いかに人を育成するかが経営の要諦であり、
企業の趨勢を決する重大事である、という意味もあるかもしれない。
ただ、私はそれらとは少し異なる解釈をしてみた。
「企業は人体に例えることができる」と。
人間の肉体や精神は複雑を極めながらも、各パーツが見事に連携して、
生命を維持し、生産を続け、成果を次代へ残す役割を果たしている。
つまり人体のように、有機的に結合した組織を築くことこそ、
企業の目指すべきところではないのかと。
いずれにしても私が並べた解釈は、それらを越える新しい価値観を、
受講者に言語化してもらうためのヒントに過ぎない。
【求められるのは、自分の言葉で未来を語れる経営者】
受講者の皆さんはよく頑張った。
その甲斐あって、研修1日目の目標である、
「自分ならではの発信」を紡ぎ出すことに到達できた。
果たして、いかなる「新語」が誕生したか。
それは割愛させて頂く。
読者の皆さんにも、この機会を生かして、
名言の言い換えに取り組んでみてほしいからだ。
●『必要になる前に変化せよ』→
●『論語と算盤(そろばん)』→
●『企業は人なり』(事業は人なり)→
不透明で不確実なこの時代にあっては、
責任を、価値を、そして未来を、
自分の言葉で語れる経営者こそが、何より求められる「人」なのだから。
【最後に】
この研修の機会を用意してくれた、NICeの小林京子理事に心より感謝申し上げる。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.257
(2026.6.22配信)より抜粋して転載しました。
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