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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
カジノは経済成長の特効薬か、劇薬か?





【マカオの夜は眠らない】

沢木耕太郎の『深夜特急』を読んだのは1987年頃だった。
この長編ルポの冒頭で描かれていたのが、マカオでの日々である。
単身での海外放浪自体がある意味ギャンブルなのに、
そのうえカジノに出入りする著者の「自由闊達」ぶりに、
まだ山っ気がたっぷりだった年頃の私は、大層興奮したものだ。

ページを繰りつつ、私もマカオのカジノに行ってみようと思った。
そして実際に行った。今振り返ると、数えきれないほど出かけている。

マカオのカジノホテルの周辺は不夜城だ。
極彩色のネオンサインが、観光客を夜明けまで誘惑し続ける。


【カジノを頂点とした、欲望丸出し経済】

そのネオンサインの群の中に、ひときわ大きく表示されている漢字がある。
「押」。この一文字。
初めは意味がわからなかった。空手? いや、押すのだからマッサージ? 
そうか、賭け事に勝ったお金でマッサージを受けるのか……。

正解は、その反対。
むしろ賭け事に負けた人たちが駆け込む場所だ。日本でいう質屋である。
「押」は「押収する」の「押」だと考えれば合点がいく。

巨大カジノホテル、飲食店、貴金属店、風俗店、そして質屋。
マカオの繁華街は、人間の欲望を図式化したように形成されている。


【夢のような経済効果。だが夢は悪夢と紙一重】

話は今の日本に移る。通称カジノ推進法案が国会に提出された。
2020年の東京オリンピックとリンクさせるかたちで、
国内外の観光客を徹底的に引っ張り込もうという目論見だ。
その経済効果は1兆円とも2兆円とも、7兆円とも言われている。

実際、あの狭いマカオですら、
カジノ業者が収める賭博税は、年間1兆円を超える。税収だけで1兆円!

ギャンブル依存症問題や非合法金融問題などが指摘されながらも、
カジノ合法化を目指したくなる人々の気持ちは、わからないでもない。

もちろんカジノ解禁となれば、「カジノ先進地」の問題を精査したうえで、
政府も様々な規制を打ち出すだろう。
宵に咲く食虫植物のような「押」(質屋)も、当然、規制されるだろう。
だが、規制すればするほど、問題は地中深くに潜り込んでいく。
夢のような経済効果の裏側に広がる闇にも、よくよく目を配らねばならない。


【劇薬も、使い方次第では良薬に】

それでもカジノを解禁するというのなら、
私は東京以外の地域に設置すべきだと思う。
オリッピックとの絡みで、いつしか東京にカジノを設けることが
既定路線のようになっているが、いかがなものか。

確かに国内外からの物理的・心理的アクセスを考えれば、東京は一等地だ。
だが、以前にも指摘したが、東京は首都直下型地震に対して無防備なままだ。
仮に、地震の神様が見過ごしてくれたとしても、
ヒトもモノも、それこそカネも、ますます東京に流れ込み、
またぞろ地方経済を追い詰めてしまうことは、目に見えている。
カジノ設置を認めるなら、むしろ辺鄙な場所がいい。

日本の国土の大半は山間地であり、列島には無数の島嶼がある。
これらの場所は、農業経営も工業経営も困難な地域が多い。
そういうエリアに限定してカジノを設置し、
大都市−地方都市−カジノ特区というラインを形成して、
ヒト・モノ・カネの新たな流れを創出することは、ひとつの手だ。

あるいは、地方には存続が容易とは思えない空港も少なくない。
こういう場所の近くに限定し、その地域の資本が参加できる程度の、
小規模なカジノ施設の設置を認めるという手もあるかもしれない。

とはいえ、博打で稼ぎだすカネに頼る経済は、やはり脆弱だ。
「カネは働いて稼ぐもの」。
実体経済の強化があってこその、「お楽しみ」でなければ意味がない。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>




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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.15(2014.0321配信)
より抜粋して転載しました。
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