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気仙沼市震災復興・企画部地域づくり推進課 男女共生推進室、気仙沼市民活動支援センター「女性のためのプチ起業セミナー」開催報告






2015年1月31日(土)、宮城県気仙沼市の市役所ワンテン庁舎で、気仙沼市震災復興・企画部地域づくり推進課 男女共生推進室、気仙沼市民活動支援センター 主催、女性就業支援全国展開事業(厚生労働省委託:一般財団法人女性労働協会)による「女性のためのプチ起業セミナー」が開催された。この事業は、女性の就業促進・健康保持増進を目的に、全国各地の開催地域からの要望に応じて、女性労働協会が情報や課題解決の機会を提供しているもので、特に岩手・宮城・福島の3県は復興支援事業と位置づけ、女性が自分に自信をもち、前向きな一歩を踏み出すきっかけをつくり、地域の復興、コミュニティの再生、女性の活力ある未来の創造へつなげていくために実地されている。受講者は起業に興味のある方、起業準備中の方、すでに起業している方々などが対象で、前半は入門編、後半は基礎編の2部構成、NICe増田紀彦代表理事が講師を務めた。





午前中は「起業セミナー入門編」。最初に増田氏は、「食べ物と同じで、出さないと入りませんよ」と笑いを交えながら、問答形式で進めますと宣言してスタート。まず、どのような得意分野を生かして起業するか、その意義と強み、さらに自身の得意分野をどのように見つけるのか、ワークをまじえて受講者各自の適性を徹底解明した。そのうえで、独立・起業を考える際に最初にすべき3つの確認作業を共有し、6種類の項目にそって各自記入により本気度をチェック。続いて、自身および周辺人物の資源をできるだけ洗い出し、それら資源を組み合わせにより、他者が真似できない事業アイデアを発想する方法を実践形式で学んだ。




「起業を実現させるのも、成功させるのも、お金ではなく、価値を生み出す知恵である」と、実際に資金をかけずに事業展開している3名の女性起業家の事例を紹介。受講者にとっては身近なロールモデルだ。この3名がどのような得意分野を持ち、それと自他の資源を生かして、どんな顧客像を定め、どのような知恵を絞って事業を展開しているかを詳細に分析。それぞれ明確な顧客像を定めていることで、いかに無理のない事業を実践できているかを共有した。

入門編の最後には、さらに身近な事例として、2013年1月に気仙沼市で起業した(株)VOARLUZ(ボアラズ)http://voar-luz.sakura.ne.jp/index.html 代表取締役の佐藤春佳さんに登壇いただき、増田氏との対談形式で、起業動機、苦労や喜び、困難を乗り越えようとどう頑張っているのか、起業の醍醐味など体験談を語ってもらった。



佐藤さんは出産のため、故郷の気仙沼市に帰省中に被災。育児をする中で、食の安全に不安を感じ、惣菜&宅配弁当で起業したという。長年、地元を離れていたため人脈もゼロからのスタート。惣菜の材料もなかなか手に入らず、未経験ながら自ら農作業を始めて確保した。現在は、起業後に培って来た地元の人たち・ボランティアで知り合った人たちとの交流ができ、畑で発見した自生の数珠玉を生かしたアクセサリーの製造販売へとシフトしている。「起業すると人生が濃くなります。好きじゃないとできない、続かない、けれど、得意なこと・好きなことなら困難があっても自分で考えられる、続けられます」と、受講生へエールを送った。






お昼休みをはさんで、午後は「起業セミナー基礎編」。
だがその前に、休憩の間、受講生が持参した商品を話題に、場内はすでに盛り上がっていた。親戚同士の清水さんと木田さんは、ふたり揃って今回のセミナーに参加。津波で自宅を無くし、唯一被災を免れた倉にあった着物を生かし、小物の製造販売業「ほどーる(気仙沼の方言で、あたたかい という意味)を起業している。この日、その商品について意見を求めたいといくつかを持参していたのだ。



さっそく増田氏は、商品のひとつブックカバーを題材に、午後のセミナーを始めた。「これはいくらなら買うか? 誰を狙っているのか? 顧客像を定めたら、ではどのような使い方をするか? 顧客像の予測から何かをプラスするとしたら? どんな工夫が喜ばれると思う? どのように販売するか? どう見せる? ネーミングは?」などなど次々にお題を出し、消費者の目線で、経営の目線で、意見やアドバイスを全員で出し合い、活発な意見交換を行った。さらにもうおひとり、得意な料理で起業を考えている受講者がシフォンケーキを持参。これも全員で試食し、誰に売るのか、顧客像は? 顧客像が定まったら、顧客像のライフスタイルはどうか。どこでどう売るのか、ネーミングやパッケージデザインはどうか、サイズはどうか、などを話し合った。




増田氏は繰り返し、誰に売るのかを明確にすることが何よりも重要だと語り、顧客像を細分化していくことで、どこでどのようにという販売計画や販売方法、価格、販売促進、運営体制など、すべてが計画しやすくなることを示した。具体的な商品を題材に全員で話し合ったことで、受講者の理解もさらに深まった様子。
次に、顧客像を具体的に絞り込み、相手が『NO』と言わないために、どのような点に注意すべきか増田氏は自身の体験談を交えて紹介。さらに、顧客像を絞ることで見えてくる、サービスや商品づくりの3事例を紹介。また、個人事業と法人格などの相違点、そのメリット&デメリット、開業資金算出方法と資金調達方法、収支計画のたて方、売り上げと原価の算出方法、そして起業準備の順番とその重要度、起業後の心構えや取り組みについても解説。



最後に、「今日学んだことも大切ですが、この場での出会いもとても大切です。さきほど、みなさんでアイデアや意見を出し合いました。コメントがたくさん出ましたね。まずはやりたい!という本人の起業動機、熱意がベースですが、そういう気持ちがしっかりある人へは、応援団もつきます。アイデアを出してあげたくなります。自分ひとりでは考えつかない、あるいはくじけそうになっても、そんな時に支え合えるのは、今日一緒に学んだ仲間です。どうぞ、今日の出会いを資源として生かしてください」



取材・文、撮影/岡部 恵

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