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どうする?日本経済

岐路を迎えた早期英語教育ブーム


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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第54回 
     岐路を迎えた早期英語教育ブーム
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【通貨と言語は、世界市場獲得の強力な武器】

仮にアメリカや中国、ロシアといった大国の公用語が日本語で、
通貨が日本円だとしたらどうだろう?
言うまでもなく、日本企業にとっては夢のような話だ。

外国語を習得する手間もなく、為替レートに一喜一憂する必要もない。
外国の取引先に対して、日本語でアポを取り、打合せをし、
日本円建ての見積書を作り、請求書を起こし、日本円が入金される……。
ビジネスチャンスの拡大と、コストの低減は計り知れないものがある。

当然、誰もがそれを考える。
実際、かつての欧州列強は、世界中に植民地を作り上げ、
自国経済の「縄張り」を拡大した。日本も大東亜共栄圏を構想した。

第二次世界大戦後は、唯一、金本位制を貫いた米ドルが機軸通貨となり、
圧倒的な軍事力を背景にした外交政策と消費文化の喧伝を通じて、
アメリカファーストが世界に広まった。
その中で、瞬く間に英語が「機軸言語」になっていった。
戦後世界はアメリカ経済にとって、まさに夢の連続だったのである。

とはいえ、米ドルの信頼性は昔日の面影もない。
ただし、英語の浸透力は健在であり、それゆえ日本の「英語市場」も活況だ。


【成長が続く日本の早期英語教育産業】

語学ビジネスの市場分析を得意とするのは矢野経済研究所だ。
同研究所は、語学ビジネス市場を以下のように分類している。

成人向け外国語教室全体市場
幼児・子供英会話教室市場
プリスクール市場
幼稚園・保育園向け英語講師派遣市場
書籍教材市場
語学独習用機器・教材市場
電子辞書市場
幼児向け英会話教材市場
通信教育市場
e-learning市場
ソフトウェア市場
語学試験市場
留学斡旋市場
通訳・翻訳ビジネス市場
英語以外の他国語市場

これらのセグメンテーションの中で成長著しいのが、
「幼児・子供英会話教室市場」と「幼児向け英会話教材市場」だという。
つまり、子供の早期英語教育が「金になる」ということだ。


【十数年前の、育児工学博士の嘆き】

10年以上前だが、私が講師を務めた起業セミナーに、
小谷博子さんという方が参加していた。
医学博士号を持ち、育児工学という学術分野を確立した人物である。

とにかく誠実な人だ。
当時、その彼女の心を痛めていたのが、早期英語教育の問題点だった。

母語(日本人なら日本語)を使って思考ができる年齢に達する前に、
外国語を学ばせると、その子供は、結局、どちらの言語においても、
十分なコミュニケーションが取れなくなる……、そんなお話だった。

この話を聞いて、私は衝撃を受けた。
語学は早くから学ぶほうが効果的だと信じていたからだ。
そして、私の思い込みどおり、早期英語教育市場が伸び始めていたからだ。


【バイリンガルのつもりが、ダブルリミテッドに】

先般、この問題がテレビ番組で取り上げられ、
かつて小谷博士が指摘したとおりのことが解説されていた。

ちなみに、子供がこうした能力状況に陥ることをダブルリミテッドと呼ぶ。
世の親は、我が子をバイリンガルに育てようと思っていたのに、
結果は、どちらの言葉もうまく使えないダブルリミテッドに育ててしまう……。
何とも恐ろしい話だ。

ダブルリミテッドに詳しい人物のブログの中で、
とある3歳児が、「りんごも赤い」と言うべきところを、
「りんご赤いも」と口にした話が紹介されていた。
日本語の単語を英文法に合わせてしゃべってしまっているのである。


【未開拓市場の獲得も、課題の克服も、企業の使命】

資本主義経済は、企業が得た利潤を再投資し、
さらなる利潤獲得に挑戦することで成立する経済である。
したがって、市場が飽和してしまうことが最大の問題になる。

その摂理どおり、大人や学生の市場に限界を感じた英語教育産業は、
未開拓の広野である、幼児市場を切り拓いたのである。
その市場創造努力は賞賛したい。ただ、そこには問題もあったということだ。

国際化とインバウンド市場の隆盛を受け、
外国語教育市場はまだまだ伸びる余地があるだろうが、
その有り様を業界自身が問うべきタイミングが来ていると感じる。

問題があれば受け止め、乗り越える努力をすることが企業の使命であり、
その取り組みこそが、経済の持続的成長をもたらす源泉だからだ。

<一般社団法人 起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.65
(2018.4.23配信)より抜粋して転載しました。
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