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NICe頭脳交換会 in 東京下町 レポート







2018年5月26日(土)東京都荒川区町屋で、NICe主催、谷中 Kuu Home(クウホメ)協力により、NICe頭脳交換会in東京下町が開催された。頭脳交換会とは、プレゼンターが自身の事業プランや課題を発表し、それをもとに参加者全員が「自分だったら」という当事者意識で建設的なアイデアを出し合い、問題解決へと前進するNICe流の勉強会のこと。東京での頭脳交換会は毎年12月に開催する「NICeつながり祭り&ビジネスプランコンテスト本選」のプログラムでも実施しているが、単独開催は5年ぶり! 関東を中心に、北海道、福島県、茨城県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、大阪府から32名が参加した。

▼司会進行は、東京都のNICe協力会員 廣瀬朝子さん(左)。
NICe頭脳交換会in東京下町 実行委員長を務めた、NICe協力会員 谷中 Kuu Home(やなか クウホメ)代表・青木さわ子さん(右)から開会のあいさつ。
 

「こんにちは! 谷中で雑貨店を営んでいる青木です。谷中をはじめこの会場のある町屋も懇親会の根津も、東京らしからぬというか、高度成長した東京とはまた違う、古き良き温かみのある東京です。今日明日と楽しんでいただければと思います。どうぞよろしくお願いします」


つながりワークショップ



「わずか数分で“つながり”大前進!名刺交換はもう古い?!」
ファシリテーター 小林京子NICe理事




プログラムのスタートは、NICe恒例の「つながりワークショップ」。これはNICeオリジナルの交流ワークで、名刺交換や肩書きだけではわからない、その人の“人となり”、人としての経験や資源や想いを短時間でわかり合うというもの。考案者の小林京子理事から、あいさつを兼ねてプログラムが紹介された。
参加者には、ひとり1枚ずつA4サイズの『つながりQ(キュー)』シートとマジックが事前配布されている。

「今日はこぢんまりとした雰囲気で、こういうのもいいですね。この感覚を活かして17時までいきましょう。みなさんへ配布している『つながりQ』シート、これから記入していただきますが、これを使ってこの後、自己紹介をしていただきます。まずは5分間で記入してみてください」

記入タイム終了後、場内を見回っていた小林理事から全員へ、どこから参加したか、下町といえば何?とお題が投げかけられ、場内を沸かした。
「NICeの集いでは、初参加のみなさんから『ほかの方たちは以前からお知り合い?お友達なのですか?』と驚かれることが多いのですが、実は初参加の方も少なくありません。ちなみに皆勤賞の方は?(挙手)、では初めての方は?(挙手)ほら!こんなにいらっしゃいます。では、グループ内でシートを見せながら自己紹介しあってください」

▼3分の1近くが初参加で、ほとんど初対面にも関わらず、すぐに各グループから笑い声や拍手がわき起こる。自己紹介タイム7分を越えてもまだ歓声が途絶えない





「はい、ありがとうございました! つながりが近づいたところで、ではお待ちかね頭脳交換会です!」と増田代表へマイクをつなげた。


NICe頭脳交換会

 
ファシリテーター:増田紀彦NICe代表理事



「これから4組のプレゼンターが登場しますが、『私の事業だ、どうだ!』という話ではなく、課題や目標について、みなさんにお知恵やアイデアを投げかけますので考えていただきます。今日は約30名の参加者ですけれど、経営者ひとりが悶々と30分考えるよりも、30人が一緒になって1分間考えたほうが、よいアイデアが出てくる、それが頭脳交換会です。発表者のために、ということもありますが、それだけではなく、アイデアを出した方もまた、異業種へ対して自分の知識や経験やアイデアが役に立つということを実感できるはずです。傍目八目で、異業種だからこそ、一定の距離を置いているからこそ、見えてくることが多々あります。 みなさん、これまで30年、40年、50年と生きて来て、それぞれの中にある経験、知識、知恵などは、ひとりひとり違いますよね? それらをつなげて、外付けのハードディスクのように、パソコンをつなげるように、まさにグリッドコンピューティングのように、いくつもの脳みそをつないでいって、一つの課題をたくさんの脳みそで考えていく、そうするといいアイデアが出てくるのです。
さらにもうひとつの効果として、この現場で人のアイデアや意見を聞くと、『じゃこういうのもありだよね』と発想がさらに広がります。直に聞くことで思いがけないアイデアが湧く。そういう気づきもあると思います。グループごとにリーダーを決めていますので、プレゼン後はリーダー中心に話し合っていただき、アイデアを発表してもらいます。ではさっそく、始めてみましょう!」


プレゼン1
青木さわ子さん 東京都台東区
 谷中 Kuu Home(やなか クウホメ)代表
 https://ameblo.jp/yanaka-kuu-home/

テーマ「家庭で死蔵している生地や糸、昔の着物。
 事業には向かない?どうすれば無駄にならない?」




リメイクした帯と着物、古布を再利用して自作した足袋&ポシェットで登壇した青木さんは、東京の下町・谷中(やなか)で、手づくりの刺し子や着物の生地を使った小物を制作販売している。そんな青木さんのもとには、各家庭で不要になった着物や布など、「使って」と持ち込まれることが多い。有難い半面、課題も発生しているという。それは、持ち込みの中には、素材として再利用するのが難しいモノも含まれている点だ。たとえば所有者が単に自身では「なんとなくもったいない気がして廃棄できないものたち」も混ざっている。特に思い出も思い入れもなく、素材や年代すら不明のもの、いつの間にか貯まった端切れなどなど。ものづくりを得意とする青木さんは、何とか再利用できないものかと創意工夫するものの、中には商品化の素材にするには難しい状況の布たちも……。とはいえ、善意で持ち込まれるだけに、青木さん自身もむげに処分はできないのだ。が、その量は増える一方なのだという。
「こういう使い途がありますよ」と提案しても、持ち込む方は、青木さんが引き取ってくれること&できれば再利用してくれることを望んでいるのだ。同じように、各家庭で死蔵している布の保管・取り扱いに困っている年配世代も多いはず。だが、その世代はネットに疎遠で、自らネットで取引するにも厳しい。こうした行き場のない布たちが、何かしら無駄にならない活用法はあるのか、教えてほしいとアイデアを求めた。

「着物ならば青木さんも使い途がありますが、サイズも柄も素材もよく分からない布類って各家庭に結構ありますよね。これは青木さんだけの問題に限らず、いろんなご家庭が抱えている問題だと思います。各家庭にどうしようもなくあって、でも何となく処分できない布。どういう有効活用があるでしょうか!」と増田代表の掛け声で、グループディスカッションがスタート。




シンキングタイム終了後、挙手制で各グループリーダーから発表。



「『使えないから捨ててくださいと伝える』が極論。再利用するならインテリアデザイナー、プロのデザイナーや作家さんとのコラボで商品化しては?」
「青木さんのお店がある谷中は近くに東京芸術大学がある。繊維学科もあるので、再利用不能な布をどう活用できるか、課題としてチャレンジいただいてはどうか。また、染色を学んでいる学生さんもいるので、コンテストのようなイベントを開催して再利用してもらう。
もうひとつ、青木さんが型紙を考案して、型紙とセットにしてキット販売してはどうか。パッチワークに歯切れの組み合わせが良いと思うので。その代わり、なるべく青木さんの労力を削減する必要もあるので、布はレーザーカッターで裁断する。まさに今日履いている自作足袋、ヒットすると思う!」
「案山子(かかし)アートの素材として、過疎化が進んでいる地域へ提供する。また、厚紙で組み立てた箱などに布を貼り付けて仕上げるカルトナージュもできるのでは? もっと簡単にできるのは牛乳パックの再利用。布を処分したいという方に、布を張り付ける手法を青木さんが教え、完成品を持参してきたらお店で販売してあげる。子どもや老人ホームなどでも作業できるのではないか。また、学校の学芸会や子ども劇団などで、衣装の素材を求めているところがあると思う」



「私の地域ではシニア層の着物リメイクの会がとても人気。素材として送っていただければ喜ばれると思う。また、クッションは真四角で作りやすいと思うので、老人ホームや子育てママの会などで製作してもらい、それを海外からの観光客向けのお土産にしてはどうか」
「東京では余っているけれど、布素材が少ない地方もあるのでは?つながりが活かせるかもしれない」
「ふろしき、のれん、ハンカチ。ほかの着物地と混ぜ合わせての活用。たとえば壁画や絵画のようにして、持ち込んだ人へ、自分の家に残して飾れる作品として販売する。また、ペットの寝具やお出かけ着、小さく切って枕の素材に。日本の柄ならば途上国へ送り、そちらで制作してもらって谷中で販売するなど」
「古民家のインテリアコーディネータに渡し、古布を使って壁紙にしてもらう。また、乳幼児は布遊びが好きだとの意見が出た。ボールプールの代わりに布プールはどうだろう。布を丸めて入れて遊具になる。汚れたら捨てて入れ替えればいい」



「ありがとうございました! 子どもが好き放題遊べるのは楽しそうです。また身近に思ったのは、型紙とのセット販売。私は手芸教室の講師もしているので、その時にセットにして生徒さんへ配布していますから、応用できるかなと思いました」


プレゼン2
長島弘子さん 茨城県つくば市 
 リニューアルファスト合同会社 代表
 https://www.refast.co.jp

テーマ「素晴らしい洗剤なのに、なかなか理解されない電解水。
    どうしたら、もっと普及できる? 」



水回り専門のハウスクリーニング業を営み、洗浄後に車のガラスコーテイングのように見栄えも良くなる水回り再生サービスをしている長島さんは、特殊電解水『ECOな水』も販売している。これは、洗浄はもちろん、脱脂効果、除菌、消臭、防錆効果もある洗剤で、化学物質や界面活性剤を一切使用していない。また、pH13.2の強アルカリ性でありながら、人にも環境にも安全とのこと。長島さんは素手のまま使用しているという。一般的なアルカリ性洗剤は塩化ナトリウムを使用して電気分解するが、『ECOな水』は炭酸カリウムを使用するため塩濃度がゼロだからだ。また、汚れに反応して中性になるので、環境にも優しい。プレゼンでは『ECOな水』の概要と、使用後に水回り再生を併せて実施し、生まれ変わったビフォー&アフター事例を写真で紹介した。二度拭き不要で、経年劣化を受けにくく、掃除する手間も省ける優れもの。だが、認知度が低い。どうしたら、もっと普及できるか、アイデアを求めた。

「参加者の中で、電解水を洗剤として使用している人は?」と増田代表の問いに3人が挙手。
「では、電解水が洗剤になると初めて知った人は?」 半数近くが挙手した。

使用している3名に、選択理由を聞くと、子どものため、ペットの足ふきに、掃除の手間が省ける、洗剤臭が残らない、などが挙げられた。

「値段は500ccタイプで1300円と一般的な住居用洗剤に比べれば割高ですが、これ1本で洗浄・除菌・消臭できますし、汚れ落ちはいい、人にも環境にも良い。他社製品でしたが、電解水を自宅で使用しているのは30人中3人、消費者のニーズがまったくないわけでもない。ではどうしたらもっと広まるか? さきほどの概要説明、商品名はどうでしょう。みなさん消費者目線で 話し合ってみてください」




シンキングタイム終了後、挙手制で各グループから発表。

「良さは判るが商品名からは伝わらない。〇〇専用 と商品名に冠を付けてはどうか。たとえば、シェパード専用とか、ラブラドール専用、話題の秋田犬など、人気ランキングで上位かつ富裕層が飼っているような犬種の専用とする。また犬に限らず、具体的に〇〇専用、と表記する」
「〇〇専用案はうちのグループでも出た。ほかには、10年間落ちなかった汚れが楽々落ちる、のようなPR。たとえば古民家、放置された空き家など。先ほどの一般家庭の事例写真よりももっと厳しい事例を出しては? 古民家再生専用などとすれば全国向けにもできる。また、企業のエコ貢献、たとえば環境問題を重視しているアパレル企業へ。ほかに富裕層の多い海そばの別荘向けに勧めては」
「大手メーカーとの対抗策として、BtoBへ向けてはどうか。私は運送会社を経営しているので、車体の洗浄時間がかかることが課題でもある。車外だけでなく車内、庫内などの洗浄に時間も気も遣う運送業、航空会社、鉄道会社、ホテルにも。商品名も要再考と思う。『すいすい』原材料の水と、すいすい汚れが落ちるに意味をかけた(※すでに商品名としてあり)」

「洗浄・除菌などの効果は見えにくい、わかりにくいので、まずはしっかり見せることが大事。電解水はポンプで通すには難しいので、大型洗浄にも使用できる技術を考えるといい。また長島さんは茨城県つくばとのこと。研究機関が多い地域なので、実験器具洗浄に注力してはどうか。研究者や教授たちが良いと言ってくれたら強力な宣伝効果になる。せっかくのつくば、地の利を活かしたらいかがか」
「他社の電解水を使用しているが、金額は覚えていないし、商品名に電解水とは記されていない。仕組みを知らずに使っているのが実情。プレゼンのような説明は不要と思う。エコで安心して掃除できる、それだけでいい。一般家庭にとどまらず、食品工場、飲食業、学校、老人ホームなどへ向けてはどうか。自然派志向の私立の幼稚園なども」

長島さん「そういうところはハードルが高くて」
増田代表「だからいいのです。ハードルが高いのは他社も同じ、他社も入れないと諦めるから、そこを考えるのがいいのです」

「うちでは洗剤・柔軟剤を使わない洗濯剤を使っているが、1年ぐらい使用できる。商品名、デザインも良いので参考にしてはどうか。孫のためにと祖父祖母たちがギフトでも購入している。こういう孫のため向けのセットを考案しては?」
「科学的な説明よりも、今の『1年ぐらい使える』のような生活実感的なPRと商品名にしてはどうか」






プレゼン3
安藤愛子さん 東京都板橋区
テーマ「洋服を購入しようと思うのは、どんなとき?
    &
   洋服を購入したとき、どんなことが満足感に結びつく? 」




ホテル内のブティックに勤務しながら、無店舗の洋服販売で起業計画中という安藤さん。ホテル内のため、普段接するお客さまは洋服目的というよりも、滞在や来館の合間に立ち寄るというケースが多いという。自身は洋服が大好きで、余裕さえあれば毎日見て歩いても飽きないが、もちろん欲しい服がなければ購入には至らない。安藤さんは勤務先での接客中、「このお洋服はこのお客さまと出合うために生まれた!」と思う瞬間があるのだという。必要に迫られて洋服を買いに行くと、思いが強いためか、なかなか希望した服に出合えないが、逆にたまたま見かけた服が「買って良かった!」という出合いもある。将来の起業のヒントとして、わざわざ買いに行くのはどんな時か、また衝動買いはどんなタイミングなのか。購入時の満足感は何か。率直な動機や経験を聞きたいと語った。

「まず1つめのお題、洋服を購入しようと思う時について、1分くらいグループ内で話し合ってみてください。明らかに目的をもって買いに行く時、目的はなかったのに買ってしまう時。購入しようと思うのは、どんな時?」



ディスカッション後、増田代表が女性参加者へマイクを向けた。




「仲の良い友人4,5人で、買う気満々で商業施設へ買いに行く。互いに『似合う~』と褒め合って買わせ合って(笑)、帰りに『買い物袋いくつ持った? いくら買った?』とみんなで勝負するみたいな楽しみ方をしている。後日、その仲間で食事会をして『やっぱり似合っている!』みたいな。それが楽しい」

安藤さん「普通女性同士で買い物をすると、中には購入を止める人がいて、『あなた似たような服持っているじゃない!」と阻止しがち。褒め合って買わせ合うのはすごい!」

「必要に応じて買い行く。わざわざというよりも帰宅途中に寄る程度」
「姪と買い物に行く。姪は服が欲しいというよりも買い物をすること自体が目的のよう。買い物した、が満足感だと感じる」
「まさに今日の服は衝動買い、2年前くらいに買ったが着る場も機会もなかった。購入理由は、デザイナーの伝記を読んで感銘し、ちょうど初期デザインに酷似していたため購入してしまった」
「これ買いたい!ではなく、必要に迫られて購入する。または試着で2,3時間くらい楽しめる店へ行く。帰りに下げたショップ袋のボリュームに、買った!という実感と満足感が広がる」
「以前の服装が職種に合わないと先輩方から注意されて、仕事の場にふさわしい服装へと変えてきた」
「ネット購入が多い。試着して返品もできるので」

「男性はどうでしょうか?」




「ちょうど今、自分で柄を選んでつくれる甚平を見ていたところ。普段はネットでの購入はない。この刺繍の盛り上がり加減はどうか、自分で見て触って買う。他人の判断で購入する人はネットだと思う」
「送られてくる通販カタログで選んでしまう。まさに他人の判断!」
「今日着てきたブルーのポロシャツは、まさに衝動買い。ちょうどサッカーの日本代表のサムライブルーが欲しかったから。憧れに近い、時節に合った商品が並べてあると購入に至りやすい」
「洋服を選んだり買い物をしたりする時間がもったいないと思ってしまう。あまり好きじゃないので必要に迫られて。たとえば靴下は全部同じ色を20足まとめて購入している。劣化も同時期なので、全部破棄してまた20足まとめ買い、1度で済む」
「家内が選ぶので、自分では選ばない」

「では、買った時の満足はどんな時でしょう?」
「その店のかっこいい紙袋を下げて帰る時!」
「ネットでの購入も、モデルよりもいい感じだったり、思った以上に似合っていると感じた時」
「もともと好きなブランドの店にしか行かない、満足すべきところにしか行かないので大満足」
「アウトレットへアタリをつけて行く。きめうちなので外れない」
「コストパフォーマンスだと思う。セールで定価と比べてどのくらい安く買えたか。服が欲しいというよりも、安く買いたい心理を満たしていること。暴落率で満足度も上がる」

「人によって値段、行為、喜ぶポイントが多種多様でした。ありがとうございました!」


プレゼン4
川野真理子さん 東京都中央区
 なみへい合同会社 代表社員
 http://www.namihei5963.com/

テーマ「移住者が、地域のために提供できる仕事や活動って、何?
   千葉県いすみ市を舞台にした『移住準備実践講座』準備のために」



「地域経済がまわるお手伝いをして人生を全うしたい」とプレゼンをスタートした川野さん。地域の人口減少に歯止めをかけるのは難しくても、維持できるくらいに力を注ぎたいと、地域のファンづくり・リピーターづくり、ゆくゆくは移住へと支援していきたいと語った。具体的には今年9月から、千葉県いすみ市を舞台に、移住準備実践講座を開講する予定だ。川野さん自身はこれまで10年間、東京・神田で「東京から故郷(ふるさと)おこし」をコンセプトに、全国うまいもの交流サロン『なみへい』を運営し、月替わりで各地域の活性化を推進してきた。2018年3月末で飲食店営業を終了させ、セカンドステージとして、「特定の地域を1年間」応援する事業をスタート。そして千葉県いすみ市の公募にエントリーし、5月に「平成30年いすみ市地域の魅力活用及び情報発信業務受託者」に採択された。そのプロジェクトのひとつが、半年6回授業で行う移住準備実践講座だ。想定している受講者は、リタイア世代ではなく、移住後も働くファミリー層。また、すでに何かしらの特技や専門性を持った人ではなく、移住準備の期間を通じて、地域の人とつながり、地域に溶け込み、そのつながりの中から何かしら頼まれごとや仕事を創れるまでに育成したい考えだという。講座6回のうち4授業のプランは立てており、首都圏から人を呼べる企画立案と実践、生産者と交流しながらのネットショップ立ち上げと運営・更新、現地ガイド育成、地域の食材営業マン育成を予定している。これら以外に、どのような講座内容があったらいいか。いすみ市に限定せず、日本各地の共有課題として、移住準備講座開講へ向けたアイデア、意見、アドバイスを求めた。

ここで、いすみ市役所 水産商工課の川﨑敦史さんと松﨑考一郎さんから、いすみ市の紹介をいただいた。


千葉県いすみ市は、房総半島南東部に位置し、東京からJR特急で75分、車でも都心から2時間ほど。温暖な気候と豊かな海山川の自然に恵まれ、全国有数の漁獲量を誇るイセエビや真だこ、献上米であった『いすみ米』などでも有名だ。この豊富な農産物・水産物をさらに活かそうと、市では地方創生事業の一環として、「食」をテーマに「美食の街 いすみサンセバスチャン化計画」(スペインのサンセバスチャンのような「美食観光都市」へと変貌させていく活動)を推進中だ。また自然や一次産業の魅力だけでなく、人も豊かで、川﨑さんによると、道ですれ違う小学生たちが明るく挨拶をしてくれるのだという。いすみの魅力を広く広めたいと同時に、地元の人にもこの魅力を再認識してほしいとのこと。誇れる人を増やし、魅力を伝えてくれる人を増やしたい。ぜひ、お越しください、いすみの魅力を直に触れいただきたい、と結んだ。



増田代表「さぁ、ここを舞台に、半年かけて移住準備講座をやりたい川野さんです。スペシャリストではない人、いすみに限らずなんとなく移住を考えている人に向け、どういう講座内容が良いでしょうか? 話し合ってみてください!」



シンキングタイム終了後、挙手制で各グループから発表。

「先に移住した先輩談を聞く講座。また受講はファミリー層を想定しているとのことだが、身軽さや移住しやすさから、単身者も想定してはどうか。独身向けの出会い系プログラムの企画ができるようになることも地方では喜ばれるのではないか」
「食材が良いので、料理の提案ができる人を育成する、レシピ開発をできるようになろう講座」
「1次産業者が多い地域なので、逆に経理会計に強くなると重宝されるのではないか。経理会計の知識をつける講座」
「東京から距離が程良いので、週末に畑やハーブ園をやって1年間来てもらう。日頃の管理は地元の人に。1年間通う間に、何を地域へ還元できるか考える時間も生まれる。また、畑で非可食植物を栽培し、発酵させ、エネルギーを作り出すと、地元に還元でき、収入も見込める。エネルギーを得られる農業を考える講座。もうひとつ、地方で減っているのが鉄工所。そこに芸術家を呼んで創作してもらい、作品を道の駅などで販売する。人も来るし作業滞在中に交流も生まれる。マイナス意見だが、食材は日本のどの地域でも魅力だと言うが、ブランド化するには相当な時間を要する。そんな時間もないはず。他では知られていないものは、ブランド化しているとは言えない」
「講座予定の中に、ネットでの生鮮販売 とあるので、運営更新作業ができるだけでなく、商品写真の撮り方、インスタ映えの仕方などの講座があるといい。特に食べ物や商品の物撮りは学んでおくといい。ミニスタジオでちょっと撮影してあげたら、地域の人にもすぐに見てもらえてダイレクトに喜ばれるのでは」



川野さん「ありがとうございました!いただいたアイデアをどのように講座に取り込み充実させていくか、しっかり練ってみます。また急ですが、頭脳交換会をいすみ市で開催することが決まりました! 6月30日(土)ぜひみなさん、いらしてください。お泊り可能な方は泊まって、翌朝一緒に大原漁港の朝市へも行きましょう!」
詳細&参加申し込みはこちら

最後に増田代表から。「以上、4組の頭脳交換会、いろんな角度からアドバイスが出ましたね。去年は南房総市で、今年3月には福島県いわき市でも開催しましたが、いろんな地域でこの会ができる人が育成されたら、それも地域の役に立てる人、だと思います。みなさん、熱心な討論ありがとうございました!」




「NICe大人の遠足 下町の知られざる魅力探索ツアー」紹介

頭脳交換会参加者を対象に、翌日5月27日のオプショナルとして企画された「NICe大人の遠足 下町の知られざる魅力探索ツアー」について、イベントだんどりコーディネーター NICe協力会員 千葉陽子さんからコース紹介が行われた。
また、NICe正会員 上久保瑠美子さん作のコース案内映像も上映され、場内を沸かせた。




今日の会場・町屋も目の前にさくらトラム(都電荒川線)が走る下町だが、翌日のツアーでは、実行委員長・青木さんのお店 谷中 Kuu Homeのおひざ元を中心に散策する予定だ。
谷中は、今や観光地としてすっかりブランド化された「谷根千」(通称やねせん=谷中・根津・千駄木)のひとつで、連日多くの観光客でにぎわっている東京の人気スポット。寺町の歴史と文化が随所に残り、下町情緒に溢れ、人情味ある地元人と観光客との交流も盛んだ。見どころの多い谷中の中から、千葉さんと青木さんが厳選して探索コースを設定してくれた。有名な谷中霊園をはじめ、寺町の路地、古い民家を活かした街づくり、商売繁盛している小規模店など、約2時間の予定で歩いて回るとのこと。「発見も多々あると思いますので、どうぞお楽しみに!」

閉会のあいさつは小林京子理事から。
「いかがでしたでしょうか。参加者みなさんでつくり上げる、それがNICeの勉強会です。楽しんでいただけましたでしょうか。では次回は6月30日、NICe協力・なみへい主催の頭脳交換会inいすみでお会いしましょう。ありがとうございました!」




懇親会は「谷根千」(通称やねせん=谷中・根津・千駄木)のひとつ根津へ。
お開き後は、上野不忍の池をまわって


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頭脳交換会オプショナル “NICe大人の遠足”





翌5月27日(日)、JR日暮里駅に集合した一行は、千葉さんのリードでまず谷中霊園へ。幼少のころから遊び場だったという青木さんならではのガイドを聴きながら園内を散策。約10万平方メートルの園内は意外に明るく、随所に四季折々の植物が植えられ、まさに都会のオアシス。お墓参りや法事の方だけでなく、散歩を楽しんでいる人、生活道路として通行している地元の人の姿もちらほら見え、東京とは思えない安らぎを感じさせる。霊園には都立のほか、寛永寺や天王寺の墓地もあり、青木さんによると暗号のような小さな標識でその区別が判るという。約7000基の墓があり、徳川家15代目将軍慶喜や渋沢栄一翁、森繁久彌さんをはじめ、著名人も多く眠っている。途中、幸田露伴の小説『五重塔』のモデルになった天王寺五重塔の跡や、スカイツリーも眺めつつ、中央園路の桜並木へ。桜の季節は多くの花見客で賑わうそうだ。





▲イベントだんどりOKKO代表の千葉陽子さん、生まれも育ちも地元・谷中の青木さわ子さん

続いて一行は、千葉さんのガイドにより、路地探索へ。築200年の銭湯「柏湯」を改装した現代美術のギャラリーSCAI THE BATH HOUSE、旧吉田屋酒店下町風俗資料館展示場を経て、「上野桜木あたり」へ。

ここは、昭和13年に建てられた三軒続きの古民家をリノベーションした複合商業施設。ビアホール、カフェ、ベーカリーや雑貨店、レンタルスペースもあり、各店で買った商品は相互持込みもOKという、さすが粋! ここでしばしフリータイム。また近くには、作家・池波正太郎氏が好んだという昭和9年創業の老舗甘味処もあり、台湾スイーツを楽しんだ参加者も。





古い家を活用した店が続く路地をそぞろ歩き(途中買い物したり、買い食いしたりしながら)、国内外の観光客でにぎわう有名な商店街「谷中銀座商店街」へ。その昔は東京の各所にこのような人情味あふれる商店街があったものだが、今や希少だ。全長175m・幅員5~6mに70近い店舗がひしめきあい、個々の店は個人商店がほとんど。地域ぐるみで、昔ながらのご近所づきあいや、寺町として墓参りに定期的に訪れる人との交流、飾らない接客を大切に、商店街文化をつないできたことがうかがえる。

次に一行は、笑吉工房で指人形観劇。人形制作・演技を担うのは谷中生まれの露木光明さん。仕事の傍ら子ども向けに絵画教室をしていた当時、工作見本で指人形を制作したところ、その面白さに自身がはまったという。テレビ取材の裏話などもお話しくださり、演目前からとても和やか。
指人形劇は1日7回公演で、1公演30分。音楽に合わせたセリフ無しのコント仕立てで、「笑い上戸」、「よっぱらい」、「シャボン玉」、「ウォーターボーイズ」、「50年後の冬のソナタ」などの演目で大いに笑わせていただいた。

そしてツアー最後は、これぞ下町の路地!という場所にある、青木さんのお店、谷中 Kuu Home(クウホメ)へ。
約1万歩の“NICe大人の遠足”はこれにて解散!










大人の遠足 撮影/千葉陽子、長柴美恵 
取材・文、撮影/岡部 恵


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