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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
顧客認知価値



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第124回 顧客認知価値
 
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【韓国2泊3日・70万円ツアーの衝撃】

2泊3日の韓国旅行。贅沢をしなければ、
航空料金・宿泊費・食費・現地での移動費を合わせても、
10万円以内に収まる。格安旅行なら5、6万円でも足りる。

ところが3月にソウルの高尺球場で開催された、
メジャーリーグのドジャース対パドレスの観戦ツアーは、
2泊3日で70万円以上という高値設定だった。

それでも、人気の大谷翔平選手をはじめ、
日本人メジャーリーガーが4名出場するとあり、申込者が殺到。
ツアーを主催したJTBによると、当選倍率は200倍に達したという。

日本を訪れるインバウンド客のお金の使い方にも驚かされるが、
いやいや、日本人の消費意欲も負けていない。


【「安くはないが高くもない。見合っている」】

とはいえ、日本人の財布はそれほど豊かなのだろうか?
春闘で高水準の賃金上昇が実現したとはいえ、
今年の2月統計では、23カ月連続の実質賃金減少である。

実質賃金とは、労働者が受け取った名目賃金から、
物価上昇分を差し引いた金額のこと。
つまり、支払われる給料がどれだけ上がろうと、
それを上回る物価上昇が続けば、実質的な給料は減少する。

しかも、物価の上昇は、いまだ収まる気配がない。
それでも「70万円ツアー」に多く人が参加しようとした。

むろん、この金額を指して「安い」と言う人は少数だろう。
だが、「安いとは言わないが、決して高くはない。見合っている」。
そう思う人が少なからずいたということだ。


【商品の製造販売コストなど、顧客には関係ない】

言い方を変えると、このツアーには、
「70万円以上の価値がある」と思った人がたくさんいたのである。

そう。商品に価値があるかないかを決めるのは顧客だ。

商品にどれだけの原価を要していようと、
どれだけの人件費を要していようと、それらは顧客の与り知らぬ話。

顧客は、「価格」に見合う「価値」が手に入ると思えば、
商品の購入意思を強くするし、
反対に、価格に見合うだけの価値がないと思えば購入を見送る。

要するに、商品価値とは、顧客が認知する価値のことである。


【顧客認知価値の高低は簡単な分数で判定できる】

顧客が感じる価値を指して「知覚価値」と表現することもあるが、
私は「顧客認知価値」と呼んでいる。

知覚は、感覚器官を通じて、見たり聞いたり嗅いだりする能力のことであり、
認知は、知覚した情報を解釈したり判断したりするプロセスだ。
購買意思の決定プロセスは、まさに解釈と判断で成り立つ。
ゆえに顧客認知価値。

顧客認知価値が高い商品か低い商品かは、
簡単な分数を用いて説明することができる。

分母には商品の価格を入れる。
分子には顧客がその商品に感じるさまざまな価値の価格換算値を入れる。

分母より分子が小さければ、顧客認知価値は低く、
反対なら、顧客認知価値が高い商品になる。

大事なのは、分子に入る「さまざまな価値」の中身である。


【大別すると、顧客は7通りのカテゴリーで評価する】

私は顧客認知価値を以下のように7分類している。

1.信頼
2.感動
3.利便
4.見た目
5.機能
6.リスク回避
7.付随価値

以下、順を追ってそれぞれの意味合いを紹介する。

「信頼」は、有名人やその道の専門家が高い評価をしている。
多くの人の評価が集まっている。権威ある賞を受賞している。
そもそもブランドである。またはブランド企業と提携している……。
など、他者の評価に依るところもあれば、顧客自身が、
その企業の経営姿勢や商品のストーリーに共感を抱くケースもある。
こうなると、分子は分母より大きくなる可能性が高くなる。

「感動」は、冒頭で触れたメジャーリーグの開幕戦ツアーのように、
得難い体験や生涯思い出に残るような経験ができる。
あるいは、容易には入手できない商品が購入できる。
こういうケースでは、分母(価格)が常識よりも高額だったとしても、
さらにそれを上回る分子が設定されることになる。


【「機能」で顧客認知価値を高めることは困難】

「利便」は、いつでもどこでも買える。すぐに納品される。
購入手続きや決済方法が簡単など、商品購入上のメリットや、
製品やサービス自体が、顧客に利便を提供するケースもある。

「見た目」とは、デザインである。
商品そのもの、パッケージ、広告、店舗、陳列、販売スタッフ……。
消費者の目に触れるものすべてが、顧客の評価対象になる。
カッコイイ、可愛い、美しい、面白いなどの感情は、
時に「機能」を大きく超える価値を顧客に抱かせる。

「機能」は言うまでもないが、求める結果をより確実に、
より迅速に、より低コストで実現する性能のこと。
もっとも昨今は、誰かが作れば、ほかの誰かがまた作る状態であり、
顧客も製品やサービスの機能を、冷静に比較検討して購入を決めるため、
この面での価値を訴求することは、日に日に難しくなっている。


【日本人に刺さる「優越感」と「お得感」】

「リスク回避」は、製品の保証期間が通常よりはるかに長い。
不具合があれば、即座に、かつ何回でも返品交換を受け付ける。
あるいは、懇切丁寧なサポート体制を取っている。
また、保険機能などが付加されている、などの価値だ。
心配性と言われる日本人には響く価値と言える。

最後は「付随価値」。優先、限定、特典、割引……。
これらもまた、日本人には非常に好まれる価値である。
「お得意さまのあなただけに、
特別なプレゼントを付けて、なおかつ定価の半額でご案内します」、
などと言われたら、大半の顧客は舞い上がる。
言ってみれば「優越感」と「お得感」の二刀流である。


【複数の価値を提供する商品が売れる】

以上が、顧客が商品に感じる7つの価値のおおよその説明。
売れている商品は、これら7つのうち、
複数の価値を提供しているケースが多い。

例えば線香の孔官堂香房「彩風」のパッケージは、
まるで化粧品かキャンディーの容器に見える美しさ。
しかも、缶の蓋を裏返すと、中央に穴の開いた突起が付いていて、
この穴に線香を立てれば、線香立ても香炉も不要になる。
「見た目」と「利便」で、顧客認知価値を高めているケースだ。

あるいは、リクシルの場合、
システムキッチンやシステムバス、シャワートイレなどに対して、
10年保証を付けているが、一定の費用はかかる。
ただし、セット割引やWEB割引が利用できるようにもなっている。
こちらは「リスク回避」と「付随価値」で、顧客認知価値を高めている。

せんだって、秋田県で開催されたセミナーで、
この7つの価値を説明したところ、「なるほど!」と、
大きな声で反応した受講者がいた。

聞いてみると、定年退職の記念に、
それなりのグレードの新車を購入したそうで、
「7つ全部が満たされていました。買っちゃうわけだ(笑)」とのこと。


【「顧客がいいと感じるモノ」が売れる時代】

「売れる商品」というとBtoCをイメージしがちだが、
BtoBにおいても顧客認知価値がものを言う。

とくに新規取引においては、7つの中でも「信頼」が重視される。

とある地方の化学メーカーは、ホームページのトップに、
受賞記録やテレビ取材記録、代表者の講演の様子などを、
画面いっぱいに掲載していた。
単純に「すごい会社だな」と感じる。

また、とある金型メーカーは、
製品作りの様子を動画撮影して、それをホームページにリンクさせている。
モノ作りが得意で、大好きで、それに精根を傾けている様子が、
手に取るように伝わってくる。

もちろん、これらのメーカーは、
「信頼」以外の価値提供にも取り組んでおり、業績は好調だ。

かつて、「いいモノが売れる」と言われた時代があった。
それがマーケティングの進化により、
「売れるモノがいいモノ」という、妙な言い分に変わってきた。
だが、これでは何の説明にもなっていない。

現代の市場の様相を語るなら、
「顧客がいいと感じるモノが売れる」ということである。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.208 
(2024.4.22配信)より抜粋して転載しました。
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