

2010年12月20日(月)、「第7回 全国定例会&忘年まつり」が、東京・神田にある「なみへい」で開催された。NICeチーフプロデューサー増田紀彦氏の基調講演、プレゼンテーターに原克也氏を迎えた頭脳交換会、そして忘年まつりの3部構成とあって、参加者は一都三県を中心に、群馬県、新潟県、愛知県、三重県、大阪府など、初参加10名を含む総勢46名が結集した。

一般社団法人 起業支援ネットワークNICe 代表理事・増田紀彦氏
【総括】 民営化プロセスの中で確信したこと

2010年4月から民間として活動を開始したNICe。それから9カ月経った今、あえて「いよいよ本格始動!!」と題した基調講演を行うのはどういう意味だろうと、感じたメンバーも少なからずいたはず。それに答えるかのように、増田氏は、4月から今日までの間を振り返り、「いよいよ」とあえて題した意味を語った。
「NICeというのは、平成19年から21年までの3年間、経済産業省の事業として実働していました。2010年3月末の終了と同時に、4月からは民間の活動としてスタートしましたが、しかし、一昼夜にして国から民間の活動へ変えることなど、到底できることではありませんでした」
終了が決まった当時の心境を、増田氏はこう振り返った。「NICeの活動はやっと端緒に着いたばかりなのに……。NICeで提唱して来た『つながり力』が、日本経済、ひいては日本の底力に大きく貢献すると実感できた矢先、事業が終了してしまう。ならば、国の事業が終了となっても、この活動を自らで推進しなくては!」。こうして民営化を決意したのだった。
だが、予算はなく、それまで使っていたSNSを譲渡される予定も白紙撤回となった。プログラムもなし、情報もなし、経産省の看板もなし。何もかもがないない尽くし。だが、増田氏は「私は心配していませんでした」という。
「NICeがなければ知り合えなかった皆さんと、こうしてNICeを通じて知り合え、志の高い人たちと出会うことができました。一緒にやっていこうという仲間ができたことが、何よりの財産だと思ったからです。民間となる4月以降、こうした人間のつながりをベースにした活動を続けていけばいいのだと、まったく怖くはありませんでした」
こうして4月から、民間NICeはスタートした。しかし、現実的に活動をしていく上では、物質的なものが必要となる。民間NICeの運営費は、運営母体「一般社団法人 起業支援ネットワークNICe」設立メンバーである、増田氏と久田氏が私財を投じた。だが継続的な活動のためには、運営資金を得られる仕組みをつくらねばとの考えが進み、その仕組みに対応するために、既存の汎用ソフトではない新しいサイト開発に着手。結果、その新サイトはユーサビリティが低く、旧NICeのような人と人がつながる機能も低下したものにとどまった。そのまま、8カ月が過ぎた。半面、専任の事務局員を雇い、事務局用のオフィスを開設するなど、資金的な困窮はむしろ増すばかりだった。
「人づくりが先か、金づくりが先か」の判断を誤り、「つながり力」の強化に結びつかないサイトを誕生させ、活動の停滞をもたらした。 にもかかわらず、高コスト運営を続け、さらに窮地に陥ったと増田氏は述べた。
◆それでもNICeを必要とする人々が立ち上がる
「使いにくいサイトのまま放置していたので、利用者も減っていきました。新しい出会いが生まれることもなくなり、停滞していました。しかし、もうだめかな、と思いながらも、NICeの基本精神が大事だと思う人たちが、リアルな活動を立ち上げてくれたり、使いにくいサイトにまめに日記を書いてくれたりしました。
そのまま悩みを続けていくわけにはいかない!と、運営費を得る仕組みづくりよりも、まずは人が先だと決断したのです。相手にまず喜んでもらうことがつながり力の根源です。ですから、まずは人だということで決着しました。コストをカットして、もう一度、小さな組織でやっていこうと。だからこそ今、もう一度、民間活動してのスタートラインに立ったのだと思っています」
「つながり力が本当にあるのかないのかと、問われた8カ月であり、苦しい実験だった」という。しかし、「ないない尽くしの中で、ここでやめていたら、やはり、つながり力はお金やモノにかなわないことになったかもしれない。お金がなくても、どんなに不便でも、本当に大事なものは人の心に中にある、ということを証明した8カ月だと思っています」と語り、「つながり力」は、人の心の中に宿る力であるという原点に戻り、 小さくても強い、民間ならではの活動を目指すことを、4月からの民営化プロセスを経て、今ここで改めて「いよいよ本格始動!!」と表明するに至ったのだ。
【情勢】 デフレ=孤独化と不均衡の拡大
◆時代はむしろ、人のつながりを蝕んでいる
続いて増田氏は、私たちが置かれている社会情勢について解説した。世界のデフレと、日本のデフレには相違があり、いわゆる団塊世代以上の富裕世代と、現役貧困世代が固定化しており、内需産業はその貧困世代を対象にするためにデフレを誘発しているという。
「むしろ世の中は、人と人のつながりが希薄になる状況になっています。いわゆる、景気の循環サイクルにおける不景気過程における物価の収縮とは異なり、日本の場合は特殊な事情があります。ものを旺盛に買う現役世代の絶対数と購買力が落ちていることが大きな問題です。一方、世界的なカネ余りはマネーゲームを加熱させ、原料価格を押し上げている。企業は高い原価を抱えて利益を出さねばならない。おのずと人件費を詰めます。企業は従業員の給料をカットし、人員を減らす。外注もたたいたり、切ったりする。収入がが減って、購買力のない人たちが増える。この人たちの商品やサービスを提供するためには、さらに物価を下げる。その結果またまた人件費をカットする……。まさに悪循環です。
職場の中でも、長く勤める仲間という感覚がなくなりつつあります。また、業界別に縦型で協力会社がひとつのブランドを守るという仕組みで発展して来きましたが、今は受注しないほうがましのような値段を提示されて仕事を受ける状況が起きています。仲良く、つながっていこうという状況ではなくのが今の日本です。
一方で、個人資産は今も世界第2位です。それはどこへいっているのかというと、金融商品へ資産経済へと向かっています。資産インフレ、現物デフレになって、ハコやモノをつくったり、運んだりする産業はどんどん貧乏になり、実体のない資産経済はどんどん豊かになっていく。といっても、それはあるとき破裂する。バブル崩壊やリーマンショックで懲りたはずなのに、またそれを繰り返しているのです」
◆政策はまたもや大企業&成長産業支援一辺倒
リーマンショック以降、政府は内需主導の経済、アジア諸国への進出を積極的に支援してきた。大企業&成長産業の収益が、雇用や国内の関連会社へ回るのかというと疑問だと増田氏は述べ、それを裏付けるように、つい先日、政府が打ち出した法人税減税に対する経団連の米倉弘昌会長のコメントを紹介した。
「政策に頼ってはいられません。国はもう一度外需政策に戻っています。外需で潤う大企業&成長産業も、資産経済へ向いています。皆さんがすべきことのひとつは、富を資産経済に持っていかれないよう、取ってくる努力をし、見える関係の中で経済活動をしていかなくてはいけません。もうひとつは、小さな中で共同体のように経済をつくっていかなければいけないのです。NICeには小さな企業の仲間がたくさんいますが、NICeはビジネスマッチングを目指しているのではなく、ヒューマンマッチングを目指しています」
ここで増田氏は、定例会に参加しているNICeメンバーふたりを紹介した。ひとりは、千葉から参加した北出吉和氏。もうひとりは、大阪から参加した永山仁氏だ。両者はNICeを通じて知り合い、意気投合した。北出氏はデザイン&イラスト業、永山氏は製造業であり、地域も業種も異なる。
「永山さんは北出さんの人柄を好きになり、イラストのセンスが好きになり、何かに活かしたいと、自社のカレンダー制作をお願いしました。永山さんは、カレンダーをつくりたくてNICeに参加したわけではありませんよね。好きだ、何かしたい、そう思ってカレンダー作成をお願いしました。好きで付き合うのですから、ひどい安値を要求するようなことはしないでしょう。
デフレーションとは、関係が分断された他人とのやりとりの中で進行するものです。毎日のように事件や交通事故のニュースありますね。被害者が知らない人なら泣くことは滅多にありませんが、被害者が友人や知人ならたまりませんよね。経済も同じだと思うのです。人間関係があったら、むちゃな要求はしません、値段をたたくようなこともできません。相手のことを思いながら、お互い様だから、という関係をつくってビジネスの取り引きができたら、そういうスパイラルを立ち切れると思うのです」
◆異規模つながり力と、小さな者同士の共同体が不可欠
大手や成長産業や政府から資金を捕り、それを「お互い様」 精神で結ばれた小規模ビジネス共同体において循環させる。そのためにNICeが目指す方向とは。
「日本がこれまでやって来た経済スタイルでは、弱者は生きていけません。その危機感の中で、「お願いします、飯のタネをください」ではなく、まず自分たちの中で循環する経済をつくる、まさにNICeは、飯のタネの交換をやっていける共同体に向かっていけると思います。
多くの人が危機意識の中で生きています。小さな企業体、団体が、日本中にいっぱいあります。「困っているから助けてくれ」ではなく、困っているけれどどんな小さくても、それぞれが持っている魅力や資源を大いに活かし合い、互いに引っ張り上げて、自分たちでがんばろうとやっていくのです。今日のようなこういう交流の場、NICeを使って、紹介して、知り合って、仲間たちで広めていくことで、できる限りの市場の拡大を自分ら中でぜひ実現しましょう。それをできるようにするために、まさにこれからのNICeの活動方針を整理しました」

◆2011年1月7日(金)、新SNSに全面移行
仲間の存在に気づき合い、知り合い、語り合い、リアルに会いたくなるような機能とコンテンツ、そしてユーザビリティを兼ね備えたSNSサイトへ移行し、現会員の「つながり力」をさらに強化すると共に、全国・全業種・全世代の「まだ見ぬ仲間」との出会いを追及。
◆自発的・自主的なリアル活動を各地、各テーマで推進
生で語り合い、学び会い、共感し合う場を参加者自身がつくり出 し、SNSに戻ってさらに交流を深め、やがては経済活動を担える共同体に発展していくような活動をどんどん生み出していく。
増田氏から発表されたのは上記の2つだ。1月7日にカットオーバーされる新SNSのサンプル画面が映し出されると、会場内からどよめきが起きた。次に、現在実施&計画されているリアル活動(NICe全国定例会、関西勉強会、EAST学縁、営業白熱カフェ、棚田クラブ、クリエイティブ関連プロジェクトなど)の紹介をした後、このバーチャルとリアルを繰り返すことで、「つながり力」を強化していこうと強調した。
「NICeの『つながり力』というのは、人につながってもらうのを待っているのではなく、自主的に「やるぞ!」と手を上げて、お互い頑張ろうと自発性に基づいた仲間がつながり、自分のことの前にまずは相手を思う、そういう力だと思います。NICeには、いろんなメンバーがいますし、これからも新規エントリーを増やしていく活動をしていきます。仲間と毎日リアルには会えませんから、SNSのバーチャルで仲良くなり、関係を深め合い、リアルで会いたくなる。そしてまたSNSで親交を深める。そのリアルとバーチャルを繰り返し、相互に展開することで、どんどん人間関係が強くなり、様々な取り引きや新しいビジネススキームが生まれていく。NICeでは既にそういうつながりが何組も生まれています。それを今後、もっともっと生まれる場にしていこうというのが方針です」
そして「最後に」とわざわざひとことをそえて、NICeのテーマである「つながり力」について、これまで以上に熱く語りかけた。
配布された資料の最終ページには、大きな文字でこう印刷されていた。
【つながり力とは】
「私はこれまで『つながり力の強化』と何百回も言ってきました。つながり力とは、自分のことを考える前に、まず相手ありきで、仲間にいい思いをさせようとした結果、自分が豊かになるということです。『自分とあなたは違う。関係ない』という境を超えて、日本の経済活動、地域活動に、もう一度、人間的な喜びを取り戻す力のことです。経済は冷たいものでも、取り合い・奪い合うことでもなく、本当にお互い様の精神で、限りある富を仲間同士で分け合おうじゃないかと。自分だけ生き残る後ろめたさを感じないような、人間的な経済と、自分の生まれた地域やご縁のある地域、育ててもらった地域にいながら、豊かに生きていける日本にしていきたいと思っています。ぜひ、つながり力の強化を目指して、新生NICeにご協力とご支援、そして大いなるご活用と、自発的な活動の推進に取り組んでいただきたいと思います」と、会場の出席者へ、USTの参加者へ、まだ見ぬ未来のNICeの仲間へも呼びかけるように講演を結んだ。

■プレゼンテーション
プレゼンではまず最初に「快援体」の事業概要を述べた。2006年に創業して以来、「地球元気化計画」をテーマに、整体・カイロプラク ティック・足裏健康法・運動健康法・心理カウンセリング・破壊セラピーなどの代替医療・リラクゼー ションサービスを全世界へ提供しているほか、災害ボランティア活動も(健康サポート)している。原氏は手技療法士のほか運動療法士、准・認定心理療法士など実にさまざまな資格を有し、『人間と地球を健康にする「すーぱーせらぴす と」』を目指しているという。
次に、今回のプレゼンに登壇したことが「奇跡的」と語り、「八つ当たりどころ」の誕生からこれまでの経緯を3段階に分けて紹介した。「第一章」は、2008年12月、秋葉原駅前にて世界初の皿割りワゴン「八つ当たりどころ」を開始したこと。この「八つ当たりどころ」とは、改造したトラック内で、客にストレス解消のために皿割りをしてもらうサービスだ。開店直後にロイター通信をはじめ数々のマ スコミで取り上げられ(100近い取材数)、以降、関西を中心に全国のイベントに出店している。1日来客数は平均200人超、累計で5000人以上となる。「第二章」は、開始から約1年後の2010年。東京大学からゲーム化したいと連絡があり、4月にはi Phoneアプリ「お皿割り」が全世界へ向け発売された。発売1週間後には、ダウンロード人気ランキング1位を獲得(約2万DL)。「第三章」は、同年12月。日本最大級の環境展「エコプロダクツ2010」に出展し、公共的な世界への進出を果たしたという。
そして、「地球元気化計画」をテーマに掲げているからには、「八つ当たりどころ」のさらなる事業多角化が必要と感じ、2010年11月には、カイエンタイグローバルサービス株式会社を設立。既成概念に縛られがちな世代や市場へ参入するためには、「皿割り」をより真剣に、本格的に深めて訴求することを決意したという。その成長ポイントを握るのが、セラピー、エコ、エンターテインメントの3本柱であり、それぞれのさらなる確立を目指しているところだと述べ、3本柱の現在の状況を説明した。
セラピー部門では、母校である明星大学理工学部生体情報工学科と提携し、ストレス測定を脳波、汗量などを含めてトータルに数値化する研究を開始している。エコ部門では、これまでも「八つ当たりどころ」では、岐阜県の美濃焼の廃棄食器を使用し、100%戻し、再利用するという完全リサイクルシステムを確立してきた。そして、エンターテインメント部門では、トラックによる移動店舗形式に加え、近日中に東京の秋葉原で常設店舗「ほめまくり&皿割りカフェバー ほめほめ☆さらさら」をオープンさせる計画であると述べた。
プレゼンの冒頭で「奇跡的」と述べた理由が、この後、明らかになる。実はこの常設店舗は、本来ならばすでにオープンしていたはずだったのだ。当初のプレゼン計画では、プレオープンした店舗でNICeのメンバーに実体験してもらい、その実体験を基に質疑応答をする予定だったという。ところが、内装も完了し、最終の消防確認をした際に、原氏の店舗の問題ではなく、入居しているビルそのものが消防法に抵触することが判明。開店は無期限延期となる。定例会の10日前の出来事だったという。
その衝撃、怒り、落胆は、おそらく私たちの想像以上のものだったはずだ。だが、原氏はすでに代替案を実行中で、新たな物件でのオープンに向けて準備中だという。さらには、『捨てる神あれば、拾う神あり』と述べて、開店延期が余儀なくされた直後に、内閣府地域社会創造事業(社会起業インキュべー ション事業)ビジネス部門 環境ビジネス・ ベンチャーに認定されるという嬉しいニュースが届けられたと語った(ここで会場内から拍手と喝采がわき起こった)。
今後の展望として、エコとエンターテインメントの全国展開(移動販売をFC化させ全国どこでも皿割りができるようにする)、不用食器回収サービス(スーパーマーケットやホームセンターなどで集客アップも目的とする)の2つを挙げた。そのための課題として、(1) FC化の提携先 (2) 不用食器回収サービスのプロセスのアイデア、の2項目を挙げ、プレゼンテーションを終了した。

●参加者からの質問
・皿割りに必要な設備面積、安全性は?(剣持由紀氏)
●意見、提案、アドバイス
<FC化の提携先、サービスアイデアなどについて>
・荒れた学校(石井英次氏)


<不用食器回収サービスの提携先、アイデアなどについて>
・古本買い取り販売のチェーン店のように、客に持参してもらう(細谷裕代氏)
●プレゼンテーター原克也氏の感想と今後の抱負
●第7回NICe全国定例会 実行委員長・小林京子氏から一言
●ファシリテーター増田紀彦氏から一言
■近況


取材・文/NICe編集委員 岡部 恵
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