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NICe主催スキルアップ講座「本気のファシリテーション講座  基礎編&実践編 第3弾!」レポート







2014年1月25日(土)・26日(日)、東京・夢の島のBUNB東京スポーツ文化館で、「本気のファシリテーション基礎編・実践編 第3弾」が開催された。これは、経営者や起業家に必要なスキルを1日みっちり学ぶ「NICe主催のスキルアップ講座シリーズ」のひとつで、講師はその分野のスペシャリストであるNICe会員が務める。今回の「本気のファシリテーション講座」は、第1弾(基礎編2013年5月12日開催 レポートhttp://www.nice.or.jp/archives/15537、実践編6月15日開催 レポート http://www.nice.or.jp/archives/16063)、第2弾(2013年9月7日・8日開催 レポート http://www.nice.or.jp/archives/17684)の好評を受け開催が決まったもの。遠方からも参加しやすいように、基礎編と実践編を2日連続で実施した。

講師は第1弾・第2弾と同じく、有限会社ヒューリス代表取締役、NICe理事の小林京子氏。小林理事は、20年以上にわたり多種多様な業態業種で人材育成研修を担当し、公的機関や民間企業での講演・講師を務めているファシリテーションの専門家。また、心理学的根拠をもとにしたモチベーションアップのワークショップも20年以上主宰し、心身のありようと実践に裏付けられた独自のスキルで、企業会議やNICeの全国交流セミナーなどでも幾度となくファシリテーターを務めてきた。そのノウハウと経験を“本気で”伝授する第3弾には、岩手県、埼玉県、東京都、神奈川県から6名が集い学びあった。


参加者からは、
「これまでファシリテーションセミナーを受講したことはあったが、このようにじっくり基礎編・実践編を学べたのは初めて。ネットで偶然この講座を見つけられて幸運、参加して本当に良かった。漠然と自分でも課題だと思っていた部分、まったく気付いていなかった部分が明確になった。日々の現場の中でさっそく取り組みたい」

「とても勉強になった。改善点を再確認できたので、あとは実践していくだけ。あっという間の2日間だった」

「実際の仕事現場を想定したリアルバージョンの実践ができたことは、とても大きな収穫。今後予想できる状況をもっとイメージして、いただいたフィードバックと良かった点を糧に成長していきたい」

「有意義だった。こういう講座に参加したのは初めてだが、本や机上で理解していたことと、実際にやってみることは全然違うということがよくわかった。自分がファシリテーター役をして学ぶだけではなく、みなさんのファシリテーターから学ぶことも多く、どの実践場面も参考になった」

「2日間ありがとうございました。ほかのみなさんも参加目的が明確だった上に少数だったため、互いに学び合える濃い会だったと感じた。アドバイスを今後に生かしたい」

「組織での役割や会の目的を念頭に持ちながら、中立のポジションで務めるファシリテーターの大変さと醍醐味を学んだ。実践編では、みなさんのファシリテーションを客観的に観察することで、自分とは無関係かと思っていたスキルが実は今の自分にも応用できることも発見。繰り返し復習し、一歩でも近づけるよう努めたい」

との嬉しい声が寄せられた今回の講座。
では、その2日間の内容を紹介しよう。

●1日目 基礎編

まず小林理事から、自己紹介と講座の趣旨が語られた。「本気で学びたいというニーズのある方へ、自分の知識と経験をフルに伝授したいとの思いから、“本気の”と名付けて実施してきました。人材育成、研修、心理学、演劇、ワークショップなど、私自身がこれまで学び、実践したきたこと、学んだ理論、体験してきた事例をあわせて、できる限りお伝えします。みなさんの仕事で、職場で、明日からすぐに取り組めるよう、具体的に深く落とし込んでいきますので、2日間よろしくお願いします」とあいさつ。さっそく円陣を組んで、参加者ひとり一人が自己紹介をかねて参加動機を述べた。職場でのグループワークに役立てたい、関連業者とのチームワークを育みたい、伝えるスキルを学びたい、講師デビューのため、会議をスムーズに議事進行したい、プロジェクトの活性化、参加メンバーの活性化など、職種も立場も目的もさまざま。実は開催に先立ち、事前アンケートで各自の参加目的を把握していた小林理事だが、それらを参加者同士も知ることにより、ファシリテーションスキルはさまざまな状況で生かせることをまず共有した。
「体調を崩されて数名のキャンセルがあり、私の講師人生の中でも今回は最少の受講者数です。でもその分、個々をしっかり見聞きできるので、密度の濃い2日間になると思います」と意気込みを見せ、さっそく基礎編の講座をスタートした小林理事。その言葉どおり、円陣を組んだこの何気ない冒頭の時間が、後の講座のいたる場面で効力を発揮することになる。




座学では、まずファシリテーションとは何か、ファシリテーションが生まれた時代背景、そして今の時代になぜ日本でもファシリテーションスキルが求められているのか。ファシリテーターの5つの役割と本質、従来型リーダーとファシリテーション型リーダーの違いについて講義を進めた。もとはアメリカで発祥し、理論形成されたたが、日本でもここ数年、一般的な言葉として知られるようになってきた。だが、会議の進め方だと捉えられることが多いという。小林理事によれば、会議の進め方もファシリテーションのひとつに過ぎない。たとえば組織を超えたプロジェクト、地域活動、コンセンサスを図る集会、初対面の複数の人が集まるセミナー、企業内外を問わないあらゆる多様な集団を円滑にすることが、ファシリテーターの務めなのだ。

ファシリテーションを一言で表現すれば、「集団の相互作用を促進する働き」。つまり集団全体を把握し、場をつくり、個々を受け入れ、個々の資源を引き出し、整理し、合意を促し、集団を促進するのがファシリテーターの役目。その役目に必要なスキルのアウトラインを共有した後、場を読む、場をつくる、非言語メッセージを読み解く、プロセスの観察ポイントについて学習した。

場を読む・場をつくるの項では、場を阻害する要因について、参加者の中からファシリテーター役を立てて全員でディスカッション。また、集団の緊張を解きほぐし、場を和ませ、コミュニケーションを取りやすくするアイスブレイクも実践した。小林理事は体験談も紹介し、アイスブレイクの実施タイミング、集団の種類に応じたプログラム、アイスブレイクの意味を説明することによる効果なども披露した。




続いて、講師に必要なプログラムデザイン、正確かつ理解度を深めるためのレクチャースキル、演習やワークを促進するインストラクションスキル、人前であがる原因、その克服法と対処法、傾聴のスキル、発言を受けとめ深めるための質問のスキル、要約・まとめる・理解を促すレイアウトスキルなど、ファシリテーターに必要な基本的な概要について、講座とワークで学習した。そのつど小林理事は、会の冒頭に全員で共有した個々の参加動機と課題に照らし合わせ、「○○さんの場合には」「こういう現場では」「○○な事態になったら」と、具体的なポイントを重ねあわせて解説。これは当事者だけにとどまらず、ほかの参加者にとってもひとつひとつのスキルを理解する上でイメージしやすく、最初の共有タイムが効果的だったことを改めて実感。そして初日の最後は、翌日の実践編の個々のテーマを確認し、6時間におよぶ基礎編は終了した。







●2日目 実践編

翌日の実践編は朝10時からスタート。初めのあいさつで小林理事から実践編のタイムスケジュールと配役が発表され、今日の目的を次のように語った。
「昨日はファシリテーターの基礎スキルを学びました。ファシリテーターはあくまでも中立の立場。でも現実には、職場で、現場で、会合で、顧客先でと、みなさんそれぞれの立場やミッションを背負った上でファシリテーターを務めます。時には、リードやジャッジをしなくてはなりませんし、臨機応変にその場に対応する柔軟性がとても求められます。今日の実践編では、それぞれの課題や仕事に即した具体的なテーマで実践していただきます。またフィードバックのファシリテーターも全員に体験してもらいます」と述べ、さっそくフィードバックスキルについて解説した。



フィードバックとは、ファシリテーターに欠かせない重要なスキルのひとつであり、相手の成長を促すことを目的に改善点を伝えるもの。単なるアドバイスや指摘、批判ではない。人はどうしても他者の至らない点を見つけやすく、特にリーダーはその経験値から、他者のできなかった点、改善点をついつい良かれと指摘しがちだが、ファシリテーション的なフィードバックは、相手や集団が成長したいというニーズがあることが前提なのだ。また、フィードバックする項目数も要注意だという。たとえ100の改善点を見つけたとしても、多くのことを言われたら、言われる側はどうだろうか。すぐに改善できることもあるだろうし、課題として受け止める場合もあるだろうが、多すぎたり、レベルが高すぎたりすれば、相手は萎縮してしまいフィードバックが逆効果になることもある。小林理事はフィードバックする目安を「130%頑張れば改善できること。それにより成長が予想できること」だと述べ、多い場合はその中から取捨選択し、ベストな数、ベストなタイミング、ベストな場所で伝えることの重要性を説いた。あくまでもフィードバックとは、「相手の成長」が目的であり、成長できる範囲で伝えることが大切で、憶測や思惑から発するものではなく、「できていない」「悪い」といった評価をすることでもないと小林理事は念を押した。さらに質疑応答を行い、効果的な伝え方、フィードバックされることを望んでいない相手に気付きを与えるテクニック、タイミングの図り方、相手のレベルをどのように判断するかなど、参加者それぞれの実体験も交えながら理解を深めた。




次に、交流分析エゴグラム(egogram)を用いて参加者の行動パターンをチェックした。これは、いくつかの質問項目に「はい・いいえ・どちらでもない」と答えていくことで、大人でも子どもでも持ち合わせている5つの心の部分(Critical Parent、Nurturing Parent、Adult、Free Child、Adapted Child)を数値化でき、グラフ化することで行動パターンと心的エネルギーを知ることができるもの。5項目の中で突出しているものが、無意識あるいは余裕がない時に行動に出やすいパターンだという。各自の分析結果をもとに2グループに分かれ、互いのエゴグラムをチェックしあった。「意外!」「バランスの良さはイメージどおり!」など、感想もさまざまだった。どの項目が高ければ良い・悪い、ではなく、5項目はすべての人が持ち合わせており、項目ごとにメリットとデメリットの両面がそれぞれにあるという。自分の行動傾向を知るだけで終わらせず、ファシリテーターを務める時や、対クライアント、初対面の会合などで、より良い関係づくりのツールとして役立ててほしいと小林理事は説明した。





フィードバックスキルと交流分析エゴグラムを念頭に、いよいよ実践! 実際にひとり一人がテーマに合わせてファシリテーターを担当し、1テーマ終わるごとに、また別の人がファシリテーター役を務め全員でフィードバックしていくという40分×6ラウンドが始まった。



課題をもとに多くの発言を求めるブレストミーティング、参加者の意見をもとにテーマを抽出しディスカッションするワークショップ型、企業での講師を想定したレクチャー、顧客先の多部署会議を想定したチームファシリテーションとコンセンサス、明確な指示と動機付けにより集団を動かすインストラクションなど、5テーマを実践した。参加者はいちメンバーとして実践の場に加わりながら、ファシリテーター役の「良かった点・改善点」をメモしていく。また時には非協力的なメンバーを演じて、ファシリテーターの柔軟性や行動パターンをチェックしあった。こうして1テーマが終わる度に、全員でフィードバックを行い、その後で小林理事からさらに細かな点をフィードバック。その着目点、伝え方、言葉の選び方ひとつひとつを全員で共有。最後に「良かった点・改善点」のメモを交換しあい、約7時間に及ぶ実践編が終了した。








取材・文、撮影/岡部 恵

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