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つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!第20回NICe全国交流セミナーin東京 全編レポート








2013年12月14日(土)、東京港区の女性就業支援センター(旧女性と仕事の未来館)で「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!第20回 NICe全国交流セミナー in 東京」が開催された。プログラムは6部構成で、NICe初となる「NICeなビジネスプランコンテスト グランプリ本選」も実施された。参加者は、北海道、秋田県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、愛知県、福井県、大阪府から48名が結集。うち10名はNICeそのものを初めて知ったという初参加者で、まさに「全国交流セミナー」にふさわしい学びの場となった。

実行委員長を務める横山岳史氏の司会進行でスタート。「2013年をしめくくる大充実の6部構成です。今日一日よろしくお願いします」と開会を宣言した。




■第1部 つながりワークショップ



ファシリテーター NICe理事 小林京子氏



「今日はできるだけ多くの方とつながっていただくのが趣旨の全国交流セミナーです。つながるには、互いを知ることが第一歩。そこで考えたのが、この『つながりワークシート』です」と小林氏は、参加者へ配布してあるA3サイズの紙を掲げた。この『つながりワークシート』の中央に氏名欄があり、周囲には「仕事はこれです」「ここに住んでいます」「持っていません、足りません」「持っています」「得意です」「嬉しかった!」「プチ自慢」「欲しいです」「これからしてみたい」「大切にしています」の10個の空枠がある。

「なぜこんなにシートが大きいのかというと、記入後に周りのみなさんへ見せるためです。つまり自己紹介シートです。まずは空欄を埋めてみてください。長い文章で書かず、なるべくシンプルにワンフレーズで書いてみてください。では3分で。よーいドン!」



3分後、会場内をひとまわりした小林氏は、共通している人を見つけようと問いかけた。
「持っています、大きな声。ほかにいますか?」いるいる!
「欲しいもの、刺激。ほかにいますか?」いるいる!!
「欲しいもの、安心。ほかにいますか? あら、刺激の方が多いですね(笑)」

住まい、足りないもの、プチ自慢など、参加者全体の共通点を見つけ合った後、5,6人のグループになってひとり1分で『つながりワークシート』を見せながらの自己紹介タイムとなった。あちこちで共通点が見つかったのか、初対面同士というのに歓声や笑い声、拍手が沸き上がり、会場内は和やかなムードに包まれていった。




最後に小林氏から、「わずか数分の時間で、実にさまざまな方が今日ここに集まっていること、共通点もわかったと思います。短い時間でしたが、まずはつながる第一歩を感じていただけたかと思います」と語り、NICeの会に初参加した10名へ拍手を送って第1部を締めくくった。




■第2部 互いの頭脳を交換しよう!



ゲストスピーカー 武藤洋平氏(福島県二本松市)
 『季の子工房』
 http://namekoya.web.fc2.com/index.html
コメンテーター  増田紀彦代表理事
ファシリテーター 小林京子理事


第2部は、互いの頭脳を交換するプログラム。ひとりの登壇者が事業プランや課題をプレゼンし、その解決へ向けて参加者全員が「自分だったら」という当事者意識で建設的なアイデアを出し合っていく、NICeではおなじみの全員参加型ワークだ。他者の意見を聞いてまた新たなアイデアを重ねていき、頭脳と頭脳のバトルで解決策を探っていくこのワークは、全国各地の勉強会やリアルイベントで実施されている。
ファシリテーターを務める小林京子理事は、「いわゆるブレインストーミングです。いかにして解決していくか、頭脳をフル回転させてアイデアを出していきます。ルールはひとつ、出たアイデアの可能性を断ち切ってしまわずに、とにかくアイデアを出すことです。
その中で実行するかどうかはプレゼンテーター次第です」と趣旨を説明し、プレゼンテーターの武藤洋平氏を紹介した。




●プレゼンテーション

武藤洋平氏はなめこ専業農家の2代目であり、宿泊もできるイタリアン農家レストラン「季の子工房」のオーナーシェフでもある。レストランのテラスから見えるという美しい風景画像をプロジェクターに映し出しながら、自己紹介と地域の説明からプレゼンをスタートした。



武藤氏の地元は福島県二本松市の旧東和町。阿武隈川が流れる山間地にあり、その合間に里山の風景が点在するのどかな地域。起伏が激しく、自転車ロードレースやカヌーなどの大会でも有名だ。かつては養蚕業が盛んな地だったが、中国産シルクに押され、養蚕業は激減。だが蚕の餌であった桑の畑が今も多いことから、桑の葉を生かした健康食品や桑の実ジャムなど、桑の加工品を特産としている。

家業であるなめこ生産は、武藤氏が生まれた1983年に父が創業。現在は両親と武藤さん3人で、年間60tのなめこを生産している。
いずれ家業を継ぐだけではなく食材も生かしたいと、武藤氏は1999年に調理師免許取得。2005年に、完全予約制の農家レストラン『東和 季の子工房』http://namekoya.web.fc2.com/index.html を開業した。以降、年間350〜600名の来客があったが、2011年3月の震災の影響を受け、250名までに減客。さらに原発事故後の3か月間は、なめこの出荷規制も受けた。その後、規制が解除されても、震災と福島第一原発事故の影響は大きく、経営状況は厳しさを増していった。

この危機を脱しようと、地域の農家7軒と農家民宿を始めた。現在は13軒の農家民宿が開業し、2014年には1000名を超える宿泊実績をあげている。ほかにも、地域の「NPO法人ゆうきの里 東和」「東和グリーンツーリズム推進協議会」をはじめ、地域の人たちと連携し、地元・旧東和町の活性化と新商品開発にも取り組んでいる。現在は、地域の仲間と力を合わせながら地域の輪を広げつつ、東京など県外での催事に出店して直販したり、消費者への発信に務めるなど、県内外への働きかけに頑張っているところだという。

さらに今後は、西洋野菜の栽培を始めたいと述べた。自身の農家レストランの付加価値増加を目指すとともに、調理師の感覚を生かし、小規模農家の可能性を探ることが、地域の魅力のひとつになれるのではという思いからだ。その思いを強めた背景として、震災後に各地の催事へ赴き、自ら販売した経験と、農業6次化セミナーなどを受講して学んだことが大きかったという。発信していくことも大事だが、それ以上に、生産者自身がチャレンジしていくこと、そしてそのチャレンジャーの人数が多ければ多いほど、地域の魅力につながるという思いに至ったと語った。

西洋野菜の栽培を始めたい。だが、問題は人手だ。これまで家族3人でなめこを生産し、レストランを営んできた。さらに新たに栽培作業が加わるとなると、仕事量が激増する。家族3人ではとうてい難しい。そこで、今日プレゼンに登壇したのは、欲しい人材をいかにして見つけるか、そのアイデアを求めて登壇。武藤氏が欲しい人材、希望する人材とは、調理か農業かいずれかに明るく、技術がなくても理解できる人、またはしようと意欲がある人。食を通じて何かにチャレンジしようと思っている人、地域活動に理解を示し、積極的に参加してくれる人だ。つまり単なる労働力ではなく、意欲があり、一緒に地域を盛り上げてくれるような本当の意味の仲間が欲しいのだ。震災後のハンディを乗り越えながら、一緒にやってくれる仲間がほしい。そういう仲間がどこにいるのか。どうすれば一緒に仲間になってくれるのか、みなさんからのアイデアや知恵をいただきたいと述べ、プレゼンテーションを締めくくった。




●質疑応答

コメンテーター役のNICe増田代表が補足説明を行い、質疑応答に入った。
旧東和町は二本松駅から車で30分と交通の便がやや不便だが、自然豊かでとても美しく、地域の生活コストも安い。武藤さんが栽培したい西洋野菜は主にイタリア料理に欠かせない種類で、今現在それらの生産農家数は少なく、入手も困難だという。

増田氏「なめこの卸価格は震災前の価格にようやく戻ってきたところです。なめこは通年で栽培できるので、それもやりながら、農家レストランも経営しながら西洋野菜の栽培も始めたい。となると人手が足りません。アイデアを出し合う前に、これだけは武藤さんに確認しておきたいという質問はありますか?」



Q:自分のクローンが欲しいのか?
武藤氏:そうではなく、仲間です。ぶれてほしくないのは、何のためにやるのかです。地域で頑張っていくことを共有してくれる仲間が欲しいのです。

Q:日本人に限りますか?
武藤氏:根幹が共有できれば人種も性別も問いません。

Q:人材がほしいとのことですが、労働として雇用したいのか パートナーなのか。分けて考えていますか?
武藤氏:単に労働力ではなく、欲しいのは仲間です。ですが自然相手ですからリクスも当然ありますし、正当な対価を払えるかというと、経営状況からは厳しい。ですので一緒にチャレンジしようという熱い思いがないと、難しいと思っています。



Q:今までこういう人材募集をしたことは? その時の反応は?
武藤氏:広く募集はしていません。が、声をかけたことはあります。先が見えないことですし、自分が上手に説明できなかったこともあり、『面白い、やったらいい』で終わってしまいました。

増田氏「いきなり就職するとか契約するとかではなく、まずは武藤さんのところへ来てもらう、ファンになってもらうという発想もあると思います。一緒にやってくれるような人材がどこかにいるという前提で、会いに来てもらうために、どのような仕掛け、宣伝、きっかけが考えられるでしょうか? また、そのような人はどういうところにいるでしょうか? グループで7分間、アイデアを出し合ってみてください」

●グループディスカッション





●発表タイム!

Aグループ


・産学連携に近いポジションとして農業系の大学や短大などに働きかけ、学生とのコラボやインターン制度を導入してはどうか。
・レストランの店内でイベントをして告知する。
・Facebookでグループページをつくり、応援者を募る。社会貢献思考の強い人を集めて、チャレンジーを募る。
・地域の農家とプロジェクトを組んで、テレビの制作会社などへドラマの舞台にしてもらう。

Bグループ


・体験を売りにして学生やインターンに声をかけてみたらどうか。
 農家宿泊体験をしてもらう。宿泊費用は自治体にも一部負担してもらう。
・対象は地域外だけではないのでは? 地域の主婦、地域で働けそうな人がまだまだいるのでは?
 高齢者、退職後の人にまずは声をかけてみたらどうか。
・シェフとも友達になりたいとのことなので、都内レストランに働きかけて告知協力をあおぐ。

Cグループ


・まずは農業系の学校へ働きかけ、生徒さんに見学に来てもらう。
・「WWOOF農場ボランティア」のサイトを活用する。
・婚活イベント。
・障害者就労と農村活性化を兼ね合わせた農業の福祉化として取り組んではどうか。
 事業化できていない施設や福祉事業所を誘致する。
・セカンドライフを考えている人たちの集まりに参加してプレゼンする。

Dグループ


・企画段階と実作業は別ではないかという意見から、段階を分けて進めるのがいいのでは。
・人材を若者か高齢者かにしぼってアプローチする。

Eグループ


・武藤さんには『なめこ王子』になってもらい、ファンをつくる。
・野菜ソムリエやフードコーディネネーターなど食に興味があり資格を持っていて、
 何か仕事に生かしたいという層へ発信する。
・武藤さんの料理技術を教えるなど、なめこソムリエのような資格をゆくゆくつくってしまう。

Fグループ


・仕事旅行者(旅行感覚での職業体験型研修)にアプローチする。
・農業に関心が高いタレントさんや芸能人に協力してもらい話題をつくる。
・ボランティアや学生など、まずは夏休みのアルバイト募集。中には共感する人が出てくるのでは。
・なめこは健康にいいイメージがあるので、ダイエットプログラムや食育でアピールしてはどうか。「ダイエットができて仕事にもなる」は、PRポイントになる。
・なめこは今ブームなので、コラボできれば。目指せ『ふなっしー』


●フリートークでのアイデア



・若い人はもちろん60、70歳代で田舎に住んでみたい、人の役に立ちたい、畑仕事やりたいという人はいると思う。
・秋田県横手市では市が実験農場を持っており、いろいろな野菜を栽培し、市場で売れそうだと判断できると農家さんへ栽培を薦めるという取り組みをしている。武藤さんも、行政へ、西洋野菜を実験的に栽培したいと提案してはどうか。行政から補助してもらい、それを人件費に充てるなど計画してみては。武藤さんの発想の原点には地域を良くしたいという思いが強くあると感じたので、地域の農家さんと一緒に実験的に栽培すると行政へ提案すれば、市も応援してくれるのではないか?
・『なめこ王子』だが、イチゴ共和国やメロン共和国などのように、共和国をつくれば?
・福島県石川町にリンゴ農園を継いだ元モデルさんがいて、農園の中で花見をしたりイベントしたり、女性ファンが多く、テレビの取材も受けていた。武藤さんもかっこよくすればできるのでは?
・NICeの九州のメンバーにお茶屋さんがいて、催事などでは素敵なユニフォームを着ておしゃれにお茶を煎れてくれる。女性客はぐらっと来ます(笑)。かっこいい路線はできると思う。また真逆で、『ふなっしー』のような路線もありと思う。飛ぶとは逆に、何か決めポーズ、所作を考えてみては。
・子どもに受けると、保護者も一緒に来るので、子ども向けに“ぬるかっこいい”キャラを設定しては?
・写真集はどうか。

武藤氏の感想
「みなさん、ありがとうございます。自分には固定概念があって、始めたら骨を埋める覚悟のある人、と思っていました。でもみなさんのアイデアを聞いて、まずは身近な人たちがいるなと気付きました。地域には元気な高齢者の方がたくさんいます。先輩方の力を借りて基礎をつくって、学生へ、と段階ごとに進めていくことを考えたいと思いました。その後で、ぬるキャラなど交流イベントの要素として組み合わせていけるかと思います。本筋をつくってから、その段階ごとで、発信する内容や思いを伝えていくことが大事だなと思いました」



増田代表の総評
「みなさんはすごいプレゼントを武藤さんへしましたね。アイデアそのものだけではありません。最初は武藤さん、やる気満々だったでしょう? 意欲が高い人ほど、性急になりがちです。早く手応えが欲しいと、急いでしまう。テンションの高まり、やる気、焦りは紙一重なのです。しかし、武藤さんはしっかりみなさんの意見を聞いていくうち、アイデアを段階ごとに組み合わせていこうと。まずは地元の方、高齢者、学生、有名になってから一緒にできる人へと、人材像ができていきました。一気に進めるのではなく、段階的に進んでいくという意識になっていきました。こういうことは、ひとりでは考え及ばないことです。たくさんの頭脳をぶつけ合うことで、すばらしい発想が生み出されていきます。みなさんも、人のアイデア、別のグループのアイデアを聞いて、さらに発想が広がったと実感できたことでしょう。互いの頭脳を交換する、その醍醐味がわかったかと思います。武藤さんにもみなさんにも、拍手です!」




■第3部 基調講演 



「実例! 連携ビジネス、成功の秘訣
 つながり力でチャンスをつかめ!」

一般社団法人起業支援ネットワークNICe 増田紀彦代表理事




「意欲が高い、逆に言えば、思い込みが強くなります。自分ひとりだけで考えると、アイデアも足りなくなるし、偏った発想になっていく危険性があります。しかし、先ほど武藤さんの事業課題をみなさんで話し合ったように、異なる頭脳が入ってくると、足りなかったパーツがぴたっと完成していくことがあります。NICeはそれを目指しています。異なる資源、異なる知識、異なる知恵、異なる技術、自分に足りないものを持ち寄って、組み合うことで、がっちり市場をとれるような強いビジネスをつくっていく。そういう活動をしています。では、どのような組み合わせで、どんなビジネスができるのか。今日はクイズ形式で紹介します。まさかとまさかの組み合わせです」

頭脳と頭脳の交換に興奮冷めやらぬまま、休憩もなく始まった基調講演。増田氏はさらに勢いを増し、得意の問答スタイルで参加者へ質問しながら、連携ビジネス事例を次々と紹介していった。「まさか!」と思われる事例、「あ、そうか!」と意外にも身近な事例など、事前に準備した6事例のほかアドリブで、「誰に売るか、何を売るか、どう売るか」の「誰に」を代えることで「まさか!」へ展開した新規事例も時間が許す限り披露した。





「話を聴いて、なるほど!と思ったことでしょうが、まさに、コロンブスの卵です。誰でもできそう、けれど、最初にするのは難しい。ここで大事なことは、つながり力を発揮すること。自分ひとりで考えるビジネスだと小さく、弱くなる危険性があります。小さく弱いと、市場のニーズを拾いきれません。そうすると最初は順調でも、あっという間に大きな経営資源を持っている会社に市場を奪われてしまいます。今日、繰り返し言っていますが、新しい事業をやろうとしたら、十分に顧客ニーズを捉えるべく、自分にはないものを持つ他者と連携することが大事なのです」

増田氏は、『つながり力を発揮し、新規事業をスタートさせるまでのステップアップ』と題し、次の流れをプロジェクターに映し出した。



新規事業創出を決意する=仲間を大切にする

自己の弱み強み、仲間の弱み強みを認識する

それぞれの強みを生かし、弱みを補う事業アイデアを探る

アイデアを事業計画にし、修正を繰り返して完成度を高める

事業計画を完成させ、協力者や見込み客を獲得する

必要な経営資源を調達し、事業を開始する


「慌てて事業連携する仲間を探そうとしても、できません。運命共同体なのに、急に知り合って表面的に組んだって、そんなものは長続きしません。金の切れ目が縁の切れ目で、いずれ崩壊します。ですから日頃から今日のような会に参加して、人間関係をつくっていくことが大切です。今ここに集まっているみなさんは、実にいろいろな地域の、異なる業種、異なる経営資源をお持ちのみなさんです。ぜひ今日の機会を生かしてください」


そして、講演のラストに「なるほど!」の連携ビジネス事例として、このステップを踏んで今秋から本格始動した「経営者のためのお悩み相談センター」を紹介した。これは、NICe正会員でもある上久保瑠美子氏が、全国のNICeな仲間の強みを活かして立ち上げた連携ビジネスだ。



名称のとおり、事業内容は経営者の悩みに対応するサービス。特徴のひとつは、経営に関する相談のみならず、オフィシャルからプライベートまで、あらゆるお悩みを相談できること。さらに、相談に対応するのは40名を超える専門家アドバイザーチーム。ひとつの相談ごとに対して複数のアドバイザーから回答が得られ、相談者は複数の回答から取捨選択することができるうえ、改めて個別に相談して解決を深めることもできる。また、ネット全盛の現代に電話での相談ができる点も大きな特徴だ(公式サイトhttp://www.iikeiei.com/)。

「ネットを使える経営者なら自分で検索したり、コンサルタントに相談します。ですが、PCを常時使える経営者は決して多くありませんし、たまたま近くにいる人に相談するとか、同地域だからこそ相談できないことも多々あります。複数の人からアドバイスをもらえる経営者はさらに少ないでしょうし、まして専門家からとなると少ないですよね。まさに日本全国のNICeメンバーの強みを生かし、つないだ好事例です。ぜひ上久保さんの後に続いてください。そこで2014年2月からは、私が主宰する勉強会『切磋琢磨の会』をスタートします。「つながり力」による連携ビジネスを続々と生み出すための特訓の場です。ぜひ、参加してください。

最後にあらためて、つながり力。多くの人がこういう集まりがあると、自分ができること、自社のアピールをしますよね? でも、相手は何が得意なのかを先に聞くことが大切です。相手ありきで考えてあげることで、自分のビジネスチャンスが出てきます。先ほど、みんなで武藤さんへ知恵を出しましたよね? 会が始まる前に、ご自身は農家の人材獲得のために知恵が出せると思っていましたか? でも結果、できたのです。できないと思っていたことでも、他人のものさしと真剣に付き合うことで、できる、役に立てる、自分の発想や知恵も通用するのだと発見できたのではないでしょうか。ひとりで自問しても広がらないですが、相手の土俵に上がって考える、答えることで、考えられる・答えられる自分に気が付くのです。そういう喜びを循環させながら、資源を組み合わせ一緒にやっていこうと認め合える仲間ができていきます。

日本の景気はまだまだ芳しくありません。みなさんの業界も厳しいでしょう。けれども、先に紹介した連携ビジネス事例を忘れないでください。時代とともに経営状態が苦しくなっても、残っている強みを組み合わせたことで成長した事例、同じ技術を別のところへ持っていくことで最終価格に大差がついた事例、脱下請けを目指して販売元へ転身した事例、地域にある資源や家族の資源も生かして組み合わせた事例、どれも自分ひとりで頑張ったのではなく、つながり力を発揮した結果です。景気が悪い、ダメだダメだと思っていないで、その中でも、自他のいいところ・強みを見つけ合って組み合わせていけば、今日ご紹介したような事例に自分たちも続いていけます。そういう見つけ合える機会と場をこれからもNICeは提供していきます」




■第4部 

京都・光泉洞 協賛 

第1回 NICeなビジネスプランコンテスト グランプリ本選



休憩を挟んで始まった第4部は、NICe初となるビジネスプランコンテストのグランプリ本選。司会進行は、TV番組などでもナレーションを務める声のプロ、愛知県から参加したNICe協力会員の梶田香織氏が務めた。



「今朝は名古屋から第2東名を使って東京へ来ました。天気が良く、途中で富士山があまりにもきれいに見えて、まるで彫刻で掘ったかのようでした。あんなにきれいな富士山を見たのは人生初です。そして今日、これからグランプリ本選が行われる第1回 NICeなビジネスプランコンテスト。こちらも初回ですから、心して進めたいと思います。初代グランプリは永遠に名を残せるわけですから、ファイナルに出場される3名の方にはぜひ頑張っていただきましょう」とあいさつ。続いて、第一次書類審査の審査委員長を務めた増田氏から、講評と協賛企業の紹介が行われた。


○第一次書類審査の講評

■応募期間 2013年10月21日〜11月12日
■応募総数 26件
■男女別 男性20件 女性6件
■地域別
北海道1件 岩手県1件 宮城県1件 福島県3件 茨城県1件
埼玉県2件 東京都2件 神奈川県2件 新潟県1件 石川県1件
愛知県2件 京都府1件 大阪府2件 和歌山県1件 岡山県1件
福岡県1件 熊本県2件 鹿児島県1件
■一次選考審査員
福島重典氏(京都御池税理士法人)
池内由里氏(リクルート『アントレ』編集部)
寺田勝紀氏(ベンチャービジネスカレッジ)
増田紀彦代表理事(一般社団法人起業支援ネットワークNICe)
■一次選考評価項目
独自性、市場性、競合優位性、実現可能性、連携性



「告知期間が短かったのですが、北から南まで驚くほど多彩な地域からご応募いただきました。応募総数は26件です。4名の審査員が5項目10点満点評価を行い、その結果、上位は非常に高い点数となりました。特徴的だったのは、自分の地域の資源あるいは地域の課題解決型、もう一方では社会問題や行政では対応できない問題の解決型、3つめは通信系の新しい技術の提案や利用法などのプランが多かったことです」と、増田氏は語り、一次選考で高得点を獲得しながら惜しくも上位3名に届かなかった6名のプラン名を挙げ健闘を称えた。続いて、当コンテストに協賛くださった京都・光泉洞http://www.wachagashi.jp/kosendo/ を紹介した。



光泉洞代表の諏訪幸子氏は起業家であり、増田氏と旧知の仲だという。諏訪氏は京町屋の伝統文化を大切に継ぎ残したいと、明治時代に建てられた築100年以上の京町屋を改装し、1996年にお昼処・光泉洞寿み(こうせんどうすみ)』を開業。場所は姉小路にあり、赴きのある店内では、享保年間(1717年)創業の日本茶専門店・一保堂茶舗さんのお茶や、江戸時代創業の生麩の老舗『麩嘉(ふうか)』さんなど、こだわりの食材を使った京都の家庭料理を提供している。また、諏訪氏は京都の伝統文化を伝える活動にも精力的で、海外のメディアや文化人との交流も深いという。京都へ訪れる機会があればぜひ立ち寄ってくださいと、『お昼処・光泉洞寿み』のリーフレットを参加者へ配布した。そしていよいよグランプリ本選! 一次選考の3名が、それぞれ7分14秒(7ナ、1イ、4ス)のプレゼンテーションを実施した。


●岡田昭彦さん(北海道)Tobgetとかち 帯広地域雇用創出促進協議会
「十勝の元気は、北海道の元気!北海道の元気は、日本の元気!
 トカチbuffet(十勝食材フェア)で集客サポート」

●小倉健二さん(埼玉県)有限会社ケンテックシステムズ 代表取締役
「ノンスキャフォールディング講習」

●柳沼美千子さん(福島県)パン工房MANA 代表
「山葡萄で作るパンの酵母と米粉のパン開発、
 山葡萄の蔓の栽培やあけび蔓で作るかごの技術の伝承」








※グランプリ本選 プレゼンテーションの模様はこちら別レポートをご覧ください。
http://www.nice.or.jp/archives/20299





■第5部 NICeなブース交流



NICe内外の参加者同士がリアルに出会い、事業にも人柄にも触れ、互いの価値や連携ビジネスのヒントを見つけ合うことを目的に企画された「NICeなブース交流」タイム。NICeなビジネスプランコンテスト グランプリ本選の開票結果が出るまでの60分、事前に出展応募した各人が思い思いのブースを披露した。ブース出展料は無料だったこともあり、予定設置数を超える応募があったため、 一部では複数の出展者がシェアして使用してもらった。





北海道十勝の生産品・観光PR/Tobgetとかち 帯広地域雇用創出促進協議会
▲コンテスト本選に登壇した岡田氏がさっそく十勝の産品をアピール


新潟県十日町の生産品・観光PR/本山実里氏
▲十日町でこだわりの魚沼産コシヒカリと餅米をつくっている米職人集団の自慢のお餅も


ストレスチェック(血管年齢と自律神経の検査)/株式会社アイナース 八木京子氏
▲今後起こりうる病気の原因となるものを見つけるためのストレス検査。順番待ちの列も


経営者のための相談会/お悩み相談センター 上久保瑠美子氏
▲増田代表の講演の中で連携ビジネス事例として紹介された「経営者のためのお悩み相談センター」


秋田県横手市の生産品PR/横手雇用創出協議会 あぐりん 鈴木尚登氏
▲秋田県横手市から参加した鈴木氏は、本場のあきたこまち新米、いぶりがっこ、平賀産リンゴの試食も行った


東北からフィリピンへの懸け橋 思いを届けたい/レインボーハート
▲秋田県横手市で英語教室を経営するダイアナレイン氏(写真右)は、台風30号により甚大な被害を受けたフィリピン支援を訴えた


素質統計学体験/横山岳史氏
▲人の素質ベクトルの特徴と傾向など、自分を理解する素質統計学。終了後、懇親会でも体験希望者が続々


写真絵本『てくてくま』/てくてくまプロジェクト
▲絵本作家とテディベア作家の豊かな才能の出会いから生まれた『てくてくま』。写真絵本、Android対応アプリなど展開中


パン工房MANAの自然酵母パン/柳沼美智子氏
▲柳沼氏もコンテスト本選のプレゼンでPRした自然酵母パンと山葡萄蔓工芸品をお披露目


なめこ農家の大粒なめこ/武藤洋平氏
▲第2部で登壇した武藤氏は自家製のなめこを持参し、美味しい食べ方やレシピを紹介した


つながる健幸運脳遊具「つなが輪(リング)」体験/笑足ねっと 白川正志氏
▲新潟県柏崎市から参加した白川氏は最新遊具を持参。デモ体験に初対面の参加者も楽しそう


声・話し方、笑顔度チェック診断/プレゼンジャパン 梶田香織氏
▲第5部で司会進行を務めた梶田氏。声だけで笑顔を感じられる好感度upの話し方をアドバイス


2014年NICeのリアル予定
▲次回の全国交流セミナーの予告を始め、勉強会や講座を案内。詳細はこちらhttp://www.nice.or.jp/real_schedule



■第6部 

第1回 NICeなビジネスプランコンテスト  グランプリ 

いよいよ発表!



増田代表から、投票総数と結果が発表された。

「投票方法は無記名式で、投票用紙に1位2位3位を記入。
1位5点、2位2点、3位1点の加算方式により集計し、
以下のようにグランプリを決定しました。
投票総数46、うち有効投票数も46、棄権・無効はありませんでした。

では、発表します!」





それまで和やかだった場内も、一瞬、静まり返り固唾をのむ。
増田氏は、淡い桃色の封筒を背広の内ポケットから取り出し、
レターナイフで封をカットした。

取り出された1枚の紙に、場内の全員の視線が集中する。

「グランプリは・・・・・・」


 






「集計の結果、トップの得点を、なんと、おふたりの方が獲得!
 そのため、グランプリは以下の方のダブル受賞と決定いたしました!

柳沼美千子さん
 山葡萄で作るパンの酵母と米粉のパン開発、
 山葡萄の蔓の栽培やあけび蔓で作るかごの技術の伝承

小倉健二さん
ノンスキャフォールディングの講習

おめでとうございました!」




第3位入賞の岡田昭彦氏、グランプリ受賞の柳沼美千子氏と小倉健二氏に、増田代表からそれぞれ表彰状が贈られ、グランプリ副賞10万円は、ダブル受賞となったため折半に。「事業化に向けて頑張ります!」と3人とも意気込みを語った。
また増田代表は「NICe認定連携事業候補として、今後、継続的な応援を実施します。そして次回、第2回のNICeなビジネスプランコンテストが開催できるよう頑張ります」と語り、5時間に及んだ第20回NICe全国交流セミナーはお開きとなった。






※グランプリ本選 プレゼンテーションの詳細はこちら
→ 別レポートhttp://www.nice.or.jp/archives/20299




■次回「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!NICe全国交流セミナー」は、2014年2月11日に福島県須賀川市で(詳細はこちら)、
3月15日に和歌山市で(詳細はこちら)、5月24日に名古屋市で開催予定。
そのほかの活動予定一覧はこちらhttp://www.nice.or.jp/real_schedule


撮影/前田政昭
取材・文・撮影/岡部 恵

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