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NICe東海スペシャル 開催レポート








2015年4月25日(土)愛知県名古屋市にて、「NICe東海スペシャル 」が開催された。「NICe東海」とは、(社)NICeの公式な活動機関として、愛知県・岐阜県・三重県の東海エリアのNICe会員が中心となって運営している地域活動だ。これまでほぼ毎月、名古屋市内で頭脳交換会(※)を開催し、参加者同士の知恵と情報の共有・循環を図り、互いの経営資源を生かし合って新規事業を生み出すための勉強会を重ねている。今回は、そのスペシャル版として、NICe増田紀彦代表理事と小林京子理事もかけつけ、“起業家脳”にしっかり汗をかく4部構成の特別プログラムを実施。愛知県内各地をはじめ、栃木県、東京都、神奈川県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県から19名が参加した。



NICe東海の副代表・野田哲也さんから、「今日はスペシャルということで、NICe増田代表と小林京子理事を迎えての開催です。頭にしっかり汗をかいて学び合い、夜はビールと日本酒も待っています。そこまでやるのがNICe東海ですので、よろしくお願いします!」と開会のあいさつがあった後、さっそくプログラム第1部が始まった。


■第1部 つながりワークショップ
ファシリテーター 小林京子理事




「つながりワークショップ」とはNICeオリジナルの交流ワークで、名刺交換や肩書きだけではわからない、その人の“人となり”、人としての経験や資源や想いを短時間でわかり合うというもの。参加者は、5、6名ずつ3グループに分かれて着席。ひとり1枚ずつA3サイズのシート『つながりQ10(キューテン)』と、太ペンが配布されている。そのシートの中央には氏名欄があり、周囲には「仕事はこれです」「ここに住んでいます」「持っていません、足りません」「持っています」「得意です」「嬉しかった!」「欲しいです」「プチ自慢」「これからしてみたい」「大切にしています」の10個の空枠がある。考案者の小林京子氏は、次のように説明した。



「NICeが提唱している“つながり力”という言葉がありますが、何なのか。仕事のパートナー、コラボする相手を見つける、出会うためには、人となりに向かい合うことをNICeは大切にしています。『この人とだったら一緒に仕事したい』『この人とならいい事業が生まれそう』。そのためにも、スタートは、名刺の肩書きではなく、こんな人間です、というところから出会いを始めましょう、人としてちゃんと出会おう!そのためのワークです。5分間で記入してみてください。記入できるところまででかまいません。何度かこのワークをやったことがある人は、今のご自分を書いてください。ではスタート!」




5分後、会場内を回っていた小林氏は、“欲しいです”の項に「居場所」と記入した人がいたことから、「あなたの居場所は?」と数名に質問して場内を和ませた。

「質問の言葉をどうとらえるかも、その人らしさが現れると思います。では、各グループ内で自己紹介をしてください。スタート!」





ひとり約1分の持ち時間にも関わらず、あちこちで歓声や笑い声が聞かれ、すっかり打ち解けた雰囲気に。最後に小林氏は、「今日はこのグループでラストまでいきますので、休憩時間や懇親会でもどうぞこのシートを活用して、名刺交換だけではできないつながりに活用してください」と結び、次のプログラムを紹介した。


■第2部 「入賞者に続け! NICeなビジネスプランコンテスト“特別講演”」
NICe増田紀彦代表理事




「第2部のあと休憩をはさんで行う頭脳交換会では、プレゼンターの永田さんの事業上の課題について、みなさんからたくさんのアイデアを出していただきます。NICeが得意なのはこの点です。
傍目八目(おかめはちもく)という言葉を聞いたことはありますか? 自分のことだとかえって自分では良くわからない、けれど、当事者ではなく第三者からは状況がよく見えるという意味です。ひとりの人の事業課題をみんなで考えるのが頭脳交換会です。一見、異業種だから自分とは関係なさそうに思われるかもしれません。が、そうではない。逆に周囲の人からのアイデアが、課題解決にヒットすることが多々あります。NICeの頭脳交換会ではいつも私が言うことですが、ひとりが100分考えるよりも、100人が1分考えると、その中にはびっくりするようなアイデアが出てきます。自分以外の脳も活用して、みんなで惜しまずに脳みそを、アイデアを、交換するのです。それを本日、永田さんの事業をテーマに行います。そして最後は、みなさんにもお話をしていただきます。非常に濃いプログラムです。最初にまず、NICeなビジネスプランコンテストについてです」



「NICeなビジネスプランコンテスト」とは、2013年からスタートした(社)NICeが主催するビジネスプランコンテスト。“つながり力を発揮して、新たなビジネスを起こす!”NICeの活動目的の推進のため、全国から新たなビジネスプランを募集し、その中から秀逸なプランを選抜して、事業化および事業発展のための様々な応援を行う取り組みだ。一次選考(書類選考)・二次選考(審査委員選考)を通過した上位5名のファイナリストたちが、ひとり5分間のプレゼンテーションを行い、その後、オーディエンス全員による投票でグランプリを決定する。第2回目となった2014年は、日本政策金融公庫の協力により、同東京中央支店にてファイナルステージ(本選)が開催された。増田代表は「今年も第3回を開催しますので、ぜひ東海のみなさんからたくさんのエントリーが来るように頑張ってください」とエールを送った。



また、増田代表は講演の中で、プランを評価するための項目について詳しく説明。
「NICeは、独自性、市場性、実現可能性、連携性の4つの視点でプラン評価しています。ところがコンテストの主催者が変われば、この項目も微妙に変化します。たとえは金融機関なら採算性、ベンチャーキャピタルなら新規性、業界団体などなら競合優位性、コミュニティビジネスやソーシャルビジネスだと公共性……といった具合です。前回のNICeなビジネスプランコンテストで上位に入賞したプランは、いま申し上げた独自性、市場性、実現可能性、連携性のいずれもがすぐれていました。が、実はすぐれていたのは、それらの項目だけではありませんでした。あと2つ。つまり収益性と社会性。これらもすぐれていたのです。もちろんこれらは評価項目には存在していないのですが、いいプランというのは、自然とこの部分が滲み出てくるものです。つまり、世の中のためになることをやって、それでしっかり儲けようという話ですね。こういうプランには応援したい気持ちがわくでしょう。そんなことも頭に入れて、第3回のNICeなビジネスプランコンテストに、ぜひ挑戦していただければと思います」と訴えた。

※参考
【第2回 NICeなビジネスプランコンテスト入賞8プランの魅力的な計画概要を一挙紹介】
「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.25
http://www.nice.or.jp/archives/25850
第2回 NICeなビジネスプランコンテスト本選 レポート
http://www.nice.or.jp/archives/26456


■第3部 東海で切磋琢磨!頭脳交換会

進行 増田紀彦代表理事 
プレゼンター 永田宗士さん
テーマ  「医療専門の印刷屋。
     どう販路拡大する? 従来の枠を越えた
     新商品・新サービスのアイデアは?」




「これから永田さんが、ビジネス上こんなことを考えていますとお話しされます。それを聞いて、じゃ実現するためにどうするか、アイデアをみんなで出し合いきます。もちろん永田さんのためにもなりますが、異業種の自分のアイデアや情報が役に立つのか!と、自分自身の可能性にも気づくいい機会になります。
始める前に、ひとつお話ししておきたいことがあります。今日の事前打ち合わせで、先ほど永田さんが私にこう言いました。
『これから起業したいという方も多い中で、自分のようにすでに事業をしている人間が、こんな機会を貰っていいのでしょうか』と。本当に謙虚な方です。

私は、『それは違いますよ』と答えました。
みなさん、起業家という言葉に、“家”がついていますよね?ほかにどんな職業がありますか?」

参加者「料理研究家」「書道家」「農家」「作家」「建築家」「音楽家」「芸術家」

「たくさん出ましたね。専門性が高い職業名に、“家”がつきます。起業家に“家”がつくのはなぜでしょう。たとえば1曲だけ作曲しても、作曲家とは言いません。1冊だけ小説を書いても作家とは言いません。“家”がつく人は、その専門分野において、何度も何度もつくり続ける、勝負し続ける人のことを言うのです。起業家も、一度独立したらそれでOKではない。世の中も変化しますし、自身も事業も市場も変化していきます。変化していく環境に応じ、どんどん次のチャレンジをする、新たな事業をしていかないと保ちません。100年続いている企業も、100年前と同じビジネスモデルではありません。老舗も同じです。趣のある建物が今の時代にかえって新鮮で使われることはありますが、事業内容は変化しています。その事例を挙げれば枚挙に遑がありません。変えてはいけないところは大切にして変えず、変えるべきところは変えていく。既に事業をしている人間は、次の起業をしないとなりません。起業家は、何度も何度も起業する。誰もが起業家精神でいかないとなりません。
では、さっそく起業家・永田さんに自己紹介含めて今からプレゼンしていただきましょう!」




拍手で迎えられた永田宗士さんは、プロフィールからプレゼンをスタート。1969年に父が創業した印刷会社を2003年に継ぎ、法人化。代表取締役として今期で12年目を迎えたところ。主な取引先は医療関係で、診察券、チラシ、薬袋、カルテなどを製作する。個人経営または新規開業するクリニックが多く、永田さんは周辺環境、立地、対象となる顧客像などを丁寧にヒアリングし、デザインから納品まで、ワンストップで手がけられるソフト面が強みだと語った。また自身の前職は、食品原料を輸入する貿易会社に10年勤務。その間、食品加工技術や貿易などの専門知識だけでなく、その勤務先の社長もまた起業家であったことから、仕事観の形成・経営哲学などを学ぶ好機になったと振り返り、自分も経営者となった今では恩師だと思うと感謝の想いを述べた。
今後の展望・事業課題としては2点。ひとつめは、既存の取引先との関係を大切にしつつ、リピート率の向上を図りながらも、現在の商材(印刷物)で顧客同業の新規顧客を開拓したい。2つ目は、既存の取引先に対し、従来の印刷業の枠にとどまらず、印刷物以外にアプローチできる商材も考えていきたい。その足がかりになるようなアイデアをお願いしますと述べ、プレゼンを締めくくった。


増田代表は、課題設定が素晴らしいと永田さんを讃え、次のようにその理由を説明した。
「ビジネスは、誰に、何を売るか、でできています。既存の商品・サービスを、ほかの誰かに売れないのか。そして、既存の顧客に、新たな商品・サービスを売れないのか。このように、絶えずビジネスは、誰に何をの組み合わせを考えて進めていくものです。ほかのものなら欲しい、逆に、それをほかの人が欲しい。常に欲しいものを欲しい人へ、それで対価が回収できて、次の手も打てます」




ここから、増田代表の進行により、起業家脳を切磋琢磨する頭脳交換会がスタート!
なぜ継ぐことになったか、前職ではどのような専門分野を習得・経験したのかなどの質疑応答の後、患者として医療機関を利用した時に、何が印象に残ったか。良かったこと、良くなかったこと、要望、そして見た・聞いたなどの業界情報を、挙手制で洗い出していった。次にその中から、「既存の顧客へ、提供できる新たな商品・サービス」、「既存の商品・サービスを、ほかの誰かへ提供できる可能性」を探り、活発なアイデアの応酬へと展開した。







「みなさん、素晴らしいアイデアが続々でましたね! もっともっとアイデア出しを続けたいですが、時間切れです。やってみて、またこういう変化が出て来た、というような継続的な発表をしていただけると嬉しいです。東海でまたアイデア出しをしてみてください。アタマの数が多いとアイデアも解決策も出て来ますので、ぜひNICe東海で継続的に取り組んでください」


■第4部 
1分間エレベーターピッチ&ショート切磋琢磨!


ラストのプログラムは、1分間エレベーターピッチ&ショート切磋琢磨!と題し、参加者全員が、1分間ずつ、取り組みたい新規事業・困っています事業課題・チャレンジしたい、の3テーマの中から思い思いに発表していくというもの。進行役の小林理事から、
「短い時間で相手にわかるよう伝えるのがエレベーターピッチです。伝わらないようでは、自分の中でもまだまだ考えがまとまっていないということです。伝えられる技術にチャレンジしていただきます。
先ほどは、永田さんの事業をテーマにみなさんで考えていただきましたが、こういう機会を今後も東海でぜひ持っていただきたい。その芽を見つけておきたいという目的で行います」と説明があった後、シンキングタイムが1分間与えられた。

「これ頑張りたい」「これ困っています」「これやってみたい」「クリアしたい」
全員が真剣に語り、全員が必死に聞いて拍手し合った。








最後に増田代表から。
「全員、1分間のスピーチの中にキーワードがありましたね。どのテーマでも討論できます。今日の人数分、今後もNICe東海で頭脳交換会ができますね。ぜひ続けて行きましょう!」



■フィナーレ

NICe東海の副代表・野田哲也さんから。
「今日のような頭脳交換を今後もNICe東海で続けていきます。次回の東海は、7月14日に名古屋で、9月12日は岐阜での開催を予定しています。また11月末は忘年会です。それ以外の日程でも、私のこのテーマでやってほしいということであれば言ってください。
また、NICeにはSNSがあります。Facebookやmixi、ブログ、いろいろありますが、ぜひSNSも活用してください。今日やったようなこと、アイデア出し、自分の想いなどを書くと、今ここには東海エリアの方が集まりましたが、違い地域の方、こういう会に参加できない全国各地の方が、ご自分の意見や知恵をそれぞれの目線でコメントを書いてくださいます。違う目線、NICeらしいコメントがつくので、投稿してみてください。コメントが付く、それをながめるだけでも面白いですし、書くことでつながりができてきます。今日のようなリアルなイベントとSNS、2つあってNICeなので、どうぞ両方を活用してみてください」





撮影/福住朋宏氏
取材・文、撮影/岡部 恵

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