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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
「大廃業時代」と「人生100年時代」



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第57回 
    「大廃業時代」と「人生100年時代」
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【「大失業時代」から「大廃業時代」へ】

2012年、コンサルティング会社のマッキンゼーは、
「2020年までに約9千万人もの人が職を失う」と分析を発表し、
世界は「大失業時代」に見舞われると警告した。

そして昨年、発信源は日本経済新聞だったか、
今度はこんな衝撃的フレーズが飛び出してきた。
「大廃業時代」がやってくると。

大失業時代到来の要因は複数あるが、日経が言うように、
企業が次々と廃業してしまえば、確かに労働者の働き場は失われていく。


【黒字なのに廃業する会社が後を絶たない理由】

ではなぜ、企業が大量に廃業してしまうのだろう?
従来の廃業理由は、業績が悪く、
「もうこれ以上は立ち行かない」という状況の末の選択だった。

ところが経済産業省の調査によれば、現在、廃業を予定している企業のうち、
3割の経営者が同業他社よりも良い業績をあげており、
将来性についても4割が今後10年間は現状維持が可能だという。
要するに「立ち行かない」わけではないのに、会社をたたむというのだ。

読者の皆さんなら、その理由はすでにおわかりだろう。
ひとえに「後継者がいない」からだ。

すでに「後継者不在」による廃業は3万社に達するが、経産省によると、
2020年頃には数十万人の経営者の大量引退が発生するという。
さらに日経は、2025年にリタイア適齢期を迎える中小企業経営者、
約245万人のうち約半数の127万人が後継者未定だと報じている。

経産省は、この状態が改善されない場合、
日本のGDPの約22兆円が失われると予測する。
これは、とんでもなく大変な数字だが、さらに言えば、
高度な技術や優良な経営ノウハウの断絶によるマイナスは、
将来、日本経済をガタガタにしかねない要因になるかもしれない。


【画期的な改正を断行した事業承継税制】

国も決して手をこまねいているわけではない。
2018年度の税制改正において、「事業承継税制の特例の創設等」として、
株式を引き継ぐ際の相続税等の納税を100%猶予するなど、
相当思い切った変更を打ち出している。以下は主な改正点。

1.納税猶予対象株式
 株式総数の2/3まで → 取得した全ての株式
2.納税猶予税額
 対象株式に係る相続税の80% → 100%
3.雇用確保要件
 過去5年間の雇用平均の80%を下回ると納税猶予を打ち切り 
→ 平均80%を下回っても納税猶予を継続

ただし、 この特例は2027年12月までの措置であり、
適用を受けるためには、今年4月から2023年3月までの5年の間に、
事業承継計画を各都道府県に提出する必要がある。
いわば、この5年間が実質的な事業承継期間となる。

さあ、どうなるだろう? これで「大廃業時代」は回避できるだろうか?


【長く稼ぐことが不可欠な「人生100年時代」】

一方、昨年もうひとつ衝撃的なフレーズが登場した。
「人生100年時代」である。
リンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の共著、
『ライフシフト 100年時代の人生戦略』の中で、
将来、日本人の平均寿命は107歳に達すると書かれていて、私も驚いた。

ちなみに日本が採用している平均寿命の算出方法と、
同書の著者たちが用いた方法とでは異なるものがあるが、
いずれにせよ、長寿化が進むことに異論を唱える人はいないはずである。

ところが、この国の社会保障制度はパンク寸前であり、
これからの時代、70代、いや80代だからといって、
「年金暮らし」ができるなどとは、とても考えることはできない。
それを幸と取るか、不幸と取るかは別にしても、
日本人の多くが、今までより遥かに長い期間、
それなりに稼ぎ続ける必要に迫られてきたのである。

なのに、働く場(企業)が、急激になくなってしまう時代だという……。


【「大廃業時代」と「人生100年時代」は矛盾しない】

解決方法はある。
今、企業に勤務している人たちが、しかるべきタイミングで、
後継者がいない企業の後継者になればいいのである。
つまり、長く、かつより多く稼ぐために、雇用という働き方に見切りをつけ、
事業承継制度を活用して、自分で自分の仕事場を確保すればいい。

正確に言えば、企業を引き継ぐということは、
単にその会社の経営者になる、というだけではない。
会社の株式も引き継ぐのだから、同時にその会社の所有者になるのである。

そして頑張って業績を上げれば、
経営者としての報酬(給料)をアップさせられるだけでなく、
所有者として、持ち株から配当収入を得ることも可能になる。

この「二重の収入」が、長い人生を支える大きな要素になることは、
説明をするまでもないだろう。と、言いつつ、例を挙げて紹介すれば、
ソフトバンクの孫正義氏の年間役員報酬は1億3000万円と言われているが、
持ち株から得る年間配当収入は、それを大きく上回る約95億円だそうだ。
単なる経営者と、オーナー経営者では、かくも収入が異なるのである。

実際私も、自ら経営する会社から報酬を受け、さらに配当を受けてきた。
むろん孫氏のレベルには遠く及ばないが、それでもこの仕組みが、
財産形成に大きく貢献することは間違いないと断言できる。


【自らで稼ぐ力を養うために、まずは副業(復業)を】

ただし、ある日いきなり会社を買って、「今日から社長です」とはいかない。
事業経営や会社経営を学ばなくてはならないし、
それ以前に、自己責任で稼ぐという働き方の感覚を理解する必要がある。
だから私は、今すぐにでも、多くのビジネスマンたちに、
副業(復業)に取り組むことを勧めたい。
勤務先から支払われる報酬以外に、自力で収入を得る経験を積んでほしい。

むろん、副業(復業)を経験した後、
事業承継を選択せず、自らが事業を起こす(起業)という選択をしてもいい。

いずれにしても、自力で稼ぐ!
この精神を日本中に蔓延させていくことが火急の課題である。
それができれば、「大廃業時代」も「人生100年時代」も、決して怖くはない。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.69
(2018.7.23配信)より抜粋して転載しました。
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