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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
地方自治体の非正規職員に、起業の道を!



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第72回 
     地方自治体の非正規職員に、起業の道を!
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【今ともなれば、懐かしい「霞ヶ関」】

「増田もすっかり都落ちしたな」と、陰口を叩かれてから10年は経つ。
今では、私が「霞ヶ関」に日参していた頃のことを知らない人も多い。
「地方を駆けずり回っているオッサン」。それが現在の私のイメージだろう。
それで合っているし、それでいいと思うし、それで、私は本当に幸せだ。

経済産業省や厚生労働省など、
当時、私がお付き合いしていた省庁の人々は、驚くほど働き者だった。

しかし、キャリアとノンキャリアの格差には、最後まで馴染めなかった。
ノンキャリアが優れた発案をしても、キャリアが首を傾げればおしまい。
「ここは、私が居る場所ではない」。そう思うようになった。

その後、NICeの活動や6次化支援、女性起業支援などを通じて、
再び公務員の皆さんとのやり取りが始まった。
ただし、今、私がお付き合いしているのは国家公務員ではなく、地方公務員だ。


【地方の役場には、「普通の感覚」が生きている】

地方公務員には、権威をひけらかすような人はまずいないし、
民間人を見下すような態度を取る人もいない。
職員同士の格差もない、とは言わないが、国に比べればうんと近い。

実際、私が親しくしている、東北のある市役所の議会事務局長は、
入庁1年目の職員からニックネームで呼ばれている(笑)。

さすがにこれは極端なケースかもしれないが、
上級職がそれでいいと思えば、それで通用する価値観が地方にはある。
大事なことは、公務をしっかりやり遂げること。
地方の役場には、当たり前の優先順位が残っている。

しかし、そんな素敵な地方自治体の多くが、今、存亡の危機に瀕している。


【非正規職員の奮闘が支える地方自治体の現場】

昨今の台風被害に関連したニュースなどを通じて、
自治体の職員数が不足しているせいで、
一人一人の職員が大変な労働を強いられていることや、
その不足分を、非正規職員で補っていることなどが大きく報道された。

そう、今や全国の自治体職員の5人に1人が非正規職員である。
細かく見ていくと、政令市を除いた市区の場合、非正規率は32%に達し、
町村に至っては35%にもなる。つまり3人に1人が非正規職員だ。
さらに小規模な自治体では非正規率が50%を超すところもあり、
中には、3人に2人が非正規職員という自治体も実在する。


【金は減る一方、仕事は増える一方の地方自治体】

いったい、いつの間に、こんなことになったのだろう?

実はこの現象、「急激」と言っていいペースで進行している。
総務省の「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」によると、
2005年では45万6000人だったが非正規職員が、
2016年には64万3000人にまで膨張。
つまりこの10年間で40%強も増加した計算になる。なぜか?

一言で言えば、地方自治体に金が入りにくくなったからだ。
生産人口や事業所数の減少で税収減が進行、にもかかわらず、
安倍政権の誕生以降、地方交付税交付金が着々と減らされているからである。
京都大学の藤井聡教授の計算によると、削減額は1兆円を突破するそうだ。


【民間同様、自治体も将来の不安に備えたい】

正確に言えば、自治体にまったく金がないわけでもない。
使わずに、貯めている部分が少なからずある。

2016年度末の地方公共団体の基金総額は21兆5461億円だが、
この金額は、過去10年間で58%も増加している。
さらに、このうち自治体の「貯金」ともいえる財政調整基金は、
過去10年間で85%も増えているのである。

上記したような「自治体貧困化」の流れの中では、
役場とて、「将来の不安に備えねば……」と考えて当然だろう。

そういう財政状況なのに、自治体の仕事は年々増え続ける一方だ。
待機児童対策しかり、高齢化対策しかり、産業振興しかり、
さらには頻発する自然災害への対応しかりである。
だから、「非正規職員を雇うしか方法がない」という結論になる。


【非正規職員が起業を考えられるキャリア支援制度を!】

大変な仕事を、多くの非正規職員が責任を持ってこなしている。
待遇面では決して報われていないのに、
本当に立派な仕事をする人たちを、私は何人も知っている。

地方の生活と産業を支える、この人たちを守らなければいけない。
この人たちが、いよいよ「バンザイ」をしてしまったら、
本当にこの国は、「地方で暮らすことができない国」になってしまう。

では、どうするか?
もちろん、可能な限り契約条件や待遇の改善を図ってほしい。
しかし、それにも限界がある。

だから私は非正規職員のキャリア形成に注力してほしいと思う。
無期での雇用が無理なら、退職後、その人たちが起業できるようにする、
あるいは、それなりの待遇で民間企業に就職できるようにする、
そういう支援制度があってしかるべきだ。

この人たちの多くは、専門は異なるが、いずれも行政サービスのプロである。
住民サービスのプロと言い換えてもいい。

この人たちに在職中から起業・独立のノウハウを学ぶ機会を用意し、
退職後は営利法人でも非営利法人でもいいので、器を作ってもらい、
条件を整備したうえで、この人たちに対して優先的に業務を委託する、
あるいは、この人たちから必要な資材等を調達する、
そういうスキームを作っていけばいいのではないだろうか。

そうであれば、非正規職員としての体験は、
「給料をもらいながら、将来の仕事の準備ができる機会」という意味に変わる。

財政が苦しければ苦しいほど、大事にすべきは人材だ。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.101
(2019.11.21配信)より抜粋して転載しました。
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