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どうする?日本経済

新型肺炎は、国境なき時代に生きる日本人への警鐘か


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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第75回 
     新型肺炎は、国境なき時代に生きる日本人への警鐘か
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【自国の通貨すら通用しなかった、かつての中国】

前回のコラムでは、1990年代の中国の改革開放路線で覚醒した、
中国の人々の「自分で生きる力」に、激しい衝撃を受けたことを告白した。
今回の話題も、中国を一人旅した時の記憶からだ。

今、思い出しても大陸単独行の日々は、驚きの連続だった、
というより、日々、起きてから眠るまでのすべてが驚きだった。
毎日の食事すら、一筋縄ではいかない。

中国の南方・壮族自治区の龍勝という町に滞在していた数日間は、
ついぞ主食を口にすることができなかった。
山深い地とはいえ、宿泊施設もある町だから、飲食店も複数ある。
なのに、どの店に入っても、副食(おかず)は売ってくれるものの、
ご飯(白飯でもお粥でも)や麺類・パン類が一切買えない。
もちろん、地元の人々は、好きな主食を好きなように食べている。
外国人に対する嫌がらせとも思えないが、
とにかく、いくら注文しても、手を横に振られるばかり。

後になってわかったが、その町では役場で主食購入券を買い求め、
飲食店で主食を注文する際に、その券を提出するルールだった。
第二次世界大戦前後の日本の食糧配給制度のようなものだ。
都市部では、東京顔負けの豪華なレストランが立ち並ぶのに、
山間部では、時計の針が都市から50年分ほど逆戻りしていた。

そもそも、外貨兌換券(トラベラーズチェック)など、
その町ではまったく使えなかったし、それどころか、
新紙幣(新しいデザインの人民元)すら、その町には到達しておらず、
商店で買い物をしようと、紙幣を出しても偽札扱いされる始末……。
英語が通じるホテルの従業員にデザインが変わったことを散々説明し、
ようやく手数料を払って旧札に代えてもらい、日々をしのいだ。


【「巨大後進国」中国の、奇跡とも言うべき成長】

面積は日本の25倍、そこに日本の10倍以上の人口が暮らしている。
と、簡単な数字を並べたところで、中国の巨大さは実感できない。

だが、ひとつの国の中で、その国の通貨が通用せず、
「通用する通貨」に代えたところで、ご飯を注文することもできない、
そんな地域格差が普通に存在することを知れば、
中国が「あまりに大きすぎる」ことを察せるかもしれない。

ちなみにその町からさらに奥へ入った土地の人々は、
「日本」という国があることすら、認識していなかった。
私は、ノートに大陸を書き、「北京」と「南京」の位置に印を付け、
大陸の対岸に日本列島を書いて「東京」の位置を示し、
「ここからやってきた」と説明した。
人々は、私が「中国の離島」から来たと理解したようだった。

そんな「後進エリア」を抱えながら、中国は市場経済の導入に舵を切った。
そしてわずかの期間で世界経済の行方を左右する経済大国になった。
信じられない「偉業」と言わざるを得ない。

日本が50年前に終えた、道路や鉄道などのインフラ建設を進めながら、
同時に、各国が今取り組んでいる通信技術の開発にも余念がないのである。
やや変なたとえだが、「盆と暮れ」を同時に取り仕切っているようなものだ。
中国の国家運営を代わって担うことができる政治家など、
日本には一人もいないだろう。


【犬、猫、蛇、亀、孔雀、アルマジロ、コウモリ……】

中国での食事事情に話を戻す。
飲食店のメニューは大都市以外では漢字で書かれているが、
時折、その中に「虎」という字を見つけることがあった。
実際に虎の肉を使っているのではなく、猫の肉を使った料理のことだ。

食料市場に出かけた時も、金網で作った籠に、
ギュウギュウ詰めになって売られている猫を見た。

犬や蛇やハクビシンを食す習慣があることは事前に知っていたが、
まさか、猫まで食べるとは……。

広東省の省都の広州市で見つけた「野味(ジビエ)レストラン」では、
生きたアルマジロや孔雀や亀などが店頭に並べられていた。
勇気を出してその店に入ったが、結局は淡水魚の唐揚げと炒飯を食べた。
やはり、「その手のもの」には、手が出せないのが正直なところだ。


【問題は食文化ではなく、世界が狭くなったこと】

さて、今、大問題になっている新型肺炎は、
食料市場で売られていたコウモリが感染源だと言われている。

日本人の中には、「そういうものを食べる中国人が悪い」、
という趣旨の発言をする人もいるが、私はそうは思わない。
それを言うのなら、日本の鯨食文化への批判も受け入れるべきだ。

食は民族の暮らしの中核を為す文化であり、
他民族が、安直に良いとか悪いとか言うべき事柄ではないと思う。

むしろ問題の要因は、異なる文化(食文化)を持つ人々が、
いとも簡単に他の文化圏へ移動できるようになったことだ。

春節になると、中国人が大挙して日本にやってくるなど、
私が中国を旅した頃には考えられないことだった。


【入念な準備が必要な、日本の移民受け入れ政策】

市場経済を導入した中国には、国境を超える多国籍企業が展開し、
世界中のマネーが中国に集中したことはご存じのとおり。
かつて、自国の通貨が自国で通用しないような後れた国だった中国が、
今では、円でもドルでもユーロでも、使いたい放題である。

その金を狙って、日本は国を挙げて彼らを呼び込もうとしている。
そのために大型かつ高速の旅客輸送手段もどんどん増やしているし、
観光地や渡航方法に関する情報の発信にも余念がない。
各地の繁華街を覗けば、中国語の張り紙のオンパレードである。

むろん、中国人に限らず、日本でお金を使ってくれるのなら、
どの国の人でも「歓迎光臨」。もはや「外国」は、遠くでも何でもない。

要するに、別々の部屋に暮らしていた、別々の文化を持つ人々が、
籠の中の猫さながらに、ひとつの部屋に詰めかけているのが現代日本だ。
こうなれば、トラブルが起きないほうがおかしい。

新型肺炎の流行は、そういう国境なき時代への警鐘とも思える。

日本は、これから移民の受け入れを開始していく。
異なる文化を持つ人々と一緒に生きていくことの重さに、
政府も産業界も、そして私たち市民も、もう一度、思いを至らせるべきだ。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.107
(2020.2.21配信)より抜粋して転載しました。
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