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NICe代表理事の増田紀彦が、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポ ーターへ送っている【NICe会員限定スモールマガジン増田通信】の中から、一部のコラムを抜粋して掲載しています。
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」276 My Sweet Lord ~愛しき人~



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<最近の祈り>  My Sweet Lord ~愛しき人~
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空を見上げる。
ものの数秒で頬が痛くなるほどの陽差し。
夏はまだ終わりそうにない。

その光の粒の一つ一つにへばりついたような、
甘ったるい香りが、私の鼻腔をくすぐる。
安物の日焼け止めに使われる香料に近いか。
まるで、若い女性たちで溢れる海水浴場に来たようだ。

だが、私が立ち止まっている場所は、
私の自宅からわずか30mほどの地点。要は住宅街。
こんな町の中に香料が立ち込めるなど、あり得ない。

芳香の正体は、すぐに見当が着いた。
風向きから考えると、発生源は間違いなく「アラカワさん」だ。

私の住む町は四方八方住宅だらけだが、
かつては工場街として整備された区画だったそうで、
町内には、現在も事業を継続している工場が何軒か残っている。
その中のひとつがアラカワさんで、いわゆるメッキ屋だ。

同社は、クロームメッキを手がけているから、
製造過程で使う硫化水素やアンモニアが化合して揮発し、
それが甘い香りになって、ダクトから排気されているのだろう。

アラカワさんの従業員は、たぶん、10人もいないのではないか。
交流はないが、近所なので、
工場と外とを行き来する人たちの顔は、何となくわかる。

中には女性もいる。
雰囲気からすると経営者のご家族かもしれない。

誰もが、1年中汗だくになって、黙々と作業を続けている。
炎天の日も、極寒の日も、本当に黙々と。そしてきびきびと。

そんなに彼らに、頭が下がる。

だが、私がこの町に住むようになってからも、
ずいぶん多くのマンションが新築され、
アラカワさんの小さな工場は、
日増しに人目に付きにくくなっている。

「モノを作る人がいるという当たり前」の光景が、
この町の人々の視野から脱落していくようで寂しい。

でも、救いはある。
あの香りだ。

目には映らなくても、匂いが製造現場の息吹を証明する。

いつまでも、あの匂いに人々がふと歩みを止める町であってほしい。

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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第276号(2023/9.7発行)より一部抜粋して掲載しました。
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