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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
消費税減税で喜んでいてはいけない



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第145回 消費税減税で喜んでいてはいけない
  
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【37年前の屈辱を晴らした高市自民党】

さきの解散総選挙では各党の公約に消費税減税案が並んだ。
消費税は我が国のほんどの事業者と、
我が国で生活を営むほとんどの個人にかかわる税制であり、
目に見えるメリットを訴えることで票につなげる算段だったのだろう。

とはいえ与党まで消費税減税を言い出したため、
野党に票が向かう理由がなくなってしまった。

日本に消費税が導入された1989年の参議院選挙で自民党は大敗を喫し、
かたや「消費税反対」を掲げた日本社会党は、
同党初の女性委員長・土井たか子氏の人気もあって躍進を遂げた。

「あの時の失敗は繰り返さない。同じ轍を踏むものか」とばかり、
今回の総選挙では、昔とは逆に、
自民党が初の女性総裁を立てて消費税減税を掲げ、
日本社会党の流れを組む立憲民主党(中道改革連合)を、
完膚なきまでに叩きのめした。
自民党、いや、高市早苗氏の選挙戦術は見事の一言に尽きる。


【物価高の解決には結び付かない各党減税案】

しかし勝った自民党の減税案も、負けた中道の減税案も、
日本経済を苦しめる物価高の解決に真っ向から取り組むものではない。

物価高は、エネルギーを含む原材料価格の高騰、関連して各国のインフレ、
円安、国内物流費や人件費の上昇、気候変動(天候不順)など、
国内外を問わない様々な要因が絡まりあって発生している。
いわば、「あっちを立てればこっちが立たない」難題の掛け算の所産だ。

それゆえ、簡単に解決の目処が立つ問題ではないし、
抽象的な公約を掲げても、話が大きくなるばかりで伝わりづらい。
なので、ウケのいい減税を経済対策の柱にしたのだろうが、
それで物価が安定するわけではないことは自明の理である。


【生活必需品限定の減税では、消費拡大は望めない】

こんな意見もある。

消費税を減税すれば需要が増す。需要が増せば物価が上がる。
だから物価高対策にとって減税は、かえってマイナスになると。

理論的には正しいかもしれない。
しかし、わずか2年の減税では消費意欲を喚起できないし、
何より減税対象の飲食料品は生活必需品だから、
税率が高くても低くても、結局、人々は購入せざるを得ない商品であり、
減税されたからと言って、消費が伸びる展望は描きにくい。

仮に多少、飲食料品の消費が伸びたとしても、
この分野の商品や原材料は輸入に大きく頼っているため、
最終的にお金は外国へ流れ、結局、日本のGDPを押し上げる要因にもならない。

そういう意味では、むしろ、
贅沢品や嗜好品の消費税を減税したほうが効果的かもしれない。

例えば、税込み110万円の美術品が100万円ちょうどに下がるなら、
購入を躊躇っていた人のマインドが変わる可能性は十分ある。

というか、すべての取引を対象とし、
なおかつ恒久的な措置として減税を断行するなら、需要は確実に伸びる。


【消費税制は、安直で横暴な徴税手段】

そもそも与党の減税案は一時的な措置であり、
消費税そのものの是非を問うものではない。

ご存じのとおり、私は消費税に疑問を呈し続けてきた。

とにもかくにも我が国の消費税制は複雑極まりなく、
計算方法の煩雑さが事業者にもたらす負荷は大きいし、
より豊かな者からより多くの税を徴収するという原則を無視し、
誰彼構わず一律に税を徴収しようとする、安直さと横暴さに反発を覚える。

さらに言えば、企業や個人を豊かにすることで税収を上げるという、
国家運営の理想から目を背け、「どうせ日本の産業は伸びないのだから、
法人税や所得税を当てにせず、確実に取れる方法でいこう」という、
企業と国民に対する政府の「低評価」が悔しすぎるのだ。


【元々は所得税の代用品だった消費税】

それにしても、なぜ、こんな強引な税制が存在するのだろう。
起源を辿ると、「国富論」で知られる経済学者アダム・スミスに行き着く。

スミスは、当時(約250年前)のイギリス政府が、
国民の所得を正確に把握できず、適切な課税手段を確立できなかったため、
所得ではなく、反対側にある消費に課税することをもって、
「間接的に所得へ課税したことになる」という理屈を捻り出した。

確かにその時代であれば、所得の多い人ほど、
より消費をするという図式が成り立ったかもしれない。

しかし金融が発達し、多様化した市場に多様な商品が出回る今日にあって、
スミスの推論は、そう簡単に成立しなくなっている。

いわんや現代の日本では、国民の多くが雇用されて働き、
その人たちの所得は雇い主側がきちっと税務当局に報告している。

したがって所得税の代用品としての消費税は、
現代の日本には当てはまらないし、必要すらないはずだ。


【所得が低い人ほど税率が高くなる逆進課税】

百万歩譲って消費税を認めるとしよう。
それでも、この制度設計には問題がある。

所得の低い人ほど税負担が大きくなる「逆進課税」であることだ。

例えば月収20万円のAさんと月収200万円のBさんが、
それぞれ1000円のランチを月に20回、食したとすると、
2人のランチ代の月額は共に2万円だから、税額も共に2000円になる。

ところが両者の収入に対する消費税の負担率を比較すると、
Aさんは2000円÷20万円で1%なのに対し、
Bさんは2000円÷200万円で0.1%に過ぎない。

Aさんが消費税の負担率をBさんと同じ軽さにするためには、
ランチ代を1食当たり100円に抑える必要がある。
こんな不公平なルールが堂々とまかり通っているのが日本である。


【さんざん悪口を言われた「益税」が復活】

ツッコミどころはまだあるが、あと一つだけ指摘したい。

今般の飲食料品に対象を限定した減税案の場合、何が起きるか。

世間では飲食店離れを懸念する声も聞かれるが、
飲食店にとっては悪いばかりの話でもない。

先に言っておくと、ここからがわかりづらくなる(笑)。
私の説明がヘタなのではなく、
消費税制がそれほど難解で矛盾に満ちたものだからとご理解頂きたい。

さて、とある飲食店の年間売上は税込み1100万円。
つまり、そのうちの100万円が消費税になる。
この売上規模の事業者の場合、簡易課税という方式で納税額を算出できる。

簡易課税制度は業種ごとに売上に占める仕入額の割合を定めていて、
飲食店は60%という決まりになっている。

なので、この店の場合は600万円+税60万円が仕入額と見なされる。
(簡易課税の場合は軽減税率を考慮せず、すべて10%で計算)
というわけで、売上に付加した消費税100万円から、
すでに支払い済みの60万円を引いた残りの40万円がこの店の納税額になる。

ところが飲食料品の消費税がゼロになると、話がおかしくなってくる。

仮に仕入額600万円のうち400万円が飲食料品の代金とすると、
取引先に支払った消費税は、飲食料品分が0円になるので、
他の仕入額200万円×10%の20万円だけになる。

したがって実態としては、売上に付加した消費税100万円から、
その20万円を引いた80万円が納税相当額になるのだが、
簡易課税ルールに則れば、この店は40万円だけ納税すればよく、
結果、80万円-40万円=40万円が手許に残ることになる。

もちろん飲食店に何の非もないが、インボイス制度導入の際、
「税金で儲けるのはおかしい」と、さんざん言い立てていたのに、
これでまた「益税」が堂々と復活することになる。

どうやってもこうやっても、消費税制には無理があるということだ。


【もはや、過去の延長で生きられる時代ではないのだから】

カビの生えたような古い思想に基づく税制を、
平気で事業者や国民に押しつける政府も政府だが、
それを許容している私たちも、いささか呑気ではないかと思えてくる。

今は、ひとつひとつの既成事実に対して、
本当にこれでいいのか、大丈夫なのか、もっと良い手立てはないのかと、
必死に考えを巡らせ、意見を戦わせ、どんどん行動していくべき時代だ。

日本経済と国民生活が上昇するか、一気に下降するか、
私たちは今、その分岐点に立たされているのだから。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.249 
(2026.2.24配信)より抜粋して転載しました。
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2026-03-05 04:50:52Mr.NICe
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