気付けば世の中「買取」だらけ

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「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第150回 気付けば世の中「買取」だらけ
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【手に汗握って『買取大吉男子バレー』を観戦】
ロス五輪の切符がかかった男子バレーを応援しようとテレビをつけたら、
大会名称のあまりの「すごさ」に度肝を抜かれた。
『買取大吉バレーボールアジア選手権2026』。
いやいや、とうとう、ここまできたか……。
テレビを見る人なら、タレントのIKKOさんが、
「どんだけ~」よろしく「大吉ぃ~」を連発するCMで、
「買取大吉」の名前を記憶しているかもしれない。
もっとも同業他社のコマーシャルの露出も多く、
段々、どれがどれだかわからなくなってきた。
「福ちゃん」「おたからや」「なんぼや」「バイセル」「まねきや」……。
CMは見たことがないが、「コメ兵」や「いくらや」も頭に浮かぶ。
この「混戦状態」から、一歩も二歩も抜け出すべく、
「買取大吉」はバレーの冠スポンサーに打って出たのかもしれない。
スポンサー料は、ちょっとやそっとではないはずだが、
同社には、それだけの額を投入できる資金力と、
投入しても損はないという市場判断があるということだ。
【買取店は、中古品を集めるための拠点】
実際、出店の勢いはすさまじい。
店舗数は今や2万店に迫り、大手コンビニに匹敵するレベル。
こうした店の多くは、全国展開するフランチャイズの加盟店である。
ブランド品、時計、貴金属、衣類、着物、カメラ、楽器、古銭……。
大半の店舗が「何でも買い取ります」と謳っている。
いったい、そんなに買い取ってどうするのだろうと、
疑問に感じる人もいるのではないだろうか。
実際、買い取った中古品を店頭販売している店はほぼ見かけない。
ヴィトンのバッグやティファニーの指輪はいずこへ?
店舗が買い取った品物は本部に集められる。
本部は集めた品物を業者間オークションに出品したり、
専門業者に卸したりするが、最も主要な販路は海外輸出である。
中でも香港や中国、東南アジアは日本の中古品の主要輸出先だ。
つまり、買取店は「中古品を売る店舗」ではなく、
文字通り「買取」を目的にした、「中古品集めの拠点」なのだ。
【1万5000円で買い取った商品を、いくらで売るか?】
例えば、ある加盟店がバッグを1万5000円で買い取ったとする。
それを2万円で業者に売ることができれば、
単純計算で5000円の儲けになる。
もちろん、その5000円がそのまま利益になるわけではない。
家賃や人件費、広告費、本部へのロイヤリティなどが必要だ。
だから買取店は、その品物が「いくらで売れるか」を見極め、
そこから逆算して「いくらまでなら買っていいか」を判断する。
「1万5000円なら買う」「1万7000円なら買わない」というように。
もっとも、フランチャイズに加盟したばかりの買取店オーナーに、
そんな目利きができるだろうか?
心配ない。そもそも買取店は目利きを求められていない。
買取FCは、持ち込まれた商品の写真を加盟店が撮影し、それを本部に送り、
本部の専門スタッフが即座に査定する流れになっている。
「商品を集める人」と「商品を評価して売る人」を分業することで、
未経験者でも参入できる仕組みを構築しているのである。
【日本の「タンス資産」が世界を駆けめぐる】
これほどの規模で買取ビジネスが成り立つのは、
日本の家庭に「価値のあるもの」が大量に眠っているからだ。
昔買ったブランドのバッグ。何年も使っていない腕時計。
子どもが独立して不要になった家具。趣味をやめて残ったカメラや楽器。
それらが買取店に持ち込まれると「売れるもの」に変わり、
その商品を欲する人がいる地域や市場へ運べば、「必要なもの」に変わる。
この流れを俯瞰すれば、日本が豊かだった時代に溜め込まれ、
今となっては行き場を失った個人のあらゆる資産が、
日本のあとに成長してきた海外の国々に移動していく図式が見える。
買取店やオークションは、
その「個人資産大移動」の橋渡しをしているともいえる。
時代は変わったんだな。そう感じて少し寂しくなるのは、私だけだろうか。
【「もったいない」をビジネスチャンスに変える】
人口の減少、資源やエネルギーの枯渇、環境への負荷……。
かつての日本のように、製品を作って、使って、捨てて、
また作って、使って……では済まないのが現実だ。
だから「長く使う」「繰り返し使う」「修理する」という、
「もったいない精神」にもとづく「モノ」との関わり方が広がるのも頷ける。
とはいえ、多くの人々が質素倹約に走れば、経済は停滞してしまう。
この矛盾を解決するのが、中古品の売買。
つまり「もったいない」の市場化である。
その国内市場はすでに3.5兆円を突破しているが、
買い取られた中古品の過半数を占める海外輸出分を加えれば、
おそらく10兆円に達する市場になると推測できる。
10兆円市場といえば、アニメやゲーム、出版、音楽、映画などをまとめた、
コンテンツ産業と同規模である。中古品売買市場、恐るべし!
【中古品はGDPを増やすのか?】
市場規模は確かにすごいが、そのうえで、中古品売買の活況が、
日本経済にどれほどの、もしくは、どのような効果をもたらすのか、
気にはならないだろうか。
例えば、新品のバッグを10万円で作れば、
原材料の調達、製造、物流、卸売、小売など、
さまざまな経済活動が発生する。
ところが、そのバッグがやがて中古品になり、
それをもう一度10万円で売ったところで、
バッグそのものを生産したわけではないから、
中古品の売買額をそのままGDPに加えることはできない。
果たしてそれで大丈夫なのだろうか?
【価値は「モノ」の中だけにあるのではない】
実は大丈夫だ。
中古品売買が定着し、その市場が拡大することで、
買取店経営、査定、修理、クリーニング、保管、輸送、
オークション運営、中古品販売などの新たな仕事が発生するし、
それらから生まれた付加価値はGDPに反映される。
要するに、価値の発生源が変わったのである。
さらに、中古品を右から左へ流すだけでなく、
例えば、古い着物を洋服やバッグに仕立て直す。
古い家具を修理して、別の使い方ができるようにする。
使われなくなった建物を店舗やオフィスとして再生する。
こうした作業を付加すれば、価値はさらに向上する。
モノ自体は新しくなくても、
使い方や組み合わせ方、意味づけを変えれば、
「要らないもの」が「欲しいもの」に変身して経済に貢献する。
中古品の売買や、中古品のリメイクは、
「すでにあるものを、もう一度経済活動に乗せる」ことで、
再び価値を生み出す、現代日本ならではの産業といえる。
【「価値を見つけてもらえていないもの」の価値】
街中に買取店が増えている様子を見て、
単に「中古品の市場が大きくなった」と感じるだけでは、
それこそもったいない。
使われていないもの。不要なもの。邪魔なもの。
使われなくなった技術。忘れ去られた技術。
眠っている土地。空いている店舗。
持っているけれど活用していない知識や経験……。
世の中には「価値がない」のではなく、
「価値を見つけてもらえていないもの」がたくさんある。
眠っている資産を見つけ、それを必要な人につなぐ。
あるいは修理して使えるようにする、もしくは別の用途を提案する。
場合によっては複数を組み合わせて、新しい意味を付与する。
これらはすべて、価値創造であり、
起業や新規事業のための有力なリソースになる。
【木炭しかり、籾殻しかり、味の素しかり】
事例を紹介すると、さらに現実味が持てるかもしれない。
例えば木炭。
元々は燃料だが、消臭剤にしたり、
遠赤外線効果に着目して入浴剤にしたり、
住宅の床下などに敷き詰めて底冷え対策の材料にしたりと、
木炭市場は四方八方に広がっている。
米を収穫したあとに残る籾殻は、
かつては箱詰めした果実の緩衝材くらいの用途だったが、
今はシリカや建材、断熱材、吸着材などの原料になっている。
すごいのは味の素。
ご存じのように、味の素は調味料だが、
その強力なアミノ酸成分が、半導体の絶縁層を作る材料となり、
今では世界シェアのほぼ100%を握るまでに至っている。
【「何を作るか」から「何を活かすか」へ】
新しい物事を生み出すことだけが起業や新規事業ではない。
人々が見向きしなかった物事に価値を見出し、
それを商品化・事業化することもまた、起業・新規事業の真髄である。
「大量生産・大量消費」から「長く使って循環させる経済」への変化は、
単に消費スタイルが変わったという話ではなく、価値創造の場所が、
「作る」から「活かす」へと広がっていることを意味している。
「世の中にすでにあるものの中から、何が活かせるだろうか」。
この視点からつかめるチャンスが、日に日に拡大している。
さあ、私たちも『買取大吉バレーボールアジア選手権2026』で優勝した、
日本代表チームに続いて、飛躍の切符をつかみ取ろう!
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.262
(2026.9.24配信)より抜粋して転載しました。
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