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アントレフェア第1日目レポート


2012年1月20日(金)・21日(土)東京・蒲田で、株式会社リクルートアントレ主催・NICeほか6団体協力の『アントレフェア』が開催された。2日間連続の「特別セミナー」では増田紀彦代表理事が講師を務め、先輩起業家の実体験を双方向で聞ける「先輩交流セッション」でも増田代表理事がファシリテーターに。また場内には様々なビジネスモデルを提供する50ものブースが並び、その一画に総合相談コーナーとしてNICeも出展。来場者の起業総合相談に対応した。


【1月20日】



【特別セミナー1】





「独立資源発見ワークショップ」 第1日目・自分を見る

テーマ:なぜ独立を考えるのか? まずは自己を知ろう!



一般社団法人起業支援ネットワークNICe 増田紀彦代表理事


定刻より少し遅れてセミナーのオープニング映像が上映された。そこには人生の節目節目と、雇われない生き方を選び、輝いている先輩起業家たちの笑顔が映し出されていた。参加者らと一緒に映像を見終えた増田氏は、2日連続受講を参加条件にした「独立資源発見ワークショップ」の目的と意味を重ね、こう述べた。

「今の映像を見て、まとめると人生は短いと一瞬思いました。実際はそうではないですが、ただ何も考えないで過ごしていると、あっという間なのかもしれません。しかし、自分で考え、自分で噛み締めながら、自分で責任を持って生きていけば、濃くて太い人生を送れるのではと思いました。今日、明日と、2日間の連続セミナーです。70分ずつと非常に短い時間です。この短時間の中ですべてを学び取るのは難しいでしょう。が、ぜひ自分らしい人生を歩むためのキーワードと視点を持ち帰っていただきたいと思います。

ビジネスというのは、必ず、提供する側と受益する側がいます。この売る側と買う側の関係が良ければビジネスは成立します。1日目の今日は“売る側の自分はどういう人なのか”、明日は、“そういう自分が相手をする人とはどういう人か”を学びます。“敵を知り、己を知れば、百戦危うからず”ということわざがあります。実は、ビジネスの場面で、これがよくわからなくなるのです。自分が得意ではないことで商売をしたり、必要としていない相手に何かを売ろうとしたり。反対に、得意な商品やサービスを提供し、それを求めている人に出会えたら商売はスムーズです。今日はまず、自分を知ることを勉強していきます」


●三つ児の魂、百までも。自己の能力を認識しよう

さっそくプロジェクターに映し出したのは、カメラ目線で思いっきり微笑んでいる増田氏自身の写真。撮影場所は、北海道の十勝。満面の笑顔で手に抱えているのは、大きなサケだ。

「たまたま通りがかった十勝の小川で、サケの遡上に遭遇したのです。見たことある方、いらっしゃいますか? きれいな小川が真っ黒に見えるほどのたくさんのサケでした。もう卵を生む力だけが残っている状態で、彼女らは既にいっぱいいっぱい。だから私でも簡単に捕まえられたわけです。なぜ、こんな話をするかというと、目の前にサケの遡上を見たら人はどうするか? です。皆さん、想像してみてください。目の前にサケがいっぱい遡上している。どうしますか?」

増田氏は会場内を歩き回り、参加者全員に次々とマイクを向けた。

眺める。触る。飛びこんで捕まえる。動画で撮ってfacebookに投稿する。
見ているだけ。写真を撮る。気持ち悪いけれど、棒か何かでついてみる。
こんなに苦労しているのかと感慨深くなる。
魚を採るのが好きなので、どうすれば一気に採れるか考える。


「本当は条例で採ってはいけないのです。私もすぐに川に戻しました。みなさんの答えは実に十人十色でした。これはどういう意味かというと、人は同じ情報を入手しても、その後の行動がまるで違う、ということです。情報が視覚から脳へ入り、脳は筋肉に命令を下します。何もせずに眺める、棒でつついてみる、捕まえる。今、みなさんが回答したのが、それぞれのアウトプット、無意識の行動です。

三つ児の魂、百までも。ということわざがありますね? 3歳児頃までに確立されたその人の適性・特技は、大人になっても不変という意味です。天から授かったその特技を、ビジネスでも生かさなければもったいない。天賦の才を使うことです。得意でもないことや好きでもないことをやると、いずれ化けの皮がはがれます。本当にイキイキと天賦の才を生かせるもの、特技が、みなさんの中にも隠れているのです。では、それをどうすれば知ることができるのか。配布資料の3ページ目を見てください」

そこには3項目の記入欄があった。まずひとつめを書くように増田氏は指示した。
『子どもの頃、得意だったこと、好きだったこと、夢中になったことは何?』


「私は子どもの頃から生き物、特に昆虫を捕まえるのが大好きでした。夏が待ち遠しかったです。さぁ書けましたか? 聞いてみましょう」と、また増田氏は全員にマイクを向けた。

プラモデルづくり、魚釣り、そろばん、木工作、料理、ままごと、
ウルトラマンからウルトラマン80までの全怪獣を覚えて集めること。
勝負ごと。レゴづくり、などなど、さまざまだ。



ひととおり聞き終わると、次の項目について話を進めた。
「みなさんが子どもの頃、得意だったこと、好きだったこと、夢中になったこと。それは誰かから強要されて好きになったのではなく、自然と、ですよね? では次に、それを動詞にして考えてみてください。プラモデルをつくるではなく、つくる、となります。○○をどうする、の後半部分です。私の場合は、(昆虫を)捕まえる、(小動物を)見つける、見せびらかす、です。()の部分を省いた動詞を書き出してみてください」

『その行為を「動詞化」するとどうなる?』

また増田氏は全員にマイクを向けた。

考える、想像する、違う視点から見る、動かす、話す、アレンジする、
戦う、デザインする、つくる、調べる、共有する、学ぶ、発見する、
極める、教える、楽しませる

「それが、みなさんの天賦の才、三つ児の魂です。誰かに強いられたわけではなく、好きなこと。では、その武器を、今の仕事に生かしていますか? 思いっきり生かさないと損です。好きだと夢中になれますよね。好きこそものの上手なれで、どんどん得意になります。○○を考える、○○をつくる、などの動詞部分はぜひ、ご自分の天性の適性・特技ですから、自信を持って取り組んでください。それを事業に生かすことが大事です。○○の部分は、時代とともに変わり、状況によって変化します。肝心なのは動詞の部分です」


●起業を考えたら、最初にすべき3つの確認について

続いて、起業を考えたら最初にすべき3つの確認“動機の確認・資源の確認・課題の確認”について解説し、独立と起業はなぜよくセットで語られるのか。また、それぞれの違いについてこう述べた。



「独立と起業は違うものであるのに、なぜセットで語られるのか。それは、業を起こしてそれをやり続けようと思ったら、独立したほうがやり続けやすいからです。他者の支配下にいたら、その人から中止しろと言われることがあります。逆に、人に面倒を見てもらわないで自分で生きていこうと思ったら、業を起こしていないとなりません。ただし、独立したい、起業したい、の動機の根底にあるものはかなり異なります。その動機の要因である6つの欲求バランスが重要になってきます」


動機の要因である“6欲求”は以下のとおり。
・独立動機/他者評価欲求、自己裁量欲求、自己成長欲求
・起業動機/経済充足欲求、社会貢献欲求、自己実現欲求




●自分自身に向き合って、本気度と動機のバランスを確認してみよう

起業独立の欲求がどの程度高まっているのか、増田氏は参加者に、“6欲求”それぞれについて現在の状況を記入するように促した。「無理して書くことはありません。書けるところ、書けないところもあると思います。正直に書いてみてください」

・欲求の種類/あなたはどのような欲求を持っていますか?
●自己実現欲求(理想とする自分らしさとは?)
●自己成長欲求(自分はどんな点を伸ばしたい?)
●社会貢献欲求(誰のために、何を、どうしたい?)
●自己裁量欲求(どうしても自分で決めたい事柄は?)
●経済充足欲求(収入や資産、今と比べてどうしたい?)
●他者評価欲求(誰から、どのような評価を受けたい?)

数分後、増田氏は参加者に何項目記入できたかを挙手させた。
「記入した中身についての発表は求めません。どれくらいその気になっているのか、自分の傾向を知ることが大事なのです。6つの欲求を見ていただくと、対角で矛盾している項目なのがわかると思います。ですが、人間は常に両面あるものです。今日は短い時間の中で書いていただきましたが、ぜひもう一度、あらためて6つの欲求をじっくり考え書いてみてください。ここまで、動機レベルを確かめていただきました。次は資源の確認です」


●起業独立の資源を棚卸。自分自身をすべて洗い出してみよう

次ページには、資源を確認する際の10項目が記載されていた。

資源の棚卸しをしよう。
1、自分自身が持っているものを洗い出す

・専門(専攻)における知識や経験など
・中でも「これは人に負けない」と思うもの
・勤務で得た専門以外の知識や経験など
・取得している資格や免許など
・子どもの頃、得意だったり夢中になったりしたこと
・現在の趣味や仕事以外の活動
・今はやめたが、かつてやっていた趣味や活動
・なんとなくだけれど、「たくさん持っている」もの
・あなたが所有する形のある資産や大事なもの
・あなたが所有する形のない資産や大事なもの

それぞれについて記入するよう促し、参加者が記入している間にアドバイスも。
「人は自分自身を過小評価しがちです。あるいは、忘れています。今日はこの配布資料に記入していただいていますが、ひとつの質問に、1冊のノートまたはパソコンでファイルをつくって、随時、追加記入していってください。今思い出せることには限りがありますから」

「これは誰でも当たり前だと思うことや他人ができると思っても、書き出してください。愚直に、愚直に。書けるところから書いてください」

「ご自身の過去は財産だらけです。この仕事で起業するんだとイメージを持っている方は、どうしてもそれに関連したことばかり浮かぶと思いますが、そうではなく、起業は人生で得たものを総動員して臨むものです。ですから、素になって、思い出して、ひたすら書いてみてください」


記入タイム10分後、次ページに。そこにもまた、10項目が記載されていた。先ほどは、自分自身の洗い出し。今度は、周辺人物の洗い出しだ。

2、周辺人物とその特徴を洗い出そう
・同僚や上司
・顧客や仕入れなど社外の関係者
・以前同僚だったり先輩だったりした人
・競合会社や同業者の知り合い
・利害関係のない異業種の知り合い
・家族や親戚
・出身地の友人や知人
・趣味などの仲間
・ご近所や地域の仲間
・そのほか、生協やPTA、同窓会などの仲間や知り合い

「大事なポイントは、○○な誰それさん、というように、その人の特徴を一緒に書き出すことです。これがビジネスに役立つのか? と思うような人のこともできるだけすべて挙げてください」

記入タイム10分後、会場内をひと回りして記入具合を確かめた増田氏は、ある参加者が記入した資源の中から4つのキーワードを選び、プロジェクターに映し出したマトリックスに入力した。


●「総当たり発想法」で、自分を生かせる事業アイデアを探そう

マトリックスの行の最上部と、列の左端には、同じ4つのキーワードが入力されている。それは、日本史、ピアノ、剣道、カード店だ。

「ここから組み合わせをして考えていきます。各テーブルでチームになって、どんなビジネスができるか、みなさんで話し合っていただきます。
ウサギさんチームは、『日本史に詳しく、ピアノが弾ける彼』なら、どんなビジネスができるか考えてみてください。カメさんチームは、『剣道ができて、ピアノが弾ける彼』なら、どんなビジネスができるか考えてみてください。そして本人チームは、『カード販売店の店長の友人がいて、歴史に詳しい彼』なら、どんなビジネスができるか考えてみてください。面白くても、非現実的でもかまいません。ひとつ、たとえば剣道ができるということは、竹刀をどこで入手できるか、道場がどこにあるかも詳しいはずですよね。また、ピアノが弾けるのであれば、楽譜が読める、コンサートに詳しいなど、関連して思い浮かぶことがたくさんあるはずです。それらも考えながら、チームで話し合ってみてください」

5分後、各チームの代表者からビジネスアイデアが発表され、増田氏はそのひとつひとつを評価した。そしてこの総当たり発想法は、アイデアを広げるだけでなく、実現可能性を高めるのだと説明した。



「どうしても、今までない、新しいことを考えないとビジネスの世界は大変です。諸先輩には勝てません。ですが、実現不可能なことを計画しても意味はありませんよね。こうしてすでに持っている資源を洗い出し、それらを組み合わせると、できる範囲内で、ほかにないもの、できるタネが出てくるのです。アイデア発想は、さまざまな資源を足していくことで、今までなかったものが生まれてきます。また自分が思っているものに、人が持っていることを足していく、人の考えも足していくと、思わぬものができていきます。今、みなさんはそれを実感したのではないでしょうか。ぜひ活用してください。

さて、初日は自分を知る、動機の解明、資源の洗い出しをしました。
そもそも共同体の中で、どのような役割を担って生まれてきたか。自分の三つ児の魂は何か。そして、忘れているようなものを引っ張り出し、資源を確認しました。自分の得意を生かし、組み合わせると、それが一番の武器になります。自分を知ったところで、明日は、誰に向かっていくのか、その相手を知ることを勉強します」

こうして70分の【特別セミナー1】第1日目が終了した。



【先輩交流セッション】



特別セミナー終了30分後に始まったのが、先輩交流セッションだ。1テーブルに現役の先輩オーナーがひとりつき、そのテーブルに参加者数名が座り、テーマに合わせて時間内でディスカッションするワールドカフェ形式。先輩オーナーは5人で、業種はハウスクリーニング、理美容、学習塾、飲食業、出張理美容とさまざまだ。



ファシリテーター役の増田氏が交流セッションの進め方を説明した。
「堅苦しいやりとりの時間ではありません。先輩のみなさんは、どうぞ赤裸々にぶっちゃけトークでお話しください。また、参加者のみなさんも、どうぞ気軽に質問し、また自分がこうしたいという思いもお話ください。1テーマごとにテーブルを移動し、より多くの先輩と交流していただくワールドカフェというコミュニケーション形式で進めます」

<ワールドカフェのルール>
・お菓子を食べながら気軽にリラックスして話を聞く、話をする
・テーマごとにディスカッションし、1名を残してテーブルを移動する
・オブジェを手にしている人が話す。他の方は聞く
・好きなサインペンで模造紙に自由に書く
 メモでもアイデアでも絵でも図でもOK

さっそくお題が告げられ、ディスカッションがスタート。

Q:オーナーに聞こう なぜ独立したのか。その理由は?
  また、不安はなかったのか?
・前職の業界に不安を感じ、将来を考えて独立を決意した。
 そのための資金を貯めることにまず取り組んだ。
・仲間と店舗を開業する予定だったが頓挫し、この道を選んだ
・20代で未婚。リスクはないと思えた
・退職する不安というより、肩書きがなくなる不安が大きかった
・ひとりでは実現できなかったが仲間が支えてくれた

Q:数ある選択肢の中で、なぜその業種を選んだのか?
・需要がある=社会に求められている
・前職と同じ業界なので経験を生かせると思った
・この仕事がしたいと思った
・開業資金がないので、小資本で可能な業種を選択した
・テレビでドキュメンターリー番組を見て感動したから
・対価をいただいて感謝される仕事だから



Q:参加者の気持ちを話そう
 なぜ独立をしたいのか。その理由は?

ブレイク/増田氏から先輩に質問、参加者の印象は?
・前向きで、具体的なことを話せて良かった
・独立に向いていると感じた
・数年前の自分とだぶるので応援したい


テーブルを移動し、フリートーク15分


ブレイク/増田氏から参加者に質問 先輩達に共通しているなと感じたことは?
・経営者感覚とパワーを感じた
・今の仕事を楽しんでいる!と思った
・充実した人生を送っていると思った
・FCでもやりたいようにできるんだと驚いた




ブレイク/増田氏から先輩に質問 その感想に対してどう感じる?
・そう言われて、今楽しいのだと再認識した
・本部ではなく、自分でもなく、お客さんが何を望んでいるかで判断している。それが結果的に「やりたいように実践」につながっているのだと思う

テーブルを移動し、フリートーク15分

最後に先輩たちから参加者へメッセージ
・開業独立は一国一城の主になること。失敗もすべて身になると思うし、怒ったり笑ったり充実した日々だと思う。前向きに楽しんでいただきたい
・人生一度だと思い、自分が幸せになるために独立した。もちろん辛いこともあるが、自分がやりたいと挑んだことだから楽しみながら幸せのために頑張って欲しい。
・職場への不安、不満などあって将来を考えフェアに来場したと思う。今日どれほど伝えられたかわからないが、みなさんの中から数年後、この会に先輩の立場として話しくれる人が出たらいいなと思う。
・何歳になっても夢を持つことは大事だと思う。絶対にかなうので、頑張ってほしい。
・自分は成功例だけでなく、失敗例もたくさんある。起業独立の前に失敗例をたくさん聞いて生かしてほしい。

増田氏「失敗は、うまくいかない方法を知ることであり、それもひとつの財産になります。全部自分のものになり生かせるものです。今日は70分の短時間でしたが、お客さんを喜ばせるビジネスで濃厚な人生を送る、そんなきっかけになればと思います。明日もまた先輩セッションがあります。今日は先輩も参加者のみなさんも勉強になったと思います。ありがとうございました」

▼NICeの総合相談コーナー。相談者途切れず、小林京子氏上久保瑠美子氏安藤愛子氏、セミナーの合間をぬって代表理事も相談員に


アントレフェア第2日目レポートはこちら

取材・文、撮影/岡部 恵



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