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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
外国人旅行客を地方へ!



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第28回 
     外国人旅行客を地方へ!
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【55年ぶりに黒字化した旅行収支】

通い詰めると言ってもいいほど、90年代、よく香港を訪ねた。
「食在香港」「購物天国」の惹句どおり、
私は、朝から晩まで食べまくり、市街の北から南まで買い物に歩いた。
やがて友人もでき、今度はその友人に会うためにまた出かけた。
しかし最近、香港の友人と会うのはもっぱら日本だ。

私と友人の交流の変遷は、日本の国際収支の変遷と重なる。
かつて香港でよくお金を使っていた私だが、
今は反対に友人が日本でよくお金を使う。

事実、5月半ばに発表された2014年度の国際収支統計によると、
訪日客による消費が貢献し、旅行収支が1959年以来の黒字になったそうだ。


【外国相手ビジネス=輸出だった戦後の日本】

1959年といえば、一般の日本人が海外へ渡るなど、夢のまた夢だったが、
戦後復興策として官民挙げて取り組んだ加工貿易は、
その後、日本人を急激に世界のあちこちへと出向かせることになった。
その一方で、
外国人がさほど来日しなかったことも、旅行収支が赤字だった要因だ。

戦後の日本経済にとっての国際収支とは、ほぼ貿易収支を意味しており、
旅行収支を含むサービス収支には、長年、重きが置かれていなかったからだ。
外国人からお金を稼ぐためには、
日本に来てサービスを受けてもらうなどというチマチマした話より、
日本の高性能な製品を、大量に輸出すればいいと考えていたのである。

なんせ日本に観光庁が設置されたのは、わずか7年前の2008年。
いかに、わが国が外国人旅行客の誘致を軽んじていたかがわかる。


【円安がなくても増加している外国人旅行客】

とはいえ、遅まきながらも旅行客誘致攻勢が始まった。
東南アジア向けビザの発給要件が緩和され、
同時にそれらの国の人々の所得も増加したことで、
我が国の旅行収支は黒字傾向に転じた。

むろん収支が一気に逆転にまで至った理由として、
最近の円安の影響が大きいのは確かだ。
この状況下では、日本人は海外でお金を使いにくく、
反対に外国人は日本でお金を使いやすい。

だが肝心なのは、訪日客自体が増加している点だ。
2014年度に来日した外国人旅行客は1467万人、
その人たちが日本に落とした金額は2兆2344億円に達している。
人数も金額も過去最高。もはや「チマチマした数字」などではない。

つまり、「日本がいかに外国からお金を稼ぐか」の構造が変化したのだ。
この流れをしっかり認識しておくことは、
今後の中小企業の事業展開にとって極めて大切なことである。


【旅行客の「東京一極集中」を打破せよ】

ただし訪日客の多くは、今のところ、東京のみの滞在、
もしくは東京−大阪間に集中していることが国の調査でわかってきた。
モノの輸出が主力の時代は、地方企業も稼ぐことができたが、
この状況では、地方は外国相手に稼げないことになる。

地方自治体や地方の旅行会社、企業、NPO、生産者などが力を尽くし、
お金をいっぱい使ってくれる外国人旅行客を、
是が非でも、我が町へと呼び込むことが地域経済活性の要諦になっている。

日本は、一度東京に立てば、あとは飛行機一本、新幹線一本、高速道路一本で、
ほとんどの地方都市へと向かうことができる交通網を擁している。

地方は、東京を訪ねる外国人たちにその事実を何とかして知らせ、
訪日客の自国はもとより、東京や大阪などにも絶対に存在しない、
その地方ならではの強烈な魅力をアピールすることが肝心だ。

繰り返すが、地方はこれを是が非でもやらねばならない。
国土強靱化の必要性がこれだけ叫ばれているにもかかわらず、
公共事業費が伸びてくる気配がない今、
ほかに、地域経済活性のきっかけは、そうそうないはずだから。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.31
(2015.0622配信)より抜粋して転載しました。
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