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どうする?日本経済

熊本をショック・ドクトリンから守りたい


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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第43回 
     熊本をショック・ドクトリンから守りたい
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【熊本市中心部で進む、大型再開発事業】

今年の2月中旬、熊本市の中心地にあるホテルに宿泊した。
客室の眼下には熊本交通センター(バス総合発着所)が見える……、
はずだったが、そこは巨大クレーンがひしめく更地になっていた。

私はてっきり、復旧工事を進めているのかと思ったが、
聞けば、もともとその土地を再開発する計画があったのだそうだ。

計画の正式名称は「熊本都市計画 桜町地区第一種市街地再開発事業」。
3万平米を超す敷地に、バスターミナル、商業施設、シネコン、ホテル、オフィス、
公益施設(仮称熊本城ホール)、共同住宅、駐車場などを設けるもので、
見た目で言えば、地上15階、地下1階の巨大なビルが誕生することになる。


【今、再開発を進めることは、正しいのか?】

再開発のためのコストが気になって、新聞記事などで調べてみると、
総事業費は700億円を超え、これに対し126億円の補助金が投入されるという。
補助金は、国と熊本市の折半というから、単純に計算して、
60億円以上の熊本市民の税金が、このビルの建設費用に使われるわけだ。

私は大型工事自体には反対ではない。
国は資金を貯め込まず、どんどん使って国民経済を回すべきと考えている。
だが、熊本市の再開発事業に限っては、どうにもタイミングが悪い印象がある。

この大型ビルの設計コンセプトは、
「熊本城と庭つづき、すべてをつなぐおもてなしの庭」だそうだ。
しかし、当の熊本城の惨状は、誰もが知るとおりで、
ビルが計画どおり2019年に完成したところで、
「熊本城と庭つづき」などと言える状況には到底ならない。

何より、多くの仮設住宅生活を余儀なくされている人々がいる。
つまり、市民感情からすると、「今、それをやらなくても……」、
ということになるのではないか、そう私は思ったのである。


【懸念される「熊本ショック・ドクトリン」】

さらに私が懸念するのは、
今後、ショック・ドクトリンの波が熊本を襲うのではないかということだ。

ショック・ドクトリンとは、「惨事便乗型資本主義」と訳され、
自然災害や戦争などによってダメージを受けた地域において、
チャンスとばかり、従前の規制を解除して、開発などを断行する政策である。

ハリケーンに襲われた米国ニューオリンズには、
地元の反対を押し切ってカジノが建設された。
スマトラ地震で津波被害にあった周辺漁村にはリゾート施設がつくられ、
住民は、立ち退きを余儀なくされた。

日本でも同様だ。
阪神・淡路大震災で火災に見舞われた神戸市長田区では、
もともとあった商店街や工場街は復旧されず、
大型ショッピングモールや高層マンションが新たに建てられた。

東日本大震災で津波被害を受けた地域にも、
大型ショッピングモールが進出し、
その施設に女性パート労働者を奪われた地場産業(水産加工業など)は、
経営が立ちいかなくなる状況が相次いだ。

熊本の桜町再開発は、震災以前からの計画だから惨事便乗型ではないが、
「ちょっと待ってくれ」という市民の声をはね除けての着工だとしたら、
今後、熊本市や熊本県が、ショック・ドクトリンを受け入れる危険はある……。


【悲しみに耐えて頑張る人々と、手を携えて……】

この6年間、東北各地の小規模事業者や生産者たちと交流を続ける中で、
「結局、いい思いをするのは大企業」という声をどれだけ聞かされたことか。
熊本を、東北の二の舞にさせてはいけない。

強引な開発や規制撤廃を実行すれば、確かに「数字」は加速的に改善するだろう。
だが、人の心の傷は、急速に改善するような代物ではない。
地域経済の主役は、その地域に暮らし、その地域で働く人々である。
熊本の人たちの気持ちを支え、励ますことが、経済復興の要だと私は思う。
たとえそれが、どれだけ時間のかかる方法だとしてもだ。

NICeは、熊本地震から1年を経た今年も、これからも、
熊本の起業家たちと、そして、心ある全国の仲間たちと手を携えて、
「人の温もりに満ちた経済」を生み出すために活動を続けていく。


<一般社団法人 起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.53
(2017.4.21配信)より抜粋して転載しました。
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