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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
初鰹 ~自然の恵みとともに生きる日本~



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第90回 
 初鰹 ~自然の恵みとともに生きる日本~
 
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【誰もが知る、初夏のあの名句】

山口素堂という名は、あまり知られていないが、この俳人が詠んだ、
「目に(は)青葉 山ほととぎす 初鰹」の句は、すこぶる有名だ。

およそ300年前の作と言われるこの句には、三つも季語が並んでいる。
しかもその三つを、視覚、聴覚、味覚の別に選び出したところがすごい。

季節感がすっかり乏しくなった今の日本にあってこの句は、
日本人の暮らしが、
元来、恵まれた自然と共にあったことを強く思い起こさせてくれる。

同時に、この句の存在が、現代人の鰹の消費量に、
どれだけ貢献していることかと、つくづく思うのである。


【江戸時代の初鰹は、1尾10万円!】

江戸時代、「女房を 質に入れても 初鰹」という川柳も作られた。
何としても口にしたい食べ物ではあるが、
高価で手が出ない食べ物でもあったということだろう。
一説によれば、当時の初鰹1尾の値段は、今の10万円程度だったとか。

昔は、「初物を食すと寿命が75日延びる」などとは言われていたから、
初鰹の価格は、その美味しさに、
縁起の良さが付加されたプレミアム価格だったのかもしれない。

なお、初物や縁起物を珍重する習慣は、いまだ健在である。
読者の皆さんが取り扱う商品に、そうした価値を付加できれば、
卸価格にせよ小売価格にせよ、劇的にアップさせることも可能だろう。


【秋冬は、脂の乗った戻り鰹】

話を鰹に戻す。
味で競うなら、私はむしろ初鰹より戻り鰹に軍配を上げたい。
いや待て、そうとも言えないか……。

初夏が旬の初鰹は、引き締まった身の爽やかさが美味しく、
反対に、秋冬が旬の戻り鰹は、脂の乗ったふくよかさが魅力だ。
つまり、両者は旨さの種類が違う。比較は無理かもしれない。

ただ、初鰹に比して戻り鰹が今一つインパクトに欠けるのは、
上記した「謂れ(いわれ)」が不足している面もあるだろう。
「大きくなって戻ってくる」というあたりに着目して、
戻り鰹を縁起物に仕立てる方法はあるように思うが、どうだろう。


【鰹の身の赤黒さは、劣化の証拠】

ところで読者の中には、
「鰹ってそんなに美味しいかなあ」と、首を傾げる人もいるに違いない。

実際、不味いものがそれなりに出回っているのも事実である。
その不味さの理由は、大きく分けて二つある。

一つは、それが「鰹の宿命」ということ。
鰹は、5尾の内の1尾、もしくは10尾の内の1尾といった割合で、
身が硬く、何ら旨味を感じさせない個体が存在するからだ。
美味い鰹と不味い鰹を外見から見分けることは、残念ながらできない。

もう一つは、鮮度が落ちたものも堂々と販売されているためだ。
遠慮なく言わせてもらうと、
スーパーなどで売られている鰹は、おおむね鮮度が良くない。

鮮度の良し悪なら、外見ですぐにわかる。
鮮魚コーナーにパック詰めされて並ぶ鰹はどんな色をしている?

「赤黒い感じ。もしくは茶色」。だいたいそんなところだろう。

だが、本来の鰹の血合は、マグロの赤身同様キレイな赤だし、
皮目に近い方の身は、鮮やかなピンクである。
決して赤黒かったり茶色かったりする魚ではない。つまり変色。
そして、そういう色の鰹が「生臭い」と言われる代物である。


【鰹は、黒潮に乗って太平洋沿岸を往復する】

では、美味しい鰹はどこに行けば食べられるのか?
以下、私の主観も入るが、ご案内したい。

その前に、簡単なデータを紹介しておく。
まずは、鰹の漁獲量の都道府県別ランキング。
1位:静岡県、2位:宮城県、3位:東京都、4位:三重県、5位:高知県である。

見ての通り、漁場は太平洋沿岸の広い地域に分布する。
九州方面から黒潮に乗って北上してくる鰹を漁獲しているからだ。
ちなみに漁港別で言えば、水揚げ日本一は、宮城県の気仙沼港。
今年で24年連続1位というからすごい。

一方、消費量ランキングは、
1位:高知県、2位:福島県、3位:茨城県、4位:宮城県、5位:岩手県である。

高知県以外は、三陸から常磐にかけた、東日本の太平洋沿岸であり、
これらの場所は、秋冬に戻り鰹をよく食べる地域である。

ということで、初鰹を食すなら、
漁獲量・消費量ともにランクインしている、高知がおすすめだ。
消費量が多いということは、
それだけ、いい品物が県外からも集まるということである。

高知の鰹と言えば、タタキが有名だが、
ご当地では、ポン酢ではなく、塩で食するタタキも見かける。
塩をくわえ込んだピンクの身は、絶妙な弾力になり、絶品そのもの。

一方、戻り鰹なら、
やはり漁獲量・消費量ともにランクインしている、宮城県がおすすめ。

まだ、津波被害の爪痕が残っていた頃の気仙沼の寿司屋で食べた、
大振りの鰹の、吸いつくような歯触りは、今でもはっきり覚えている。

もちろん、福島県のいわき市や茨城県の水戸市などでも、
垂涎物の戻り鰹が味わえる。
むしろ、安くて大きいのは、これら常磐地域かもしれない。
ちなみに戻り鰹は、タタキではなく、刺身で食べるのが一般的だ。


【珍味ナンバーワン、鹿児島名物の「腹皮」】

ここまでのおすすめは、言わば王道である。

番外とでも言おうか、別部門とでも言おうか、
初鰹や戻り鰹に負け劣らず美味いのが、
鹿児島県特産の「鰹の腹皮(ハラガワ)」だ。

鹿児島といえば、鰹節生産量日本一の枕崎市があるが、
鰹節の原料として使用するのは、背中側の赤身であり、
脂の乗った腹側(腹皮)の身(つまりは大トロの部分)は使用しない。
その余った極上部位を焼いて食べるのである。
多少クセはあるが、芋焼酎のアテにピッタリだ。

また、頑張って枕崎まで足を延ばせば、
鰹の頭を煮つけた、「ビンタ定食」を味わうこともできる。
「ビンタ」とは、鹿児島方言で頭部のこと。

賢明な読者は、すでに気付いているかもしれないが、
頬を平手打ちすることを、俗に「ビンタする」と言うのは、
「ビンタ(頭や顔)を平手で張る」からである。

ちなみに鰹節の消費量日本一は沖縄県。
沖縄そばやソーキそばのスープの旨さは、鰹出汁あってのものだ。

【日本一鮮度に優れた、すさみ町のケンケン鰹】

最後は、本コラム読者だけに贈る、増田イチオシ特選情報!

どこのどんな鰹よりも鮮度が良く、「これが鰹なのか」と、
ショックを受けるほど美味い鰹が食べられるのは、
和歌山県すさみ町。

ご存じの人もいるだろうが、「すさみのケンケン鰹」といえば、
間違いなく鰹の最高級ブランドである。
色彩の鮮やかさはもちろん、そのモチモチした食感は唯一無二。

ケンケン漁と呼ぶ、すさみ漁師独特の漁法は、
釣った鰹をほとんど傷めることがない。
なおかつ、その鰹を一匹ずつ船上で活け締めにして冷水に漬け、
短時間で市場へ持ち帰るのだから、鮮度抜群に決まっている。

興味のある方は、ぜひ、「ケンケン鰹」で検索してほしい。
そして、ぜひ、一度は味わって頂きたい。
すさみ町だけでなく、周辺の白浜や串本でも味わえるかもしれない。

【「季節感」こそ、本来の日本経済のキーワード】

昨年の5月も今年の5月もコロナ自粛で、
気付けば、心の中の季節まで失いかねない世情である。

だから、この季節の本来の姿を忘れないために、
グルメリポートもどきの文章を長々と書かせて頂いた。

私たちの経済活動のベースにあるのは、
「自然の恵みとともに生きる日本」である。

その姿を一日も早く取り戻すために、今を乗り越えねばならない。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.142
(2021.5.21配信)より抜粋して転載しました。
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