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NICe増田代表理事が送る、新たなビジネスチャンス発見法と実現へのヒント。11日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
第39回 スマート林業



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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」

     第39回 スマート林業
 
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タレントの辻希美さん・杉浦太陽さん夫妻が新居を公開した。
ネットニュースによれば、3億円の豪邸だとか。いやいや、実に羨ましい。

さて、そんな邸宅も、当初の予定よりかなり完成が遅れたそうだ。
昨年の木材価格の高騰ぶりが凄まじすぎて、
施工会社が資材調達できなくなってしまったのが理由らしい。

確か昨年の木材価格は、海外・国内ともに、
それまでのおよそ3倍まで跳ね上がった時期があったと記憶している。
幸い、ピークが過ぎて再び価格が下がってきたから良かったが、
あのまま高止まりが続いていたら、もう、辻さんのお宅に限らず、
日本中の新築工事やリフォーム工事が中断のままになっていたかもしれない。
施主も工務店も、本当に気が気ではなかっただろう。

あらためて、昨年の「ウッドショック」がなぜ起きたのか確認しておく。

新型コロナ感染症が拡大したアメリカで、
リモートワークに対応できる住居を求める人が増加し、
それが木材需要を一気に高めたことがひとつ。
並行して、中国でも新築需要が増していた事情もある。
また、昨年1月1日から、ロシアが丸太の輸出を停止したことも大きかった。

しかし、もっとも深刻な理由は、10年ほど前から起きている害虫被害の影響だ。
地球温暖化で害虫の越冬が可能になり、
繁殖力が増したことで木材被害が急増していると考えられている。
感染症や戦争も恐ろしいが、
静かに地球を蝕む、気候変動問題の恐ろしさを垣間見る話である。

それでも一度は落ち着く雰囲気を見せた木材価格だったが、
ロシアのウクライナ侵攻の影響で、
またまた木材価格の高騰が予測される展開になっている。
すでにEUがベラルーシからの木材輸入を制限しており、
国際的に供給される木材が不足することは確定的だ。

しかし、なぜ外国の事情が日本に影響するのかと訝る人もいるだろう。
まさに、そこが問題の中心である。

ご存じのように日本は山国であり、
国土に占める森林の割合は約68%に達している。
ちなみにロシア47%、アメリカ33%、中国21%だから、
日本の森林割合の高さは際立っている。

ところが、木材自給率に目を向けると、
ロシア100%、アメリカ86%、中国69%なのに比し、
日本はわずか40%程度にとどまってしまう。
つまり、残りの約60%を輸入に頼っているから、
海外の木材価格高騰の直撃を受けることなにる。
森林の国なのに、木材を自国で賄えない日本……。なぜ?

一言で言えば、林業があまりにも儲からないために、
林業に取り組む人が減少の一途だからである。

それでも今は需要が高いのだから、
人手を総動員して伐採し、売れば儲かるのではと考えたくなるが、
伐採したままの山を放置すれば、
鉄砲水や地滑りの危険性が高まる。治水上、大問題だ。

実際、農林中金の元職員からこんな話を聞いた。

「ある森林組合への融資案件があり、
担保能力の調査に出かけたことがあります。担保は木です。
でも、広大な山林に木が何本生えているのかなんて、誰もわからない。
仕方なく、一定の面積の本数を数えて平均値を出し、
それを山林全体の面積に当てはめて割り出しました。
いやいや、ほんと大変でしたよ。
来る日も来る日も山登りですから。
でもね、そんなことしたって、本当は意味ないんです。
債務不履行になったからといって、
木を伐って売るなんて、実際にはできないわけですから」。

そういうことだ。
林業は計画的な伐採と、計画的な植林を並行して行うことが絶対条件。

というわけで、
「高い輸入木材に頼らず、国産木材を増産すればチャンスだ」、
という単純な話にはならないのである。
ならないのだが、しかし、そうしていかないと、
早晩、日本で木造建築物を建てることかできなくなってしまう。

私は、農林中金のエピソードの中に解決のヒントが潜んでいると思った。

一昔前は、立木(りゅうぼく)の本数すら数えられなかったが、
今ならドローンを活用することでかなり正確な計測ができるはずだ。

それでも林業への融資は、金融機関にとって魅力的とは思えない。
であれば、間接金融ではなく、直接金融はどうか。
資産価値を正確に割り出せれば、
それを小口に分割し、有価証券として市場に出せばいい。
不動産の証券化ならぬ、林業の証券化だ。

この方法なら、植林した木を現金化できるのが何十年先だとしても、
資金調達がしやすくなる。
というわけで、ドローンの活用に私は期待を寄せているが、
そもそもドローンがあれば、
森林の状態を可視化でき、日々の管理業務にも役立つだろう。

また、GPSによって自動操縦できる重機の導入も推進したい。
林業は儲からないだけでなく、極めて危険を伴う仕事である。

以前、静岡県浜松市の林家を取材したことがあるが、
目もくらむような急峻な傾斜地での作業に付き合わされて、
膝がガクガク震えたことを覚えている。
「安全な林業」も、人手不足解消の重要なファクターだ。

さらに、AIに受給予測を行わせることで、
「儲かる林業」への道も開けるのではないだろうか。

どれもこれも簡単だとは思わないが、
デジタル技術の活用・応用によって、
林業の資金調達問題、人手不足問題、低収益問題に、
一定の解決策を見いだすことはできるだろう。

国は環境負荷の低い木材建築物の拡大を推しているし、
何よりデジタル化の推進は、一丁目一番地の政策だ。
ぶっちゃけ、少なからぬ補助金も用意されている。
「スマート林業」への挑戦。
ここにビジネスチャンスが広がっていることは間違いない。

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.162
(2022.4.11配信)より抜粋して転載しました。
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