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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
消費税依存症



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第118回 消費税依存症
 
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【岸田首相が言う「成長の成果」とは?】

10月20日、岸田首相は自民・公明両党の政調会長、税制調査会長に対し、
所得税の期限付き減税を検討するよう指示した。

やはり、「そうなって」しまった。

この「減税ドタバタ劇」の顛末を振り返る。

当初、岸田首相は、
「物価高に苦しむ国民に対して、成長の成果について適切に還元を行う」と語った。

「成長」と言っているが、そもそも、日本経済はいつ成長したのだろう?
GDPはこの30年、横ばい状態だ。

強いて「成長」したと言うなら、それは税収である。
確かに、税収はバブル崩壊前の水準にまで戻っている。


【ホンネは「賃上げ税額控除」程度だったはず】

要するに、「成長の成果を還元する」とは、
「増加した税収の一部を戻す」という意味であり、
実際、首相も当初から「減税」という言葉を口にはしていた。

もっとも、減税対象となる税目は法人税に限るというニュアンスだったし、
しかも、一律で法人税率を下げるような改革ではなく、
従業員の給与をアップした法人に対して一定額を税額控除するという、
従来の路線の延長に過ぎない印象だった。

だが、ご存じのように、日本企業のほとんどが中小・小規模企業であり、
最低賃金の上昇に怯えるような状態の会社ばかりである。

そこに対して「賃金を上げた場合」という条件は空虚だし、
企業のおよそ66%が、法人税の納付対象にならない赤字企業。
納めてもいない税金の額を下げるといわれても、
「そんなの関係ねぇ、オッパッピー」である(古い……)。

結局のところ、減税の対象となるのは、ごくごく一部の会社だけ。
だから「税収全体に影響を及ぼすことはない」と、首相は踏んでいたはずだ。


【一人歩きし始めた「減税」論】

ところが、話がいつの間にか大きくなってしまった。

選挙が近いと考える国会議員たちが、
こぞって、首相の「減税」という言葉に飛び付き、
「所得税率を下げるべきだ」「いや、消費税率を下げるべきだ」などと、
大合唱を始めてしまったのである。

これはあくまで想像だが、前述したように、
「一部の企業の法人税額を一定程度、控除するだけ」と思わせておいて、
しかるべきタイミングで、もう少し踏み込んだ減税策を発表すれば、
「おおっ、やるなあ」と評価が上がり、
「増税メガネ」と揶揄する声も静かになると首相は考えていたかもしれない。

小さい話が大きい話に変われば、人々は喜ぶ。

しかし、所得税や消費税の減税などという、特大のネタを聞かされた後に、
減税範囲をこれまでより多少拡大すると言われても、
大きい話が小さい話に萎んだ印象で、かえって人々の落胆を招くことになる。

どうする家康? ならぬ、どうする岸田?
と思って見ていたが、
結果、冒頭で紹介したように、
やはり、所得税に手を着けると、首相は言わざるを得なくなった。


【デフレでも不景気でも伸びる税収の謎】

23日からの臨時国会も興味深いものはあるが、
それはさて置き、今回のコラムで話題にしたいのは、
「税収の伸び」についてである。

元来、税収は国民や企業の豊かさと足並みが揃うものだ。
しかし、企業収益は伸びていないし、国民所得も横ばい。

なのに、首相をして「還元する」と言わせるほどに税収は伸びている。
どういうことか?
言わずもがなだが、ひとえに消費税収の増加のなせるわざだ。


【法人税に取って代わった消費税】

以下に、消費税が導入された1989年から今日までの税収推移を記した。

1989年 ●4月1日から消費税導入 税率3%
1993年 税収7兆863億円 

1997年 ●4月1日から税率5%に変更
1998年 税収9兆8668億円 

2014年 ●4月1日から税率8%に変更
2018年 税収16兆4902億円

2019年 ●10月1日から税率10%に変更(一部は8%のまま)
2021年 税収19兆7895億円
2022年 税収23兆793億円
2023年 税収29兆円(予算)

ちなみに税率が3%だった1993年の税収は約7兆円。
それが2022年の実績で約23兆円。
およそ3.3倍に膨らんでいるが、
当初3%だった税率が現在では10%と、
こちらもおよそ3.3倍に跳ね上がっているので辻褄は合う。

もはや日本は消費税依存国家である。
令和5年度の国家予算に占める税収約69兆円の内、
消費税収は約29兆円だから、割合にすると42%。

1989年の3月までは、存在すらしなかった税目が、
わずか30数年の間に税収の担い手になったのだ。

半面、消費税導入時点では税収トップだった法人税は、
当時の35.3%からシェアを下げ、今や24.9%である。


【「不労所得」に味をしめた政府】

「そういうわけだから、消費税を廃止したり、税率を引き下げたりなど、
どう考えてもできるわけがない」。
そんな声がどこからともなく聞こえてきそうだ。

しかし、この言い分には突っ込みどころがある。

裏を返せば、
「法人税や所得税が増えなくても、消費税があるから大丈夫だ」と、
言っているのと同じことだからだ。

本来、政府がすべきことは、
企業の競争力を高め、新たな市場を開拓するために、
さまざまな施策を講じることである。
成果が出れば、企業も個人も豊かになり、ともなって税収も上がる。

だが、消費税という「不労所得」に味をしめてしまった政府は、
企業や国民を潤わせる「ことを通じて」税収増を図る、
などという面倒で不確実なことをする気がなくなってしまったようだ。

岸田首相が所得税の期限付き減税を口にできるのも、
「打出の小槌」(消費税)があればこそだろう。


【インボイスで消費税収は伸長の一途】

しかも、この10月からインボイス制度がスタートした。

消費税は、消費者が納付義務を負う税ではなく、
年間課税売上高1000万円以上の事業者に対する付加価値税である。
(上記の説明は、本コラム第116回「小規模事業者と給与所得者の分断」参照)

したがって、その売上規模に達しない事業者は納税義務を負わないわけだが、
インボイス制度の導入により、
本来、そうした納税義務のない事業者までもが、
消費税を納税せざるを得ない状況が作られてしまった。

昨年の消費税収は約23兆円。
それが今年は29兆円と、一気に6兆円も増える予算を立てているのも、
インボイス制度の導入効果を見込んでのことだろう。

加えて言えば、物価高も税収増に貢献している。
1000円の請求には100円の消費税が付加されるが、
価格が1200円に上がれば、消費税も自動的に120円になるのだから。
いやいや、ほんとにラクチンな徴税手段だ。

インボイスに話を戻せば、
今年の場合、インボイスによる税収増が見込めるのは、
10~12月の3カ月間だけ。それでも6兆円増。
果たして来年はとれほどの予算を立てるのだろう。

もしかすると、
税収全体の半分以上を消費税が占めることになるかもしれない。
消費税依存症は深まるばかりだ。


【収益力を高めて、政府の信頼を取り戻そう】

NICeメルマガを長く読まれてきた方々には、
同じことを何度も言うことになってしまい恐縮だが、
悪いのは、何も政府だけではない。私たちにも責任がある。

「どうせ、おまえらのような小さな会社は、なんぼも稼げず、
それこそ3分の2もの会社が法人税も納めていないんだから、
おまえらに期待したところで、税収は上がらないんだよ」。
政府はそう思っているに違いない。

要は、信頼できないと言われているのだ。

そういう政府の言い分に、
私たちは、面と向かって反論できるだろうか?

泣き言や言い訳や責任転化を繰り返したところで無意味だ。

消費税という打出の小槌を握ってしまった政府は、
おいそれと私たち小規模企業のために身を切ってくれるとは思えない。
だから自力で生き延び、成長を果たすしかない。

そして現在の法人税非課税企業66%という状況を逆転し、
法人税納税企業が66%を突破すれば、そのときは堂々と、
「消費税に頼るな」と言えるのではないだろうか。

官と民が力を合わせることで、企業も国民も豊かになり、
その果実として税収が増える日本を、是が非でも実現したい。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.197 
(2023.10.23配信)より抜粋して転載しました。
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